
こんにちは、エレクトーンの神田将です。
韓国でこの原稿を書いています。今回訪韓したのは、オペラ「ヘンゼルとグレーテル」のオーケストラパートを演奏するためです。ふつうオペラは遅くても半年前に依頼がありますが、今回は本番まで一カ月を切っていました。オーケストラやピアノなら、一週間前でも対応できるでしょう。でも、エレクトーンには厳しいスケジュールです。
まず、フルスコアを解析し、エレクトーンで最大の効果があげられるよう、編曲をしなければなりません。そして数千パターンに及ぶエレクトーン用の音色の組み合わせデータを作成します。スコアを開いてから弾ける準備が整うまで3週間。立ったまま食事をし、まとまった睡眠を取らず、限界がきたら15分ずつの仮眠をとるというパターンで、やっとの思いで仕上げましたが、弾く練習をする時間はほとんど残っていませんでした。
万全とはいえない状況で出発するのは、とても気が重いものです。空港から会場へ直行し、すぐにゲネプロ。指揮者、歌手、演出家、その他全員が初対面です。手元が暗過ぎて不都合があると言いたいけれど、韓国語はカムサハムニダしか知らないので、意思疎通ができません。でも、指揮者が棒を上げたからには、覚悟を決めて弾き始めなければ。前奏曲が終わり、歌手が入って「あ、韓国語で歌うんだ」と初めて知りました。夢中で必死で全編を弾き、指揮者のOKサイン。そこでやっとこの世に戻った気分に。私が目をしかめて楽譜を追っている様子を見て、ああ暗いんだと察してくれたのでしょう。すぐにライトが用意されました。ゲネプロの後は、楽屋で韓国の不思議なローカルフードで小休憩。コトバが通じなくても、共演者とココロが通じ合っているのが感じられます。音楽が、今回はフンパーディンクのヘンゼルとグレーテルが橋渡しをしてくれました。音楽って本当に魔法です。
エレクトーンは基本個人プレーで完結できる楽器ですが、私はアンサンブルが大好き!
今年のせんくらでは津軽三味線界の若獅子、浅野祥さんとの共演があります。三味線とエレクトーンの化学反応!ぜひご期待下さい。
神田将