声ほど不思議なものはない。
人間の身体を楽器として、音を作り音楽を表現する。しかし、声帯では殆ど振動だけで音は鳴っていない。
声帯自身では、つやも響きもないブオーブオーといったひどい声なのだそうです。
響きのあるよい声は、あくまでも共鳴のさせ方、工夫次第にかかっているといえます。
私も歌う度にこのことを考えては声の不思議を思わされます。
毎週一度の子供達の練習でも、共鳴を求めて、初めにストレッチ体操を行い、腰や横隔膜筋に注意を向け、乍ら身体をほぐし、手鏡を使って注意深く自分の声のひびきを探します。買い替えることのできない、世界にただ一つしかない素晴らしい楽器を与えて下さった両親に感謝の気持ちをこめて・・・。誰もが素晴らしい響きを作る事が出来ると信じて・・・。
生まれつき良い声、悪い声というのはなく、あるのは声の質の違い(ソプラノやアルト等)だけと言い聞かせ乍ら、常に正しい姿勢を求め、健康で美しい姿勢からのみ美しい音が生まれる事を信じて・・・。
こうした事は、私自身根気強く、自分の声の響きを求め続ける以外になく、子供達も全く同様です。下あごの力をゼロにして頭の上の空気が美しく響いていく為にも、常に健康でバランスよく支えられた、素晴らしい楽器作りの為の努力を続ける事と、自分に言い聞かせ乍ら、これからも歩み続けるつもりです。私自身の、そして子供達の美しい声の響きをどこまでも追い求めて・・・。
NHK仙台少年少女合唱隊
発声指導 姉歯けい子
「だったん人の踊り」についてつらつら書いたのに引き続き、変化球で攻めた「私なりの演奏曲目について」です。
ここまでは「だったん人の踊り」について書かせていただきましたが、次はその後に演奏する、今回のメインの曲、フランス人作曲家ビゼーが作りました歌劇「カルメン」組曲第1番、第2番より抜粋、についてです。
「カルメン」組曲も「だったん人の踊り」同様、オペラの中の音楽を演奏するわけですが、「カルメン」は1曲だけでなくオペラから8曲を選んでお送りいたします。いわゆる「カルメン」の中の“美味しいとこ取り”ってやつです。
しかし、“この美味しいとこ取り”というアイディアですが、何も私が考えた訳ではありません。昔から作曲家や編曲家は、自分の作ったオペラやバレエが大ヒットしたり、作品が気に入ったりすると、より多くの人に聴いてもらうために、「組曲」という歌手が入らなくてもよい、オーケストラだけの編成でのダイジェスト版を作ったのです。
仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者 松元宏康(まつもと・ひろやす)
http://www.city.sendai.jp/shimin/bu-shinkou/jr-orche/index.html
よく「クラシックの人は毎回同じ曲を弾いてばっかりで飽きないの?」と私の仙台二中時代の友人達から聞かれます。そんな時はいつもこう答えることにしています。
J−ポップや演歌等の歌謡曲も映画も毎年何十、何百とリリースされるけど、10年後にその中の何%が人々に覚えられているか考えてみてくれと。今皆が知っているクラシックの曲は50年も200年も前からそれぞれの時代の人々に愛され、聴かれ続けてきた曲ばかり。当時その10倍以上作曲され、聞かれていただろう駄作たちはとっくに厭きられ、忘れ去られているのだから、今生き残っている作品が、いかに時代や国、流行と関係なく普遍的な魅力と内容を持った曲たちか解るでしょう?と。
同じように、「ヴァイオリンやヴィオラ、チェロといった弦楽器は古くないとダメ」と言われていますが、面白いものでこれも同様の理由で、有名なストラディヴァリウスやグワァルネリウス等は(どちらも軽く億を超えます、私が見た1番高いストラドのチェロはなんと15億円!!)、新品できたてのホヤホヤの頃から音も美しさも超一流だったので、大切にされ300年間も使われている訳で、当時の三流の楽器は現在ほとんど残っていません。雑に取り扱われ、壊れても修理される事なく、使い捨てられたのでしょう。
そう考えれば曲の場合も楽器の場合も、その素晴らしい作品を何度弾いても飽きるなんて事は全く無く、曲の場合はかえって毎回新しい発見を曲の中にできますし、様々な可能性を作品自体が内包しているので、「作品の忠実なる再現者」であるべき我々演奏家は、自分の表現力の可能性の拡大、深化を集中力の維持のため表現を変えなければいけません。それによって毎回作品に新たな生命力が生まれて、演奏する事がまた楽しくなるわけです。1度完成した、もしくは会得した表現法に安住した途端、その行為はあっという間に陳腐なものになるというのは演奏にかぎらず、すべての表現芸術に共通する事だと思います。
20世紀最大のチェリスト、パブロ・カザルスの偉大さを語る時、彼が少年期から毎朝、「自分のために」弾いていたバッハの無伴奏チェロ組曲を、90歳になっても今覚えたての曲のように新鮮に演奏していた話が取り上げられますが、私もチェリストの端くれとして、その話をいつも忘れないようにしています。
ではまた明日!
丸山泰雄(チェロ)
事務局を担当して16年目を迎えました。今日まで先生方をはじめ、沢山の子供達やご父兄と出会うことが出来、沢山の時間を共に歩んでまいりました。
私が事務局を担当した当初、隊員は70〜80名在籍しておりましたが、少子化の影響か、現在では50名前後となりました。しかし、今年の春にも新入隊員を迎えることができ、12月の定期演奏会へ向けて練習に励んでいるところです。
又、毎年夏には3泊4日の強化合宿があり、小学校1年生〜高校生までの隊員が共同生活を送ります。勿論、練習がメインの合宿ですが、隊員1人1人が隊員全員と親しくなれるチャンスとなり、結果、強い団結力が生まれます。そしてその団結力が定期演奏会へ向けて更に強くなり、美しいハーモニーとなって、ステージで輝く様子を見ると、毎年胸が一杯になります。
定期演奏会の他、様々なコンサートやテレビ出演、オペラ出演などの貴重な経験を通して、その度に隊員が成長し、自信に満ちた生き生きとした表情を見せてくれます。
在籍している隊員の年齢は小学1年〜高校生までですが、練習の中で思いやりの心、協力し合う事を自然と身に付けていくことができ、合唱の素晴らしさを、耳だけでなく、肌で感じています。
私として出来る事は、隊員の体や心の健康のフォローを、微力ながら心掛けていく事だと思っております。
これからも隊のため、応援して下さる皆様のためにも、陰ながら事務局としての仕事に努力したいと思います。
NHK仙台少年少女合唱隊事務局 庄子幸枝
現在、売られているペットボトルの某そば茶にも堂々と「だったんそば茶」って書いてありました。もし、使っちゃいけないんならこのお茶も発売禁止かなぁなんて…安易な理由ですみません!!
でもね、これだけだとアリバイ不足と思い、念のために近くのスーパーの麺コーナーにもリサーチに行ったんですよ。そしたら「だったんそば」と明記されているそばがたくさん取り扱われていました。ですから、この言葉を使っても良くなったんでしょう。つまり、今風に言うと「あり」なんでしょう。(なんていいながら、このブログがボツにならないことを祈ります)
ちなみにこの「だったん」という言葉が避けられていた時期は「だったん」を「ポロヴェッツ」と言い換えこの曲を「ポロヴェッツ人の踊り」と呼んでいました。
なぜなら、「だったん地方」と呼ばれていた地域を現地では「ポロヴェッツ地方」と呼ぶからです。
またまた余談ですが、これは私の知人のロシア留学に行っていた友人から聴いた話です。ポロヴェッツ地方に生まれた方は美男美女が多いらしいのです…男性は彫りがハッキリしていて男らしい顔立ちで、女性も非常に美しい人が多いということです。
そう考えれば今回演奏する「だったん人の踊り」もこの話のとおり、男性の力強い踊りと女性の美しい踊りの音楽が登場します。
仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者 松元宏康(まつもと・ひろやす)
http://www.city.sendai.jp/shimin/bu-shinkou/jr-orche/index.html
現在、私はフリーのチェリストとして活動しています。内容はというと、ソロ、室内楽がメインで、その他に年間それぞれ5回定期公演を持つ、ソリスト集団とも言える精鋭揃いの室内オーケストラ「紀尾井シンフォニエッタ東京」と「トウキョウモーツァルトプレイヤーズ」のメンバーとしての活動や、国内主要オーケストラの客演首席等が中心になります。
前回書いたように、チェロは非常に多才な楽器ですので、どの様な編成でもやりがいのある声部が与えられますし、フリーでいれば、ソロばっかりとかオーケストラばっかりというように1つの活動の場に縛られて煮詰まったり、飽きる事がなく(笑)、自分には向いていると思います。
他にも自分でプロデュースするコンサートが年数回あります。演奏家の仕事のほとんどはクライアントからの依頼によるもので、なかなか自分が弾きたい曲を一緒に弾きたいプレイヤーと演奏できるわけではありません。じゃあそういう演奏会は自分で創ってしまえと始めたのですが、自分でプロデュースしてはじめて感じる裏方の努力やお客様のニーズもあって、とても良い勉強になっています。
また、クラシックだけが好きという訳でもないので商業音楽の録音もしていますが(テレビや映画、CM、舞台等でチェロの音を聞いたら、その半分ぐらいは私の音だと思って下さいね。音にはサインを残せないのが残念ですが)、いわゆるスタジオと呼ばれるこちらの業界も奥が深く、キビシイ世界で、1回楽譜を見たら2回目はもう本番レコーディング、場合によっては初見で録音、しかもそれを3時間で40曲!なんてことが普通で、それができない人は二度と呼ばれません。
そこで活躍しているプレイヤーの顔つきは、クラシックの「夢見る音楽家のそれ」よりどこか凄みがあり、賞金稼ぎ、黒澤映画の椿三十郎みたいな人ばっかりです(半分ウソ)。また、マイクで音を拾ってミキシングすることを念頭に置いた弾き方をしないと音がうまく乗らず、ホールで800人や2000人の聴衆に音を伝えるクラシックのコンサートとは弓のスピード、圧力や左手のヴィブラートの種類も完全に変えなければなりません。
このように、同じチェロの演奏でも、100回も200回も練習して聴衆に披露するクラシック、たった1回の譜読みで本番のスタジオと、その両方をやっている事で、私の場合はバランスがとれていると思っています。
ではまた明日。
丸山泰雄(チェロ)
今の時代、どの合唱クラブでも「合唱団」などという名称にしている。が、我が愛する仙台少年少女合唱隊は「合唱隊」なのである。この「隊」であるところに、この合唱隊の歴史を垣間見ることが出来る。創設者は、郷土の有名な作曲家、福井文彦先生である。まだ軍事色濃い時代の名残なのだろうか。
今、合唱隊などという合唱団は全国でも珍しいそうだ。そのはずである。我が仙台少年少女合唱隊は来年、創立50年を迎える。「隊」であることの歴史には、何と50年もの長さと重さがかかっていたのである。継続は力ということであろう。
この合唱隊の名を消さぬよう、昨年からNHK仙台放送局よりご支援を頂いている。NHKという巨大なメディアが、そのようにしてこの合唱隊を育ててくれるのか、期待しているところである。
私は、この合唱隊の後援会長を23年もしている。23年もの間、公演会長をしてきての思いは、合唱団同士のネットワークの弱さ、無さを感じている。この少子時代である。一人勝ちなどありえない。
「楽都・仙台」と言うのであれば、子ども合唱団同士、もっと連携を持って、楽都・仙台らしい「子ども合唱文化」の意欲的な発信を望みたいものだ。
その意味でも、今回の仙台クラシックフェスティバルは、まさに「試される事務局の力」となるのではないだろうか。楽都・仙台にふさわしい独創性を持ったフェスティバルにして欲しいと、エールを送っている。
NHK仙台少年少女合唱隊後援会長 渡辺義昭
このブログを読んでいらっしゃる方の中でも、私たち仙台ジュニアオーケストラの演奏を楽しみにしていらっしゃる方も多いと思います。
そこで、10月8日の演奏をより楽しんでいただくために、この場をお借りし私なりに曲にまつわる話をしたいと思います。
ただ単に曲の解説をするようでしたら、CDに付いてくる曲目解説かオペラ解説本を読んだほうが面白いでしょうから、あまり解説書に書いてないようなことを…
まず、今回の演奏会の冒頭を飾るのは、ロシアの作曲家ボロディンが作りました、歌劇「イーゴリ公」から“だったん人の踊り”という曲です。
ちなみにこのボロディンという方、作曲家という顔以外にも、もう1つの顔がありまして、実は科学者で大学教授でもあったんです。科学者でありながら、歴史に名を刻む作曲家でもあったなんてすごいですね〜。
さて、曲名の「だったん」という言葉、一時期は使うことを避けられていました。でも、最近また目にするようになったところを見ると、また使ってもよくなったんでしょう。
そう思ってここで書かせていただいているのも訳がありまして…
仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者 松元宏康(まつもと・ひろやす)
http://www.city.sendai.jp/shimin/bu-shinkou/jr-orche/index.html
皆さんこんにちは、今日は昨日の続きとなりますが、チェロの面白さについてもう少し書きたいと思います。
チェロの魅力は音色の豊富な点にあると前回書きましたが、もう1つの特性はその音域の広さにあります。ピアノ、ハープを除けば、すべての楽器の中で最も音域が広く、しかもそのどこの音域でも良く響く音の出せるチェロは「楽器の王」とも呼ばれています。
今回の“せんくら”で私が弾くソロ曲もヴィニャフスキのスケルツォ・タランテラやクライスラーの中国の太鼓等、ヴァイオリン曲ばっかりですし、4人でのアンサンブルをチェロというたった1種類の楽器でできるのも、この楽器の持つ音域の広さが大きな強みになっているのですね。
従ってソロと室内楽、オーケストラでは、チェリストが弾くポジションや要求される音の性質は全く違う訳で、優れたチェリストはその時々に応じてソプラノ、アルト、テナー、バスの4役を使いこなしているという事になります。12人のチェロ・アンサンブルともなれば、1曲ごとに打楽器の役、金管、木管の係、1stVn(ヴァイオリン)の担当、リズムを刻む2ndVn、和音に表情をつけるVa(ヴィオラ)、全体を支えるティンパニーやCb(コントラバス)のパートもチェロだけを使って弾きわけなければいけません。
そういった多様性を持つ楽器であるチェロだからこそ、私も様々な形態で演奏活動を展開できているのですが、その話は次回にしましょう。
丸山泰雄(チェロ)
NHK仙台少年少女合唱隊は、毎週土曜日NHKのスタジオで練習をしています。
練習は、姉歯先生による体操や発声指導で、心と体の準備をすることから始まります。
美しい声、美しいハーモニーを目指し、熱心なご指導が続きます。そして、大泉先生のユーモアにあふれたお話を聞きながら、時には厳しくも優しさに満ちあふれた練習が行われます。現在、合唱曲だけでなく、原語でのオペラや定期演奏会に向けてのミュージカルなど、様々なジャンルに挑戦しています。
合唱隊では、夏休みに毎年3泊4日の合宿も行い、子供たちの楽しみな行事となっています。約7時間の練習でたくさんの歌を歌い、生活を共にすることで、お互い助け合ったり、思いやりの心が育まれ、合唱隊の気持ちが一つになります。
この合唱隊の魅力は、小学生から高校生まで年齢の異なるお友達ができ、一つの音楽を目指し、練習できることだと思います。音楽をする喜びを分かち合い、さらに友情も深まります。
「せんくら」に向けては、『動物の謝肉祭』のゆったりとしたメロディーをなめらかに美しく歌えるように、『くるみ割り人形』では、曲の雰囲気を感じながら早口言葉など様々な練習に励み、気持ちを込めて練習しています。
今回は、これらの曲を妹との連弾で伴奏させていただきます。
心を合わせて子供たちの合唱のサポートができればと思っております。
NHK仙台少年少女合唱隊 伴奏者 尾澤香織