人間、あきらめずに地道に努力していると、どんな幸いがやってくるか分からぬものです。
私がそれまでずっとやっていた能楽から、かねて学びたかった声楽に転向したのは、もう十五年も以前のことです。それから何度も挫けそうになりながら、でも継続して努力しているあいだに、声楽的発声というものが少しずつわかってきて、だんだんと人前で歌うことが楽しくなってきました。
今はバリトンの田代和久さんに師事して学んでいますが、以前はテノールの勝又晃さんが私の先生でした。
やがて、勝又さんはじめ、何人かの歌い手たちと重唱グループ「ザ・ゴールデン・スランバーズ」を結成して全国各地で演奏会をするようになり、また山下牧子さんなど別のメンバーと共に、英語歌曲のみに特化した「重唱林組」をも結成して、津田ホールをはじめ各地で演奏をしてきました。
最近は、私と非常に声質のマッチングの良い勝又さんと男声二重唱のユニットを組んで活動をしています。このユニットにいつもピアニストとして参加してくれているのが、五味こずえさんで、紅一点というか、花一輪というか、男二人の殺風景なところに彩りを添えて、見事な演奏で音楽的に支えてくれています。
こういう地道な音楽活動もすでに七八年になる今年、「せんくら」の平井プロデューサーから、是非出演してくれないかと有り難い嬉しいお誘いを受けました。それで、今回もまた、勝又・林組(このユニットにはまだ名前がついていません)で、参加することにしたのでした。
また、私たちの音楽活動を、作曲・編曲という側面でいつも支えてくれているのが、日本歌曲作曲界の若き俊英、上田真樹君です。今回も上田君編曲の作品を中心にプログラムを組みました。
セッション77の方は、私と勝又さんの、それぞれが独唱曲を歌う形で構成します。そして78の方は、二人で歌う男声二重唱のコンサートとしました。
それぞれ、どんな曲を歌うのか、それは明日のこのブログに書く事にしましょう。
林望(トーク&バリトン)