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SENCLA BLOG

ブログ

舘野泉
2014.07.10

ピアニスト

私は、ピアニストというのは手職人だと思っている。
若い時からずっとそうだった。
音楽を手で触るという感覚は面白い。
手で音を撫で、愛しみ、大事にしていくのだ。
いや、愛しんでというのは一面的な表現である。
ごりごりと握り、投げつけぶつけ放り投げもする。
作曲家の生涯だとか作品の構成とか歴史といったものに興味を持ったり考えたりしたことはない。
あるのは作品だけ、その音だけである。
音楽の意味、なにを表現しているのか、視覚的なイメージがあるのかと訊かれることもよくあるが、それも言葉にすることは難しい。

ある数学者の文章に面白いことが書いてあった。
「研究の成果を本にしたのだけど、数学の証明が800頁にもなって、数学者でも読んではくれない。
では、それが複雑で技巧的なことかというとそうではなくて、単純で自然なことをやっている。
伝達しようと思うと、こうなってしまうのが不思議です」というのだ。

きわめて単純な事例だけど、パソコンなどの使用説明書などを読むと複雑極まりなくて到底理解しがたいが、実際にやってみると簡単で分かりやすいのに似ているだろうか。
音の中にも沢山の情報が詰め込まれていて、辛抱強く探っていくと、それがある日、ああ、そうなんだといって姿を現してくる。

先日、エジプトのツタンカーメン大王のミイラを長年検証してきた結果が発表され、王が虚弱体質で、マラリアによって若年で死亡したことや、一緒に埋葬されていた者たちとの血族関係なども明白になったことが述べられていた。
同じころに、数億年前に恐竜が絶滅したのは小惑星の地球への激突が原因だということも報じられていた。
私は中学生の頃一時、考古学者になることを夢見て考古学研究会なるものに所属していたこともあるし「歴史研究」という月刊誌を購読していたので、こうした情報が目に入りやすいのかもしれないが、云いたいのは、音楽は音や音構成の中にすべての情報が詰め込まれているので、音を手で探っていれば、いつかはその全容が見えてくるものということだ。
無になることによって、本当のことが見えてくるのだとも思う。

 

舘野泉

舘野泉
2014.07.09

左手の音楽祭の実り

2012年から約2年を掛けて行なってきた<舘野 泉フェスティバル― 左手の音楽祭>は昨年11月10日の東京オペラシテイーのコンサートをもって無事終了した。
左手作品のみによる音楽祭など前代未聞のことで無謀とさえいわれもしたが、全16回が毎回異なるプログラムで構成され、手応え充分な充実した音楽祭となった。
左手のピアノ・ソロ作品のみならず三手連弾曲、さまざまな編成による室内楽曲、そして幾多のピアノ協奏曲など、限りない可能性を含んだ立派な作品がこの音楽祭の間に誕生し、豊穣な稔りを日本の音楽史の上に刻みこむことが出来た。
日本を代表する作曲家達に加え、アルゼンチン、アイスランド、アメリカ、フィンランド、エストニアの作曲家達からも多くの立派な作品が寄せられた。
これまで「左手の文庫」募金への寄付で、新作の誕生を応援してくださった方々に感謝。
改めて皆様に深くお礼を申し上げたい。

「左手の音楽祭」が終わって半年がたっても、多くの作曲家からピアノ協奏曲、ピアノソナタ、室内楽作品などの新作が寄せられており、今後はそれらを演奏する機会も探っていきたいと考えている。
今年の「せんくら」でもいくつかの作品をご披露できるのは嬉しいこと。

病に倒れてからもう12年の歳月が過ぎる。
元気になって毎日ピアノに向かい、音を紡ぎあげてゆくことが出来るのを、ただただ有り難く思っている。
音楽が与えてくれるものは、常に生き生きとし、日々豊かに変化変貌してゆく・・・その在りようを手で味わい、表してゆきたい。
「左手の音楽祭」で出会った実りを慈しみ、これからの活動がなにをもたらしてくれるのか、踏み出さないことには何も分かりませんが、喜寿を迎えたその一歩として。

舘野泉

舘野泉
2014.07.08

東京の夏、N響の夏

6月15日から7月3日までドイツとチェコの演奏旅行をしてきた。
チェコではカルロヴィ・ヴァリーのオーケストラとラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲を共演。
このオケは今年創立180年を迎えたそうで、弦楽器群は非常にいい。
指揮者は常任のフランス人、マルティン・レベル。
丁度50歳を迎えたばかりで、非常に安定した指揮ぶり。
作品全体の見通しがよく、一緒に共演するのがとても気持ちがよかった。
ドイツではまずヴァーレン市でリサイタル。
そして6月25日にベルリンフィルのホールでヴァーレンとはまた違うプログラムでリサイタルをした。
これは東京とベルリンが友好都市となってから20年の記念として行なわれ、ベルリン・フィルも共催者として名を連ねていた。
千人収容のホールに聴衆は八百人。
プログラムはバッハ、スクリアビンのほかは光永浩一郎、吉松隆、近藤浩平、cobaと、この4年ばかりの間に作曲された邦人作品で、決して聴衆に馴染みの深いものとはいえなかったが、最後は全聴衆総立ちのスタンディング・オーベーションとなり、私自身も胸が熱くなるのを覚えた。
今年は第一次世界大戦が勃発してから丁度百年。
世界では勿論のことだが、特にヨーロッパ諸国ではそれを思う行事が数多く催されている。
ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲もまた、第一次世界大戦に従軍して右手を失ったパウル・ウィットゲンシュタインの委嘱を受けて書かれた。
私も今年から来年にかけて東フィル、N響、札響、日フィル、京響、仙台フィルなどと演奏していくことになっている。
まずは7月18日から20日までN響と東京、大阪、松山で。

 

2014年7月18日(金) 19:00 NHKホール
N響の夏
指揮:レオ・フセイン/NHK交響楽団/ピアノ:舘野泉
ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
N響ガイド TEL:03-3465-1780

2014年7月19日(土) 16:00 ザ・シンフォニーホール
N響の夏大阪公演
指揮:レオ・フセイン/NHK交響楽団/ピアノ:舘野泉
ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
キョードーインフォメーション TEL:06-7732-8888

2014年7月20日(金) 19:00 ひめぎんホール
第16回 NHK交響楽団松山定期演奏会
指揮:レオ・フセイン/NHK交響楽団/ピアノ:舘野泉
ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
NHKサービスセンター TEL:089-921-1159

 

舘野泉

荒川洋
2014.07.04

共演者との絆

こんにちは。フルート奏者の荒川洋です。

毎日何かを必ずやらないと気が済まない性格の僕は、演奏会や指導以外でもいろいろ動き回っています。
きっと子年だから、性分としてじっとしていられないんじゃないかなと思っていますがどうでしょう。
時間があると調べ物をしていたり、曲書いたりしていますが、「生きる事」即ち「表現する事」。日々の経験から得られない物はないと思います。
楽しい事、辛い事すべて人生なんだなと常々感じます。

写真は先日一緒にその「表現する」事のお手伝いをしてくれた宇根美沙惠さんとの1ショット。
昨年彼女と、オリックスの宮内会長のご自宅でサロンの演奏会をさせていただいたときにもご一緒した事がきっかけで、僕の特集が日経新聞文化面一面に記事になりました。
そんな縁で彼女とも今年も演奏会をやりました。今回も素晴らしい演奏をありがとうございました。

たくさんの音楽仲間がいますが、一人一人何か音楽の絆で結ばれています。それを聴いた人たちも音楽で繋がる。本当言葉を超えた素晴らしい伝達ツールだなと日々感じます。

10月のせんくら公演は中川賢一さんとのコラボもあります。どんな「表現」を二人でできるか今からとても楽しみです。
乞うご期待ください!

 

荒川洋

荒川洋
2014.07.03

旅芸人

こんにちは。フルート奏者の荒川洋です。

新日本フィルのオーケストラでの演奏会は続き、旅も続く。

6月は盛岡公演、佐世保公演、可児公演と地方を巡り、最近うちのオーケストラのクラリネットに入団したマルコス・ペレス・ミランダ (Marcos Pérez Miranda)君と一緒に公演前、盛岡市内を散策し、史跡を巡ってから、盛岡名物わんこそばにチャレンジ!
彼も僕も75杯くらいでダウン。軟弱ですが、公演前なので程々に。マルコス君はかなりこのカルチャーに衝撃だったようです。なかなか終わらせてくれないお店のスタッフたちもプロ。かないませんでした。

ここ最近続くオーケストラで吹く日々の公演。
常にベストを尽くして向上心を持って演奏し続けるのは至難の業ですが、僕らはどこでも演奏し続ける以上、毎日技術磨きに精進し日々努力のみ!

心の許せるたくさんの音楽仲間とともに人生を謳歌中です。

荒川洋

荒川洋
2014.07.02

フルート荒川洋より〜せんくらにむけて〜

こんにちは。今日から担当のフルートの荒川洋です。
僕がこれまでリリースしたCD「フレンチコンポーザーズ」「インストゥルメンタル・カラーズ」を聴いてくださっている方々にはいつも感謝申し上げます。

ハードワークでしたが、この文章を書くと、もうせんくらの公演が近づいてきたんだなと感じます。
せんくらで皆さんにフルートの公演を聴いてもらえるのを本当に楽しみにしています。

現在は新日本フィルハーモニー交響楽団の公演が続き、ダニエル・ハーディング指揮のブラームスの交響曲1、3、4番とヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲の数公演を終えたところ。
最後の公演の地、サントリーホールでの余韻が残っています。
ハーディングの音楽センスと洞察力は、聴衆を魅了する新しいエッセンスが備わっていて、聴く人の心を揺さぶります。
そして探求心の尽きない精力的な指揮者です。ただしこちらへの要求も多く、大変なエネルギーも使います。

僕の方は今回の公演から、フランス・パリの楽器「ジャルデ」を使用しています。
巻き管銀で、1960年代に作られたようで、ジャック・レフ(JackLeff)が当時工房にいたときにつくった楽器だそうで、非常にバランスの良い素晴らしい音色がします。
評判も良く、ブラームス交響曲4番の4楽章のソロでも、ハーディングからも素晴らしかったとのお言葉をいただきました。これからもどんどん音色の探求がはじまります。
皆さんも是非オーケストラの現場にも足を運んでみて、聴いてみていただけるとうれしいです。

演奏会の終わった日にはとりあえず自分にささやかなご褒美。ワインで心を癒します。
ピアニスト干野宜大さんから教えてもらったハンガリーのワイン、エグリ・ヴィカヴェール(Egri Bikavér)を手に入れて飲みました。
“雄牛の血”と呼ばれる赤ワインですが、本当においしいです。皆さんもお試しを。

 

荒川洋

松山冴花
2014.07.01

イタズラ

夏に教えていたFestivalでヴァイオリンコーチは私とAちゃんと彼女の兄、R君3人です。

そのR君、楽器の調子が良くないと言って一晩、調節の為Festivalから抜けました。

真面目なR君になにかいつもより意地悪してやろうとAちゃん、Aちゃん夫J君と私で緊急会議。普段脳みそ使う事は面倒な私でもこういう事に関しては悪知恵いっぱい。生憎R君の部屋にはロックがかかっており彼の部屋の中には入れない。それとお金を使いたくないので身近な物で。

思いついたのが滞在している寄宿舎に山のようにある安いペラペラのトイレットペーパー。
3人がかりで彼のドアの上からトイレットペーパーを貼ってのれん作り。下の方はセロテープで床に固定。Aちゃんは凝って横にもトイレットペーパー使って編み編み状態に。J君はまだそれでも足りず鍵が入る所をトイレットペーパーで塞いでまたその上から破りにくいセロテープ張り。R君が怒らないようトイレットペーパー暖簾の上から’お帰りなさい!’というポスターも貼って完璧。

でも次の日R君が戻ってくる時間は私達全員教えている。R君の表情がどうしても見たいのでAちゃんに録画カメラ持ってない?と聞くとさすが彼女、持っている。カメラを見つかりにくい所に設定し期待と面白さで興奮気味の私はその夜ほとんど眠れず。

次の日授業中R君からテキストが:“素敵なプレゼントどうもありがとう。カメラも見つけました”。

授業終わり次第大急ぎでR君の所へ。私達が心配なのはバレたカメラは彼が差し込めない鍵穴に鍵を入れる前か後か。幸いアフターだったので安心して皆でビデオ鑑賞。

——————————
R君登場。

R君:…っえ…?

R君呆然。

R君再起動。ドアの前に行き上下みて放心状態。しゃがんでトイレットペーパーを触ってどうなってるのかお勉強。

R君、起立。

大きなため息。

鍵を取り出しまさに鍵を差し込む直前に鍵穴の異変状態に気付く。

R君:っちょっ…はあ?なにこれ!
——————————

私達は録画を見ている最中ずっとクックッ笑っていたのが最後の一言で大爆発。R君、呆れていたけど私達が彼の事を思ってやったって事で少々感謝。その後一週間はトイレットペーパー暖簾を外さず。でも流石一週間も経つとヨレヨレでみすぼらしくなったので強制的に彼に外させました。

 

松山冴花

松山冴花
2014.06.30

Aちゃん

去年の夏は親友Aちゃんと彼女の夫J君と6週間Festivalで教えてきました。そこは2週間に一回先生達のコンサートがあります。そこでAちゃん(ヴァイオリン)とJ君(ヴィオラ)はDuo弾くことに。彼女達の部屋から威勢のいい練習が聞こえてくる。凄いバリバリ弾いているなあと感心していたら

 

“きゃはははははははは!!!!!”

 

いきなりAちゃんの大笑い。あの二人、あんなに楽しく弾くのかと羨ましがっていたらAちゃん部屋から出てきた。

私:いいねえ、めちゃ楽しそうじゃん。

Aちゃん:えっ?

私:凄い笑い声聞こえたよ。

Aちゃん:ああ、違うの。私全然ヴァイオリン触ってなくっていきなりあんな曲弾いたから腕がつっちゃったのよ!それで痛くて痛くて笑ってたの。

 

つられて笑ったものの私も経験あります。曲によって違う筋肉を使うのであまり手慣れていない曲を弾くと腕が痛くなる事も。足がつることもしばしば。

 

でも恐るべしAちゃん。ヴァイオリン触れてなくても弾き出したら稲妻みたい。。。

 

今日の写真は飼い猫のポテトです。ヴァイオリンケース開けたら逃げだすほど私の音が大の苦手。

 

ポテトのお気に入りのスポットはテーブルの上。でもそこは私の練習がまる聞こえ。なのでポテトがとったポーズは?

テーブルの上でうつ伏せになって耳を両足でカバー。

いつかポテトに認められるヴァイオリニストになりたいと日々思います。

松山冴花

松山冴花
2014.06.29

交渉と裏切り

 

今日から3日間ブログ担当、ヴァイオリンの松山冴花です。

 

人間誰もがこだわりを持っていると思います。

その拘りのお陰で私、先日夫からの裏切りを体験しました。

 

今回その拘りの主役は歯磨き粉。

家で使う歯磨き粉はチューブ式。私は絶対チューブの下の方をぺったんこにしながら中のペーストを出す派。一方、夫はチューブの真ん中を握りペーストを出す派。こっちは歯磨き粉使う度綺麗に平にしてるのに夫が膨れ上がった所を握るのでチューブがクッチャクチャ。

 

美しいチューブが夫の使用後おブスになるのが嫌になったので彼に頼みました。歯磨き粉、お願いだから下から押し出してくれ、と。

そしたら彼、割りと簡単に了解。でも彼も申す。私が歯磨き粉のキャップを使用後ちゃんとつけ戻したら願いを聞いたげると。

交渉成立。

 

半信半疑で翌日歯磨き粉を見てみるとちゃんと綺麗に下から使われている。感動したので私もキャップを使用後付け戻す。その後も私の願いを見届けていてくれる夫。いい奴じゃんと思い数日後彼に感謝の言葉:

ペースト下から押し出してくれてどうもありがとう。見ていて気持ちがいいよ。

 

そしたら彼、大笑い。私を幸せにするのがこんなに簡単な事と思って笑っているかと思いきや:

ごめん、サエカ。実は僕、新しい歯磨き粉使ってるんだよ。

 

…へっ?イマ、アナタナニユッタ?

 

洗面所の鏡の中の戸棚に僕が使ってる歯磨き粉があるよ。

まだ目が点で彼の言っている事が理解できてない私。数秒後ようやく頭の回転が動き出し私は洗面所へダッシュ。信じられない思いで鏡を開けたらあったよ。。。まだおニューの歯磨き粉。それもめっちゃ握り倒されている。。。

 

この数日間見ていた素敵なチューブはずっと私のだったのね。。。腹いせに洗面所から出て行く前に彼の歯磨き粉のキャップを外し隠しました。

松山冴花

丹野富美子&吉田彩
2014.06.28

みんなでGO!GO!音楽は続くよどこまでも♪

2011年のせんくらは、私たちにとって思い出深いステージです。
震災の日を思い返せば、7ヶ月後に満員の会場で子供たちの笑顔と一緒に楽しめたこと、奇跡のようにも思えます。

あのとき、大きなお腹の中で聴いていた娘も、今やお姉ちゃん。
あれ以来、子供たちが喜んでくれるステージを作ろう!というのが、私たちの共通の想いです。

今年も同じテーマで演奏します。
「みんなでGO!GO!音楽は続くよどこまでも♪」

45分間、音楽と一緒にいろんな国に行きますよ。
ベビーとキッズたちは星の世界へ特別ツアー。パパママは南米のタンゴの国へもご案内。
パリジェンヌにアテンションプリーズ♪ みんなで華麗にポロネーズ!

10月3日(金) 11:30~ エルパーク仙台スタジオホールです。

では会場でお会いしましょう!

丹野富美子&吉田彩

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