ショパン―続き―

2009.09.12| 横山幸雄

「ショパン弾き」といわれることに、僕はまったく抵抗がない。
ショパン・コンクールはいわば、ショパンのお墨付きなのだから、ショパンを弾いてほしいといわれることは、僕にとっては、いつでも、とても嬉しいことなのだ。

来年は、ショパンの生誕200年にあたる記念の年だが、僕が19歳でショパン国際コンクールに入賞してから、ちょうど20年目にあたる年でもある。そして、コンクールの翌年の91年春にデビュー・リサイタルをしたので、2011年が、デビュー20周年になる。勿論、20周年記念リサイタルにも面白い企画を考えてはいるが、まずは、ショパンだ。
ショパンの全曲演奏会に取り組むのは、実は2回目である。最初は、20代後半に、7年かけて、ショパンの誕生日と命日の、1年に2回のペースでピアノ曲の全部を演奏した。どの演奏家もというわけではなく、ショパンはすべての作品を演奏してみたかった。全ての作品を演奏することで、見えてくるものがあるのだ。ショパンは、子供の頃からずっと好きだったし、僕の人生の節目に深くかかわりのある作曲家であり、とても身近に感じている。だからいつでもピアノにむかった瞬間に、自然と音楽が流れ出すのだ。

200年の記念の年を目の前に、僕はもう一度、集中してショパンの作品に取り組んでみたいと思った。そして、この壮大な計画を終えるとき、僕はショパンの晩年と同じ年代にいることになる。今度は、どんな発見があるだろうか。
横山幸雄(ピアノ)

宣伝!

2009.09.12| イリーナ・メジューエワ

ここで少しだけ新譜CDとコンサートの宣伝をさせて頂きます。
8/31に、新譜CDをリリースしました!
■「楽興の時 ~ スクリャービン & ラフマニノフ」

問:若林工房 Tel 0765-22-2399  http://www.waka-kb.com/

このCDに収録されている曲を、10/2東京でのリサイタルで、生で聴くことができます。
■イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル《夜の風》
2009年10月2日(金)19:00開演 HAKUJU HALL
スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第2番 嬰ト短調 op.19 「幻想ソナタ」
ラフマニノフ:楽興の時 op.16
スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第10番 op.70
メトネル:ピアノ・ソナタ ホ短調 op.25-2 「夜の風」
問:コンサートイマジン Tel 03-3235-3777  http://www.concert.co.jp/

リサイタルに関して、一言お願いします。

(イリーナ):4年ぶりの東京での本格的なソロ・リサイタルです。オール・ロシア・プログラムで、スクリャービン、ラフマニノフ、メトネルの作品を取り上げます。三人とも ピアノという楽器の表現の可能性を熟知していて、ピアニスティックな魅力に溢 れる作品を残しています。それぞれが独自のスタイルを発展させたのも興味深い ところです。今回の演奏会で弾く作品は、1890年代後半から1913年頃に書かれたものです。『銀の時代』と呼ばれるロシア芸術の隆盛期の成果の一端をお楽しみ頂ければと思います。

今回は難曲中の難曲、メトネルのソナタ『夜の風』を8年ぶりに演奏するのも話題のひとつ。『20世紀最高のピアノ・ソナタ』とも称される傑作、お聞き逃しなく!

それでは最後にせんくら2009に向けてお客様へのメッセージをお願いします。

(イリーナ):今年もまた『せんくら』に出演できることをたいへん光栄に思います。今回は3つのショパン・プログラムを準備しました。『ピアノの詩人』と呼ばれるとおり、ショパンの音楽は詩的で美しいことはもちろん、精神的にも深いものがあります。 ショパンの多面的な魅力をお伝えできることを願っています。『ショパンの音楽は やっぱり素晴らしい』と思って頂けるよう、頑張って演奏したいと思います。大好きな仙台の町で皆さんにまたお会いできることを楽しみにしています。

せんくらブログ、1週間お付き合いくださいまして有難うございました。
イリーナ・メジューエワ/マネージャー
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

 

京大オケ

2009.09.11| イリーナ・メジューエワ

プロのオーケストラとの共演はもちろんですが、アマチュア・オーケストラや学生オーケストラとも共演することのあるイリーナさん。今年6月には京都と尼崎で京都大学交響楽団とラフマニノフの協奏曲第2番を演奏しました。今日は京大オケの思い出など語って頂きます。

(イリーナ):最近のコンサートの中で特に印象に残っているのが、京大オーケストラとの共演 です。初めて共演させて頂いたのですが、まずは練習のハードさにびっくりしました。4回の練習にゲネプロ、本番が2公演。毎回の練習は2時間ほとんど休みなしです。ずっと弾きっぱなしなのですが、テンションが全然下がらないのも驚きでした。私の方が疲れてしまったぐらいです。とにかく、ものすごいやる気と情 熱を持った若者たちとの、充実した共演となりました。京都公演は1,800席が満席、尼崎のほうも1,400人を超えるお客さんが集まって、大盛況でした。

飲み会などにも参加されたとか?

(イリーナ):何回目かの練習の後、飲み会に参加させてもらいました。50人以上の学生さんたちがお好み焼き屋さんに集まったのですが、廊下にまで人があふれるほど。飲みっぷりも立派で、すごく盛り上がりました。指揮の橘直貴さんもご一緒でした。翌朝2時頃まで付き合いましたが、さすがに疲れて先に帰らせてもらいました。何時まで続いたんでしょうかね。練習も飲み会も、ものすごいパワーで、ただただ圧倒されました。

肝心の本番の演奏のほうは・・・?

(イリーナ):全員が心を通わせながら音楽を作っていくという合奏の基本の部分で、よいアンサンブルが出来たのではないかと思います。音楽的なやりとりも楽しかったです し、ほんとうに良い思い出になりました。京大オーケストラの皆さん、改めてお疲れ様でした。次も頑張ってくださいね!
イリーナ・メジェーエワ/マネージャー
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

ショパンについて

2009.09.10| 横山幸雄

今度の日曜日に、東京オペラシティでリサイタルがある。

オペラシティでのこの時期のリサイタルは毎年恒例になってきている。嬉しいことだ。これもまた嬉しいことに、チケットは今年も完売だそうだ。オペラシティでは、これまでもベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏や、5大ソナタ連続演奏など、面白いと思ってもらえるようなコンサートを企画してきた。昨年からは、2010年がショパンイヤーだから、それにむけてショパン・シリーズをしている。初期・中期・後期と3年にわたって主要な作品を演奏する計画だ。日曜は中期の作品で「ジョルジュ・サンドとともに」という副題がつけられているが、ショパンがサンドと充実のときを過ごす中で作られた作品をそろえた。充実といっても短命だったショパンには、この時期にも、光のあたる向こう側に伸びる影・・・のように、不安が遠くから押し寄せてくる感じがある。ドラマティックで感情的な初期の作品に比べると、シンプルさが強調されていて、美しすぎて悲しいのだ。今回のメインは、第2番のソナタと24の前奏曲だ。そして、それにむかってゆく小品を組み入れたことで、更に、ショパンの当時を感じてもらえればと思っている。

この頃のショパンと同じ年頃の僕、つまり、20代後半というと、全力でがむしゃらで無我夢中だった。でも、コンクール入賞者というだけでなく、僕のピアノを聴いてくれる人がいることに、気がつきはじめた時期でもある。
横山幸雄(ピアノ)

レコーディング in 魚津。

2009.09.10| イリーナ・メジューエワ

今日はレコーディングの話題です。イリーナさん、先週ちょうどレコーディングを終えたばかりですね。

(イリーナ):9月2日から4日までの3日間、富山県魚津市の新川文化ホールでショパン作品集を録音してきました。今回はエチュード集op.25とノクターン数曲に挑戦しました。来年(2010年)はショパン・イヤーなので、ショパンの作品をある程度まとめてCDにしたいと思っています。エチュードやノクターン、即興曲やソナタなど、 録音したい作品がたくさんあります。

いつも魚津で録音されていますが、どんなホールなんですか?

(イリーナ):新川文化ホールは1,200席程度の大ホールで、優れた音響を持っています。とて も暖かい雰囲気のホールです。何といってもこのホールの素晴らしい点は、スタッフの方々の献身的な協力態度です。あと、周囲の立山連峰の雄大な景色なども 抜群で、録音の仕事をするうえで最高の環境だと思います。

ところで、魚津というと名物はやはりお魚ですか?

(イリーナ):魚津には海も山もありますので、新鮮な海の幸、山の幸にも恵まれています。水 も美味しいし、お米も果物も美味しいですね。じつは私は日本に来てからしばらく刺身が苦手だったのですが、富山の魚を食べてから、大好きになりました。もちろん仙台の美味しいお魚も大好きです。

イリーナさんはコンサート活動と共に、録音にも大変積極的に取り組んでいます。
詳細はこちらで→若林工房 http://www.waka-kb.com/
イリーナ・メジューエワ/マネージャー
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

音楽家はサバイバル 続き

2009.09.09| 横山幸雄

音楽家はサバイバルといっても、僕の旅用具は、いたってシンプルである。
どんなに旅が長くても大体は衣装ケースと、いつも持っている楽譜のバッグで済んでしまう。とにかく移動が多いので、楽譜だけは決して身体の傍から離さない。海外では、預けた荷物が出てこない、ということは余り驚く事ではないので、楽譜だけは必ず身につけているのだ。

昨日の話の続きにはいろうか。
演奏家はサバイバルだからこそ、タフでなければならない。いつどこでどんなハプニングにであうかわからないからだ。荷物の鍵が壊れて開かなくなったそのときは、旅はまだ前半の出来事だった。楽譜は手元にあるとしても、内心困ったなと思った。そこで僕は覚悟を決め、スーツケースに踵落としを2回、キックを2回やり、スーツケースに裂け目を作り、そこから手で力いっぱいスーツケースを引き裂いた! 演奏が無事に終わり帰りがけに「ちょっとゴミが出ちゃったから捨てて下さい」と言って会場を後にしたのだが、あのスーツケースの残骸を見たフランス人はきっとの呆れたに違いない。
横山幸雄(ピアノ)

ウィーン旅行

2009.09.09| イリーナ・メジューエワ

演奏旅行で各地を飛び回っているイリーナさんですが、今年は4月から5月にかけてウィーンに旅行したそうなので、その話を聞いてみました。

(イリーナ):はい、2年前に京都の青山音楽財団から青山音楽賞を頂戴したのですが、研修旅行として今年4月から5月にかけてウィーンに行ってきました。私にとって初め てのウィーンでしたが、とても興味深かったです。主にシューベルトとベートーヴェンゆかりの場所を訪ねて歩き回りました。シューベルトの生家や亡くなった家、ベートーヴェンゆかりの有名なパスクァラーティ・ハウスやエロイカ・ハウ スなど。もちろんハイリゲンシュタットにも行きましたよ。あと、ウィーン・フィルのヴァイオリニストの知人と一緒に室内楽を練習したり、とても充実した旅 行になりました。現地の人々と触れ合う機会も多く、『ウィーン気質』のようなものも何となく感じ取ることが出来ました。

コンサートなども行かれたんですか?

(イリーナ):毎晩、コンサートやオペラに出かけました。有名な楽友協会大ホールにも初めて足を踏み入れて、その歴史と伝統を感じることが出来て、とても感動しました。ウィーン・フィル、ドレスデン・シュターツカペレ、ベルリン・シュターツカペレ、ウィーン交響楽団、ウィーン室内管弦楽団などなど、たくさん聴きました。オペラは『薔薇の騎士』や『フィデリオ』、『トスカ』など。音楽三昧の日々でしたね。

研修成果披露コンサートは京都の青山バロックザールで12月5日(土)15:00開演。お楽しみに!
(問:青山音楽記念館 Tel 075-393-0011  http://www.h4.dion.ne.jp/~ammh/index.html

マネージャー
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

「音楽家はサバイバル」

2009.09.08| 横山幸雄

音楽家というのはご存知のように旅が多い。旅から旅が普通で、そのあいだも時間を作り練習もかかさない。自分でもかなりタフな仕事かもしれないと思う。強行スケジュールもざらだ。

先日、ヴァン・クライバーン国際コンクールで優勝した、弟子の辻井君のファイナルのレッスンも、演奏会の合間をぬって、朝アメリカに立ち、早朝着いて一日中レッスンをしてそのまま帰りの飛行機に乗り込む、という強行スケジュールをやった。さすがに、帰国後腰痛に苦しむことになったが・・。
全く、音楽家はサバイバル生活なのだ!

正に、サバイバルというエピソードをひとつご披露しよう。

ヨーロッパを旅してまわっている時、あるとき、飛行機からピックアップした荷物の鍵が壊れて開かなくなってしまったことがある。楽譜は手元にあるとしても、旅はまだ前半の出来事だった。しかも既に会場に入っていた僕は、さてどんな行動をとったか!

ここで、今日もつづきにしよう。

僕のとった行動を想像してみてね。
横山幸雄(ピアノ)

ショパンについて

2009.09.08| イリーナ・メジューエワ

今年のせんくらで、イリーナさんは3つのショパン・プログラムを弾く予定になっています。イリーナさんにとってショパンはどのような存在でしょうか?イリーナさんにショパンのことを聞いてみました。

(イリーナ):最重要かつ最愛の作曲家の一人です。子供の頃から私にとってショパンは特別な作曲家でした。ショパンのノクターンやソナタが大好きで、聞くたびに感動して涙が止まりませんでした。ショパンの作品を弾けるようになりたくて一生懸命練習したのも懐かしい思い出です。ショパン風のノクターンの作曲を試みたこともありました。ご覧頂いている写真は10歳か11歳の頃に音楽学校で撮ったもので、ショパンを演奏していたと思います。

ショパンの音楽のどのような点がお好きですか?

(イリーナ):何といってもメロディとハーモニーの美しさですね。さらに言えば、詩的な繊細さ、そして論理的な厳しさ、この二つが奇跡的に結びついているところでしょうか。全体的に悲しみに満ちた音楽が多いと思いますが、どんな場合でも高貴さを失わないのがショパン作品の素晴らしい点です。

ちなみにイリーナさんはショパンの直系の弟子ですね。

(イリーナ):ショパンの有名な弟子の一人がカール・ミクリ、その弟子がアレクサンドル・ミハウォフスキ、そしてゲンリヒ・ネイガウスへと続きます。ネイガウスはリヒテルやギレリスの師としても有名ですね。そのネイガウスの高弟の一人がテオドー ル・グートマン、そしてその弟子がウラジーミル・トロップ先生です。グートマンもトロップ先生も、ショパン作品の演奏を得意としています。ショパンの弟子 筋にあたるピアニストは世の中にたくさんいますから、特に珍しいことではないのですが、それでも自分がショパンの伝統に属しているというのは嬉しいことですね。私自身、ポーランド系の血も少し入っているのでショパンは本当に近しい存在です。

イリーナさんは、ウラジーミル・トロップ先生のもと、研鑽を積みました。ショパンから数えて七代目の弟子にあたりますね。それにしても、ポーランドの血が入っているとは、私も知りませんでした!
イリーナ・メジューエワ/マネージャー
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

「何故出来ないのか!」続き

2009.09.07| 横山幸雄

僕は、「出来ない理由」を探り出す作業が得意だし、好きなんだと思う。「できない」や「わからない」、それぞれの理由をみつける事で、人は劇的に進歩するし、僕もまたそれで勉強になるのだ。

さて、昨日の親子の話をしよう。
お母さんは男の子に折り紙を渡すと、ジュースを買いに席をたった。
その子は、相変わらず問題集の図形をみつめて、今度は折り紙でそのありえない図形を一生懸命作ってみるのだが、先の(昨日のメールに書いた)理由で厳密にその形を作る事は出来ない。
どんどんぐちゃぐちゃになっていく折り紙を、僕はちょっとその子に頼んで貸してもらい、問題の図形を作った。そして、問題には描かれているが、実際には有り得ない理由をわかりやすく話してみた。すると、「あぁ~!」と大きな声がかえってきた。

僕は、まるで水戸黄門のような気持ちで、その子と別れ搭乗口へと向かったのだった。

よかったね!

またあした。
横山幸雄(ピアノ)

 

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