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SENCLA BLOG

ブログ

前橋汀子
2006.06.25

2006年06月25日

こんにちは。ヴァイオリンの前橋汀子です。

「せんくら2006」で10月8日・9日に<前橋汀子特選ヴァイオリン小品名曲1>、<前橋汀子特選ヴァイオリン小品名曲2>を各日2回のコンサートで演奏します。

この「せんくら2006」は、3日間にわたり朝9時半から夜9時半までの1日中、7つのコンサート会場で90以上のクラシック音楽のプログラムが演奏されるそんな催しで、わたくしにとってはまったく初めてで未知の体験です。想像しただけでまさにそれはお祭り、“カーニヴァル”、なんだかワクワクします!

「杜のみやこ」仙台は、わたくしの好きな街です。今年はすがすがしい新緑の5月に、NHK交響楽団のメンバーとヴィヴァルディの「四季」を演奏しました。そしてまた今回は、さわやかな初秋の10月にこの「せんくら2006」で演奏できるということで、今から楽しみにしています。

“クラシック”というと、古典(英語で直訳)でちょっと堅苦しいようなイメージがあるかと思います。

でも、クラシック音楽はそれぞれの時代に、それぞれの作曲家たちが、伝統やその文化を背景に旋律やテンポ感を取り入れ、作り上げたその時代の最先端、最高傑作の曲がたくさんあります。そして、それらの曲は時代を越えて愛され、親しまれ、今に至るまで長い間演奏され続けてきました。

どうぞまずは、来て、見て、聴いて、そして雰囲気を楽しんでください。

わたくしもみなさまと、一時をご一緒できるのを楽しみにしています!!

オフィシャルサイト
http://www.bunka.city.sendai.jp/sencla/

前橋汀子(ヴァイオリン)

加藤洋之
2006.06.25

2006年06月25日

こんにちは、はじめまして。
ピアニストの加藤洋之(ひろし)と申します。
本日より7日間、どうぞよろしくお願いいたします。

もともと私は演奏の場以外で、自分自身のことをたくさんの人に伝えるというのが不得手な方ですし、気分屋で、怠け者でもあるので、ブログ等といったものは一生縁がないと思っておりました。しかし今回は、リレー方式で期間限定というのが興味深いし、テーマを絞ることができるので、自分でも何かできるかもしれない・・・という気になり、最初で最後であろう経験をしてみようと思います。

さて、何を書こうか・・・・・
・・・・・そうだ! 自分の話が苦手なら、ほかの人の話を書いてしまおう!ということで、今まで一緒に音楽を作った、たくさんの素晴らしい方々の中から、一日につき一人、自分との出会いや思いなどを述べていく事にします。

一日目は、チェリストの原田禎夫さんです。現在はドイツのトロッシンゲン音楽大学の教授であり、サイトウ・キネン・オーケストラや水戸室内管弦楽団等の首席奏者を務めたり、多くの国でマスタークラスを持ったりと、まさに東奔西走、多忙な日々を送ってます。が、、、、なんといっても東京クワルテットをつくり、30年に渡って世界の音楽界で最高レベルの活躍を続けてきた名演奏家です。ちなみにドイツでのコンサートのプログラム等の紹介欄にはいつも”…..ein besten Streichquartetten der Welt. (世界最高のカルテットのひとつである・・・)”と表記されていました。

初めての出会いは1999年の冬、ドイツでした。そして・・・
・・・最悪でした。

ドイツに住んでいたときに、毎週のように訪れては室内楽浸けになって勉強したり、楽しんだり、おいしいものをご馳走になったり、呑んでは音楽や人生のことを何時間も話したりと、本当にお世話になり続けた日本人チェリストの大きな家が、ダルムシュタット郊外の小さな村にありました。岩本さんといって、在独がもう間もなく40年になる方で、2つに分かれる前の日本フィルで首席奏者でしたが、分裂後ドイツに渡り、長年ダルムシュタット歌劇場の首席奏者を務められました。海外のオーケストラの日本人奏者のパイオニアといえる一人でしょう。彼や、そこでの室内楽仲間のことについてはまた別の日ということにして、、、

室内楽を合わせに行っていたある日の晩、突然テキーラやらなにやら酒瓶をたくさん抱えて、すさまじいテンションで乱入してきた人がいました(この家は本当に人の出入りが多く、いつ訪れても必ず誰かいる)。
この方も在独期間の長い、ドイツの音大の日本人教授でしたが、もうすっかりできあがっており、「駆けつけ3杯だ〜っ!」と家の中を駆けまわり、なぜか、まだピアノを弾いていた私が、グラスになみなみと注がれたテキーラを3杯立て続けに呑まされ、あとはそのまま何をどのくらい飲んだか判らないほど呑み続けることになりました。

・・・当然翌朝はまともに起きられたものではありません。

寝室からなんとか這い出したもののそれ以上動けず、2階にある居間のソファでのたうち回っていると・・・
下の食堂から聞きなれぬ声がしてくるので、「あ、また来客だ。誰なんだろう」と、手すりにしがみつきながら、カタツムリのように階段を下りていきました。

そこで岩本さんとご飯を食べていたのが原田さんでした。東京クワルテットのドイツ・ツアー中で、その晩はハイデルベルクでコンサートがあり、長い付き合いの岩本宅が近いので立ち寄ったそうです。

「こんにちは・・・」と声を絞り出して挨拶したのですが、原田さんは明らかに固まってしまい、箸も止まり、瞬きもせず、沈黙の後「・・・あ・・・どうも・・・」と固まったまま声を発しました。岩本さんが「彼は昨日さんざん飲まされて・・・」と言葉をはさんでくれたのですが、相変わらず固まったまま、「あ・・・あっちの部屋にいって休んでれば・・・」と、一刻も早く目の前から消え去ってほしいようでした。後から「だって、急に得体の知れない生き物というか物体が現れて・・・」と言われました・・・
・・・まったくその通りで、あの時の自分は人間としての機能を果たしていなかったと思われます。

それから1,2時間ほど経って回復してきましたが、家の人たちが皆昼寝をしてしまったので、原田さんが「何か音を出して遊んでみようよ」と声をかけてくださり、幸運にも一緒に合わせてみることになりました。

音を出した途端・・・

すごい風圧というか、巨大な壁がこちらへ向かって押し寄せてくるようで、根こそぎ吹き飛ばされそうな感じでした。自分がひょろひょろの草になったみたいで、一小節たりとも音が出せなくなりそうでした。ただ気持ちも指もへにゃへにゃと鍵盤を撫でながら、圧倒されているだけの時間がしばらく続きました。

「このままでは、ただ音をくっつけて”伴奏”しているだけで、何もないまま終わってしまう。こんな機会もう2度とないかもしれないのに・・・」そう考え始めて「合わなくなって、崩れて、破綻してもいいや」と無我夢中で表現を表に出して、ぶつけていきました。すると、こちらが何をしても、その表現を完全に受け止め、ひとつの音楽として融合してさらに大きなものへと変容させていくのです。
初めて一緒に弾いているのにもかかわらず・・・。こちらが驚嘆しているうち、あっという間に時は過ぎ、彼はコンサートへと出かけていきました。

しばらくの間、自宅のあったケルンに戻ってからも
「あんな世界があったなんて・・・」と、それを垣間見れた喜びとともに茫然としていました。

幸運なことにその後、現在に至るまで何度も一緒に演奏する機会を持たせていただいてて、特にそのリハーサルは、普段自分が作品や作曲家に対峙するときの心の糧となっています。一音一音、あらゆるフレーズに自らの身を削るかのようにして情熱を注ぎ込んでいき、音楽を自らの血肉と一体化させていくようなリハーサルは最高に幸せな充実した時間です。

「結成当時から東京クワルテットはいったいどんなすさまじいリハーサルをしていたんだろうか」などと思いを馳せると、ちょっと羨ましい気持ちになります。そして常に「なんてすごい曲なんだ、すごい作曲家なんだ」と、音楽が大好きな学生のように、いまだ憧憬と理想と尊敬を持って演奏をしている姿勢に心から憧れ、自分もずっとそうあり続けたいと思います。自分より20歳以上も年が離れてるのに、話をしてても年齢による違和感がないどころか、同世代の友人たちよりもはるかに若く感じることがしょっちゅうあるのは、そういったところから来ているんだろうな・・・。

それにしても・・・・・

いくら好きだからって、とんかつ屋で「キャベツ、味噌汁お替り自由」というのを見て「肉食べたいんだよ〜」といってとんかつをお替りするのは如何なものだろか・・・・・

オフィシャルサイト
http://www.bunka.city.sendai.jp/sencla/

加藤洋之(ピアノ)

雄倉恵子
2006.06.24

メリークリスマス・ミスターロレンス

最終回の今日はアンコールについて。弾きもしないうちからアンコールとは図々しい限りですが、ご許可をいただいたのであえて。

今回2つのコンサートのアンコールで弾くようにご指示いただいたのは、坂本龍一さんの「エナジーフロー」と「戦場のメリークリスマス」です。クラシックの小品特集で、現代日本で、それらの中にいれても匹敵できる曲、ということでプロデューサーがお選びになったとのこと。

確かに武満徹さん、三善晃さん他、現代日本でも素晴らしい作曲家はたくさんいらっしゃいますが、このプログラムに合うといえば坂本さんですね。私は特に「センメリ」のテーマ曲「メリークリスマス・ミスターロレンス(これが正式タイトル)」は、本当にクラシックとして後世に残る素晴らしい作品だと思います。

元の映画ではシンセサイザーでしたが、坂本さんご自身の弾かれたピアノバージョンのCDもあり、ピアノ作品としてもよく弾かれます。

最後にこれが弾けることは本当に光栄ですし、うれしいので、皆様それまでの私の演奏がたとえつたなくても、「せんくら」でこの作品が演奏された、という歴史をつくるために(大げさ)どうぞ拍手をよろしくお願いいたします。

1週間ありがとうございました。自分のことをのぞけば、実に楽しそうなフェスティヴァルですね。自分の出番の後は、びっしりはしごしてなるべくたくさんのぞかせていただきたいと思っています。一聴衆としてはリンボウ先生や五嶋節さんのお話が聴けるなど夢のようです。では、その時に。

雄倉恵子(ピアノ)

長谷川陽子
2006.06.24

【せんくら】でお会いしましょう!! 

一週間お当番させていただいた【せんくらブログ】本日が最終日です。一週間お付き合いくださりありがとうございました!!

生もののコンサートは毎回一期一会です。演奏中、演奏家の頭の中にあるものも毎回違います。「次のフレーズのあそこを、こうしよう」と考えている場合もあります。 またとってもお腹がすいている時は、思わず「うーん、ここは海の近くだから、弾き終わったら今日は美味しいお魚!!」などと・・・^^;イケマセンよね、ベートーヴェンを弾いている時に仙台湾で獲れるお魚のことなど考えていては・・・人間は空腹だと何か良からぬ事を考え始める生き物なのですm(_ _)m

そんな現実的なことを考えている時もありますが、たいていはその時その時の音のイメージに合った情景を思い浮かべていたり、曲に合わせて一人頭の中で物語を作ったり・・・。逆に、何も考える余裕なく無我夢中で、弾いている最中の記憶がほとんどなく、お客様の拍手でふと我に帰る時も。本当はこれが一番の理想かもしれません。(これは私だけかもしれませんが^^;)

それから会場のお客様の熱気に煽られて、思わず演奏家も予想以上に火が付くこともあるのです。これはこれで弾いていて、とっても楽しい^^

今回のピアニスト仲道祐子さんとはここ数年何度も共演をしていて、私が信頼しているピアニストの一人。とてもチャーミングなお人柄です^^二人とも今から「せんくら、楽しみだね〜」と話しています。

コンサートは毎回一期一会。色々な要素が偶然的に発生して、一瞬一瞬の音空間を埋めていきます。私のコンディションは勿論、共演者、ホールの響き、お天気も影響します。それから客席にいらっしゃるお一人お一人皆で創りあげるもの。その一瞬の音は、その場に居合わせている人たちだけの物、二度と同じ音楽は生まれないのです。皆様と一緒に幸せな時間を作れるような・・そんなコンサートに出来たら、とても幸せです。

最後に宣伝!!【せんくらブログ】より不定期更新で日記風雑文ですが、私のオフィシャル・ブログも、よかったら是非遊びにいらして下さいね^^
http://www.yoko-hasegawa.com/index.html
10月7&8日に皆様とお会いできるのを、今からとても楽しみにしています!!

是非【せんくら】でお会いしましょう!!

長谷川陽子(チェロ)

雄倉恵子
2006.06.23

ロマンティックショパン

<CMで聴いたピアノ名曲集>の後半の5曲です。

バッハ:パルティータ第1番よりアルマンド (ロイズチョコレート)
ドビュッシー:アラベスク第1番 (資生堂オードレシピ)
サティ:ピカデリー (ロート製薬ロートCキューブ)
ショパン:ノクターン遺作 (パナソニックヴィエラ)
:幻想即興曲(カプコン・クロックタワー3)

やはりバッハはしぶといですね。私のやらせていただく2コマだけでも2曲。結局クラシック音楽のビッグ3はやはりバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンというのは不変というところでしょうか。

アラベスクはドビュッシーの最初期の作品。デビュー当初でもこうやって残る作品にするのですから、やはり天才というべきでしょう。

サティはそのドビュッシーやラヴェルにも影響は与えましたが、ちょっと傍流の感じのやはりまぎれもない天才。「ピカデリー」はジャズっぽいラグタイムのリズムによる楽しい曲です。

ショパンの遺作のノクターンは、このCMの他、映画「戦場のピアニスト」でも使われ、ただでさえある程度知られていたのが、完全にポピュラー名曲の仲間入りをした感じです。究極的にロマンティックな作品。「幻想即興曲」は、昔は給食の時間とか学校でよくかかっていましたが、今はどうなのでしょう。この曲はショパンの生前には出版されなかったとか。今も昔も天才も楽ではないようです。

雄倉恵子(ピアノ)

長谷川陽子
2006.06.23

本番グッズ 

5月の【せんくらブログ】にもギターの福田さんが登場していらっしゃいますが、ギタリストほど直接的に音に影響する訳ではないとはいえ、器楽奏者はツメの手入れが欠かせません。あるピアニストは「昨日伸びた分のツメを毎朝必ず切る」というし、私自身ツメやすり3往復程度で削れる微調整でも、弦を押さえた時の感触が変わってくるのです。

そんなこんなで、今日は【私の本番の隠れた七つ道具】についてお話しましょう^^

♪一番左下のピンクのシールとその隣の青い小さな物体は弓の滑り止めに。ゴムを巻いている方もいますが、両方とも大きな文具店で事務用品として売っているものです。このピンクのシールはなぜか最近見かけなくなりました。先日メーカーに直接電話してダンボールでお取り寄せ。

♪そしてブルーのお隣の赤い細長いモノは、先ほどの話のツメやすり。時には左指先の硬くなった角質もこれで削ります。

♪下の一番右はご存知のかたも多いかと思います、チューナー。特に無伴奏を弾く時は、個人的な好みでかなり通常より調弦を下げるので、そんな時使います。

♪そして、その上。こちらはサージカルテープ。これは、チェリストがステージ上のどこで弾くと一番ホールがよく響くか・・・とゲネプロでの試し弾きの時の目印や、突然楽譜の製本をしなくてはならない時、そして指先が割れてしまった時のテーピングとしても大活躍してくれる強い味方です!!

♪お隣はご存知、使い捨てカイロ。これを発明してくれた方、本当に素晴らしい!!一年中チェロ・ケースの中にはこれが数個常備してあります^^

♪そして最後の左上の黒い物体。こちらは弱音器です。たまにですがリハーサルをしてみて、「間に合わない!!」と旅先のホテルで夜慌ててコソ練する時があります^^;そんな時はお隣の宿泊客の安眠のために必ずこれを楽器に付けて・・・何度私のコソ練の危機を救ってくれたことでしょう?!

【せんくら】期間中は、弾くだけでなく、私自身も聴きに行きたいコンサートが目白押し。それに普段忙しくて会えない演奏家仲間とも、コンサートの後美味しいお酒もチョットぐらいは飲みにも行きたい・・・!!仙台では、この弱音器のお世話にならなくてもいいように、今から頑張っておこう・・・!!とこのブログを書きながら決意を新たにした長谷川でした^^;

長谷川陽子(チェロ)

雄倉恵子
2006.06.22

テレーゼのために?

次は<CMで聴いたピアノ名曲集>。
前半で以下の4曲を弾かせていただきます。

リスト:愛の夢(京セラ クレサンベール)
バダジェフスカ:乙女の祈り (ユニマットレディース)
ベートーヴェン:月光の曲 (三菱電機 DVDカーナビ)
ベートーヴェン:エリーゼのために(関西ツーカーフォン)

リストさんはご自身が大ピアニストで、現在のリサイタルという演奏会のやり方を初めておやりになった方だとか。それまでは貴族に呼び出されたときに弾く、とかだったのでしょうねー。

バダジェフスカさんは、ポーランドでショパンよりちょっと後に生まれた女性。ショパンさんも30歳代で亡くなっていますが、バダジェフスカさんは23−4歳というさらなる若さで病没されたそうです。ほとんどこの「乙女の祈り」だけで知られていますが、この曲もちゃんとしたホールのリサイタルで聴く機会は余りないと思います。せんくらならではの選曲ですね。

ベートーヴェンの「月光の曲」は、ピアノソナタ第14番作品27-2の第1楽章です。これまた「月光」という名はベートーヴェンが名付けたものではありません。ベートーヴェンは幻想曲風ソナタ(Sonata quasi una fantasia)と名付けています。

ベートーヴェンはバガテルと言われる性格的小品をかなり書いており、いずれもピアノソナタに劣らない力作、名作ばかりで今後も残っていく作品群だと思います。そのなかでどういうわけか「エリーゼのために」だけは別格にウケテおり私が知っているだけでも次のような使われ方をしています。

1)宇多田ヒカルさんが「幸せになろう」(アルバム『DEEP RIVER』収録)という曲で「エリーゼのために」を原曲として使った。

2)プロ野球の千葉ロッテ マリーンズが、勝ったときや得点を入れたときに、トランペットでこの曲を吹き、合わせて「千葉・ロッテ・マリーンズ」と声をあげる。

そもそもこの曲は実は「テレーゼのために」とベートーヴェンが書いたものが、その悪筆のために「エリーゼ」と間違えられた、という訳のわからない説があるくらいで、最初からどこか違った運命にある曲なのかもしれません。

雄倉恵子(ピアノ)

長谷川陽子
2006.06.22

ゴリラくんとの出会い、そして旅 

今日は私のチェロ【ゴリラくん】との出会いについて。

愛用の楽器はマッテオ・ゴフリラー1700年製作の306歳。私は製作者の名前をもじって【ゴリラくん】と名付けています^^

話はかなりさかのぼり、まだフィンランド留学中。ある日「アメリカでとてもいいチェロが売りに出されたから紹介してあげるよ」と大先輩チェリストからお知らせがきたのですが、丁度その時シベリウス・アカデミーは試験期間中。「どこでもドア」でもない限り、学生の身分としては試験をサボってアメリカまで見に行くのはムリです^^;

今回は諦めようと思っていたところ、恩師ノラスが「来週からアメリカ・ツアーに行くから、僕が代わりに見てきてあげるよ」。半分本気、半分ジョークで「是非!!」と答えたものの、その後起きるであろう大変な事を誰が予想出来たでしょう?!

その事はすっかり忘れて、のんびりヘルシンキで学生生活を送っていたある日、ノラス先生から「やぁヨーコ、今すぐヘルシンキの空港にいらっしゃい!!」という電話が。理由を聞く間もなく、電話の向こうは既にツーツーツー・・・。

「??」と思いながら空港に着くと、先生がニコニコしながらご自分のチェロ・ケースの他にもう一つ持って立っている・・・??「ヨーコ!!君が言っていたチェロ、とても素晴らしいから持って帰って来たよ、買いなさい!!」

か、か、買いなさい・・・?!
勿論弦楽器というのはポンと買えるモノではありません!普通は慎重に数日試し弾きをして、よぉ〜く先立つものと相談してから、清水の舞台から飛び降りる覚悟で手にするものです。。。 いきなり持って帰られちゃっても・・・いや、さすが先生、やる事大胆!!

嬉しさと困惑な気持ちと、そして先生の大胆さに妙な感動をしながら、取り敢えず自宅に戻り、まるで玉手箱を手にした浦島太郎の気分でケースを開けてみると・・・!!すっかり一目惚れ^^

これが私の人生のパートナー【ゴリラくん】との運命の出会いです^^
手にした当時はまだ色々部品交換など修理もありましたが、今では世界のどこに行くのも一緒に旅をし、色々なコンサートの思い出もいっぱいです。 ゴリラのお陰で色々な地に行く事が出来て、沢山の人に出会えるのです。

10月の【せんくら】では、私と共にこの【ゴリラくん】もどうぞお見知りおきを!!^^

長谷川陽子(チェロ)

雄倉恵子
2006.06.21

トルコ行進曲聴き較べ

「ドラマで聴いたピアノ名曲集」の最後は、いわゆる「トルコ行進曲」。
モーツァルトのK331のピアノソナタの第3楽章が楽譜にも「トルコ風」と書かれていて、よく独立しても演奏されるようになったものです。モーツァルトのなかでも「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の冒頭と並んでトップを争う有名曲ですね。

送っていただいた「せんくらチラシ(大判で見やすくてよくできていますね。これを見ているだけで空想が広がります)」を拝見して「せんくらの楽しみ方」という部分に「トルコ行進曲聴き較べ」とあるのはびっくり仰天しました。一応プロになって「聞き較べ」られることは普通はないものですから。しかも較べていただくお相手が清水和音さんやら仲道祐子さんといった大変な名ピアニストたち。「新さんという方だけは存じ上げない・・・」と思っていましたら、数日前にNHKテレビで五嶋龍さんと一緒にリヒャルト・シュトラウスのヴァイオリンソナタを弾いているのを拝見してしまいました。あのすごいピアノパートをあんなにきれいに弾いていらっしゃる・・・・。

とまあ、演奏するほうにとっては全く迷惑な話ですが、確かに自分が聴き手に回れば、すごくいい演奏会に行っても友人と帰り道に「すごくよかったけど、やっぱりこの前行ったツィンマーマンにはとてもかなわないわよねー。」などと勝手なことを陰では言っているわけですし、確かにお客様の立場に立てば、聴き較べるのは音楽の楽しみ方の大きな部分を占めますね。

聴き手の私としてこれまでのトルコ行進曲で最も大きな経験は、トルコの作曲家・ピア二ストのファジル・サイさんがアンコールでお弾きになったもので、これは原曲から始まって自由に即興的にジャズ風にもなりながら展開されていったもので、私だけでなく客席全体が嵐のときの森のようにすごい反応をしたのを覚えています。「日本の聴衆はおとなしい」とも言われますけど、本当に面白ければこうなるのですねー。

CDでは最近来日もされたフォルテピアノのアンドレアス・シュタイアーさんのものがやはり驚天動地でした。そのほか一番頭の音を装飾音として前に出して演奏された高橋悠治さんとか。

いずれの皆様も、思いつきのアイディアではなく、理論的にも根拠があり、何よりモーツァルト自身がやったらこうなっただろう、というようなイキイキ感というか生々しさが共通していると思います。

ということで私も覚悟を決めてまな板に乗らせていただきますから、どうぞご存分に、かつお手柔らかに、お聴き較べくださいまし。

雄倉恵子(ピアノ)

長谷川陽子
2006.06.21

『初恋』本日リリース^^ 

いよいよ今日リリースです^^私の15枚目の新アルバム、心温まる日本の歌を集めた【初恋】。

毎回アルバムをリリースする日は、どきどきとワクワクが混ざって何となくそわそわしてしまうのですが、やはり大切に作った新しいアルバムが世の中に生まれる日というのは、個人的にとても嬉しいもの^^

日本の自然というのは、とても繊細なのにかけがえのない、きらめきの一瞬を見せてくれます。

例えば、寄せては返す波が形作る砂のオブジェだったり、しっとりと浮かぶ月と、それに戯れる雲や風の静寂の会話であったり、固く結んだ花のつぼみがほろりとほころびる一瞬であったり・・・。こうしたささやかな四季が創る小さな宝物を、改めて慈しむ時間というのは、私たち日本人にとって、最上の心の贅沢ではないでしょうか。

このアルバムを手にしてくださる方々にとって、このアルバムが『心の音のブーケ』となりますように・・・という思いを込めて新アルバム【初恋】をレコーディングしました。

『浜辺の歌』や『荒城の月』、そしてアルバムのタイトルでもある石川啄木の『初恋』などを含むシンプルで耳懐かしい曲から、『大きな古時計』やそして『純情きらり(ロング・ヴァージョン版)』のテーマ曲などなど。

特に個人的に好きなのは、今年没後10年である武満徹さんの『翼』をチェロ一本に、寺嶋陸也さんがアレンジしてくださったもの。ちょっとお洒落で自由自在、伸びやかに羽ばたく素敵な無伴奏の『翼』となりました^^

スピーカの前に腰をすえてじっくり耳を傾けるアルバムもあれば、この【初恋】はお好きな所でお好きな時間に、素朴なチェロの音とともに温かい時間を過ごして頂けたら・・・とても幸せです!

長谷川陽子(チェロ)

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