せんくらファンの皆様、こんにちは、
私は千葉県在住のリュート奏者の佐藤亜紀子です。
今回は、リュートだけでなくバロックギターも演奏します。
バロックギターは一般のギターよりも小ぶりで、真ん中の装飾が可愛いです。
弦はリュートと同様に同じ音の2弦が対になっています。
普通のギターは6弦ですが、バロックギターは5弦です。(楽器写真参照)
リュートと特に違う点は「ラスゲアド」という右手で和音をかき鳴らす奏法です。
この奏法は演奏者によってそれぞれいろんなパターンを持っているといっていいでしょう。
それまでリュートしか弾いたことのなかった私にとって、バロックギターは未知の領域で、憧れの楽器でした。
留学を終える年にようやく楽器を手にいれて、周りの同僚の学生や国内外の講習会やレッスンなどで、ラスゲアドについていろいろ聞きまくりました。
しかし、助言をもらったらからといってすぐに素敵なかき鳴らしができるわけでもなく
こうでもない、ああでもないといろいろと一人で試しつつ弾いていました。
そんなときに、ふとスペイン人のリュート奏者 Xavier de la torre 氏に出会い、
3ヶ月だけバルセロナでギターを教えてもらえるチャンスにめぐまれました。
それは2011年のことで、スペインに行くことが決まった日にあの震災が起きました。
人生何が起こるか分からないと実感した瞬間でした。
やれることはやっておかなければ後悔すると思い立ったのを覚えています。
3ヶ月で教わったことは、本当に基礎の基礎、かき鳴らしのパターンも限られたものでした。
肝に命じなければならなかったのは、ラスゲアドというのは、精緻な繊細な指の動きから
生まれるということで、よく「ジャカジャカやってよ」なんて言われますが、このジャカジャカは計算された訓練された手指の運動とリズム感、テンポ感を察知する耳が必要なのだということがよく分かりました。
これらを消化しつつ、でも技術習得のみならず、いろんな人とアンサンブルして、経験を積んでいくことで感覚も磨かれていくということを信じ、未だにいろいろな試行錯誤を苦しみ、楽しみつつやっているのが現状です。
昨年に絵里さんと一緒の演奏会でバロックギターを使う機会があり、絵里さんもスペインものの歌曲を気に入ってくれたようなので、今回また取り上げることになりました。
リュートの繊細な音楽とバロックギターの情熱的な音楽、2つの対照的な世界をどうぞお楽しみください。

佐藤亜紀子