みなさんこんにちは。ピアニストの中川賢一です。
本日から3日間せんくらブログを担当させて頂きます。
よろしくお願い致します。
さて今日は、共演者でいつも凄いと思うコンサートマスター、その中でも私が凄いな・・・と思うお二人の話をしたいと思います。
まず最初は仙台フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスターの神谷未穂さんです。
彼女もご主人のエマニュエル・ジラールさんも非常に大切な友人であり、何よりもお二人は私が尊敬する素晴らしい音楽家です。
こう書くと本人に怒られるかもしれませんが、神谷さんはスーパー美人にも関わらず「旦那はエマニュエル、だから私は
エマニュエル夫人、ガッハッハー!」と笑い飛ばす、とんでもなく凄い方です。
さて、2011年3月11日私は東日本大震災を仙台の実家で遭遇しました。
その日は実家にいるのは危険と判断し、避難所で過ごした私は次の日に神谷夫婦に連絡。
中「まさか仙台にいないよね?」
神「いまエマ(旦那)と県庁でニュース見てる。家に食べ物もあるよ、来ない?」
というなかなかポジティヴな返事。
なんと震災二日目なのにバスが動いていた・・・
飛び乗って県庁へ。
しっかりと私の分の菓子パンもゲットしてくれた神谷夫婦とハグ。
生きててよかったね・・・と。
何と青年文化センターで仙台フィルのリハーサル中だったそうな。
シャンデリアが落ちてきたら確かに命はなかったかもしれない。
あまり時間を置かずして、県庁のあるところで大人同士が喧嘩を始めた。
どうやら携帯電話の充電に関してらしい。
A「なんでお前は一人でこんなに長く充電してるんだ!」
B「だって俺が先に始めたんだからかまわないだろう!」
A「なんで一人ばっかりそんな長いんだ?」
B「フル充電したいんだから1時間半かかるんだ!文句言うな!」
A「みんな待っているぞ! 一人だけ長くするな!」
(以下同様な会話エンドレス)
この会話に、火中の栗を拾いに行くように何故か神谷さんが
「あっ、すみません。もしよろしければ私が時間を書いて皆さんで充電するようにしましょうかぁ??」
唐突に猛進。
しかしながら、争っていた二人の男どもは、おとなしく服従。
凄い。凄い!凄い!!
これが、コンサートマスターという者か!!!
有無を言わせない。
結局彼女を中心として数人お手伝いも含め、11時から18時半まで県庁でタコ足に様々な充電器を付け、にわか充電屋さんに。
(そんなのあるのかわかりませんが)ゴザ代わりの段ボール紙に時間を細かく書いては
「Aさん充電終了です!いらっしゃいますか??」
「B社の充電器使用者が帰られるので、他の方B社の充電器お持ちの方しばらく貸していただける方いらっしゃいませんか?」
などどいう事を叫んでいました。
到底彼女のことを、かの仙台フィルのコンサートマスターと思った人はいないだろうと思います。
実際「県庁の方ですか?」と声かけられたりしたので、県庁職員と間違えられたのかもしれません。
あまりの傑作美談なのでアップさせて頂きました。
神谷さんと旦那様のエマとは、地震直後も一緒に他の演奏家の仲間たちと助け合い、最初の慰問演奏もしました。
これからも宜しく!
この時にやはり自分で思ったことは、非常事態でも人のために何かすることをする温かい心を持ちたい、また、逆にコンサートマスターというのは有無を言わせず人がついてくるようなカリスマの様な凄い力を持っている人がなるのだな・・・
と改めて納得しました。
さて、宣伝ですが5月31日19時より第一回仙台国際音楽コンクールヴァイオリン部門第一位であり、フランス国立放送
フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスターのスヴェトリン・ルセフさんを交えての室内楽のコンサートがイズミティ21小ホールであります。
http://www.simc.jp/news/activity/concert/130531/index.html
神谷未穂さん、旦那のエマニュエル・ジラールさんも出演いたします。もしよろしければ皆さんお出でくださいませ!
次はそのルセフさんの話。
もう10年以上前になりますが、スヴェトリンさんが第一位になったコンクールの次の年、彼が「仙台の方と一緒に室内楽のコンサートをしたい」という言葉がきっかけとなり、それからほぼ毎年彼と何か共演させて頂いております。
彼と長野のとあるところに演奏に行った時の事。
その日は長野のある駅について(確か下諏訪だったような気がする)帰りの時間を確認するために、彼のマネジャーと一緒に切符を出してざっと確認した。
仮に次の日の11時発だと仮定しよう(記憶が定かではないので)。
それをなんとなく横目で見ていたスヴェトリン、突然
「切符見せて」
というではないか。
彼はもちろん日本語を読むことはできない。
なんとなく不思議な気持ちになっている我々がしぶしぶ切符を彼に見せて、また仕舞おうとすると再度
「切符見せて」
という。
?????
あまりの不思議さに再度切符を確認すると、その切符は次の日ではなくその次の日、つまり二日後の同じ時間11時の切符であった!!!
つまり彼は一瞬にして日本語はわからなくとも、算用数字の連続をちらっと見ただけで、一日間違った電車のチケットだという事に気づいて、それも我々を傷つけないように、我々で間違いを確認させるということをしてくれていたのだ!
我々は、すぐにチケットを駅で変更し(もしホテルや演奏会場に行っていたら駅まで戻る手間、時間がかかる)次の日に、日付違いのチケットを買ってしまったという事に対して恥もかかせず、マネジャーのメンツも保てた、めでたしめでたし・・・
というわけである。
このような超人的なものすごい能力を持っている方だからこそ、あれだけの人数を纏めることが出来るコンサートマスターになれるのですね!
さて、取り留めのないブログになりましたが、これからも仙台と素晴らしい仲間を愛し、一人でも幸せに出来るような音楽をしていきたいと思います。
せんくらのコンサートは皆さんがほっこり出来るようなほんわかした楽しい音楽会にしたいと思います・・・
では、皆さん演奏会でお待ちしております!
中川賢一(ピアノ)