僕が入学した高校は福島県立会津高等学校。伝統ある男子校である。音楽を志す僕は、迷わず合唱部に入部した。もちろん男だけなので男声合唱だった。中学生の時に混声三部合唱を歌ったことはあったが、男声のそのハモった時の快感は混声の比ではなかった。体全体が共鳴するような、その響きの中心に自分がいる感覚は言葉では表現し難い。僕はどっぷり男の世界にはまってしまった。
大学に入っても、合唱は忘れられず仲間と合唱団を作ったりしたが、その頃に出会ったのが合唱指揮者の辻正行先生。大学で一年先輩のお父さんでもあった。僕が合唱経験者ということもあり、辻先生の事務所で、音楽の仕事を与えてもらうようになった。
そのうちに同じような人たちが集まり男声合唱団ができた。それがクロスロード・シンガーズである。これがまたユニークなメンバーが揃っていて、キャッチフレーズは「教会からキャバレーまで」となった。メンバーの中に編曲者はいるし、ポップスに演歌、それに宗教曲まで、とにかく節操無くなんでも歌ってしまう。演技派揃いで声もよく出る。
我々約20名と女子高生約100名とで混声合唱を歌ったこともあった。スクールコンサートでもあちこち行ったし、僕にとっては非常に楽しい男の集まりだった。僕らの社長でもあった辻先生は3年前に他界。心の中にぽっかり穴があいた感じだった。クロスロードのメンバーもそれぞれが忙しくなり、なかなか集まれなくなった。…合唱を聴きに来てこんなに笑ったのは初めてだと言われた言葉がなつかしい。
佐藤淳一(テノール)
『シエナ25』は、シエナ・ウインド・オーケストラのメンバー25人で結成された、小編成の吹奏楽ユニットです。
今回のテーマは3つ!
☆「TVonブラス」大人気“ビリーブ”や、なつかしの“ドリフ大集合!!”みんなの名作“サザエさん”“ドラえもん”など、「一度は耳にしたことがある!」TVから流れてくるゆかいな音楽をお送りします。
☆世界のマーチ
吹奏楽といえばマーチ!“ラデツキー行進曲”や「サル♪ゴリラチンパンジ〜♪」の替え歌でも有名な“ボギー大佐”、ジャズも吹きます♪“聖者の行進”など世界各国さまざまなマーチが大集合です。
☆ブラスの響きパート1&2
普段シエナ大編成でも演奏する曲を25名でエネルギッシュかつ、緻密なアンサンブルでお届けします!小編成ならではの透明感のある響きをお楽しみ下さい☆。
シエナ・ウインド・オーケストラ(管楽アンサンブル)Fl金野紗綾香
こんにちは。今日はプログラム前半のモーツァルトについてです。
モーツァルトの作品は他の古典派の作曲家と同様に単純なものが多いと思います。ただし同じ時代の二流の作曲家との決定的な違いは作品が光輝いているということです。そしてどの楽曲についてもいえることですが、演奏に音楽家が持つ本来の資質が直接表れます。
ピアノ曲に関して言えば音符の数が決定的に少ないわけですので技術的に難しいことは何もありません。また少ない数の音符から音楽を紡ぎだすわけですから、間が重要になります。絶妙の間はどんなに練習、努力をしても身に付けられるものでは無いと思います。
従って各音楽家が生まれながらに持つ音楽性あるいは資質が全てさらけだされるのです。モーツァルトを弾く事は音楽家にとってある意味怖いことです。ただし聴衆に皆さまは演奏する音楽家の本質を感じることが出来るわけですので、非常に面白いことでもあると思います。
私が弾くKV331, 332は、モーツァルト中期の作品で、全19曲のピアノ・ソナタの中でも私が好きなもののうちの2つです。これらの作品は先日レコーディングも行っています。ピアノ・ソナタはピアノ協奏曲のように後期の作品に出来が良い作品が多いということはなく、良い作品が各年代に点在しているということも興味深い事実です。
清水和音(ピアノ)
菅英三子、3回目の登場です。今日はちょっぴりハードな10月のお話です。
「仙台クラシックフェスティバル」には10月9日に出演しますが、実はその前日8日は京都で歌っています。京都市立芸術大学が主催して行なう「京都国際平和会議」のコンサートなのです。
9日の朝の飛行機で仙台に戻ってきますが、ちゃんと飛びますよね〜。
今年の10月はこの他、1日に岡山でマーラーの「千人の交響曲」、15日に東京でリサイタル、25日・26日に東京で読売日本交響楽団の演奏会という予定です。重なる時というのは重なるものなんですよね〜。暇な時はめちゃめちゃ暇なのに….。今年はこのペースで11月に突っ込み、そのまま12月を突っ走ります。
10月15日のリサイタルは、東京・銀座の王子ホールで行ないます。今年生誕250年のモーツァルトの作品によるプログラムです。前半は宗教曲。モテット「踊れ、喜べ、幸いな魂よ」で始まり、「ハ短調ミサ」、「悔い改めるダビデ」からのアリアへと続きます。「踊れ、喜べ、幸いな〜」は、昔大ヒットした映画「オーケストラの少女」で歌われた有名な「アレルヤ」が入っている曲です。後半はオペラ特集で、「フィガロの結婚」、「羊飼いの王様」、「後宮からの逃走」、「魔笛」からのアリアを歌います。
日曜日の午後、銀座にいらっしゃいませんか?
菅英三子(ソプラノ)
私が所属している仙台オペラ協会で、今年度はこの「花言葉」というオペラを公演する。
ほとんどの方は初めて聞く演目ではないかと思う。原作は、スペインの作家ガルシア・ロルカ、作曲はイタリアのレンツォ・ロッセッリーニ、彼はイタリアの映画監督の巨匠ロベルト・ロッセッリーニの弟である。
おおよそのあらすじは、主人公のロシータは従兄と婚約しているが、その従兄が遠く離れた自分の実家に戻ってしまう。その彼を待ち続けるロシータ。月日は10年20年と過ぎていく。20数年後に、その従兄は8年前に既に地元で結婚していたと手紙を送ってくる。20歳だったロシータは40代半ばを過ぎオールドミスとなってしまう。僕はその従兄の役。婚約者を20年以上も待たせながら裏切ってしまう本当に悪いやつだ。
今回の演出家はイタリアから招いた。
先週より立ち稽古が始まった。これがまた面白い。楽譜から創造していたものよりももっとオーバーで激しく、僕は益々悪い男になっていく。ピンカートンを歌ったときも、公演後にある方から、あなたって本当に悪い男だったのねと言われたことがあった。今回もそのように言われるよう、歌い演じたいと思う。
音楽は大変綺麗だし、スペインのアンダルシアの匂いがぷんぷんしてくるし、その上これぞイタリアオペラだという歌いまわしが随所にあるし、知らないオペラでも十分に楽しめると思う。
フル編成オーケストラでは日本初演となるので、この歴史的瞬間に是非たくさんの方々に立ち会ってもらいたい。公演は今度の9月2日・3日宮城県民会館にて。
問い合わせはオペラ協会事務局022−264−2883までどうぞ。
佐藤淳一(テノール)
“M8=ミュージックエイト”といえば…吹奏楽をやったことがある方なら、一度は吹いたことがあるかもしれませんね。かくいう私も小学校の頃からプロになった現在にいたるまでM8を演奏しています。
幅広い年齢層で楽しめる、親しみやすいフレーズいっぱいの曲を、小編成でもリッチなサウンドのするようにアレンジされています。今回はシエナ・ウインド・オーケストラより、クラリネット、アルトサックス、トランペット、トロンボーン、ユーフォニウムの5パートで演奏致します。
たった5人で……しかもこの編成で……と、お思いでしょう??
どんな響きがするのかは当日までのお楽しみです♪
シエナ・ウインド・オーケストラ(管楽アンサンブル)Fl金野紗綾香
こんにちは。今日からはお約束のプログラムについてです。
「せんくら」で演奏させていただくプログラムを全部並べるとモーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番KV331(トルコ行進曲つき)、12番KV332、ショパン:ノクターンOp9-1, 2, 62-1, 2, 「遺作」です。
まず演奏する二人の作曲家、モーツァルトとショパンの共通点は共に「夭折の天才」である点です。モーツァルトは35歳、ショパンは39歳に亡くなっています。この二人の音楽には年齢不詳の要素があります。この要素は夭折の天才作曲家のみがもつ独特な持ち味と言えます。
皆さまもこの二人の作曲家のある一作品を聴きながらCDのリーフレットを眺めた時、その作品の作曲年代をご覧になって驚いたという経験をお持ちの方がいらっしゃると思います。
是非 皆さまも私が弾く上の作品の作曲年代を調べてみて下さい。
それからこの二人の音楽には「人間臭さ」が無いですね。これはベートーヴェンの音楽と比べればより明らかで、ベートーヴェンの音楽の特徴が「人間臭さ」「爆発」であるならば、ショパン、モーツァルトの特徴は「洗練」であると言えると思います。
清水和音(ピアノ)
今日は8月19、20日に行われる、読響三大協奏曲のリハーサルでした。曲は大好きなチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番、指揮は私が同世代で最も尊敬し信頼する指揮者の一人である広上淳一さんでした。
やはり素晴らしいオーケストラや指揮者との共演は本当に楽しいものです。演奏会が非常に楽しみです。お昼ご飯時には、広上さんや団員さんと昔話や音楽の話に花が咲き、こちらも本当に楽しかったです。
仙台にも仙台フィルという素晴らしいオーケストラがありますね。コンマスに若くて優秀な伝田さんが就任したと聞いています。先日彼とは室内楽で一緒になりとても楽しかったことを良く覚えています。
仙台フィルにはこれまで何度か出演させていただいていますが、是非また演奏する機会があれば嬉しいです。
清水和音(ピアノ)
はじめまして。仙台在住のソプラノ歌手の卵で斎藤真理と申します。
先生との出会いは2年前、菅先生のレッスンを受けたくて、どうしたらいいか悩んでいたんですが、偶然にも、先生と同じ飛行機に乗り合わせたんです。こんなことがあるなんて・・・運命を感じましたね(笑)
本当に今でも感じてます!そのとき、興奮気味の私に、優しく微笑んでくださった先生は今でも忘れられません
さて、菅先生といえば『夜の女王』。そう思うのは、私だけではないと思います。先生が歌う『夜の女王のアリア』を聴き、ファンになられた方も多いのではないでしょうか。これほど技巧を極めた曲なのに、卓越したテクニックにより歌いこなしている、誰にもまねできない、パーフェクトなコロラトゥーラソプラノです!
でも、先生はそれだけではないんです。みなさんは、菅先生の声に、どんなイメージをお持ちですか?その声は、しっとりとしたミルクのように優しく、それでいて激しく燃えるんです。ん?『ミルクが燃える』どういう意味?って思いますよね。
先生がかつてウィーンに居られた頃、ある方に『ミルクのような声だ』と言われたことがあると先生から伺ったことがあります。そこから頂いちゃいました(笑)そのあと、私がその方とお会いした時、どのようなミルクか伺っておけばよかったのですが・・・。私のイメージでは、コンデンスミルクのようにねっとりした感じではなく、優しくて濃厚な、ジャージー牛乳ような・・・。言葉がみつかりません。
今回のプログラムの中でも、私が大好きで、オススメの曲が『落葉松』小林秀雄作曲の日本歌曲で、メロディーも美しく、日本語ということもあって、心にストレートに伝わります。
実は先日、先生の『落葉松』を聴いて泣いてしまったんです。きっと、先生の声が私の心の何かに触れたんでしょうね。
せんくらが開催される秋、山々が色づく季節に心に染み渡る音楽、必聴です!
斎藤真理(さいとうまり)
三度目の公演では、初めてドン・ホセを歌わせてもらった。
原語での公演、僕にとっては初めてのフランス語だった。学生時代にちょっとフランス歌曲を勉強したのと合唱曲で何曲かフランス物に触れたことがある程度だったので、ソロでフランス語をそれらしくお客様に聞かせるための努力が必要であった。
そこで私は、自分の職場のフランス語の堪能なアメリカ人の先生に教わることにした。初めは英語でフランス語を教えて下さるつもりだったようだが、あまりに僕の英語力が低く、主体は日本語に。
本人曰く、母国語は英語なのに、外国語である日本語で外国語であるフランス語を教えている自分が非常にコミッシュだ。語学の先生がそのように言われるのだから、きっと、何ヶ国語を話す人でも言語を即座に切り替えるのはそんなに簡単なことではないのだろう。会津弁と日本語しか話せない者にとってはかなり高度な話であるが…。
本番までに一番考えたこと、それはどういった心境になれば人を殺したくなるのか、ホセはなぜ最後にカルメンを刺さねばならなかったのか、これだけは経験できないし、してはならないので、とにかく一生懸命考えた。
結果…僕の教え子が二階席で聞いてくれて、最後は自分も殺されるかと思ったと感想を述べてくれた。
僕にとっては大成功!演じていた自分としては、気持ちは乗っていたが、非常に客観的に指揮者を見てテンポを感じていて、それが逆に良かったのかなと思った。それまでの数少ないオペラ経験の中で、自分にとってもっとも充実した公演だった。
佐藤淳一(テノール)