せんくらブログをご覧の皆さまこんにちは。チェロの原田哲男です。
今日から三日間、今年出演させて頂く公演の聴きどころなど書かせていただきます。
まず初日(9月30日)のフェスティバルソロイスツから。
この公演の聴きどころは何といっても豪華バイオリニスト達の競演でしょう。
一人一人が強い個性と魅力を発揮しながらも信頼しあい、自由にアンサンブルを創り上げる。60分があっという間というようなエキサイティングな演奏が繰り広げられると思います。
私もその同じ舞台に立つことが出来るとは幸せです。
クラシック音楽に馴染みのない方にもライブ音楽の楽しみを実感して頂けることでしょう。
今からとても楽しみな公演です。
3回目になる今日は、僕と現代曲との関わりについて書きたいと思います。
一般に”現代曲”と聞いただけで、敬遠してしまうお客さまはたくさんいらっしゃるかと思います。と同時に、曲の魅力を伝えるメッセンジャー、すなわち演奏家の努力によって乗り越えることができることも多いと感じています。
僕が中学生だったころのこと、CDショップでメシアン(2回目のブログに一瞬登場)のトゥーランガリラ交響曲を聴いて、最高に興奮して、最後は目に涙を溜めて聴いていたことを思い出します。
さて、今回はその後の時代の作曲家達の話です・・・
僕が現代曲を弾くきっかけは、高校2年生だったころのこと。大好きなジャン=ジャック・カントロフ先生に習いたいと思い、母と一緒にフランスの南西部にある街、シブールとサン・ジャン・ドゥ・リュズで行われたマスタークラスに行きました。
マスタークラスでは課題曲として、ひとつ現代曲を入れなければなりませんでしたので、いちばん分かりやすそうな、そしてネーミングのかっこいい(笑)ルチアーノ・ベリオが作曲した”セクエンツァⅧ”を課題曲に入れました。
全く知らなかったこの曲の楽譜を学校の図書館で調達してからは、興味と興奮冷めやらぬ思いで練習に励む日々。
最初のレッスンで”素晴らしい!教えることはない”とカントロフ先生がおっしゃってくださったことは、良い思い出で今も励みです。
ですから、僕の現代曲への扉はルチアーノ・ベリオでした。それに続くのはパリ留学時代に受けた2つのコンクール(パガニーニ国際コンクール、ロン=ティボー国際コンクール)で取り組んだ2人の現代作曲家、ファビオ・ヴァッキとクラウス・フーバーです。
ファビオ・ヴァッキの曲を夜に勉強机で見ていると、突然ひらめくことがありました。全てのリズムとメロディが、曲の中間部分を堺に鏡の形になっていることに気付き、どうしたらこれをお客さまに伝えられるか・・・と研究したものです。そしてついに、ヴァッキさんにお会いしお伝えしたとき、氏は大興奮して喜んでくれました。特別なつながりを感じました。
クラウス・フーバーさんの曲はIntarsimileという5分ほどの曲です、タイトルからは曲の内容が想像つきませんが、実際に演奏してみると、間のとり方、語彙の豊かさ、詩情あふれるロマンチックな歌が内包されていることに気がつき、心震えたものです。
ご高齢なので会場でお会いすることは出来ませんでしたが、素晴らしい作曲家という存在感は深く刻まれています。
その後、2012年に受けたエリザベートコンクールでヴァイオリン部門の新曲課題を書いた酒井健治さんに出会って、僕の人生は変わりました。
1週間、その新作を勉強しながら作曲家に会いアドヴァイスを受けることができたのですが、健治さんの楽曲には譜面の美しさと、まるで自然界の現象が表現された音世界があり、感銘を受けました。
コンクール後もピアニストの萩原麻未さんと共同で作品委嘱をするなど、現在の僕の音楽人生に益々の彩りを加えてくれています。素晴らしい作曲家との出会いは、宝ですね。
ちなみに、酒井健治さんはパリの国立音楽院の他にジュネーブ音楽院でも勉強されており、当時の彼の師匠は、僕がロン=ティボー国際コンクールで初演したクラウス・フーバー氏のお弟子さんだそうで、時代を超えて脈々と続く音楽の息吹を感じています。
酒井さんは2015年にローマ大賞も受賞され、今年の10月にはフランスを代表する管楽器奏者達で構成される室内合奏団、レ・ヴァン・フランセが新曲を初演するそうです。
彼のよどみない、新鮮できらめきに満ちた音楽が、幅広く多くの方々に聴いていただけることを願っております。そして仙台でもいつか、近い将来に酒井健治さんの楽曲を演奏出来る機会がありますように!と願っています。
少し長くなってしまいました。
ではこの続きは・・・コンサート会場で!
先週の5日には石巻市のお寺、法音寺でカルテットの演奏会でした。曲はオリヴィエ・メシアンの『時の終わりのための四重奏曲』です。
メンバーはピアノの萩原麻未さん クラリネットの吉田誠さん、チェロの横坂源さん、そして僕です。
実はこのメンバーでは去年、福島県のアーク・ノヴァという移動式バルーンの会場で演奏したことがあり、今年の再演を楽しみにし、わくわくしていました。
この曲は全部で8楽章。ヨハネの黙示録のある一節から、メシアンが着想を得て作曲したそうです。
当時ドイツ軍の捕虜で収容所に入れられていたメシアン。音楽だけが頼りだったのでしょうか―。
音楽には、聴き手に解釈を委ねられるという良さがあると思います。物が壊されたり、傷つけられたり、強制されたり、しない。
しかも演奏というものはその時生まれてから一生心に残すことも出来るし、次に弾くときには全く形を変えて演奏できる。
そんな素晴らしい芸術にいつも囲まれて、僕たちは幸せだと思います。
さて、話を戻すと、この曲は敬虔なカトリック信者のメシアンが書いたことよりも、当時の絶望的な状況から、来る恒久的な平和を熱望して書かれた、ということに意義があり、より精神性とドラマ性を高めていると思います。
だからこそ、皆さんを突き動かしてくれるのですね!
それはもちろん、個人個人の感受性によるものなので、常に変わりゆくものですが、それをも受け入れてくれる懐の深さが音楽にはあると思います。
そういえば、演奏中に作曲家の霊を見たことがあります。メシアンにもそのうちお会いできるといいなぁ、なんて思っています。
仙台にやってきたのは、これで何度目になるのだろうか。2013年から仙台国際音楽コンクール、学校訪問演奏会、仙台フィルとの演奏会など、多くの出会いをいただいてきた私にとって、仙台は東北の故郷に近いくらいに、親近感を持って居る都市だ。
仙台・・・仙人の住む都・・・そういえば、コンクールで仙台に着いた時、ホテルのロビーで摩訶不思議な出会いをした。
「チェックインは15時からです。」
参ったな、パリからの飛行機で疲れて一休みしたいのに、これじゃ万事休すだな、と思っていた矢先、フロントの横にあるソファに腰掛けていた一人のおばさんが話しかけてきた。
「あなた、疲れてるみたいね。よい人知っているから、ちょっと待って。」
彼女はおもむろに携帯電話を取り出し、ある男性にかけた。これからすぐその男性が僕らを迎えにくるという。でも、不安な気がしなかった、なぜだろう。空気があたたかいのだ。
10分ほどすると、ロビーの下で、グレーの4人乗りの車が待っていた。男性は軽く会釈し、僕も頭を下げると、みんなで車に乗り込んだ。
移動中は特に何も話さず、しーんとしていた、しかし居心地がよい。
―連れ去られるのかな、拉致かな、危ないのかな― 全くそういう感じではない。
仙台市が見渡せるくらいの丘の上に着くと、そこは仏舎利といって、仏様が塔のような建物にいっぱいいた。僕は風が気持ちよいので、丘の端っこの、岩がせり出している斜面の手前にあぐらをかいて、深呼吸した。
30分ほどたった。自分がどこにいるのか、なぜいるのか、などはどうでもよいことだった、とても爽快な気分だった。
その後、車でおりていくときに男性が
「おなかがすいたでしょう、仙台で一番おいしいそばが食べられるところがあってね、寄って行こうか?」
と誘ってくれた。
「はい。」
と僕は答えていた。
そばが来ると、夢中で頬張った。なぜか涙が出てきた。その後、車でこう尋ねられた。
「そういえば 君の名前は?」
「成田達輝です。」
「なるほどね。」
・・・とても新鮮な感覚だった。名前なんて人同士を区別するためのもの、あって、ないようなものなのかもしれない。
そして、
「君のオーラの色は紫とオレンジだね。何か芸術関係でもやっているの?」
「はい、ヴァイオリンをやっていて、仙台国際音楽コンクールっていうのがあって、この後出場するんです。」
「ほう、じゃあ頑張ってね。そうだ、僕の名刺、これあげるよ。もう1枚しかないんだけど。」
その名刺は虹色の暖かい光に包まれていて、触ると熱かった。
「これを持っておけば、大丈夫。気を送ってあげるから。」
そう言って、ホテルのロビーで、何事もなかったのように、お別れをして、帰った。
夕食を食べた後、ドラッグストアに寄って、疲れが取れるからと思いバスソルトを買った。
そのラベンダーのバスソルトが、オレンジ色だったことは、もはや言うまでもないだろう。。。
昨日に続いてピアノのお話です。
洛中の真ん中に、
かつての「明倫小学校」を再利用した「京都芸術センター」という施設があり
そのコンサートホール(講堂)に「ペトロフ」という古いピアノが入っています。
オーストリア・ハンガリー帝国時代のプラハで製造された楽器で(1910年製)、
1918年に明倫学区の有志により子供たちの音楽教育のために寄贈されたものだそうです。
長年にわたる使用のうちに傷みも激しくなって放置されていたところ、
数年前に「明倫ペトロフの会」の呼びかけで修復がなされ
現在は年に数回のコンサートで使われているという楽器です。
私は昨年初めて弾かせていただきました。
音が抜け気味だったり、楽器本体がカタカタと鳴ったりして
それなりに大変だったのですが、それでも楽しく演奏することができました。
現代の楽器からは望みがたい、味わい深い音色は、格別の魅力をもっています。
古い文化財というのは、モノ自体の価値は当然としても
理解ある人々の志のおかげで残っていくのだということを、改めて実感しました。
モノと人間の共同作業、ですね。
下の画像は、大正時代の美人画家・中村大三郎の作品「ピアノ」(京都市美術館所蔵)。
描かれているのは、まさにこの「ペトロフ・ピアノ」です。
三日間のブログ、お付き合いくださいましてありがとうございました。
秋に仙台で皆様にお会いするのを楽しみにしております。
ピアニストは自分の楽器を持ち歩くことはできません。
通常の場合、ホールに備え付けの楽器を弾くことになるのですが、
たまに(条件が整えば)お気に入りのピアノを運んで演奏することもあります。
私の最近のお気に入りの楽器はこちら。
神戸の日本ピアノサービス株式会社さんが所有するニューヨーク・スタインウェイです。
1925年に製造されたピアノは今年で91歳!
これまで出会ったピアノの中でも間違いなくベストの楽器のひとつです。
初めて弾いた時の感動は今でも忘れられません。
豊かな倍音、ブリリアントな力強さ。
繊細なピアニシモから強力なフォルテシモまで、
幅広いダイナミクスと多彩な音色には限りがないように思えました。
自分の音に酔いそうになったのは初めての経験です!
楽器に限らず、古くて良いものというのは、実に深い味わいがありますね。
皆様こんにちは。
ピアニストのイリーナ・メジューエワです。
今年も「せんくら」に出演することになりました。
2008年から数えて9回目。私にとって楽しい「年中行事」となっています。
今年は以下の3公演に出演します。
おなじみの名曲小品をお楽しみいただきます。
詩情豊かなグリーグ作品とショパンの大作「ソナタ第3番」の組み合わせ。
大好きなショパンのノクターン2曲を演奏します。
今年も皆様に楽しんでいただけるよう、頑張りたいと思います。
神田さんに華麗なスタートを切ってもらいましたせんくらブログ2016、今日から3日間はせんくら事務局スタッフが担当させていただきます。
「え、出演者じゃないんだ・・・」とがっかりされる方もいらっしゃるかもしれませんが、どうぞ暇つぶしにお付き合いいただければ幸いです。
情報公開初日からサイトをご覧いただき、また、パンフレットを探しに出ていただいた方、ありがとうございます!
市内の方はもちろんのこと、関東や関西などからも「楽しみにしています!」という声をいただけるのは、なんとも嬉しいことです。
さて、「楽都仙台」とタイトルを付けさせていただきましたが、仙台には、せんくらともうひとつ、「仙台国際音楽コンクール」という大きなイベントを3年に1度開催しています。
毎年、せんくらにもこれまでのコンクールの入賞者が出演しているので、ご存知の方も多いかと思います。
その、第6回目のコンクール、ヴァイオリン部門が今まさに開催中。さらに本日が超クライマックスのファイナル3日目ということで、先ほどファイナリストの順位が決まりました。
予選からファイナルまでどの出場者もレベルが高く、すばらしい熱演を響かせてくれました。
素人の自分としては、審査委員の先生方の聴覚、視覚、脳内に潜り込んでどのような視点で何を思いながら審査しているのか、経験してみたくなります・・・。
1日にこんなにコンチェルトを聴く機会もそうそうないでしょう。せんくらでも、聴けて1日に2回ですもんね(笑)
ヴァイオリン部門の審査はこれで終わりとなり、次に聴けるのは3年後になるでしょう。ぜひ、一般的なコンクールとは違うホールの空気感や緊張感、若さを肌で感じていただきたいと思います!
そして、ピアノ部門は来週6/11(土)より予選がはじまります。お時間のある方、興味のある方はぜひ、会場に足を運んでみてください。きっといつもと違う演奏をお楽しみいただけることでしょう。
将来、どの出場者・入賞者とせんくらで再会できるか、今から楽しみですね!
せんくら事務局
こんにちは、エレクトーンの神田将です。今日は今年の演奏曲についてお話しします。
今年はふたつの枠をいただき、いずれもエレクトーンの独奏をお届けします。
まずは0歳児からのコンサート。せんくらではすっかりお馴染みですね。それにしても、子供ちゃんのパワーはすごいです。うまく表現できないのですが、放っているエネルギーが半端ないというか、「生きてます!」って感じなんです。もちろん、0歳からウェルカムの演奏会ですから、賑やかなのは織り込み済み。むしろシ〜ンとしていたら、めっちゃ怖いです。
今年はその子どもちゃんのパワーに負けないパワフルなプログラムを用意しました。かと言って最初から全力疾走だけでは芸がありませんね。そこで、穏やかな朝の雰囲気から、次第に加速して、最後には超高速プレーをお楽しみいただこうと企んでます。新しく盛り込んだ体験コーナーもお楽しみに!
もうひとつの枠は、真剣勝負です。エレクトーンでどこまで管弦楽の真髄に迫れるか、と言うより、その先を目指しています。オーケストラの最高傑作とも呼ばれるラヴェルのダフニスとクロエ、そしてムソルグスキーの展覧会の絵をラヴェルによる管弦楽編曲に基づいておいしいところ取りの抜粋でお送りします。
どちらもスペクタクル級のスケール感が魅力ですが、実はその精神性は極めて一個人的というか、ぎゅーっとフォーカスされた感じのものがあります。愛という概念を知らない若者が互いを想うってどんな感じだろう。そんなふたりにはいつもの夜明けですら、違って見えるのでは。そんな視点から、愛の純粋さから狂気までをひとりならではの一貫した息遣いで奏でます。
もうひとつは展覧会の絵。ムソルグスキーは管弦楽の手法を持っていたにもかかわらず、なぜこの交響的なモチーフをピアノ独奏曲にしたのでしょう。本当のところは知りませんが、もし私が友達を亡くし、そいつに何もしてやれなかったと悔やんだとしたら、盛大にみんなで弾く曲より、ひとりで弾くものを書くだろうと思います。「友よお前は偉大だった」と心で思いながら。
これらの作品を楽楽楽ホールで演奏させてもらえるなんて、夢のように幸せです!
さあ、今年のせんくらを、皆さんと一緒に楽しみましょう。そして、一緒に盛り上げていきましょう!!
こんにちは、エレクトーンの神田将です。今日はエレクトーンのお話をします。
いきなりですが、エレクトーンでクラシック音楽を演奏すると聞いても、ピンとこない方が多いのではないでしょうか。ポピュラー音楽をリズムボックスに合わせて軽やかに奏でるというイメージが強いエレクトーンですが、楽器の進化に伴い、クラシック音楽を演奏する愛好家がどんどん増えており、現在ではクラシック音楽を専門とするプロの演奏家も活躍の場を広げつつあります。
最新のエレクトーン使用した演奏は、一言で表せば「まるでオーケストラ」です。初めて聞いた人からは「いったいこの楽器はどうなっているの?」とただただ驚嘆されることしばしば。確かにそこも興味深い部分かもしれませんが、私がクラシック音楽に特化した演奏家として皆さんにお伝えしたいのは、そこではありません。
クラシック音楽と言っても、そのカタチはさまざま。中でも私のお気に入りは管弦楽作品全般です。子供のころ、オーケストラ演奏に圧倒的な衝撃を感じたのは、決してひとりでは表現しきれないスケールの大きさにでした。どんなに偉大な作曲家でも、自身の管弦楽作品を自分一人で演奏することは不可能です。指揮台に立てば自身のイメージ近い演奏に仕上げることは可能でも、演奏者という他人の手を借りる必要があります。
こうした大規模な作品をひとりで弾きたい!というのが、子供のころからの漠然とした夢だったのですが、のちにエレクトーンと出会って、ついに夢が叶いました。つまり、私にとっての音楽はエレクトーンありきで始まったのではなく、あくまでクラシック音楽の本質をより深く探求することにあり、そのためツールとしてエレクトーンを選んだというわけです。
クラシック音楽は言うまでもなく長い歴史を生き抜いた私たちの財産です。生まれた瞬間から今日まで、時代に揉まれながらも演奏者と聞き手によって育てられてきた生き物でもあります。
すべての作品には作曲された意図があり、優れた作品であればあるほど奥深い背景と物語を持っています。それらを常に探求し、時代に即したものとして演奏するのが、演奏家の務めです。
せんくらでは、少しでも皆さんにリラックスして楽しんでいただけるよう工夫しながらも、音楽の本質をきちんと感じていただけるよう、誠実な演奏をお届けいたします。どうか耳だけでなく、心を寄せて音楽を感じてください。
明日は、演奏曲のお話しをします。それでは、また!