震災後、予定していた演奏会は全てキャンセル、または延期となりました。
四日間の停電、十数日の断水、ガス復旧までにほぼ一ヶ月という状況下、ただ生きるために生きているような毎日でした。
音楽を仕事として一生携わるということに、初めて疑問を感じました。
何と役に立たないことをやっているのだろう。
全てがそろった平和な状態でないと、こんなに必要とされないものなのだろうか。
私には誰のことも助けることができない。
仙台市内の音楽ホールは4つだけ生き残り、他はしばらく使えない状態でした。
その貴重な4つのうちの一つを、私は自分の演奏会のために予約してありました。
しかし、その貴重な演奏の場をもっと多くの人とつながりに活かせないかと思い、急遽、「宮城学院女子大学音楽科OG有志によるチャリティコンサート」に変更し開催しました。
震災後の混乱の中、知り合いに片っ端から連絡したところ、合唱参加者として137名ものOGが出演を希望してくれました。
余震の中、皆で練習し、当日は会場全体が一つの思いでつながり、皆が涙した演奏会となりました。
このチャリティコンサート活動は、インターネットを通じて、遠く富山の方々の心ともつながり、富山の強力なスタッフたちにより、今年2月富山公演が実現しました。
宮城学院女子大学音楽科OG有志によるチャリティコンサートは今後も続いて行きます。
この11月には多賀城にて、来年2月には再び富山にて開催予定です。
音楽により多くの方々のあたたかな心とつながり、その思いは遠くまで届き、皆と音楽をすることができますことに、感謝しています。
髙橋麻子(ピアノ)
トーレスによってギターは多彩な音色の変化、音量を獲得しました。
この楽器を使って近代のギター奏法の基礎を確立したのが「アルハンブラの思い出」で有名なフランシスコ・タレガであり、その奏法は門下のリョベートやセゴビアに伝播していったのです。
しかしギターのレパートリーは、ヨーロッパ圏内にとどまりませんでした。
まだまだ違う音楽の波があったのです。
最も注目すべきは、ギター音楽の南米への波及です。
1492年のコロンブスの西インド諸島発見とともに、一気にヨーロッパ文化が南米に流れ込みました。
16世紀初頭、スペインで完成し、初期の対位法を生み出した楽器ビウェラはギターの祖先とも言える楽器です。
現在の研究では、この楽器は2つの方向に伝播しました。
ひとつは北へ、つまりメキシコ方向に。もうひとつの流れは南へ、チリを含む南米方向に向かったようです。
その後、二百年以上の歳月をかけて、ヨーロッパの音楽はゆっくりゆっくり中南米と南米に浸透するとともに新しい音楽が生まれていきました。
新しい音楽を生み出す原動力となったのが黒人たち、すなわちアフリカから連れてこられた奴隷たちの音楽です。
例えば彼らの音楽のなかでも、キューバのハバナを経由してもたらされたハバナ風の踊りと言うことで、「ハバネラ」。
これが後のタンゴの原型なのです。
さて、今回の「せんくら」でフルートの荒川洋さんと演奏するアストル・ピアソラの名作「タンゴの歴史」は、そのタンゴの発展の有様を20世紀初頭から表現した名曲です。
話は1900年、ブエノスアイレスの場末の酒場から始まります。
この続きはまた明日…
福田進一(ギター)
今回、初めてのせんくらにて、9月30日、ショパンのスケルツォ4曲と幻想即興曲を演奏させて頂くことになりました。
私は仙台出身、ベルリンとザルツブルグに7年程留学しましたが、帰国後も仙台在住、宮城学院女子大学音楽科にて講師をし、同時に演奏活動をしています。
震災で、私の生徒たちはたくさんのものを失いました。
家を流された学生、原発のため家に帰れず避難し続ける学生、そしてお母様とともに津波にのまれ命を落とした学生がいます。
その亡くなった生徒が最後に弾いていたのがスケルツォ2番でした。
今回、スケルツォ4曲という依頼を受けた時には正直、悩みました。
震災後、涙で最後まで聴くことさえできず避けてきたスケルツォを、私は弾くことができるのだろうか?と思いました。
しかし、その生徒が、弾いて欲しいと言っているようにも思い、今回弾かせて頂くことになりました。
津波から奇跡的に救助された、彼女のお祖母様とお話しましたが、当日聴きにいらしてくださるとのことでした。
心をこめて準備したいと思います。
髙橋麻子(ピアノ)
さて、昨年はスケジュールが重なり出演出来なかった「せんくら」ですが、今年は参ります!
2回のソロ・リサイタル、デュオ・リサイタル(長谷川陽子さんのチェロ)
そして室内楽トリオ(荒川洋さんのフルート、佐々木真史さんのヴィオラ)
の四つのプログラムを聴いて頂きます。
このブログ・エッセイの初回はギターの基礎知識を少し…
ギターは実に豊かな音楽の土壌を持った楽器です。
つまり、世界各地にそれぞれ独自のギター文化があるのです。
ギターの母国スペインにはフラメンコ音楽の生まれる遥か以前、ルネサンスから伝わるギター音楽の伝統がありました。
その音楽の波は姉妹楽器とも言えるリュート音楽と合わせてヨーロッパ全域にゆったりと浸透していったのです。
リュートはアラビアのウードが起源ですが、シェイクスピアの時代になってイギリスで頂点を極めたのち、南に波及しました。
後に、イタリアには高い音域のリュートからマンドリンが生まれましたし、フランスの宮廷では食卓の音楽として、スペインでも舞踊の伴奏として5コース(各弦が2本ずつ組み合わさった複弦をコースと呼びます)のギターが活躍しました。
さらにドイツでは13コースもの弦を持つバロック・リュートという広い音域の楽器が生まれ活躍しました。
しかし、古典期になってリュートは徐々に影が薄くなっていきます。
1800年頃、ヨーロッパのギターは突然現代の6本弦の楽器に統合されました。
この経緯は今もって多くの謎があります。
ともあれ、このエレガントな楽器は流行し、多くの名手を生み出しました。
今回のせんくらで長谷川陽子さんと共演するシューベルトなど、ギターを使って作曲していたことが知られていますが、それが今お話している19世紀初頭のギター(通称19世紀ギター)です。
さらに時代が進み、19世紀の後半にスペインでアントニオ・デ・トーレスという天才的な製作家が登場します。
彼はギターのサイズを大きく改良し、共鳴板の裏に複雑な力木の配置を考えました。
今日のギターはそのほとんどがこのトーレスのシステムを元祖としています。
トーレスによってギターは多彩な音色の変化、音量を獲得しました。
この楽器を使って近代のギター奏法の基礎を確立したのがアルハンブラの思い出で有名なフランシスコ・タレガであり、その奏法は門下のリョベートやセゴビアに伝播していったのです。
しかしギターのレパートリーは、ヨーロッパ圏内にとどまりませんでした。
まだまだ違う音楽の波があったのです。
話の続きはまた明日…
Shin-Ichi FUKUDA(ギター)
※写真はドイツ・コブレンツ(ライン川のほとり)にて 2012年5月
こんにちは。
私の担当は今回が最終回となります。
今日は最後に、私と仙台とのご縁、そして私を含めSIMC出身者の仙台への思いについて書かせて頂こうと思います。
二年前の仙台国際音楽コンクールは、実は私にとって初めての国際コンクールでした。
応募してはみたものの出場は全く予期しておらず、準備も期間中も初めてのことばかりで、本当に大変な状態だったのですが、不安な気持ちで到着した仙台ではボランティアの皆様の温かさに励まされ、何とか出場という目標をクリアし、SIMC後の目標も持つことが出来たのでした。
私以外の出場者の方も、皆さん仙台で頂いた温かい思い出に感動し、本当に素晴らしいコンクール、素晴らしい街だねと話していたのを鮮明に思い出します。
そんな忘れられない思い出を頂いた仙台が、昨年震災で大きな被害を受けられた時には本当にショックで、幸いにも私のお会いした方々は皆様無事でいらしたのですが、とにかく仙台のために何かご恩返しをさせて頂きたいという思いの何人かが、先日こちらのブログを書かれた鈴木美紗さんをリーダーとする過去のSIMC出場者で企画させて頂いたコンサート、それがCharity Concert for Sendaiです。
初回は震災の二週間後に急遽開催、その期間は寝る間も惜しんで企画し、今春の第二回目も色々と難しい問題もありましたが、多くの方にご尽力頂きまして無事に開催できました。
先日のブログで鈴木さんも書いていらっしゃいましたが、このコンサートはこれからも毎年4月始めに開催していこうということになりました。
私達の公式ブログはこちらです。
http://blog.goo.ne.jp/charitysendai/
微力ではございますが、出演者全員、仙台のお役に立ちたいという一途な思いは絶対に誰にも負けない自信を持って企画して参りますので、これからも私達のささやかなご恩返しを見守って頂けますと幸いです。
そして末筆ながら、仙台の震災以前以上のご発展をお祈りしております。
今日までお付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。
それでは、九月に仙台で皆様にお目にかかれますのを楽しみにしております!
美世真里奈(ピアノ)
あっという間に、ブログ最終日となってしまいました。
せんくらでは、毎年いろいろな出会いがあります。
町の中やホールの至る場所に思い出がちりばめられているようです。
ホテルで、坂本朱さんに初めてお会いしたのに私が風邪ひきだった為大変慌ててしまったこと (ピアニストは風邪をひいてもピアノは弾けますが、歌の方にうつしてしまったら大変な事になります・・・。)
小川典子さんと偶然タクシーを同乗させていただき、いろいろお話が出来嬉しかったこと、長谷川陽子さんと牛タンを食べに行き、おいしかったこと。
ホールの中で迷子になっていたら、助けて下さったあのスタッフの方、このスタッフの方。
毎年のようにいらしてくださるお客様。
全ての出会いが懐かしく、「せんくら」という言葉と共に思い出されます。
今年もたくさんの出会いがありますように。
せんくらにいらっしゃるお客様も是非、たくさんの素敵な思い出を作ってくださいませ!!!
後、一か月とちょっと。
皆様にお会い出来ます事を楽しみにしています!
仲道祐子(ピアノ)
今から200年後、人々はどのような音楽を聴いているのでしょうか?
そんな事をたまに考えます。
きっとバッハやベートーヴェン、モーツァルトなど、偉大な作曲家の曲は、未来の人々の心にも深い感動を呼び起こし続けているでしょう。
その他にも、今はあまり知られていない作曲家の作品が多くの人の耳に届いているかもしれません。
もしかすると、今は影も形もないような新しい形態の音楽が誕生しているかもしれません。
未来の事は誰も予測できませんが、音楽というものが人類に寄り添って存在し続けることだけは確かだと言えるでしょう。
何故なら音楽は人間の心の一番深い部分に訴えかけるだけの力があるからです。
文字通り、音楽に国境はないのです。
ではその先はどうか?
実は、アメリカが1977年に打ち上げたボイジャーという2機の無人惑星探査機には、地球上の生命や文化の情報が詰まった金属板が搭載されています。
勿論そこには音楽も音として記録されています。
バッハのブランデンブルク協奏曲、ストラヴィンスキーの春の祭典などのクラシック音楽、日本の「鶴の巣籠もり」、民族音楽、ジャズ、ロックなど様々です。
演奏者も、グレン・グールド、ルイ・アームストロング、チャック・ベリー、指揮のカール・リヒター、オットー・クレンペラーなど、素晴らしいラインナップ。
現在地球から178億キロ彼方を飛行しているボイジャー1号。
今年、打ち上げから35年で太陽系の一番端の部分に到達し、今も止まる事なくその先に向けて飛び続けています。
もし遠い未来、このボイジャーを通して私達の音楽に触れる機会を得る文明が存在する時、その創造者達はどのように感じ、何を思うのか?
そんな事に思いを馳せながら、私の人生の中で出会う音楽に対し愛おしい気持ちを抱いています。
1週間お付き合いいただきありがとうございました。
仙台でお目にかかる事を楽しみにしています。
(NY タイムワーナーセンターからの眺め)
中野翔太(ピアノ)
1週間私たちのblog記事にお付き合い下さり、ありがとうございました!
皆々様と仙台の街でお会いできるのを心待ちにしております。
まずは今後の予定として、カバー第3弾のマイケル・ジャクソン・クラシックスのレコーディングに向け、メンバーそれぞれ練習に励んでいます。
CDリリースは11/21(水)を予定していますが、せんくらではCDリリースよりも一足先に、本邦初!の私たちのマイケル・ジャクソンをお届けします!!
今年から来年に掛けてのコンサート・ツアーで着用する衣装も仙台で披露する予定ですので、こちらもあわせてお楽しみになさって下さいね。
【3】
9月28日(金)19:00~20:00
青年文化センター/コンサートホール
「ビートルズ、クイーン、マイケル・ジャクソンクラシックス」
ピアノ・カルテットで聴くあの永遠の名曲!
料金:1,500円
対象年齢:小学生以上
曲目
ビートルズ
ノルウェーの森、抱きしめたい、イエスタデイ
クイーン
ボヘミアン・ラプソディー
ウィー・ウィル・ロック・ユー
ボーン・トゥ・ラヴ・ユー
マイケル・ジャクソン
スリラー、今夜はビート・イット
ディス・イズ・イット
ほか
もう1公演は、なんとなんとチケット完売とのお知らせが!!!
何と嬉しい事でしょう!
チケットをお持ちの皆様、イズミティ21 小ホールで一緒にロックしましょう!
こちらはビートルズ&クイーンのプログラムです。
【51】
9月29日(土)16:00~16:45
イズミティ21/小ホール
「ビートルズ & クイーン ロンドン・クラシックス」
ピアノ・カルテットで聴くあの永遠の名曲!
• 料金:1,000円
• 対象年齢:3歳以上
曲目
ビートルズ
ノルウェーの森、抱きしめたい、イエスタデイ
クイーン
ボヘミアン・ラプソディー
ウィー・ウィル・ロック・ユー
ボーン・トゥ・ラヴ・ユー
初めての仙台、憧れのせんくら・・・9月を楽しみに日々邁進したいと思っています!
お目に掛かるのを楽しみにしています!
1966カルテット(アンサンブル)
本日も、コンサートのご案内です。
軽井沢にアトリエブルックスというギャラリー&サロンがあるのですが、そこには、何と、プレイエルのピアノが置いてあるのです!
ショパンの愛したプレイエル社のプレイエルのピアノです!
2006年製のP190という機種がはいっているのですが、これを弾くとショパンの世界がまた違った角度から見えて来るのです。
繊細な響きの楽器で、ショパンの意図した音は本当はこんなだったのかしら?
と、次から次へと想像力が湧いてくる楽器なのです。
きっとお聴きになる方もサロンを愛したショパンの姿がより身近に感じられるのではないでしょうか。
アトリエブルックスにて8月18日16時開演でオールショパンのコンサートです。
今回はチェロの長谷川陽子さんとご一緒のオールショパンです。
チェロソナタあり、序奏と華麗なポロネーズあり。
チェロという楽器とプレイエルのグランドピアノの響きが紡ぎ出すショパンの世界が大変楽しみです。
ピアノのソロ曲も演奏致します。
ご興味のある方、お問い合わせは
アトリエブルックス:TEL.FAX 0267-42-1405 です。
仲道祐子(ピアノ)
家にいる時は、ちょこちょこ料理もします。
いったいどんなに凝ったものを作るのかと思われるかもしれませんが、ニューヨークに住んでいた頃から、パスタなど比較的簡単に、短時間で出来るものを作っています。
パスタや蕎麦などは、十中八九、計量器を使わずに100グラム掴む事が出来るまでになりました!
最近は朝食に作るオムレツにハマっていて、中はふんわり、見た目もバッチリ(笑)
今はより美味しくなるバリエーションを試しています。
留学中、魚のグリルを作る際、焼き加減を見る為にオーブンを開けたら干物になっていたり、キャベツと鶏のスープを作ったらキャベツが殆ど生だったりと、失敗談にも事欠きません。
凝り性なのですが、そこまでする程時間もとれないので、ちょうどいいのかもしれません。
中野翔太(ピアノ)