宮沢賢治と「オツベルと象」

2018.09.09| 吉川和夫

宮沢賢治の「オツベルと象」。まず、とにかく楽しく面白い作品です!賢治さんがこの作品に注いだテンポ感は、とてもすばらしい。とりわけ「第五日曜」で象たちが押し寄せるシーン。賢治さんはその場面を細かくスペクタクルに書き込んでいて凄い迫力!作曲者としては、作品全体にみなぎる文章の勢いを音楽が削ぐことにならないよう、苦心しました。

 

ところで、読み進めていくと、意味深長な細部と出会うことになります。赤衣の童子とは何者?象たちは沙羅樹の下で碁を打っている?象が碁を?そもそもなぜ白象?ペンキを塗ったのではないんですよね?古い仏教説話かと思えば、白象が祈るのは「サンタマリア」。考えるといろいろわからなくなるのは、賢治さんの作品ではいつものことなのですが、わからないからかえって面白い。さすがです。

 

さて、そんな楽しい謎に囲まれながら、作曲をするために「オツベルと象」と向いあっていたわけですが、このお話の意味は、日に日に切迫してくるように思えてならないのです。弱いものいじめをする者には必ず罰があたるぞという教訓?現実には起こりえない荒唐無稽な寓話?ブラック企業に搾取される悲哀?それはそうなのでしょうが、それだけとは思えません。私たち自身、「ここにいていいよ」と言われて気をよくして、そんなものいらないなぁと思いながらも「持ってみろ、なかなかいいぞ」と言われ、しぶしぶ持ってみると「なかなかいいね」と思ったりしていないだろうか。「すまないが」の言いなりになっているうちに、気がつくと自由も平和も奪われていないでしょうか。突き詰めれば、私たちが純朴で愚鈍な象でいたために、フクシマの悲劇は起こったのではないか…。賢治さんは、象に見立てて人間の弱い姿を描いたのではないかとさえ思えるのです。

 

合唱劇「オツベルと象」は、合唱団じゃがいも委嘱作品として2015年に作曲。山形と東京で初演されました。今回は、少し編集し直して「せんくら・うた劇場」版での演奏です。

 

次回は、「せんくら・うた劇場」第5回の演奏について、お話しましょう。

 


合唱団じゃがいもによる合唱劇「オツベルと象」舞台写真

 

吉川和夫(せんくら・うた劇場)

糸巻き(ペグ)

2018.09.09| 原田哲男

写真は糸巻き(ペグ)。

 

棒をぶっきらぼうに突っ込んであるだけのような感じです。 

 

普通はこのようにはみ出さず、きれいに切り揃えられているかと思いますが、楽器を購入した時のこの状態を15 年ほったらかしです。あたかも楽器を大切にしていないかのような印象を持たれてしまうかもしれませんが…

 

ある時楽器職人さんにペグの修理を相談したところ、「ペグそのものの材質が良いし、きちっと止まるのであれば手を入れることもない、却って楽器の音が変わりますよ」と言われ、その言葉を真に受けて今に至っています。 

 

ペグに限らず、テールピースやエンドピンなど付け替えが容易に出来るものでも、交換すると違う楽器かのように音が変わると言います。いろいろと試してみたい気もしますが、一方で15年間慣れてきた音に安心感や執着心もあります。今あるままの状態を変えることなく時間をかけて音を練っていくのもその楽器を演奏する本人だけが味わえる愉しみかもしれません。 

 

原田哲男(チェロ)

「せんくら・うた劇場」って?

2018.09.08| 吉川和夫

こんにちは!作曲の吉川和夫です。

 

「せんくら・うた劇場」は、おかげさまで毎年大変ご好評をいただいています。そして、今年はなんと!5回目を迎えることになりました!本当にありがたいことです。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

「せんくら・うた劇場」って何?という方もたくさんいらっしゃると思いますので、そのあたりのお話から、私の担当ブログを始めましょう。

 

音楽のジャンルの中には、詩や文学と結びついて、音楽とともにことばの美しさや情感を表現するものもあります。たとえば歌曲や合唱曲。それから、もっと大がかりになって、文学だけでなく美術や演劇とも結びついていくのがオペラですね。

 

ひとりの歌い手がヒーローやヒロインを歌い演じ、合唱が群衆となってドラマを盛り立てるオペラと違い、「せんくら・うた劇場」では、ひとりひとりの歌い手が登場人物の役を担うとともに、古代ギリシャ劇のコロスのように、劇の背景や心情を歌い語り、物語を牽引します。

 

ちょっと面倒な表現になりましたので、別の言い方をしてみましょう。小さなお子さんに物語の「読み聞かせ」ということをしますよね。「せんくら・うた劇場」は、お子さんだけでなく大人にも向けられた音楽と物語を「歌い聞かせる作品」と考えていただけるとわかりやすいかなと思います。

 

このような音楽スタイルを、合唱劇、あるいは合唱オペラなどと呼んでいます。日本では、指揮者の鈴木義孝さん率いる山形の合唱団じゃがいもや、栗山文昭さん率いる栗友会の合唱団が、合唱劇に積極的に取り組んでいます。林光さん、寺嶋陸也さん、萩京子さんといった作曲家が、合唱劇や合唱オペラを作曲してきました。長年にわたって、多くの宮澤賢治の作品を合唱劇として上演してきた合唱団じゃがいもは、昨年第27回イーハトーブ賞を受賞しました。舞台装置や照明、衣装といった要素を簡略化するのも合唱劇、合唱オペラの特徴です。演技も最小限に止め、あくまでも音楽とことばの力を中心に、物語をお客さまに伝えていきます。そのため、演奏者と聴衆の一体感は、かえって色濃く現れると思います。「歌い聞かせる作品」として、「せんくら・うた劇場」を楽しんで頂けたら幸いです。

 

次回は、今年とりあげる「オツベルと象」という作品について、お話しましょう。

 


昨年度せんくら・うた劇場のリハーサル風景

 

吉川和夫(せんくら・うた劇場)

今年は私のチェロについて

2018.09.08| 原田哲男

せんくらブログをご覧の皆さまこんにちは。 チェロの原田哲男です。今日から3日間担当させていただきます。

 

今年のせんくらでは、フェスティバルソロイスツ(25)ヴァイオリンの西江辰郎さんとのデュオ(67)ピアノの鷲宮美幸さんとのデュオ(69)の3公演に出演いたします。

なんと!ソロイスツと西江さんとのデュオのチケットは早々と完売だそうです。

 

唯一、鷲宮さんとのデュオの公演が若干?お席に余裕があるようですので、9月30日(日)、その時間帯(11:30~12:15)の他のコンサートが売り切れで聴きに行くコンサートがない(もうないのですが)という方々は、よろしければチェロとピアノの音楽を聴きにエル・パーク仙台ギャラリーホールへお出掛けください。

 

さて、このせんくらブログ、毎年何を書こうかいろいろ悩んで、その末せんくらとは関係もない福岡の街のことなど書いてしまったりしていましたが、今年は、せんくらで弾く私の楽器についてお話ししたいと思います。

 

1805年にナポリで作られたこの楽器を私は2003年に手に入れました。以前はフランスにあったそうで、日本で使い始めたのは私が初めてです。

 

 

写真の通り、裏板の左側がぱっくりと割れています。30センチくらいでしょうか 。今でこそハードケースに入れて安全に楽器を運ぶよう気を付けていますが、200年もの間にはおそらく布でくるんだだけで他の荷物と同じような扱いを受けたり、人が誤って踏んでしまったりで、ある時バキバキに割れてしまったのでしょう。表板にも何本か縦に割れた跡があります。ただその後丁寧に修復されたおかげで、このような大きな傷を負った楽器とは全く分からないような明るくて温かみのある音を出してくれます。

 

せんくらの三つの公演でこの楽器の音を皆様にお届け出来るのを嬉しく思います。

 

原田哲男(チェロ)

OBSESSION

2018.09.07| 三舩優子

このブログを読んでいただいている深夜の頃には、実はジャカルタ・インドネシアに向かう機中です。

 

4年前から活動を始めましたドラムの堀越彰さんとのOBSESSION。

今年は初の海外公演が実現しました。

この3月にジャカルタのモーション・ブルーというブルーノート系列のまだ出来たばかりの豪華ライブハウスに呼んでいただき、2daysをさせて頂きました。

初インドネシアでしたが、とても興味深く、一週間近くの滞在を満喫出来ました。

9割方がイスラム教なので、1日5回街のあちこちからコーランが聴こえ、信仰のもとに成り立っている国なのだなと感じました。

 

 

そして今回は、ここ毎年行なわれているジャカルタ・日本祭りが今年は国交60周年記念ということで、野外フェスティバルで演奏する日本からのミュージシャンの中に、なんとOBSESSIONも呼んでいただいたのです!

大変光栄なことなのですが、野外、しかもこの写真の競技場周辺のどこかでやる予定なので、

 

ピアノ・・・聴こえるのか!?

湿度と暑さで、楽器は大丈夫か!?

ドラムは届くのか!?

 

という一抹の不安はあります(笑)。

ちなみに、他に行くアーティストの中には、Kiroro、スキマスイッチ、AKB48 など大物ぞろい。

 

OBSESSION、大丈夫か!?

 

 

3日間、読んでいただき、ありがとうございました。

See you soon!!!

 

三舩優子(ピアノ)

霧島国際音楽祭

2018.09.06| 三舩優子

今年の7月から8月にかけて、霧島国際音楽祭のなかで島を巡る「ふれあいコンサート」なるものをやって来ました。

鹿児島は大河の「西郷どん」で現在とても盛り上がっていますが、まさにそのロケが行なわれた沖永良部島と奄美大島にも行って来ました。

 

海はそれほど好きな方でもなかったですし、かと言って、山登りをすることもなく…

どちらかというとアウトドア系は苦手で、都会が落ち着くと思っていた私ですが、この度霧島をはじめ、「島」の心地良さにとても心を奪われ…

 

穏やかに…

ゆったりと…

何もせずに、いつまでもそこに座って地元の人たちとおしゃべりして…

 

という時間が大好きになってしまいました。

疲れているのでしょうか(笑)。

人間の、生きる、生活をする、という本来あるべき自然の姿が、そこにある気がしました。

 

 

写真は沖永良部の田皆岬の断崖絶壁から見た景色ですが、海は本当に美しく、ウミガメがぷかぷかと泳いでいる姿も見ることが出来ました。

ウミガメの産卵は、一生に一回は見たいなぁ。

 

こういう時に、いろんな土地に行って人々と触れ合い、演奏させて頂ける幸せをしみじみ感じます。

 

アンコールにはもちろん、西郷どんのテーマを弾きました♪

 

三舩優子(ピアノ)

フィリップ・エマールさんとの再共演!

2018.09.05| 三舩優子

こんにちは!ピアノの三舩優子です。

今年もせんくらに参加させて頂けとても嬉しいです!

 

今回は2年ぶりのアンコールで再びフィリップ・エマールさんとの共演です。

フィリップさんは、シルク・ド・ソレイユのクラウンを10年間勤められ、最近では映画「オケ老人」に指揮者役で出られたり、舞台をやられたりといまや引っ張りだこのパフォーマーでいらっしゃいます。

 

前回はサティをテーマにプログラムを組みましたが、今回の一つは1920年前後の“パリのキャバレー”をテーマに、チャップリンの「モダン・タイムズ」や今年没後100年のドビュッシーなど、華やかだったパリの社交場のようにしたいと思います。

 

もう一つの公演では、同じ時代のアメリカということで、なんとラプソディ・イン・ブルー全曲をマイム付きで!

ラプソディはフィリップさんもずっとやりたいと思っていらしたとても思い入れの強い曲で、音楽に添って、すべてご自分で台本を作られて、演じられます。

ふたりでやる時は、私もずっとフィリップさんの動きを見ながら、お互いの音と動きがピッタリ重なるようにします。

無声映画に、ピアノでアテレコをしている状態です。

 

それがピタッと行く時の快感、感動は本当に大きいのです!

 

時にはフィリップさんを見ながら、あまりにその世界に引き込まれてグッと来てしまい泣きそうになるのですが、そういう時はフィリップさんも袖に戻ったら涙をためていらして、更には会場のお客様も涙している…

ということが、いままで何度かありました。

 

「笑い」と「涙」は一対のもので、それを表現されるフィリップさんの芸術性の高さは本当に素晴らしいです。

 

観たことのない、生の無声映画をぜひ体験しにいらしてください!!

 

三舩優子(ピアノ)

演奏会ツアー中の楽しみ

2018.09.04| 安藤赴美子

あっという間に最後のブログです。

 

 

世界中をツアーで回る音楽家たちの話を聞く機会があると一番驚くことはその移動の距離と頻度です。

 

ほとんどのプレイヤーはツアーで訪れた都市で観光やその土地でしかできないこと忙しい合間にしているようです。

 

それが新たな力やインスピレーションに繋がり、ステキですね。

 

 

私も演奏などで各地を訪れる時、ちょっとした楽しみを持つようになってきました。

ようやく、少し気持ちの余裕が生まれてきたかもしれませんね。

 

ここ最近、気になりつつ行っていないところに出掛けました。

スカイツリーの展望台。

 

地上まで見えるガラスの床に恐る恐る…

すごいですね。

 

 

またオペラやコンサートで他国へ出かけ出演させて頂く機会もあるかもしれません。

 

新しいものを見て大切なことに気付いていける感性を持っていたいです。

 

 

こちらはスペイン、テアトロ・レアルにて、新国立劇場のオペラ「蝶々夫人」2017年版全幕上映された様子です。

 

 

仙台でも新しい発見、そして楽しみを見つけられると予感しております!

 

 

コンサートでお会いしましょう。

 

 

久々のせんくら出演が楽しみでなりません。

 

安藤赴美子(ソプラノ)

リサイタル

2018.09.03| 安藤赴美子

せんくらブログ2日目

拙いブログですがまたお付き合い頂けましたら嬉しいです。

 

 

今日は、最近「朝と夜」を中心に選曲しているリサイタルについて書きたいと思います。

 

 

こんなアイデアが出たキッカケは、ヨーロッパのちょっとしたリサイタルに何を歌おうかとコレペティトゥーア(お稽古してくれるピアニストのことです)に相談したところから始まりました。

 

 

同時代の作曲家や連続した作品を演奏するのが良いかと思いますがより身近なことに近づいてみるのは面白いのではないかとこの案が膨らんでいきました。

 

そして何より、お客様と共にドラマを楽しむことを第一に。

 

 

 

圧倒的に夕方から夜の曲が多いのですが、朝の情景を表現した名曲がたくさんあります。

 

しかし想いに耽るのは夕暮れ時以降のようですね。

 

朝の曲、探してみましょう。

 

安藤赴美子(ソプラノ)

4年ぶりのせんくら

2018.09.02| 安藤赴美子

仙台の皆さま、こんにちは

 

<せんくら>への出演を毎回楽しみにしております!

 

 

早いもので前回から4年経ち、その間にオペラ「椿姫」演奏会形式やトヨタ・マスター・プレイヤーズで仙台へ来ておりました。

 

 

<せんくら>は声楽出演者にとって一つ一つのコンサートのみならず、最後に「歓喜の歌」も歌わせて頂ける事でファイナル・コンサートまで地元の皆さまと心を通い合わせられたような感覚が残ります。

 

最後まで良いコンサートになるよう努めさせて頂きたいと思います。

 

このせんくらブログにも書いたことがあると思いますが、北国に生まれた私としては東北、仙台へ行く機会はいつもとても楽しみなのです。

 

今年に入ってから全国、福岡から札幌まで演奏会で良い時間を過ごしております。

滞在中は時間をかけて市内を見て回る時間がないもので、移動や宿泊、体に良い食事、各コンサートの喜びいっぱいと改善点ばかり頭にある状態であります。

 

 

生きることと音楽が常に一緒であるウィーンの音楽家たちとハッピーな時間を満喫しました。

 

そしてこのようにツアーなどで訪れる際、地元の皆さまからの歓迎は大変心が温まり、いつも深謝しております。

 

 

怒涛のような時期が過ぎ、久しぶりに故郷の北海道で自然に触れてきました。

鳥や動物の声と共に早朝の涼しい散歩(1日の温度差は20度くらいありました!)でリフレッシュします。

鶏小屋で鶏の産みたて卵に出会えました。

 

 

北国の純度の高い凛とした空気大好きです。

 

 

仙台の滞在もきっと体と心を新鮮な状態にしてくれるでしょう。

 

安藤赴美子(ソプラノ)

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