-神谷朝子さんより-
毎年開かれる仙台クラシックフェスティバルに、一聴衆として、また演奏家として今年も参加できますことを大変嬉しく思っています。
ハープという楽器は、去年NHK交響楽団のハープ奏者早川りさこさんの素晴らしい演奏が、皆様の記憶に新しいかと存じます。ハープは47本の弦を持ち、足元に7本のペダルがあります。そんな一見複雑なシステムとは裏腹に、指で直接弾いて音を出すという原始的な楽器です。
今回は、ヴィオラの佐々木さんとフルートの戸田さんとご一緒に、ドビュッシーのトリオソナタを演奏します。ヴィオラ、フルート、ハープの為に書かれたこの曲は、のびやかなフルートの音色と重厚なヴィオラの響きの中でハープが華やかに活躍します。私たちハーピストにとって最も大切な作品のひとつです。
今回は、この様な場をいただきましたので、私とハープの出会いについて書いてみたいと思います。
子供の頃、ピアノのレッスンは私にとって最も憂鬱なお稽古でした。お絵かきもプールも楽しいお稽古ばかりなのに、毎週うなだれながらピアノの先生のお宅に通った記憶があります。そんな音楽嫌いの私でしたが、父が知り合いからいただいてくるチケットで連れて行ってもらうコンサートはとても楽しみでした。オーケストラの演奏会からオペラ、バレエと、夢を見るようでした。
そこでいつも端の方に鎮座している優雅な形の楽器が気になり、大きさの割にあまり音の聞こえないハープを見つめるようになりました。全体の音が静かになり、ハープ奏者が楽器を構えると、どんな音がするのかとドキドキワクワクと耳を澄ませたものでした。中学生になり「何か新しいお稽古事をしてみないか」と両親から勧められた時「ハープ!」と答えたそうです。突拍子もない要求でしたが、両親は何とか楽器を準備し習わせてくれました。そこからハープとの日々が始まり、紆余曲折を経て現在の私がいます。
二十歳の時、成人式で級友と会いクラス会をした折、小学校校庭に埋めた「10年後の私(僕)」という作文の詰まった箱を取り出してみんなで読み合いました。懐かしさいっぱいで見た文面に記憶はなく、興味津々で読んだその作文には「将来はハープ奏者になりたい」と書かれていてびっくりしました。それを書いた頃は、まだ触れた事もない楽器なのに、子供は無鉄砲な事を言うものです。無鉄砲ではありますが、図らずも夢は叶ったようです。
子供の頃私がワクワクして迎えたコンサートのように、今回のコンサートを皆さんに楽しんでいただければと思います。趣味はお料理、パン作り、運転、という私です。せんくら中は仙台フィルハーモニーのコンサートにも出演しています。見かけたらいつでも気軽にお声掛け下さい。会場で皆様にお会いできますのを楽しみにしています。
神谷朝子(ハープ)