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SENCLA BLOG

ブログ

谷川賢作
2008.09.19

谷川賢作の股旅日記2008(6)

東奔西走。昨日の興奮の余韻さめやらぬうちに本日は一路西へ。9月18日(木)兵庫県立芸術文化センター小ホールにて、友人のジャンルを越えた歌い手、深川和美のコンサート。私と彼女は、96年に神戸・三宮の「木馬」というジャズ喫茶で出会って、以来意気投合してつかずはなれずライブ、コンサートを一緒に行っている。本日のサポートメンバーは高本一郎(リュート)続木力(ハーモニカ/リコーダー)そして私のピアノ。

なにを隠そう、この深川さんこそが佐渡さんと私を結びつけてくれた恩人。彼女(佐渡さんも彼女も京都人&京都市立芸大出身、昔からの友達)が「佐渡さんと賢作さんて絶対合うと思うんだけど」とずっと言い続けてくれていたら、本当に出会って友人になってしまったのである。ただ感謝の気持ちあるのみです。

もともとクラシックを勉強してきた深川さんだが、持ち前の好奇心でいろいろなジャンル(シャンソンから童謡から日本の古い歌謡ジャズから、根っからの雑食系)の曲に取り組んでいる。本日は、私も知らない間にまた新たな世界を開拓。関西のリュートおよび古楽の第一人者、高本一郎さんとのデュオで16世紀の音楽に挑戦「昔、昔、シンデレラが」で幕をあける。朗読から歌へ自然に流れていく構成が気持ちよい。
PAを使わずに、ここまでの自然な表現ができる二人の技量もさることながら、この兵庫芸文の小ホールの音のよさときたら!ホール設計者に完全脱帽です。礼!サウンドチェックの時、客席のいろんなところで、歌とリュートのデュオを聞いてみたのだが、どの場所でも実にバランスよくクリアに、豊かな音楽が降りそそいでくる。

そうして、歌とリュートの甘美な世界が続いて、観客を陶然とさせているところへ、私のピアノが乱入。最初のバラード「湖上」(作詞/中原中也 作曲/谷川賢作)こそは、おとなしく「借りてきた猫」アンサンブルを心がけているふりをしているが、リュートの高本さんがいったんお休みして、デュオになった瞬間豹変。エリック・サティの「言葉のない3つの歌曲」でさっそく暴走をはじめ、観客の温かい失笑を買う。
でもね、これは言い訳だけどね、言わしてよ!昨日の佐渡さんといい、今日の深川さんといい「賢作さんがはじけるの」を期待している、と面とむかっていわれた日には、ご期待にこたえるように、そちらの方向でがんばるしかない。深川さんにいたっては、曲順表のメモ欄に「爆発してください(笑)」と書きこんである。う~む、私っていったい何者ですか、、、

いよいよ盟友、続木力も加わった後半は、武満さんの「小さな空」いまやラテン系のスタンダード「アルフォンシーナと海」「Oblivion」と続いていく。そして私が深川さんに歌ってみたら?とけしかけた「はすクリア」(作詞/作曲 福沢もろ)という沖縄テイストの知る人ぞ知る名曲をはさみ、4人ではじけた「トリパトス」(ラベル作曲となっているが、ラベルがギリシャのお祭りの歌を蒐集してアレンジ)そして、ラストは「むこうむこう」(作詞/三井ふたばこ 作曲/中田喜直)を再び歌とリュートのみで、しっとりと奏でる。

わいわいとサイン会&打ち上がって、名残おしみつつ皆の衆と解散して、今ホテルでこれを書いています(午前2時)ああ、ドサマワリ人生。明日は11時からレコーディング也。

最後に佐渡さんの深川和美さん紹介文をお届けして、本日はおやすみなさい。

深川さん、来年は「せんくら」一緒に出ましょうね!

「なんて魅力的で不思議な人なのだろう。和美ちゃんのやわらかな歌声と笑顔によって始まるさまざまな音楽は、ジャンルだけでなく、国も、時代も、ひょいひょいと飛び越え、僕らのあいだを心地よく浮遊する。<中略>ああ~、女っていいね!自分にどこまでも正直で、凛としていて、どこか危なげで、自由で、愛されていて。そんな深川和美だけが歌える歌を、僕は確かに聴いた!」 佐渡裕(指揮者)

谷川賢作
2008.09.18

谷川賢作の股旅日記2008(5)

9月17日(水)tv asahi「題名のない音楽会」の公開収録 at 東京オペラシティ。題して「谷川賢作&俊太郎~音楽のことば」出演メンバーは私、俊太郎、続木力(ハーモニカ)from パリャーソ、高瀬“makoring”麻里子 from DiVa そして、今年も「せんくら」で「谷川親子」とタッグを組むアンサンブル「であるとあるで」の皆様(写真はリハ中の俊太郎と「であるとあるで」)この顔ぶれを見ていただくとおわかりのように。私の演奏活動におけるキーパーソンをよくばって全員お呼びしました。

ON AIR を楽しみにしていただきたいので、ところどころマル秘にしながらレポートしていきます。たとえば冒頭、司会の佐渡裕さんがメインゲストを「ある物」に例えます。さあいったい私はなにに例えられたのでしょう?ヒント。寒い冬の夜に必要です。直接さわるとやけどするので気をつけましょう。ふふふ。放送お楽しみに!

まずはこの回にかぎり、本業の指揮のない、佐渡さんと私と力さんによる、リコーダー&アンデス25Fの3重奏による「鉄腕アトム」でスタート。昨年もこのブログで書きましたが、マエストロ佐渡はすばらしいリコーダー奏者なのです。ライブのアフターアワーズで盛り上がるこの3人組、息もぴったり。いつでもCD出せます(笑)

ところでこの「鉄腕アトム」の作詞は谷川俊太郎だということ、皆様ご存知でしたか?意外と知られていません。そこでおもむろに俊太郎登場。本日も「親子関係」の質問をいろいろ浴びてしまうのだが、最近、二人とも前ほど構えずに楽に受け答えができるようになっている気がする。「そもそもお父さんは、息子を芸術家にしようと思って育てたんですか?」「、、、そんな気まったくありませんでした」場内爆笑。そう、なにか二人とも「芸術家」と呼ばれるのはこそばゆいし、もっと人に「受けたい」人を「喜ばせたい」という欲求が常にベースにあるということは、芸術家というより「芸人」に近いと思っている。48歳も76歳もまだまだ精進あるのみ。

「話してばかりいないで、はやく賢作さんのピアノを聞こう」の佐渡さんの温かい一言で、組曲「家族の肖像」を抜粋して演奏する。テーマ曲「Family Portrait」を「であるとあるで」の4人が艶っぽく奏でる、詩「いま」ピアノソロ「こいぬのきもち」詩「あかんぼがいる」と続いていき、最後に我らが「歌姫」makoring 登場。お待たせしました&待ってました!「さようなら」をさりげなく、それでいながら聴衆全員の心に深く静かに染みわたるように歌ってくれる。

聴衆も出演者全員も、なんとなくふーっとため息をつきながらも、ここで佐渡さんからのリクエスト曲。かねがね「ぼくは賢作さんの静かな曲もいいけど、どか~んと爆発するところが好き」と公言してはばからない佐渡さん。そうとあれば、ここはひとつ、きっちりと期待にこたえないといけない。そう「パリャーソ」の「あの曲」が満を持して登場します。さあ放送でのけぞってください。「賢作主体でいく!」と佐渡さんが言ってくれたとおりall about 賢作観られます。お楽しみに!

オンエアは12月7日(日)の予定です。BSでのオンエアも翌週あります。

イリーナ・メジューエワ
2008.09.18

イリーナ・メジューエワ(5)

<レコーディング@魚津>

実は一昨日から、イリーナさんはレコーディングのために富山県魚津市に行っていますので、今日はCDの話題を取り上げましょう。レコーディングはお好きだと伺いましたが・・・。

※【写真】レコーディングの模様

イ:レコーディングは楽しいですね。演奏会とはまったく異なる面白さがあります。コンサートでは聴衆との対話が重要ですが、レコーディングは自分自身との対話です。たいていの場合、お客さんのいないホールで録音しますが、ホールが普段と違う風に感じられるのが面白いですね。壁や客席がだんだん近づいてきて、自分がホールの一部になるような感じがします。

現在、イリーナさんはベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲収録に取り組んでいます。そのプロジェクトについて尋ねてみました。

イ:ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音というのは多くのピアニストにとって大きな目標のひとつだと思います。たいへんな時間と労力を要するプロジェクトです。32の高い山々に登るような感じでしょうか。それぞれの山ごとに魅力があり、険しさも風景も異なりますが、ひとつひとつ登ることに大きな充実感があります。今ようやく17曲を録り終えたので、半分くらい登ったところでしょうか。全部登り終えた後、何年かしたらきっとまたチャレンジしたくなるだろうと思います。そんな魅力のある山々です。

イリーナさんはコンスタントに毎年2~3点のCDをリリースしていて、どれをとっても音楽に対する真摯な取り組みを感じさせる名盤ばかりです。これからもベートーヴェンのソナタと並行して、イリーナさんにとって大切な作曲家、ショパンやシューマン、シューベルトなどの作品、故郷ロシアの作品も録音していく予定です。

 

充実したコンセプトでCDリリースを続けていきますので、どうぞご注目ください!!

マネージャー
いたはしみづき
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

谷川賢作
2008.09.17

谷川賢作の股旅日記2008(4)

9月16日(火)高円寺studio K にて24絃箏の小野榮子さんとのデュオ。昨日の天田君のコントラバスフルートにひきつづき「不思議楽器」シリーズである。日本古来の和琴は6絃。そして現在、いわゆる普通に演奏されている箏は13絃。そしてこの特注で制作された24絃。人間は欲張りだ。ここまでは「扱える」と勘違いすると、どんどんその音域を広げようとする。しかも低音方向に。ピアノにもベーゼンドルファーに「インペリアル」というモデルがあり、これも低音方面に長6度伸びて、C~C完全8オクターブの97鍵。実際に弾いてみたこともあるが、最低音部はいわゆる「楽音」には聞こえない。
特殊効果としてならありえるだろうが、この最低音付近をフレーズとして書こうとする作曲家はいないと思う(でも、いるかな?みんな好奇心旺盛で、人がまだやっていない方向にいつも向かおうとするのが作曲家という生き物)だが実は、この低音部があることによって楽器のボディ自体が大きくなり、より全体が深く共鳴するのがミソである。べーゼンの場合、そのための低音域なのだ。箏という楽器もこれから、どこまで音域が広がっていくのだろう?楽器制作の職人さんも「受注」したら腕のみせどころだろうなあ。

小野さんとは、つかずはなれず20年来のおつきあい。この方、変わった演奏会場での仕事をみつけてくる嗅覚が鋭い。いろいろありえないような場所で一緒に演奏してきた。廃駅になった旧JRの両国駅舎跡、仙台の美術館の前庭(屋外でまったく屋根なし。リハの時は快晴だったが、本番中、一天俄にかき曇り雨。ヤマハの人が青い顔をしてすっとんできて、ピアノはあっという間に防水梱包。雨の中でも弾き続けようとする私は羽交い締めで退場処分、、、反省)イスラエルの彫刻家ダニ・カラヴァンさんとコラボレートした時は石炭を会場いっぱいに作品として飾られた中での演奏。時折咳き込みそうになりながらもクールに我慢。お客様もどこでどうやって聞いたらいいのか?? しかしいろいろあったが、いずれも得がたい楽しい体験だった。

本日は、我々にしては「めずらしく」ごく普通の小さなコンサートホール。実は2004年に録音した音源が、いろいろ紆余曲折あって、ようやくCDになったのが昨年。CD発売記念コンサートも諸事情で遅れたが本日めでたく開催。小野さんの人徳であろう。予想をはるかに上回るお客様に集まっていただき。開演前からテンションはあがるいっぽう。

曲目は私の提案で「All Blues 」や「Left Alone」といったいわゆるジャズのスタンダードナンバーもとりあげる。もちろん箏で演奏するのは難儀なのは重々承知の上。悪戦苦闘の中からなにか少しずつ生まれてくるような気もしないでもない。自分たちの「自覚」ももちろん大切だが、耳のいい厳しいお客様方に客観的な批評をいただけたらうれしい。

コンサートタイトルにもなっている「水はまたまっすぐ流れる」は、私がダニさんの作品から触発されて書いた曲。久しぶりに演奏したが、リハの時とは違う展開を私がしかけて、小野さんは目を白黒。すみません、、、他に小野さんは「Libertango」でメロディオン。「The Rose」から「花」のメドレーは歌。多彩な表現で聴衆を「煙にまく」(あっ嘘です。すみません。「魅了」するのまちがいでした)小野さんとは今後もドン・キホーテとサンチョ・パンサのような関係で演奏を続けていくのかなあ。

皆様、応援のほどよろしくお願いいたします。礼!

イリーナ・メジューエワ
2008.09.17

イリーナ・メジューエワ(4)

<子供の頃のこと~ロシア時代の思い出>

私もつい先日知ったのですが、イリーナさんは次女です。次女らしく(?)、実は意思がとても強くて、譲れない、強気な性格だとか!?
※【写真】イリーナさん3歳

イ:私の生まれた家庭は、両親、姉、祖父母と私の六人家族でした。父親はエンジニア、母親は幼稚園の音楽の先生でした。私が生まれたとき、5歳年上の姉がピアノを始めたので、ちょうど生まれたときからピアノを聞きながら育ったということですね。とにかくピアノの音が大好きで、姉を羨ましく思い、自分もピアノを習いたいと願っていました。そして5歳になったときに私もピアノを習い始めたというわけです。

日本に長くいらっしゃるので、ロシアの話を聞くと逆に新鮮ささえ感じます!
実は気の強い性格と聞きましたが・・・。

イ:次女の性格なのでしょうか、私は思っていることを表に出すことはあまりないのですが、内面は頑固ですよ。自分で決めたことは絶対に最後までやり遂げたい、という気持ちが強いと思います。

では、ピアノの練習などもしっかりするタイプだったのでしょうか?

イ:ピアノの練習はけっこう好きでしたね。最初、地元(ニジニー・ノヴゴロド)の音楽学校で勉強した後、15歳からモスクワのグネーシン特別音楽学校で学び、引き続きグネーシン音楽大学でウラジーミル・トロップ教授に師事しました。

子供の頃の忘れられないエピソードなどは?

イ:小学生の頃、毎月1回程度、土曜日の夜に家族の前でコンサートをやっていました。
テーマを決めて、例えばモーツァルトならモーツァルトについて、本などで色々調べるのです。その研究成果を、発表しながら曲を演奏する、というものでした。雰囲気を出すために、電気を消して蝋燭に火を点したり・・・今考えると随分子供っぽいですけど。コンサートが終わったあと必ず食べていたチョコレートケーキの味は忘れられないですね。

ピアノ(とチョコレートケーキ!)以外にはどんなことに興味がありましたか?

イ:音楽と並行して社交ダンスも習っていました。踊るのが大好きで、色んなステップを覚えましたよ。今は踊る機会がないのがちょっと残念ですね。

モスクワでの学生時代には、こんなエピソードもあったそうです。
ドイツのミュンヘンで、ロシアの大ピアニスト、リヒテルがリサイタルを予定していましたが、彼がキャンセルしそうな可能性が発生!イリーナさんが急遽代役に呼ばれました。ミュンヘンへ入り、準備をしたのですが、結局リヒテル本人が出てきて弾いたそうです。リヒテルは今でもイリーナさんの尊敬する大先輩の一人です。

マネージャー
いたはしみづき
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

谷川賢作
2008.09.16

谷川賢作の股旅日記2008(3)

9月15日(月)本日は、ライブは休み。そこで、今年はすでに仙台には2回行っているので、その2ステージについて報告します。

まず一度目は4月2日(水)錦町の洋風居酒屋さん「銀杏坂」に「Sudden T’s」というユニットでおじゃましました。メンバーは天田透(コントラバスフルート、バスフルート)鳥越啓介(ベース)そして私。ドイツ在住のバスフルート奏者天田君に出会うまで、私はこういう楽器の存在を恥ずかしながら知りませんでした。(写真左がコントラバスフルート。写真右が、おちゃめな奴でしょう、天田氏です)フルートなのに、なぜにこんなにもひく~~い音をださなければいけないのか?という素朴な疑問はあるのだが、そこは音楽家たるもの。発音するすべてのものを、好奇心をもって受け入れるべし!てなわけで、このユニットは天田君がドイツから帰る頃を見計らって、不規則に活動しています。

さて、仙台初お目見えとなった我々ですが、お店は早々超満員。しかもお客様方、開演前からそうとうアルコール類をきこしめしていらっしゃるご様子。まあ、これがライブハウスのいいところ。緊張があっという間にほぐれてしまう。見知らぬ者どうしも、袖ふりあうもなんとやら、でわいわいもりあがっている。そこへおもむろに登場する私たち。そしていきなりの低音の渦渦渦、、、若手ナンバーワンの呼び声が高い、鳥越君のグルーブする重量感のあるベースにのって、コントラバスフルートが縦横無尽に低いほうを暴れ回る。ピアノの居場所がない、、、負けじと、ぐがががが、と連打で応酬するのだが、この日は高い音はルール違反、紳士協定に反するみたいになってしまった。なぜだ!?は、ジャズは山下洋輔さんもおっしゃるとおり、試合でもあるのです。この日の「流れ」がこうなら、私も黙ってはいられまい、いくぜい~~うりゃりゃりゃりゃああ!!と低音怒濤の仙台の夜は更けていったのでありました。

二度目はうってかわってエレガントで知的な(そのはずです。でも同じ人間がやっているということは、、、推して知るべし)「現代詩をうたうバンド」DiVa で仙台市市民活動サポートセンター内の「市民活動シアター」に6月6日(金)に参上いたしました。このDiVaというグループ。96年に結成し、一度休んでいたのですが、また昨年から復活しました。仙台、中新田、本吉などでもライブ、コンサートの機会があり、今回も「ひさしぶりに聴きたいね」という有志の方々が「実行委員会」形式で制作してくださいました。心から感謝もうしあげます。礼!
コンサートに限らず、演劇、ダンス等、幅広く使えるこんなコンパクトな劇場が欲しいなあ、と東京在住の私は思います。もっともこのような手頃な劇場が東京にあったら、応募殺到でおさえるのが難しいのかなあ。
右記アドレスです http://www.sapo-sen.jp/about/archives/000136.php

コンサートは、昔からの仙台圏DiVaファンはもちろん、札幌から東京から、全国各地からコアなDiVaファンを「おっかけ」させてしまい涙涙。ロックでもジャズでもクラシック的な歌曲でもない、ジャンルで規定できないその独特のサウンドに熱心なファンは多いです。詩も谷川俊太郎、まどみちお、片岡直子等詩人達の「うたになることは想定外の詩」を自由な発想でうたにしています。未体験の方、ぜひ一度聴いてみてください。そしてこの日もラストに歌われましたが、矢野顕子さんもカバーしている名曲「さようなら」(作詞/谷川俊太郎 作曲/谷川賢作)は今年のせんくらでも「であるとあるで」さんの木管にのせてお送りする予定です。ボーカリスト!?そう、それが問題。俊太郎が歌うか、賢作が歌うのか。どちらも歌いたがり。

イリーナ・メジューエワ
2008.09.16

イリーナ・メジューエワ(3)

<和風が大好き!>

昨日からイリーナさんのプライベートな側面をご紹介しています。
今日は趣味について。

イ:趣味は何といっても歌舞伎鑑賞! 毎月のように観に行っています。東京以外の劇場にも行きますよ。これまでに南座(京都)、松竹座(大阪)、御園座(名古屋)、博多座(博多)などに遠征しました。金丸座(四国こんぴら歌舞伎)も2回行きました! 歌舞伎に限らず、能、狂言、文楽、落語など日本の古典芸能は大好きですね。もちろん元々お芝居が大好きということもあります。ロシア時代にもよく劇場に足を運んでいました。ロシアにも素晴らしい演劇の伝統があります。洋の東西を問わず、芝居は人生に欠かせない大切なものだと思います。

私は日本人ですが、歌舞伎はたった1度しか観たことがありません・・・。

イ:日本の伝統芸能の素晴らしい点は、年齢とともに芸に深みが出てくるところ。文楽の太夫さんがインタビューで「50代、60代なんて半人前。70代、80代になってからが勝負」と語っていたのがとても印象的です。舞踊にしても100歳くらいの名人が軽やかに踊っているのを映像で見たことがありますが、本当に驚きました。80歳を超えたバレリーナが現役なんていうのはまず考えられないことですから。

演奏旅行や準備、日々の研鑽で忙しい日々と思いますが、イリーナさんにとってリラックスできる時間はどんな時ですか?

イ:リラックスできる時間ですか・・・。手作業が好きなこともあって、和風の小物を作ることを趣味にしています。色や柄の組み合わせを考えるのも楽しいですね。これまでに財布やバッグ、人形など、色んな作品を作りました。手作業に集中していると、音楽のことをしばらく忘れています。
※【写真】は、イリーナさん作の和小物

それ以外に日本ならではの楽しみは?!

イ:温泉です! お湯にのんびりと浸かりながらリラックスして何も考えずにぼ~っと過ごすのは至福のひとときです。風呂上りの美味しい食事とお酒ももちろん最高ですね。

私がお休みをいただく時に、お勧めの温泉を教えてくださったりもするイリーナさんです。

マネージャー
いたはしみづき
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

谷川賢作
2008.09.15

谷川賢作の股旅日記2008(2)

9月14日(日)今日は私のホームグラウンド渋谷「公園通りクラシックス」でソロライブの日。今年は隔月(奇数月)で必ずここでソロのライブをやることにしている。クラシックのピアニストにとっては当たり前の「ソロ」だが、我々ジャズ系のプレイヤーはなかなかソロのライブ、コンサートを作らない。なぜかと言われても、他のプレイヤーとのインプロビゼーション(アドリブ)のかけあいのほうがおもしろいから、と言うしかないのだが、でもソロは自分との対話、挑戦として必ずコンスタントに続けていくつもりだ。

プログラムはオリジナル曲ばかり。先日、舘野泉さん、平原あゆみさん、私の「3手」のために書いた「小春日和」からスタート。もちろん今日はソロなので中間部はアドリブしまくりだが、まったくアドリブのない5曲からなる組曲にして、来年3人で初演の予定「スケッチズ・オブ・オールド・ジャパニーズ・ランドスケープス」(仮)お楽しみに。2曲目はやはり舘野さんに捧げた「A Chorale for Carla」もちろんアレンジを変えて両手ヴァージョンで弾くのだが、この曲は左手1本のほうがストイックでいいと思った。やはりその時に吟味して書かれた少ない音のほうが研ぎ澄まされているのか。いつでも、アドリブにはしろうとする態度を反省。3曲目は「風来坊の春」というワルツ。お客様でいらしてくださった、出版関係のOさんから「私が今抱いている企画にぴったりの曲」と言われてなんだか嬉しくなる。その企画を、終演後熱意をこめて語られる。ふむふむ。これも形になる日をお楽しみに!

さて、こうやって1曲ずつレポートしていると長くなるので、ここで突然話題を変えて、敬愛する「My 調律師」宮崎剛史君のことを書く。彼と私は同じ歳。48歳。20代前半の時、さいたまの某ジャズ倶楽部で出会って以来、つかずはなれず、の関係と言いたいところだが、一度はなれてしまっている。これは一方的に私が悪くて「調律なんざあ まあ、あるにこしたこたあねえが、おいらピアノ弾き一匹、そこにピアノがあればどんな状態でも見事に弾いてみせるぜ」というまったくもって驕りたかぶった、これぞ若気の至り、という愚かな心構えだったので、自然と彼は私から遠ざかってしまったのである。彼の整音のすばらしさ、私との相性の良さに気づくのはごく最近まで待たなければならなかったのである。ああ遅い。再び反省。もうはなさないぜい!だんな~

しかし、ピアニストと調律師の関係というのも不思議なもんだ。初めての場所で、初めての調律師の方に「先生、先生」と言われながら、その日の楽器に四苦八苦している自分はいったい誰なのだろう??気が遠くなりそうだ。そしてすべての演奏の場に、宮崎君を従えて「肩で風をきって颯爽と現れる」のはいったいいつの日だろう?(そんな日はこないよ あほ)まあとにもかくにも、少しずつ前進あるのみ。

来年2月ピアノソロの新しいアルバムを録音する。もちろん調律は彼。妥協のない、魂のこもった音でせめぎあいたい。どうだ、この音、まいったか、とぎゃふんと言わせてやりたい。おそらく彼もすばらしいチューニングで、私にまいった、を言わせたいに違いない。同世代っていいなあ。ライバルで友達。
(写真 右後方が宮崎剛史君。いい仕事するのに、目立ちたがらない、、、)

イリーナ・メジューエワ
2008.09.15

イリーナ・メジューエワ(2)

<味噌汁マスター>

イリーナさんは小柄で色白、お会いすると非常に控えめで楚々としいています。

しかし演奏を聴くと、予想外に骨太!特別な体力づくりや食生活をされているのでしょうか?

イ:体力づくりですか・・・特別なことは何もやっていないですね。ただ、歩くことが好きなので、しょっちゅう散歩をしています。4~5キロ歩くのは苦になりません。時には10キロくらい離れた場所に行くのに歩くこともあります。散歩の途中で未知の風景やお店を発見するのを楽しんだりしています。

本番直前は何も口にされませんが、普段の食生活に何か秘密がありますか?

イ:ごく普通の食生活だと思います。毎日普通に料理していますし。家では大体和食を食べることが多いですね。ロシア料理は滅多に作りません。やはり風土・気候と食事は密接に関わっているのでしょうか、日本で暮らしていると、ロシア料理を食べたいと思うことが少ないのです。和食がいちばん自然で美味しく感じられます。お蕎麦、うどん、豆腐、味噌汁、うなぎ、すき焼き、しゃぶしゃぶ、鍋料理など、大好きですよ。魚の刺身も最初は苦手でしたが、だんだん好きになりました。苦手なのは納豆ぐらい。
和食の素晴らしいところは、ヘルシーで美味しいのはもちろんですが、料理を盛りつける器に至るまで、様々に楽しめる点にあると思います。色彩も豊かですし、陶器や漆器などの手触りも楽しめますよね。食事というごく日常的なものごとの中にも芸術的な要素が自然な形で入っているのは、日本ならではの素晴らしさだと思います。あと、日本は地方ごとに食事もさまざまで、それぞれに名物料理があるというのは面白いですね。仕事がら色んな地方に行きますが、その土地のいちばん美味しいものを味わうというのはとても楽しい体験です。

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和食がお好きとのイリーナさん、味噌汁作りが大得意と聞きました。そう言えば、先日仕事で喜多方へご一緒した時に、おいしいお味噌のお店をご存知で、しっかりお好みのお味噌をゲットしていました。

仙台味噌も赤味噌でおいしいお味噌汁が作れそうですね。

明日はイリーナさんの趣味を聞いてみたいと思います。

マネージャー
いたはしみづき
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

 

谷川賢作
2008.09.14

谷川賢作の股旅日記2008(1)

今年も全国津々浦々、股旅を続けております。

10月に皆様と仙台でお目にかかれること楽しみにしております。

さて、9月13日(土)碧南市の「哲学たいけん村」(詳しくはこちらをご覧ください http://www.city.hekinan.aichi.jp/MUGAEN/index.htm)にて、谷川俊太郎の「観月の会」にお供しました。自他ともに認める「雨男」の俊太郎。まったく屋根のないオープンステージということで心配しましたが、ご覧のとおりのいい天気に恵まれご機嫌であります。(写真は開演前リハーサル時ですが、開演中は美しいお月さまと涼しげな虫たちの声がステージをいろどりました)

俊太郎の父(私の祖父)徹三は哲学者。哲学者―詩人―音楽家、と見事に「観念から感覚に移行」していく谷川家なのであるが、そういう私も「哲学」とは少々肩肘はったことばであるかもしれないが、自分の活動、行動の理念のもとになる大きな魂(まだるっこしい言い方だ、、、)は年々必要だと感じている。スヌーピーに出てくるライナスではないが、常にぎゅっとしがみつける「安心毛布」が欲しい?喝!
甘ったれるな。はい。でも毎日が「股旅」で矢のごとくすぎさってしまってよいのだろうか。どこぞの歌ではないが、たちどまって、ふりかえって考えたりしなくてよいのか?いいよ、そのままつっぱしれ(どっちなんだよ いったい でもどなたも股旅生活の音楽家の皆様、わかってくださいますよね)

さて、名月と虫のアンサンブルと涼風をバックに、俊太郎の朗読もいつも以上に心に響いてくる、楽しいので書籍、雑誌等に未発表の詩なども朗読。そして、そう。のると出てしまう歌。あああ、ここでもまた歌ってしまった、、、まあ、先に私が歌ってしまうのが悪いのだが(歌がでてくると聴衆がなごんでくださるのが嬉しいのです。特に我々のようなしろうと歌)彼も「よーし、おれだって」とつい受けてたってしまう。私は「たかをくくろうか」(作詞/谷川俊太郎 作曲/坂本龍一 そしてあの、たけしさんが歌った!隠れた名曲です)そして詩人は「昨日のしみ」(作詞/谷川俊太郎 作曲/武満徹 詞が先にできて、演歌を書いてもらおうと武満さんに渡したらしゃれたジャズの曲になったという)

歌合戦になる前に自重して朗読とピアノ演奏に戻った二人であるが、こんどの「せんくら」でもまたもや歌ってしまうのであろうか?お客様の皆様のノリも大きく影響するような気がします。

どうぞよろしくお願いいたします!?

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