今日は、101回の演奏会の第2回目の「モーツァルトのオーケストラ名曲」についてです。
テレビのワイドショーなどでも紹介されたので、今年は彼の生誕250年記念の年であることはクラシック音楽に興味のある人だけではなく、一般の人々にも少しは知られているでしょう。また、映画「アマデウス」(1985年公開)で彼の天才ぶりをご覧になった方もいらっしゃると思います。
1.歌劇「フィガロの結婚」序曲
歌劇(オペラ)「フィガロの結婚」は、休憩を入れると4時間を超える長い作品ですが、序曲は4分ぐらいで終わってしまいます。序曲と言うのは、歌劇の一番初めにオーケストラだけで演奏されるプロローグのようなもので、これから始まる歌劇の内容を暗示する音楽です。オーケストラの演奏会でも、いきなり重くて長い音楽ですと、お客様が音楽に入りにくい場合があるので、こういった軽い序曲を1曲目に演奏することがよくあります。「序曲」「協奏曲」「交響曲」というプログラムで行なう演奏会のことをギョーカイでは「定食メニュー」と呼んでいます。レストランのフルコースをイメージしているのでしょう。
2.セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」より 第1楽章
この曲は、「モーツァルト名曲ベスト10」の中でも必ず上位に入る曲で、CMでも何度も使われています。この仙台クラシックフェスティバルが「せんくら」と短縮形を使うように、この曲もギョーカイでは、「アイネク」と言われています。ドイツ語を考えると「アイネ・ク」となり、少々おかしいのですが、語呂がよいのかそう呼ばれています。ウェブ・ログを「ブログ」と言うのも変だな〜。
3.ディヴェルティメント K.136より 第2楽章
たまにアンコールで演奏されることがありますのでご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、この演奏会で一番知られていない曲です。つまり「どこかで聴いたことがある」と言う「せんくら」のコンセプトから外れた作品ですが、モーツァルトの無名の作品もとても素晴らしい作品ばかりです。演奏会の楽しみのひとつに、一度も聴 いたことの無い素敵な曲との出会いもありますので、これを機会に「どこかで聴いた」曲になって欲しいと思いましたので・・・。
4.クラリネット協奏曲 第1楽章 (独奏:日比野裕幸)
クラリネットは、現在でもブラスバンドのメロディ楽器として大活躍ですが、モーツァルトの時代に発達して素晴らしい音色とメカニックを持つことが出来るようになった楽器です。彼はこの楽器をとても気に入り、一度書いた楽譜に後からクラリネットを書き足したそうです。独奏は、当団楽員の日比野裕幸です。
5.交響曲第40番より 第1楽章
交響曲41曲中、短調で書かれた曲は第25番と第40番の2曲しかありません。どちらも映画「アマデウス」で使われています。昔、小学校で長調は明るくて楽しい、短調は暗くて悲しいと教わりましたが、いろいろな曲を聴いていますと、一概にそうとは言えません。たとえば、「せんくら」第1回目演奏会のドヴォルザーク「新世界より」第2楽章の「家路」のメロディは長調ですが、明るくて楽しい音楽でしょうか?この第40番は「悲しみのシンフォニー」と呼ばれたりしますが、最初のメロディ「ため息」(タララン、タララン)はどちらかと言うと「癒し系」と感じるのは私だけ?
6.交響曲第41番「ジュピター」より 第4楽章
彼の最後の交響曲「ジュピター」は、ギリシャ神話の最高神「ゼウス」のことだそうです。(ローマ神話の「ユピテル」と同じ神)。ザロモンという人が、この曲の出来の素晴らしさをイメージして付けた表題です。最近ポップスでヒットしたJupiterやホルスト作曲:組曲「惑星」の木星と原意は同じですが、曲自体は全く関係ありません。この楽章の「ドーレーファーミー」というメロディは、第1番、第33番、ミサ曲などにも使われています。最初と最後の交響曲に同じメロディがあり、モーツァルトがこの曲を書き上げた3年後に亡くなるのはミステリー作家の喜びそうな題材ですね。
仙台フィルハーモニー管弦楽団演奏事業部長 野崎明宏(のざき・あきひろ)
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