藤原真理(7)

2008.08.23| 藤原真理

エコロジーという文字を目にしない日はない近頃です。皆さんは何を自分に課しておられますか?人間、何も食べないでは生きていけないので、避けては通れない日々の食料のことから振り返ってみると、こんな具合です。

・台所の生ゴミは良く水気をしぼり、なるべく乾燥させる

・無駄な買い物、食べ残しはしないよう努力する

・分別ゴミはこまめに分ける・マイ・バッグは常に持参・・など。

私はマイお箸をバッグに入れて使うようにしていますが、間伐された木などから作られるのがおもだという割り箸は実際にどの程度の分量がそうなのでしょうか?スーパーのレジ袋も、石油から物を作る過程ででてくる不要物に近いものを利用しているので、袋にしないで不要物を処理するとなると余計に環境汚染になりかねないとか。ラジオの「夏休み子供相談」の子供達のように、「何々はどうなっているのですか?」と尋ねたくなります。粛々と続ける作業に、時に果てしなさを感じます。

[写真:富良野の「富田ファーム」、早咲きのラベンダー、7月9日に訪れたときのもの。]

 

松下功(7)

2008.08.23| 松下功

さて、私のブログも今日で最終日。

ここで私の出演するせんくらのプログラムを少し紹介しましょう。

コンサート番号40、ソプラノの菅英三子さん、テノールの中鉢聡さんとのオペラ・アリア名曲集。

菅さんは、長野オリンピックで初演した私のオペラ「善光寺物語」に出演して頂き、その美しい声にすっかり魅了されました。中鉢さんは、初めてご一緒させて頂きますが、やはり美しい声で、東風のメンバーも楽しみにしているコンサートです。「夜の女王のアリア」、「誰も寝てはならぬ」、「メリー・ウィドー」など、名曲ばかり。

2日目のコンサート番号78は、和太鼓の天才・林英哲さんとの「飛天遊」、新進気鋭の津軽三味線奏者・浅野祥さんとの「津軽三味線協奏曲」。林英哲さんとは、もう30年来のお付き合い。一緒に太鼓を持って「飛天遊」のベルリンでの初演に行って以来、彼にはこの曲を150回ぐらい世界各地で演奏してもらっています。2000年のベルリン・フィルとの共演は素晴らしかった。大親友でもあるが、同じ年の筈なのにあの若さは許せない~~~!!!浅野さんとは初共演ですが、若さ溢れるバチさばきに大きな期待を持っています。

コンサート番号79は、ピアノの津田裕也さんとモーツァルトのピアノ協奏曲を競演します。津田さんは目下、私も住んでいたベルリンで勉強しているそうですが、私の大好きなイ長調のこの曲をご一緒出来る事を楽しみにしています。

コンサート番号45は、オーケストラの楽しい作品を集めたコンサートです。「ハンガリー舞曲」や、「愛の挨拶」などもありますが、是非、幻想曲「通りゃんせ」をお楽しみ下さい。今や、横断歩道の曲と思われている「通りゃんせ」が、手拍子も入るスペクタクル作品となっています。一緒に参加して下さい。

第2日目は、コンサートが3回あり、リハーサルもその間に入ってくるので、東風にとっては忙しい一日になりそうですが、仙台名物・牛タンだけは、しっかり食べに行きますよ。

3日目のコンサート番号82は、モーツァルトの「フルート、ハープのための協奏曲」を、早川りさ子さん、荒川洋さんと競演します。名作中の名作ですが、演奏難しいところばかりです。一生懸命演奏して、皆さんに楽しい一時をお送りしたいと思っています。

10月に私の大好きな杜の都・仙台でお目にかかりましょう!
そして、今後もアンサンブル東風を宜しくお願い致します。

松下 功(ホームページもご覧下さい。http://www14.ocn.ne.jp/~isaomtst/index.htm )

*2007年10月26日、私の『飛天三部作』の初演時の写真。応援に駆けつけてくれた人たちと、左から作曲家のファブリチオ・カルローネさん(森さんのご主人)、ヴァイオリニストのジェラール・プーレさん、私、ソプラノの森麻季さん、和太鼓の林英哲さん。

 

藤原真理(6)

2008.08.22| 藤原真理

ホールが響かない時はどうするか。どういう傾向の響き不足かを可能なかぎり把握したら、あとは開き直りでしかありませんが、いくつかの注意点はあります。特に弦楽器は響かない場所では音の持続が大変で、無意識のうちにテンポが速くなりがちです。これを注意すると同時に、過度にゆっくりしたテンポも取らないようにします。音が豊かでないのに遅いと、意味なく弾いているように聞こえるためです。そして、基本が響かないのですから、よけいにピアニッシモの弱音に気を配り、すこしでも変化がつくように気を配ります。

響きが豊富な場合は、出した音の全部が響いてしまうので、ひとつひとつの音の粒が客席まで明解に聞こえるようにテンパを速くしすぎないように、弱い音をさらに弱くしてフォルテとの差を作ります。そしてピアノと一緒の作品では、ピアノのペダルの量を減らして、ワンワンと残響が残りすぎるのを軽減しなくてはなりません。

松下功(6)

2008.08.22| 松下功

今日は先ず、写真の紹介です。

これは、2005年の9月にスイスのルツェルン音楽祭でピエール・ブーレーズ氏と一緒に撮ったものです。

 

2006年の4月に、東京藝大の「創造の杜」企画で〈ブーレーズ〉特集をすることになり、是非、氏にお会いしてお話を伺いたいと思っていたのですが、偶然ルツェルンでお会い出来ることになりました。丁度、アムステルダムのガウデアムス現代音楽祭の審査をすることになっていたので、その前にルツェルンに寄って、1時間ぐらいお話をさせて頂きました。2時間以上のオーケストラの練習を1回の休みも取らずにエネルギッシュに行った後、直ぐにお話をすることになりました。「お疲れでしょう。申し訳ありません。」と気遣いをすると、「いやいや、大丈夫です。ようこそお出で下さいました。」と、逆に気遣いをされてしまいました。その後は、実に素晴らしいお話をさせて頂きました。作曲家として、指揮としても、そして、温かい心に満ちた人間性溢れるその偉人と話をした1時間は、生涯忘れえぬ思い出です。

「松下さん、お仕事は何ですか?」という質問を受けることがありますが、自分でもなんと答えようかなと思う時があります。作曲という仕事をメインにしていますが、指揮も古典から現代まで機会があれば何でもやっているし、講演もするし、教えもしています。勿論、企画もやりますが、最近は司会までやることがあります。そういえば、子供のコンサートでは、トラの格好をして、踊ったり・・・。とは言え、音楽に纏わることでいろいろなことをやっているので、音楽家であることには変わりありません。私はこれまでに、様々な活動をする人に多く出会ってきました。マルチな活動をしていた黛敏郎先生、企画力を鍛えてくれた石井眞木さん、伝統音楽の広がりを教えてくれた、尺八の山本邦山さん、能の野村四郎さん(この両巨匠は酒豪・・・、良く一緒に飲みすぎます・・)。アジアの魅力を知らしめてくれたフィリピンの作曲家・ホセ・マセダさん、私の作品の良き理解者で、遊び仲間でもある指揮者・英国のダグラス・ボストック、パリ音楽院教授のジョルト・ナジ、中国出身の葉聡。皆さん、それぞれに自由で型にははめる事が出来ない活動をしています。そして、いつもこれらの人々から、多くの刺激を受けています。

私の仕事は、音楽を通じて人と人との出会いの空間を作ることだと思っています。

仙台でも、また素晴らしい出会いを楽しみしています。

藤原真理(5)

2008.08.21| 藤原真理

みなさんも自分好みのものを色々お持ちでしょう。たとえば一杯のコーヒーを飲むにしてもどこそこというように、それぞれのものや場所へのこだわりなどです。演奏家としては、やはり、演奏する場所にこだわりたくなります。

ホールも楽器の一部といわれるように、その場所の特質からは逃れられません。適度な響き具合で、出している音が推進力を持って客席にとどき、それが演奏していて体感できる弾きやすいところ。あるいは、自分が出している音の返りが少なくて「のれんに手押し」状態で「労多くして実らず」とか、逆にワンワンと残響があって音が混ざりすぎるとか言うこともあります。当日のリハーサルで、舞台上のより良い演奏の位置探しをしますが、問題が全て解決することはありません。今日の現時点で、ここらあたりが最善であろうというという場所に定めたら、あとは、まな板の鯉です。音を出して、それを持続させることだけにエネルギーを使ってしまわないように気をつけて、演奏するだけです。

演奏会が済むと、チェロを弾くという偏った使い方をした筋肉のバランスを取り戻すために、運動をしたり、ハリやマッサージを受けます。右側だけが異常に固いとか、いつもと違う筋の張りがある、などなど、自分自身の体感でもわかりますが、治療師の先生からも同じ指摘を受けます。超がつく正直さです。

[写真:かもい岳温泉のハンモック。昼寝と読書に最適]

松下功(5)

2008.08.21| 松下功

やっと5日目。今日は、私が努めている東京藝大のお話を少し書きましょう。

東京藝大は、昨年創立120周年の記念行事を行いました。東京音楽学校、東京美術学校となってから120年経ちました。音楽学部、美術学部、映像学科(大学院のみ)があり、それぞれの部署で教育活動を行っています。実は、私はこのいずれにも属していません。私の所属しているところは、演奏藝術センター(Performing Arts Center)といい、独立した一つの部署であり、藝大の内外で演奏会やイベントの企画・運営を行ったり、両学部の学生たちに新しい活動を啓蒙する授業をしています。私たちの演奏藝術センターには、学生は所属していませんが、多くの学生と共同作業を行っています。現在、私の他に指揮者の湯浅卓雄さん、元テレビ朝日のプロデューサーの大石泰さんが常勤で、他に演出家や照明家が所属しています。数人の小さな部署ですが、機動力のある面々ばかりで、これまでにいろいろな経験をしてきた人たちの集合体です。

 

藝大にある奏楽堂での演奏会企画がメインですが、私たちは毎年3つの柱を立てて企画しています。

 

その一つは『藝大の響き』といい、多くの音楽学部の科が係われる企画を行っています。ドヴォルザーク、ラヴェル、シューマン、メシアンなどの作曲家に焦点を当てて、レクチャー&コンサートを行っています。

 

もう一つは、『奏楽堂シリーズ』と題し、「うたシリーズ」、「ハイドン・シリーズ」、「弦楽シリーズ」、「オルガン・シリーズ」、「管楽器シリーズ」など、各科のシリーズ企画のバックアップを行っています。
最後の3つ目の柱は、『藝大21』と題し、演奏藝術センターが外部との連携を取りながら独自な企画を行っています。「ジャズin藝大」、「藝大とあそぼう」、「創造の杜」、「和楽の美」など、人気のある演奏会もあります。取分け、「ジャズin藝大」、「藝大とあそぼう」は、藝大奏楽堂の目玉企画で、毎回多くの人が詰め掛けます。「ジャズin藝大」では、私は司会も指揮も担当します。まあ、何でもやる課です。

私は、兼担として作曲家の学生も教えていますが、机の上の勉強だけでなく、実践の場を多く体験させたいと思っています。実は、この週末は学生たちと長野で過ごしています。毎年8月に私が音楽監督を務める長野のカメラータ・ナガノという演奏団体と共に、音楽会を行います。この音楽会で学生たちの作曲コンクールを行い、毎年一人にカメラータ・ナガノの作品委嘱をしています。今年の9月には、学生たちと韓国の延世大学との交流演奏会でソウルに行きます。ソウルとの連絡や運営はすべて学生たちが行っています。

*写真は、少し古いのですが夏の山での音楽会の打ち上げの模様です。留学生も数人います。

藤原真理(4)

2008.08.20| 藤原真理

古典の神様のようにいわれているバッハは、1720年代の当時でもまだ独奏楽器としてもてはやされるはるか以前であったチェロのために、無伴奏で組曲を書きました。画期的なことでありすぎたのか、作曲されてから100年ほどは作品自体あまり知られずに、どこかに埋もれていたようでもあります。実際は際限がない奥深さをもち、多くの可能性を秘めた曲です。スペインのチェリスト、パブロ・カザルスによって再発見され、チェリストにとっては無視できない、聖書のような存在になっています。

2番の前奏曲はロマンティックですが、4番の組曲は明るい調性で書かれているのに、弦楽器で演奏する身としては、気分は重い。調性のせいかどうか、楽器の発音の際に雑音が出やすいというのが最大理由です。そう思うのは私だけでしょうか。ここ10年ほどかけて、かなり改善はしましたが、解決した訳ではない。それこそ、いつかバッハのお墓に詣でてお礼参りがしたいと思うほどに文句も言いたい。でも、そう思う私にとっても、無数に近くある彼の作品のそこここには、心にしみいる和音と旋律があることも事実です。偉大なんですね。

若いときは特に血気盛んで決闘をして牢屋にぶち込まれたり、子供が大勢いて生活が大変だからお給金を上げてほしいと切々と領主宛に手紙をしたためたり、自分の作品の複雑な音型にオルガニストが指をもつれさせるのを見聞きしてげらげら笑ったり、という逸話を知ると、彼も同じ人間なんだと納得させられました。

[写真:アメリカ・マンモス・マウンテンに行く道中の風景のひとこま]

松下功(4)

2008.08.20| 松下功

今年は、本当に暑いですね。この暑い中、高校球児はえらいですね。オリンピックで視聴者も減っているのがかわいそうですが、何しろ倒れないように頑張ってほしいと思いました。しかし、地球温暖化を何とかしないと大変だ~~!

7月初旬にスイスのインターラーケンに行ってきました。ユングフラウ音楽祭で私の曲「飛天の舞」が、指揮講習会の課題曲になり、レクチャーをしながら来ないかとのお誘いを受けました。「天空の舞」は、吹奏楽曲で、不動明王の真言のリズムを用いています。2+3+3, 2+2+2, 2+3+2とい21拍子という複雑な拍子ですが、若い指揮者たちが熱心に取り組んでくれました。この曲は、昨年に「飛天の舞」、「飛天の祈り」、「飛天遊」の3曲からなる『飛天三部作』として演奏されました。全体は、50分からなら三部作ですが、私の<飛天シリーズ>の集大成です。しかし、スイスは涼しかったな~!

今年の4月には薬師寺のお坊さんたちの曲を書きました。これは、東京で開催された「薬師寺展」の時にいらした10名のお坊さんとオーケストラのための作品で「声明カンタータ」と題しました。声明は西洋的発想では、とても扱えないアジア、いや日本独自の音楽です。それぞれが自由に唱えている声明に伴奏をつけてしまおうという、大胆不敵な試みでしたが、不思議な音響空間を見出すことが出来ました。再来年は“平城京遷都1300年”ですので、薬師寺でこの曲が演奏できたらいいな~~!

といいつつ、この所仏教物の仕事を多く行っています。今年11月には、東京・板橋の安養院で5仏の開眼法要を作曲します。演奏は真言宗のお坊さんとアンサンブル東風です。

* 写真は、ユングフラウヨッホ(温暖化で氷河が減っているようだ)

藤原真理(3)

2008.08.19| 藤原真理

ラフマニノフと聞いて、皆さんは何を真っ先に思い浮かべられますか?名前を知らなくても、甘美で親しみやすいメロディーはどこかで耳にされた方も多いのでは、と思います。崩壊しかけているロシア帝国からソヴィエト連邦へ移行する激動の時期にラフマニノフは生きました。音楽的な特徴を一言でいえば、チャイコフスキーの流れを引き継ぎ、調性と色彩感覚を重要視した人でもあります。今回仙台で演奏するチェロ・ソナタは、4つの楽章がそれぞれ際立った特徴を持ちながら、ロマンチシズムにあふれています。肩の力を抜いてお聞きいただくのが一番でしょう。

私事ですが、将来のいつか、彼の第二の故郷といわれる南ロシアにあるイワーノフカを訪れてみたいと考えています。

[写真:アメリカのヨセミテ国立公園、巨大セコイアの木]

松下功(3)

2008.08.19| 松下功

実は、私は仙台とは長いお付き合いになります。

1990年3月に開催された「アジア音楽祭・東京/仙台」では、事務局長を務め、頻繁に仙台に伺いました。3日間東京で、4日間仙台で開催された大規模なアジアの音楽祭でした。仙台側は、仙台市民文化事業団と、中心的存在の作曲家の片岡良和さん、先日亡くなった作曲家・本間雅夫さんをリーダーに、若い作曲家・石川裕さん、宮城純一さんたちが一生懸命になって運営した、思い出深い音楽祭でした。大会会長は我が師匠でもある黛敏郎先生、実行委員長は石井眞木さんという両巨匠で、毎日のように叱られていたのは今となっては良い思い出です。

私は1979年から1986年までベルリンに住んでいて、日本とドイツを行き来した生活を送っていました。しかし、1988年に香港で開催された「アジア作曲家連盟(ACL)」の大会に参加して、アジアの文化に魅せられ、またアジアの音楽家たちと親しくなり、すっかりアジア方面に目を向けた活動に切り替わりました。

 

目下、副会長を努める社団法人・日本作曲家協議会(JFC)が、アジア作曲家連盟の日本支部で、1998年以来、毎年連盟の会合には出席してきました。そして、1999年から2003年まで、連盟の会長を努めることになりました。その時は、本当にいろいろな国に足を運び、アジアの音楽界を見て回りました。韓国は年に3回、香港、台湾、フィリピンの作曲家たちとは日本の友人より会う機会が多いほどでした。その他にも、インドネシア、タイ、ミャンマー、イスラエル・・・など、多くの人たちと知り合うことが出来ました。

昨年、シンガポールのチャイニーズ・オーケストラから委嘱で2本の尺八のための協奏曲「天空の舞」をいう曲を書きました。これはすべて中国楽器によるオーケストラですが、「他の国の人たちが作曲しなければ本当のインターナショナルのオーケストラにならない。是非、曲を書いてほしい。」という、指揮者・葉聡(Yeh Tsung)の強い要請で、チャレンジをしてみました。楽器の勉強から始め、本当に苦労しましたが、アジアの文化の奥深さを知り、新しい可能性を見出しました。まさに〈可能性の宝庫・アジア〉です。

*写真は、「天空の舞」の初演の様子です。

尺八:山本邦山、山本真山、指揮:葉聡、シンガポール・チャイニーズ・オーケストラ

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