留学していたときにスペインにピアノ協奏曲のソリストとしてツアーに行ったことがあった。学生の時なのでもう20年前になると思う。
私のピアノの先生は10代の優秀な生徒を集めたユースオーケストラの指揮者でもあった。ある時にスペインに行かないか?ピアノのソリストとして一緒にいこう・・・といわれて喜んでついていった。
さて、ツアーも順調に進み、ツアーの終盤にせまって、スペインの片田舎の教会に到着した。すると・・・
ピアノがない・・・・
コンサートまではあと3時間だ。取り急ぎ私がピアノコンチェルトのソリストでピアノという楽器が必要だということを伝えようとした。
私は、スペイン語は話すことはできなかったので、英語で伝えた。
「I need Piano!」
「アイ・ニード・ピアノ!」
と叫んだ。
彼らにとっても英語は外国語なので、多少話せても、綴りをみて本当の発音が何かは非常に不安だったのだろう
「パイアノ???」
と聞き返された。
「パイアノ」
私の英語の拙い知識の中に「パイアノ」という単語はない。
相手は西洋人だ。私はやはり語彙不足で会話が成立しないのか?
私は「パイアノ」という楽器にいまだかつて巡り合ったことがない。グランドピアノの代用品なのだろうか?
そのあとも不思議な問答が。
中川「ピアノ、プリーズ!」
主催者「オーケー!アイ ブリング パイアノ」
中川「ノー!ノー! ピアノ プリーズ」
主催者「オーケー!アイ ブリング パイアノ」
~エンドレスに繰り返し~
何回も相手が「パイアノ」といって会話が成立せず焦った。
心の中で繰り返した。
「パイアノ、パイアノ、パイアノ・・・」
あ!「ピアノ!」
そうだ「Piano」という綴りの「i」は「イ」ともよむが、「アイ」とも読むことができる。
つまり、あいての方は、同じく英語が得意ではないので、一生懸命スペイン語でも「Piano」は「ピアノ」と読むのにも関わらず、英語っぽく読もうとして「パイアノ!」と気を利かせて読んでくれたのだった!!!
結局パイアノは無事到着し演奏会も無事終了した。
その方も必死に発音なさったのだろう。
我々もこのような間違いを普段起こしているかもしれない。
知り合いがニューヨークに行ってタオルを買おうと思ったら、タオルは和製英語の発案なので「トワォエル プリーズ」「タゥォエル プリーズ」とかいろいろ試しても通じず、店員さんをその場に連れて行ったら
「オー タオル!」
といった・・・・
ということもありました。
中川賢一