
(写真:千葉広子)
こんにちは!長谷川陽子です。
おかげさまでご縁あって今年も【せんくら】に出演させていただきます。
なんと第一回目からせんくら皆勤賞出演、本当に心から嬉しいです。
今年も皆さまにお会いできる事、今からわくわくしています!
今年は3つのコンサートに出演します。
今日はその初日に演奏するチャイコフスキーのロココ変奏曲についてお話しますね。
この曲を演奏するときは、必ずオーケストラのライブラリアンの方から「何版で演奏しますか?」と確認があります。
原典版もしくはフィッツェンハーゲン版のどちらかの二択なのですが、これについて面白いエピソードがあるので、ご紹介しましょう。
チャイコフスキーはこの曲を当時の名チェリスト、フィッツェンハーゲンのために作曲し献呈しました。
作曲する過程でフィッツェンハーゲンのアドヴァイスも取り入れながら書いたとされていますが、フィッツェンハーゲンは初演の際、なんとチャイコフスキーに無断で第8変奏をカットし、その上変奏曲の曲順を大幅に入れ換えて演奏しました。
これがまたお客様に大好評!!
なんとフィッツェンハーゲンはチャイコフスキーの自筆譜に直接同じインクで書き入れています。
チャイコフスキーはじめ関係者の立腹とは裏腹に彼の演奏で有名となったこの曲は、結局このフィッツェンハーゲン版で出版されることとなり、チャイコフスキー本人も、複雑な心境の中、何はともあれこの曲が音楽ファンの心を掴んだことを認めざるを得なかったとか。
塗り替えられた名曲の真相、何だか当時の色々な人間模様が見えてきて、ちょっと面白いです。
それにしても科学の力とはすごいもので、20世紀に入りフィッツェンハーゲンの書き込み入りのチャイコフスキーの自筆譜をモスクワ犯罪科学調査研究所の協力によりX線で筆跡鑑定の分析をし、20年以上かけて1955年7月に原典版の復元に成功しました。
新たに発見された名曲の事実に、何人かの探究心溢れるチェリストがその原典版での録音・演奏を試みています。
名曲の陰に逸話あり。
私はいつも従来のフィッツェンハーゲン版で演奏しますが、ロココ形式の愛らしさ、品格、そしてチャイコフスキーならではの濃密で大地を感じさせる優美かつ大胆なメロディは、例えそこに第3者の手が入ったとしても、決して色あせることなく唯一無二の魅力を放つ名曲であることには違いはないでしょう。
今年の【せんくら】では、仙台フィルさん、梅田俊明さんと共演させていただきます。
仙台フィルといえば実は学生時代の仲間や先輩・後輩が何人も入団しているので、一緒に弾けるのがとても楽しみです。
是非皆さまに喜んで頂けるように頑張ります!!
長谷川陽子(チェロ)