芸大在学中に当時ドイツから、いらっしゃった指揮科の客員教授の先生と親しくなった。在学中に東京都交響楽団へ入団し、学生と仕事の2足のワラジを履いていて、大学の授業(オケ)に30分だけ出て、すぐ仕事としてのオケへ行くと言うことがしばしばあった。その先生との「絆」のおかげで30分で「出席」を頂いていた。
しかし、それだけの為に懇意にして頂いたのではなく、その先生のお人柄も素晴らしかったし、奥様も、とても優しく、おおらかな方で、ドイツ語を教えて頂いていた。
ドイツでの留学を終えて日本に帰り、恥ずかしながら結婚する仕儀に至り、親しくして頂いたその先生に、「お仲人」をお願いした。
「今まで披露宴には何回か出席したが、式には臨んだことがないのでとてもインテレサント(興味がある)だ。」と引き受けてくださった。
その当日、神前に畏まり神主の祝詞が始まった。そのドイツ人の先生は、エルビン・ボルン、奥様はエリザベス・ボルンと言うお名前だった。
残念ながら、その神主さんの頭には「ボルン」という語彙はなかった。
「高天が原」に始まる祝詞は読み進まれ、新郎、新婦の名前に続き仲人の名前が静まりかえった式場に響き渡った。「エルビン・ボイル(!)、エリザベス・ボイル(!)」
居並ぶ両家の親戚は、今日初めて会った外国人の名前に気付くはずもない。
ただ、新郎、新婦の頭の中にのみ、「ボイル」の言葉と同時に「ゆで卵」が浮かび上がってしまった。本来そうあってはならない場所であっただけに、必至の思いで笑いをこらえていた。
言うまでもなく、ボルン先生ご夫妻は神妙に畏まったままだった。
何等、音楽と関係のない話の数々で大変失礼致しました。そんな村上が恥ずかしながらコントラバスと言う朴訥な楽器で皆さんにお話させて頂きたいと思います。
10月6日、太白区文化センター展示ホールでお待ちしています。