西江辰郎(6)

2008.08.01| 西江辰郎

ヴァイオリン・・・不思議ですよね?

まれに僕も、なんで4本の弦に毎日喜怒哀楽させられて、何やってるのかな~などと思うことがあります。

こんなときは、くたびれてるのかな、普段はそんなこと考えもしません。
実はヴァイオリンにも設計図かあるんです。(写真)
ヴァイオリンって、一見全部同じに見えますけど、同じものは一つもないんです。大量生産のものでも、木は1丁ずつ違う部分ですし、プロの間では、すべて手作りのものが多く使われます。面白いので今日はこんな写真も載せてみました。
弓も手作りで、これまた作るの難しそう・・・でもものを作るの大好きなので、一度で良いから作ってみたいものですね。

西江辰郎

これからの演奏会

9/3     西江辰郎&ジュゼッペアンダローロデュオリサイタル2008in Sendai
9/20or21仙台フィル野草園
10/18    三善晃 作品展 I器楽・歌曲作品
12/5     神奈川リサイタル

2009
1/28    東京都庭園美術館リサイタル

西江辰郎
http://homepage3.nifty.com/nishie-tatsuo/
新日本フィルハーモニー交響楽団
http://www.njp.or.jp/njp/index02.html

西江辰郎(5)

2008.07.31| 西江辰郎

今日は新日本フィルでベートーヴェンの交響曲第2番の2日目。

音楽監督のクリスティアン・アルミンク氏の指揮で、すみだトリフォニーホール。

第2番はベートーヴェンのシンフォニーの中でも今のところ最も好きな曲の一つです。僕の人生経験がまだまだで、彼が2番を書いた頃の精神までたどり着くのがやっとこさっとこなのかな。とにかく演奏中の緊張感あるスピード感、わくわくしたり、どきどきしたりする感じは弾いていてもスリルがある。

アルミンク氏は、曲の時代背景や、スタイルや色々細かなデティールまで研究して練習に望んでくれるけれども、僕自身のイメージと、また違うイメージをもっていることももちろん。どちらが良いとは決められないし、その必要もないけれど、いろいろ試してみるのも賛成してくださるし、よりいい音楽を、という気持ちがオーケストラのメンバーのあちらこちらにあるのがすばらしい。周りから多くを学び、自分も向上していかないといつの間にか取り残されてしまいそう。どうやってこの雰囲気が出来てくるのかな。オーケストラって不思議です。
2008年7月19日(土)

P.S.写真は、Alessandro Cuozzoとその家族&Giuseppe Andaloroと2006イタリアにて。

これからの演奏会

9/3  西江辰郎&ジュゼッペアンダローロデュオリサイタル2008in Sendai
9/20or21 仙台フィル野草園
10/18 三善晃 作品展 I器楽・歌曲作品
12/5  神奈川リサイタル

2009
1/28  東京都庭園美術館リサイタル

西江辰郎
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新日本フィルハーモニー交響楽団
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西江辰郎(4)

2008.07.30| 西江辰郎

仙台フィルのみんなは元気かな?しばらくあってない・・・。
今年は仙台で9月にジュゼッペとのリサイタル、仙台フィルの野草園にも行きます!
たのしみです。

今年のせんくらでの演目について。今年はすべて違う曲でのプログラム。ちょっと欲張りすぎで、自分の力量を超えている!?かもしれませんが、
決めちゃったのでやるしかない。
是非聴きにいらしてくださいね!

ヴィターリ:シャコンヌ

言わずと知れた名曲。ヴァリエーションをどう関連づけて持っていくか、どう発展させて感動に結びつく精神を持続させていくかが鍵となるであろう曲です。
・・・・・・なんて書いていたら、ヤベー!と思えてきたのでこれ以上はよしときます。(汗)

ヒンデミット:ヴァイオリンソナタ 変ホ調

パウル・ヒンデミット(Paul Hindemith)は1895年11月16日、フランクフルト近郊のハーナウという所で生まれた。あらゆる楽器のための曲を書き、ヴァイオリンとヴィオラの名手であり、ピアノを巧みに奏したほか、オーケストラの楽器をほぼ全部使いこなせ、音楽学者、丸頭の中に膨大な音楽知識を蓄えていた。
塗装業を営む音楽好きの父は、フランクフルト近郊を転々とし、1902年から市内で商売を始める。商売は上手くいかず、両親は宗教上の理由からも不仲だったという。 9歳から正式にヴァイオリンを習い始める。すでにピアノトリオなどの作曲を手がけており、音楽院入学までに器楽曲15曲、歌曲を20曲近く書いている。1915年レープナー弦楽四重奏団のヴァイオリン奏者となる。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を独奏し絶賛を浴び、戦時中の同年にフランクフルト歌劇場管弦楽団のコンサートマスターに抜擢される。1916年ごろに父が戦死。本人は大戦末期の17年に召集されるが、軍楽隊に編入され一命を取りとめる。19年除隊後、レープナー弦楽四重奏団のヴィオラを担当、歌劇場のコンサートマスターにも復帰。6月に、初の自作演奏会を開く。兵役中に作曲した弦楽四重奏曲ヘ短調作品10などを披露。注目を集める。1920年代のドイツの音楽界におけるヒンデミットは、ロシア音楽界におけるプロコフィエフのようだった。最新型の強烈な不協和音を含む“無調”に近い音楽をつくった。その鋭く、無作法でさえある作品は彼を20年代の「恐るべき子供」にした。R.シュトラウスが彼に対し、「何故君はこのような書き方をするんだい?才能があるというのに」といったのは有名らしいが、これに対し、ヒンデミットが「教授閣下、閣下は閣下の音楽を作られ、私は私の音楽を作るんであります」といったというのは面白い。ヴァイオリンソナタ変ホ調 作品11第1番は1918年にかかれ、19年に初演されているが、ヒンデミットについて書かれた文献があまりに見当たらないために、この曲の解説を書くに当たって参考資料がみつからなかった。色々なことが推測や想像でしかないが、この曲には戦争の影響が多大にあると、私は思う。

 

第1楽章 父の戦死、自らの第1次世界大戦への招集、またこの楽章が英雄の調性である、Esを基に書かれていて、曲が金管楽器のファンファーレ的に始まるところも、そう思わされる要因だ。場面は変わり、悲しみつつ救済を求めるモノローグのような旋律が現れ、音型の上昇と転調と共に希望が見えるものの、あくまでも一時的に友人と楽しい思い出話をしたのだったり、物事を一時的に楽天的に考えてみたような雰囲気。再び、不安になると、ピアノの8分音符の連打による“危険”が迫ってくる。2つのアクセントからなる砲撃の音とも取れるモティーフも現れる。クレッシェンドと共に曲は盛り上がりをみせ、迫りくる危険から転びながらも走り、逃げ、岩陰に隠れると、すぐ先の岩陰に人の足がみえる。同じく砲撃から逃げてきた仲間だろうか・・・ 勇気をもって恐る恐る近づくと!!ああ、友よ、死んでいる!突き刺すような胸の痛み!一瞬、脳裏に友人の笑顔が浮かぶものの、この世の恐ろしさ、人間の残酷さなどで頭が混乱し、嘆きながらも、平常心を保とうとし、友に対する永久の安息を祈る。そこではラッパが鳴り、戦勝を祝う声もきこえる。

 

第2楽章 はるか遠くで鐘が鳴っている。「3拍子で厳かな舞曲」との表記があるが、楽章を通じてこの最初のモティーフに支配されている。弱音機をつけたヴァイオリンが今の自分の心の状態(疲れている、落ち着いた、今目に映っているものは何の影響力もなく、目の中に焼きついてしまったことを闇に置き換えてしまっているような)を表すような、旋律を奏でる。・・・・・・・そして深呼吸、顔をゆっくりとあげ、あたりに目をやるとそこには灰色の世界が広がっている。やさしさ、ぬくもり、願い、愛情、いろいろな感情が連想されるが、自分の呼吸の音を意識するうちに再び鐘の音・・・・・・・心の状態・・・・そして深呼吸、自分を奮い立たせ、もっと力強く元気に歩もうとする。さらに力強く。気分が乗ってきた。現実が夢だったように思えてきた。自分の思いがめぐる中、いつからか鐘の音を連想してしまう。そうだ。さっきからずっと鳴っていた・・・鐘が鳴っている。疲れている、落ち着いた、いま目に映っているものは・・・そして・・・そうだ・・・・・・・・・・もう眠ろう・・僕も・・・生涯最後の息吹・・・・・。鐘の音・・・・

 

ヒンデミットの作曲家としての華々しいキャリアは第一次世界大戦後からで、先鋭的で実験主義的な作風で、音楽会に波紋を巻き起こした。1927年からはベルリン音楽大学で作曲を教え始め、1930年代に入ると、その作風は革新から円熟へと向かっていく。しかし、この頃からヒンデミットはユダヤ人だとする偽情報により、ナチスによる圧力がかかり、1938年にはスイスへ移住。1940年、彼はアメリカに渡り、イェール大学の教授となり、合衆国時代には<伝統的和声学(全二巻)>や<音楽家の基礎練習>といった著書も刊行されている。1953年にイェール大学を辞め、スイスのチューリッヒに住まいを移した。晩年はもっぱら指揮者として活動し、日本をはじめ世界各地を訪れた。1963年12月28日、彼の生まれ故郷の近くのフランクフルトで永眠。

 

シューベルト:ヴァイオリン・ソナタイ長調 D574

 

ピアノの坂野さんが、僕と一緒にこの曲を勉強してみたいと言ってくれて選曲した曲です。ホールに響きがないとこの曲の良さが伝わりにくいと思い、青年文化のコンサートホールでのプログラムに入れました。たゆたう感じがシューベルトらしい、優しさときらめきのあふれる曲です。

 

三善晃:弦の星たち

 

この曲は僕が桐朋に通っていた頃、当時学長だった日本人作曲家の三善晃先生が書かれた曲で、おそらく曲名の意味するところは、自分の学校の「教え子たち」なのでしょう。まだ、先生にこの曲について伺うことが出来ていませんが、お会いして聴いてきたいと思います。とてもよく覚えていることは、「学長の先生のお話」ということで、学生の前で三善先生が自分の体験談をしてくださったときのことです。とても素晴らしい音楽を聴いたとき以上に惹き付けられました。言葉でのお話に感動する、という、初めての体験で、しかもそのときに感じた感覚はいまだその後一度もありません。それほど「お話」がうまく、先生の音楽そのもののようだったのだと思います。そのときの内容は戦争に関するものも沢山含まれていましたが、この曲を初めて聴いたとき、こころから「素晴らしい・・」と思いました。あえて言うなら、カール・アマデウス・ハルトマンの葬送協奏曲を聴いたような感じ。似ている箇所もありますが、それは音楽の時代背景なのかも知れません。とにかく、日本人でこのように素晴らしい曲を書かれる方がまだ存命中で、この曲を演奏する機会をあたえられたことは、僕にとってはとても光栄です。ということで、本来は弦楽オーケストラとソロヴァイオリンの為の曲なのですが、今回「せんくら2008」でも演奏させて頂くにあたり、ピアノとヴァイオリン用のリダクションをある方にお頼みしました。どういった感じになるかまだ解りませんが、リダクション版は「せんくら」が日本初演となります。僕の演奏を聴かないまでも、この曲はとても聴く価値のあるものです。はい。そのとおり。まったく。うん。いやいや。なんの。これしき。演奏するのは、むつかしーです。

 

ブラームス:ヴァイオリンソナタ第3番

 

よく言われるように、晩年のブラームスが古典的な作品として書いたのか、あるいはこのときハンガリーのジプシーの演奏を身近に聴いているのでその影響も強いのか、どうアプローチするか模索中。とにかくすばらしい曲です。

西江辰郎

これからの演奏会
9/3     西江辰郎&ジュゼッペアンダローロデュオリサイタル2008in Sendai
9/20or21仙台フィル野草園
10/18    三善晃 作品展 I器楽・歌曲作品
12/5     神奈川リサイタル2009
1/28    東京都庭園美術館リサイタル

西江辰郎

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西江辰郎(3)

2008.07.29| 西江辰郎

今日は、夢にも見れていなかったけれど、生まれて初めての小澤征爾さんの指揮でのコンサートマスター。

昔TVで見ていた、日本が世界に誇る大音楽家。

オーケストラのメンバーひとり一人の、本番にかける「やる気」を一瞬で引き出してしまうほど音楽に対する“熱意と意志”が強烈だ。なにか強烈に集中されたもの、凝縮されたもの、解き放たれるもの、ほとばしり出る“何か”に、強烈にひきつけられる。

練習後小澤さんからアドヴァイスを頂いた。僕にとっては一言一言がとても重く、聴き逃すまいと必死だった。これから続けていくうえで、とても重要なこと。心にしかと留め置いて、実行するのみ。 (.-)

2008年5月6日
西江辰郎

これからの演奏会

9/3     西江辰郎&ジュゼッペアンダローロデュオリサイタル2008in Sendai
9/20or21仙台フィル野草園
10/18    三善晃 作品展 I器楽・歌曲作品
12/5     神奈川リサイタル

2009
1/28     東京都庭園美術館リサイタル

西江辰郎
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西江辰郎(2)

2008.07.28| 西江辰郎

4年半の仙台生活では、本当に色々な人と出会い、お世話になり、いろんな道を車で走り、移動し、探検し、(もちろん練習も本番も、(@^0^;)しましたからね?)あるときは地図を見ながら、沼を見つけ、いざ出発!!
ついたところは人が誰もいなくて車で沼の脇までいったものの、道が細くなってバックすることができず、ひたすら沼の脇道を前進。
一周する頃には、草木に引っ掻かれて車はキズだらけ~なんてこともありました。
でもそのときに感動したのは、「蝉」の大合唱。
木から木へと、輪唱のように何百匹、何千匹?という蝉の声が移っていくんです。その移動の仕方は、まるで波のようで、風のふく様を知っているかのよう。

現代曲でこんなの書いても面白いな~などと思ってしまいました。
僕にとってはおもいがけずにした貴重な体験です。
また、今でも交流のあるいろいろな方々との出会いも、心の支えになっています。
今から思えば、初めて仙台フィルにお邪魔したときは、なんて緊張していたことでしょう?太ももの裏まで震えて座っていたのを覚えています。それから沢山の作品とも出会い、演奏し、ここ数年で数百曲以上は勉強しています。
いまは、毎日別に変わることなく学ぶ日々ですが、昔と同じく、音楽することをいわゆる悪い意味での、「仕事」と思っていない自分があることは嬉しいことです。

遠くから足を運んでくださるお客様、幾度となく、励ましの言葉を下さる方々、応援してくださるかた、また本番を下さるかたのおかげで毎日成り立っています。昨年聴いていただいたときより、さらに大きく成れていれば嬉しいです。

西江辰郎

これからの演奏会

9/3     西江辰郎&ジュゼッペアンダローロデュオリサイタル2008in Sendai
9/20or21仙台フィル野草園
10/18    三善晃 作品展 I器楽・歌曲作品
12/5     神奈川リサイタル

2009
1/28    東京都庭園美術館リサイタル

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西江辰郎(1)

2008.07.27| 西江辰郎

皆さんこんにちは(^0^)/
せんくらで演奏を聴いていただけるのをとても楽しみにしています。
今年は素晴らしいピアニストの坂野伊都子さん、それから気の知れた仲間でもあるセレーノ弦楽四重奏団の皆と、久々の本番です。チェロの原田氏も留学から帰られて、久々に会うので楽しみです。
曲目は、今取り組んでみたいもの、それから今回の会場の響きを考えて皆と選曲しました。
そうそう、セレーノ弦楽四重奏団では友人のアレッサンドロ・クオッツォの弦楽四重奏曲第3番を初演します。BACHのイニシャルをテーマに創られていて、フーガのようになっています。
そしてソロではブラームス、ヴィターリのシャコンヌ、それからバーンスタインが彼は天才だ!と言っていたというヒンデミット。
日本ではあまり演奏されない曲だと思いますが、一度聴いて、素晴らしい曲!!
と思い、プログラムに入れました。
それから、三善晃先生の”弦の星たち”など
曲目についても、解説と言うか説明を書きたいと思っています。
今日から一週間どうぞ宜しくお願いいたします!
m(-o-)m

さて、自己紹介ですが、僕は2001年より仙台フィルでコンサートマスターをさせていただいて、2005年からは新日本フィルハーモニー交響楽団で同様に働いています。
西江辰郎(にしえたつお)

1976年9月12日生まれのおとめ座で、ヴァイオリン弾きです。(音楽家ですといいたいところですが、まだまだです・・・・がんばります。)
留学した先はスイスで、だからかスイスのチョコレートは大好物の一つです。
おかき、果物も大スキ、あとは車もすきだし、いろんなことに挑戦するのも大すきです。
共演するのも好きですし、
お笑いもすき
音楽の話も大スキですし・・・・・
乙女・・・

んーきりがないのでこのへんで。

性格は、なぜ、そうなっているのかなど、物事の中身まで知りたがるタイプです。
研究、実験などは大スキですが、たぶんのめり込んだらそっちにいってしまうので、控えめにしてます。
西江田魚 あらら・・・・ 辰郎

これからの演奏会

9/3 西江辰郎&ジュゼッペアンダローロデュオリサイタル2008in Sendai
9/20or21 仙台フィル野草園
10/18三善晃 作品展 I器楽・歌曲作品
12/5 神奈川リサイタル

2009
1/28 東京都庭園美術館リサイタル

西江辰郎
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福田進一(7)

2008.07.26| 福田進一

福田進一です!

先週スペインから帰国して、このブログを書き始めましたが、一週間はあっという間でした(いつも入稿が遅れて関係者の皆様申し訳ありませんでした)。
さて、「せんくら」の愛称で親しまれているこの音楽祭の正式名称は「仙台クラシックフェスティバル」ですね。何をいまさら、とお思いでしょうが、しかし、この「“クラシック”フェスティバル」というものにギタリストが招待されるということは実は珍しいことじゃないかと思うのです。だって、ヴァイオリンやピアノだと、ザルツブルク、タングルウッド、アスペンなどのクラシックフェスティバルというものが存在しますが、そのような音楽祭にギタリストが招待されることはめったに無いことですから。せんくらには3年連続で呼んで頂き、今までギターを聴いたことのないお客様が、お目当てのコンサートの合間にでも来てくださって、「ギターってのも、なかなか面白いもんだな~」と思ってくれたとしたら、これほど幸せなことはありません。私はパリから帰国した時から「演奏家であるギタリストとギター音楽だけしか聴かないお客様の世界」の外に活動の場を求めてきたからです。
しかし、反面、世界のギターフェスティバルはとても面白いんですよ。実は世界中いたるところにギターフェスティバルが存在していて、それぞれがお互いリンクしている。そしてそれがクラシックもポピュラーもフラメンコも渾然一体となって大いに盛り上がっています。この現状、一般の音楽界からズレている、あるいは遅れていると解釈する悲観主義的なギタリストもいるのですが、私個人は、これこそひとつの楽器が不器用ながらも大変進化した結果の音楽界、いたって結構!と思っています。
例えば昨日のブログにも書きましたが、つい先日参加したコルドバのギターフェスティバルでは、マニュエル・バルエコ、オダイル・アサド(アサド兄弟の弟)のソロ・リサイタル、私とコルドバ管弦楽団とのコンチェルトといったクラシック・ギターのコンサートと並んで、何と御大チャック・ベリー、ジャズベーシストのマーカス・ミラーが同じフェスティバルで演奏しているのです。またそれが何の違和感もなく自然と盛り上がっているわけです。今回、どうしても聴きたいと思っていたマーカス・ミラーの演奏会に行くために、同じ時間帯で重なっていた友人ディヴィッド・ラッセルのコンサートをパスするはめになりましたが(ごめん!)。

日本ではこれだけ大規模のフェスティバルは行われて来ませんでしたが、2005年に山形県庄内町で「庄内国際ギターフェスティバル in 響」を創設し、音楽監督をつとめさせて頂きました。その時は私の恩師である巨匠オスカー・ギリア先生を迎えて、多種多様な演奏会、マスター・クラスを行いました。私の弟子筋の村治佳織さん、鈴木大介さん、大萩康司さんにも手伝ってもらって第1回から大成功、世界的にも評価をいただきました。
今年は3年ぶりに8月26日~31日で、「第2回庄内国際ギターフェスティバル in 響」 を開催します。フェスティバルの目玉は盟友で世界最高峰のギタリスト、エドゥアルド フェルナンデスが全日程を通して参加してくれることと、28日に開催する飯森範親指揮、山形交響楽団の「ギターコンチェルトの夕べ」です。フェスティバル中はフラメンコ・ギタリストとして大人気の沖仁さんをお呼びしたり、余目駅前に、バンドやギターフェス出演者飛び入りで参加する「駅前ふれあいビアガーデン」を設営してフェスティバルを大いに盛り上げる計画です。是非以下の公式HPを覗いてみてください。 http://shonaiguitarfes.com/index_j.html

前後しますが、8月22日~24日には荘村清志さんとプロデュースする「Hakuju ギター・フェスタ」が開催されます(渋谷区のHakuju Hallにて)。今回は私が企画の当番で、「ラテンアメリカの熱い風」と銘打って荘村さん、フェルナンデス、フルートの中川昌三さん、クァルテット・エクセルシオ(弦楽四重奏/第1回目のせんくらに参加していました!)と、ソロからギター五重奏まで幅広い音楽をお届けする予定です。ボサノヴァ・グループのボファーナも参加します!「せんくら」でフェスティバルの楽しみを知ってしまったみなさん、是非ギター・フェスティバルならでの醍醐味も味わいに来てください。 http://www.hakujuhall.jp/top/concert/d_080822_24/index.html

さて、今回でこのブログも終了です。「せんくら」では、是非たくさんの音楽ファン方とお会いして、私の演奏を楽しんで頂きたいと思っています。
今回は書きませんでしたが、仙台での食べ歩きも、「せんくら」の楽しみのひとつです(昨年は一日2回牛タンを食べたハズ)。それではコンサート会場でお会いできるのを楽しみにしています!

*写真は今回ヨーロッパでゲットした、私が表紙になった「ギター・クラシック」誌。

「う~ん、えらいかっこえーやろ(笑)」。

 

荒川洋(7)

2008.07.26| 荒川洋

第7回最終回

皆さんお元気ですか。フルートの荒川です。
昨日、仕事の合間をぬってヨーロッパの民謡「La ballade Nord-Irlandaise」をギター&ピアノのアレンジを頼まれていたので編曲しました。
すごいいい曲で、イタリアで歌われてポピュラーなソレアードのようにとてもなじみやすい曲でした。今度フルートとピアノにも手直しして演奏したいと思います。

たくさんの音楽家が出演するせんくら2008も出演するのが楽しみです。今回は青年文化会館でアンサンブル東風と早川りさこさん(ハープ)とモーツァルトのコンチェルトを共演するのも、とても楽しみしています。あと、作曲家&演奏家としてとても大好きなアーティスト寺嶋陸也さんとデュオをやります。彼と今年の始めに東京の旧奏楽堂で、安部幸明さんのフルートとピアノのためのソナタ第1番を共演したことがあり、是非これをせんくらでやりましょうということで盛り上がりました。僕は日本の戦中をくぐり抜けてきた昔の日本を知っている作曲家が大好きで、林光さんを始め、数多くの作品家の作品に出会ってきましたが、安部さんのフルートソナタは彼の代表作の一部で、とてもベートーヴェンのような構築美と、日本人の心をくすぐるような旋律がちりばめられているのがとても素敵で、是非皆さんにも聴いてほしいと思いました。西洋の音楽に触れるからこそ、日本人の視点にたった音楽ってあると思うんですね。日本のシャンソン的な魅力にも触れてもらいたいし、なにより聴いている日本人が、コンパトリオット的な要素を発見できるような、それと西洋との異文化コミュニティをもっと全面にだしたプログラムってできないかなと思い、今回の寺嶋陸也さんとのデュオの時間はそういったことを考えてプログラミングしてみました。

皆さんもたくさんの演奏会を聴きにいかれると思います。是非僕の会もたちよって聴いてもらえれば嬉しいです。演奏会後にも差し入れも大歓迎です。

一週間おつきあいありがとうございました。

 

福田進一(6)

2008.07.25| 福田進一

こんにちは。福田進一です。

「せんくら」は今まで、ソロ・リサイタルと、長谷川陽子(チェロ)さん、デュオ・プリマ(ヴァイオリン・デュオ)とのアンサンブルを聴いていただいてまいりましたが、ギタリストの全てのレパートリーは、この他にはアンサンブルを拡大した室内楽、オーケストラを従えてのコンチェルトということになるでしょう。
コンチェルトの定番は誰もがご存じで、ギターファンならずとも常に人気協奏曲のトップクラスに名前を連ねる「アランフェス協奏曲」。私も多分、すでに100回以上は演奏してきたと思います。
でもいつまでも「アランフェス」一曲だけではだめじゃないか!(力が入りすぎか、、、)と、ギター界の巨匠レオ・ブローウェル氏に新作のコンチェルトを委嘱しました。それから何年か、、ついに完成して、先月ドイツで世界初演をしてきました。全曲40分にも及ぶギター協奏曲最大規模の作品で、フル編成のオケ(ライン州立響)をバックに公演は大成功。また、7月にはスペインでコルドバ管弦楽団とブローウェルの指揮により再演も行い、満場の聴衆からブラボーとスタンディング・オーベーションを頂きました。足の不調にもめげず大熱演のマエストロ・レオに、心から尊敬と感謝の念で一杯です。
いつか日本でも「コンチェルト・ダ・レクイエム」を弾ける日が来ればと願っています。

ちょうど5月のコブレンツでの世界初演の時の批評(原文ドイツ語)和訳が出来ましたのでご紹介します。
*しかし写真はコルドバ管とのリハーサル風景です。

「世界初演の音楽の夕べ」
ライン・フィルハーモニーとギターの英雄たちの見事な調和

なんという(素晴らしい)音楽の夕べであったことだろう。選び抜かれたギターの英雄たちと、卓越したライン・フィルハーモニーオーケストラによって、最高の3時間が奏でられた。その響きは、明晰かつ魔力的なラスムス・バウマンの指揮によって、これ以上ないよいものとなった。コブレンツ・ギターフェスティバルの“ギターとオーケストラの金曜日の夕べ”は、ライン・モーゼル・ホールに集まった500人以上の聴衆を魅了した。
(中略)
なんといっても、この“ギターの夕べ”の白眉は、この宵の真ん中に演奏された、レオ・ブローウェルの“Concerto da Requiem”の世界初演である。初演の前にブローウェルは、SMS(携帯メール)で成功を祈るメールを送ってきた。曲の終わりが近づいた頃には、聴衆は、3楽章からなるこの作品が今世紀でもっとも重要で刺激的な「音楽の創造物」の一つになるであろうことを確信した。ブローウェルは、Sterben(死に至る過程:生に属する)とTod(死:死んだ状態)を主題にした。このレクイエムは、ギターを熟知した作曲家でもあった故武満徹のために書かれたもので、ブローウェルが特に50年代と60年代に表現した要素が詰まっている。
ソリストの福田進一は、死に対する怒りと無力感の間で翻弄される感情を、オーケストラと共に印象的に表現した。(曲は)シンフォニックなアウフタクトで始まり、次にティンパニの連打を伴う和音が続いた。メランコリックなメロディの砕片が、くずおれそうな和音構造と出合う。熱狂的なギターソロを、この世の最後を暗示するティンパニの打音が追い越していく。その間ずっと、リズムと響きの中に悲しみと深い絶望感が広がっていくが、それと同時に和解的要素の余地も残している。
長く印象に残る作品であり、(聴衆たちは)この夜、息をするのを忘れ言葉を失った。
(Bernhard Wibben ,Rhein-Zeitung,13.5.2008)

荒川洋(6)

2008.07.25| 荒川洋

第6回 高いところ

皆さんお元気ですか。連日あついですね。
現在曲を作っております。山形県酒田の合唱曲。共同募金会から依頼されている曲。知人のチェロ、フルートのデュオ曲。8月6日第五福竜丸展示館で演奏する曲。8月30日に軽井沢メルシャン美術館で演奏するためのフルート&ハープの曲。そして10月せんくらで演奏する曲。

僕とは違って本業の大作曲家林光さんとなんどもお仕事をご一緒しているのですが、その中で光さんが、演奏会直前に作曲ができあがるときがあり、共演者の歌手の方が悲鳴をあげることになるのですが、双方とも現場での必死さが伝わってきて、なんかすごい共感する。

このように日曜作曲をやると、演奏家としては非常にいいことがある。
たとえば、今やっているブルックナーだって作り始めた今のほうが作曲家の心理や意図が理解しやすくなった。音色の使い方がわかって、あらためて、大作曲家なのかそうでないかがわかる。そして、自ずとこちらの音色観も変わる。面白い。本当に音楽って面白い。

クラシックの作曲家ではないけれど、光田健一さんというシンガーソングライターがいる。一緒に石井竜也のツアーに参加したときにアレンジしていた人なんだけど、彼の作った譜面の音色を再現したとき、ああ、音楽好きの天才を見つけた!と思った。林光さんとはじめて出会って一緒に音楽作りをさせてもらったときと同じ感触があった。音楽ってそんなすてきな出会いがたくさんある。

この夏一緒にツアーをご一緒させていただくのだが、久石譲さんも同じエネルギーの人。彼の凄まじい表現パワーは聴く人の心にすーと入り込んでいく何かがある。素晴らしい。

自分も演奏面や曲作りのほうでそんなハードルを作ってみたい。彼らが僕に信頼関係を持ってくれたように、こちらからも自分の音楽を伝えたい。最近その思いがすごく強いので、是非この機会に触れていただきたい。

写真は全然関係ないのですが、黒松団地の木に登る小さい頃の僕。この頃から高いところが好き。

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