はじめまして、仙台クラシックフェスティバルせんくら2006に出演する仙台市出身のチェリスト、丸山泰雄です。
仙台で生まれ、父の仕事の都合で3年ほどアメリカ合衆国に滞在した時期を除けば、立町小、仙台二中、仙台二高と、私の青少年期を過ごした仙台は、まさに私のふるさとです。
当時は川内に住んでいたので、家の裏にある公園を通れば3分で広瀬川、真冬以外は毎日のように魚釣りをしていました。また、小学校5年の時からサッカーにのめり込んでいたので、いつも真っ黒でケガだらけでした。
さて、今回の“せんくら”には10月9日にチェロ・ソロとチェロ・クワァルテットで2回出演するのですが、秋の仙台といえばまず思い出すには芋煮会。(皆さん知ってますか?芋煮会は東北独自の文化で、東京や関西の人達は全然知らないんですよ!)
東京に住みはじめてもう23年、毎年秋には、芋煮会を懐かしく思い出し、音楽家仲間に開催を呼びかけるのですが、秋は忙しいからと誰も積極的に話に乗ってきません。せっかくの機会なので、今回はコンサート終了後に伴奏のピアニスト中川賢一君とチェロ・クワァルテットのメンバーを強引に誘って、広瀬川で芋煮会しようかとマジで考えています。
澱橋付近の河原で私を見かけたら、ぜひコンサートの感想を聞かせてください。それではまた明日!
丸山泰雄(チェロ)
昨年4月から、NHK仙台少年少女合唱隊と改称した団体ですが、旧名称の仙台少年少女合唱隊から数えると、48年の長い活動をしてきました。
このたびは、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」と、チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」の中から、合唱曲に編曲されたものを歌います。
「動物の謝肉祭」からは、原曲が“水族館”となっている“海のしじま”と、有名な“白鳥”の編曲で“旅の白鳥”、そして、“フィナーレ”です。
ピアノ連弾による伴奏で、榎木富士夫の作詞、寺島尚彦の合唱用編曲版ですが、“フィナーレ”は、ピアノのみで演奏されます。
“くるみ割り人形”は、台本と音楽、中山知子、編曲増本喜久子によるもので、1.序曲(ピアノ連弾)、2.行進曲、3.子守唄、4.雪のワルツ、5.ロシアの踊り(トレパック)、6.花のワルツ、以上6曲が演奏されます。
“動物の謝肉祭”も“くるみ割り人形”も、よく知られたオーケストラの作品ですが、子供達の清らかな歌声による演奏も、又、違った魅力を見せてくれることでしょう。
合唱 HNK仙台少年少女合唱隊
指揮 大泉勉
ピアノ 尾澤香織、尾澤麻衣
発声指導 姉歯けい子
NHK仙台少年少女合唱隊 大泉勉
岸本力さんが『ロシア民謡』をオーケストラ・バックでうたうと、東京芸術劇場の大ホールが完売になるそうだ。リリースされたロシア民謡のCD『つかれた太陽』も、コンサート会場で販売すると飛ぶように売れるそう。
すごいなぁ。一度でもそんな経験を私もしてみたい。岸本さんには【御喜美江アコーディオン・ワークス2004】にゲスト出演していただいた。ステージ上での岸本さんはまたとくべつで、そのときの印象も忘れられない。
プログラムはショスタコヴィチとグバイドゥーリナのソロ作品で始まり、そのあと休憩までがロシア民謡となった。岸本さんは背が高く足が長くハンサム。そして赤がアクセントされた黒の背広も抜群にかっこういい。こういう人と登場すると何となく気分がいいなぁ。
一曲目は“トロイカ”。歌い終わった瞬間に「ブラビー!」「ブラボー!」とあちらこちらからかけ声がかかる。なんかすごくいい感じ。次は“ナスターシャ”岸本さんの額には汗が滲み出ている。しかしそれとは別に何かが飛んでくる。なんだろう・・・
私は左うしろ斜めに座っているから、逆行ライトの中を見上げると、なんとそこには唾がまるでシャワーのように飛び散っている。前3列目くらいまでは、この唾シャワーをもろに浴びているはず。
2曲目がおわるとさらに「ブラボー!ブラビー!」の連呼。でも私は唾のことが気になって前列のお客様のほうを見ると、そこはみんな岸本さんのファンらしく、どの人も喜びに溢れ、恍惚の面差しで岸本さんを見ている。「あっそうか、この人たちは“岸本シャワー”を頂きたく、このこんな前に座っているんだ。」と納得。(さらに続く)
御喜美江(アコーディオン)
『ロシア民謡』が大好きだった父の希望で、私は4歳からアコーディオンを習い始めた。その頃からすでに『ロシア民謡』に縁があったわけだが、父親の趣味嗜好はかならずしも子供には遺伝せず、娘はそれから数十年間『ロシア民謡』とは無縁で過ごしてきた。
ところがある日キングインターナショナルの宮山幸久さんから次のような問い合わせがきた。「この度キングでは“岸本力・ロシア民謡”リリースを計画しています。岸本さんは、音楽がロシア民謡ですからその伴奏をピアノではなく、アコーディオンとギターで希望されています。弾いていただけますか?」
私はその時のことを今でも鮮明におぼえている。何故かと言うと、このようなレパートリーは今まで弾いたことがなかったし、弾きたいとも思っていなかったし、多分自分からは思いつきもしなかったアイデアなので、「えっ?」と戸惑うはずのところが、何故かどうしてか、宮山さんの問いに対して私は一瞬の迷いもせず「ありがとうございます。是非とも弾かせていただきます!」と答えていたからである。
そしてもっと驚いたことは、私自身がこのニュースを本当に喜んでいたことである。「ロシア民謡・・、どんな曲があったっけなぁ、カチューシャ、ともしび、モスクワ郊外の夕べ、ボルガの舟歌、あぁいいな〜、懐かしいな〜、弾いてみたいな〜」と夢はどんどん膨らんでいった。(明日に続く)
御喜美江(アコーディオン)
私たちのレパートリーのもう一つの方向は、英語の歌です。今回は、『アルヒダノス』というウェールズの民謡を取り上げます。
これは子守歌なのですが、原詩はもちろんウェールズ語で書かれているので、私たちには理解できません。しかし、幸いなことに、イギリスでは何種類かの英語詩版が出ており、そのなかの一つに準拠して編曲をすることにしました。ただし、リフレインの「Ar hyd y nos」(これで、アルヒダノスと発音します)のところだけは、英訳詩によらず、原語にしたがって歌うという、ちょっと私たちだけの独特の構成でお届けします。意味は「夜もすがら」ということであります。
その他に、私は詩人として、多くの作詩歌曲作品を世に出しておりますが(ご存じないかたも多いと思いますが・・・)、そのなかのいくつかはすでに音楽の教科書にも出ていいます。シューベルトの『鱒』、メンデルスゾーンの『歌の翼に』、インドネシア民謡の『ラササヤンゲ』など、外国曲の日本語詩を私が書いたものです。
それらのなかで、私が自分でもっとも気に入っているものが、ハワイ民謡の『アロハ・オエ』で、これはリリウオカラニ王女の作詩作曲の原譜に忠実に詩を書いたものです。この曲は二重唱(二部合唱)に編曲されていますので(編曲は伊藤康英さん)、いつも勝又さんと歌って好評をいただいている、言ってみれば「定番曲」となっております。
今回は、たった四十五分しか時間がないので、演奏できる曲目には限りがありますが、以上のように、日本の懐かしい歌や、イギリスの子守歌、そして外国曲の日本語訳詩版(林望作詩)というような、いくつもの違った相貌をもった重唱曲を御披露したいと思います。
さてさて、実際にどのような曲を演奏するか、それは厳密には当日のお楽しみといたします。いずれも演奏に先立って私が簡単な解説をして、それから歌うということにしますので、一種のレクチャーコンサートとしてもお楽しみいただけるかと思います。
どうぞみなさま、ふるって、万障お繰り合わせのうえ、私どもの「男声二重唱」の世界に御来臨を賜りますよう、重ねがさね、お願いを申し上げておく次第でございます。
ああ、面白かった、と思っていただけるように最大限の努力を傾けたいと思っております。
林望(トーク&バリトン)
この記事を書き始めた頃、林さんお母様のお葬式前夜でした。
教会のオルガンを聴きながら近くの喫茶店で第一稿いれました。私にとって今年の夏は、あっという間に過ぎてしまいました。
しかし、大きなことを学びました。人と人との巡り会い、人間命あるかぎり「生きる」ことへの憧れをもたなければならないと!
さて、10月7日にロシア民謡のリサイタルを開催します、一般にロシア民謡といっても四つのジヤンルに分けられます。トロイカ、一週間などのロシア民謡、赤いサラファンなどのロシア古典歌曲、カチューシヤ、モスクワ郊外の夕べ、などのロシア歌謡、黒い瞳、などのロシア・ジプシー歌謡に分けられます。
今回はトークを交えて演奏したいと考えています。
今年の10月28日には、私の第20回目のリサイタルで、ショスタコーヴィッチ生誕100年記念して、モノ・オペラ「ラヨーク」を、一人五役で演奏します。
今日で私のコーナーは終わります。
私の文章を読んで下さり感謝します。またこのような機会を与えてくださり幸せです。
ではお元気で。仙台でお会いするのを楽しみにしています。
岸本力(バス)
私は基本的には国文学者なので、歌の「詩」をとても大切にしたいと思っています。歌には詩がある、そこがもっとも基本のところで、その「詩」を、文学的にきちんと味わいながら「歌」にしていく、そのことがもっとも大切だと思っているわけです。また、そういうことになれば、国文学の、とくに古典文学の研究をずっとしてきた私は、詩の解釈について、一段深いところまで分け入っていくことができます。
唱歌といっても、ほんとうに子供向けの、単純で深みのない詩のものも多く、すべてが文学的な内容を持っているわけではありません。
しかし、たとえば『朧月夜』(高野辰之作詩)などは、もっとも見事な詩を持った作品のひとつで、これは純然たる歌曲として見てもいいくらい、美しい詩を歌にしています。
菜の花畑に入日薄れ、見わたす山の端霞深し・・・
あの詩の歌っている景色のなかには、私たちのもっとも懐かしい原風景が息づき、今や失われつつ日本の田園の風景美や季節感が、かなしいほど見事に表現されています。それに応じてまた、岡野貞一の作曲も間然するところなき名曲というべきもので、こういう歌を歌うときに、私たちの心に湧き上がってくる郷愁の切なさは、なんとも言えないものがあります。
ところが、こんな名曲が今は学校の教科書からも消え、ほとんど知らないという若い人が増えてきたという、この現実は、残念を通り越して、憤りを感じざるを得ません。せめて私たちは、こういう曲を、なんとかして新しい編曲で甦らせ、今の若い人たちにも、ああ、素晴らしいなあ日本は、とそう思ってもらいたいと念願しています。
あるいはまた、『夏は来ぬ』という唱歌も、素晴らしい作品です。これは和歌界の大御所佐々木信綱が作詩し、東京音楽学校(後の東京芸大)の作曲の中心人物であった小山作之助が作曲をしたという、唱歌の世界の金字塔ですが、ここには、古今集以来の、日本的な風物詩と、その倫理観宗教観のようなものが、あえかに息づいています。こんな歌を歌うことは、やがて日本文学の精髄に触れていくための階梯として格好のことであって、ぜひとも子供たちに歌わせたいものと思っています。そのために、私はいつも演奏に先立って簡単な解説を試み、よく解っていただいてから、歌として演奏する、ということにしています。
今は忘れられてしまっている名歌『野菊』(石森延男作詩、下総皖一作曲)も、昭和十七年に作られた比較的新しい歌ですが、これまた、なんという優しい情調を持った美しい歌でしょうか。私はこの歌もまた、ぜひ復活して多くの人に歌われてしかるべきものと信じています。
そんなわけで、この機会に、ご存じの方は、ああ懐かしいと昔を思い出しつつお聞きいただき、知らなかった人には、ああ、こんな美しい歌があったのか、と改めて認識をしていただきたい、とそんな思いで歌って参りたいと思っています。
林望(トーク&バリトン)
今日、この記事がだされる9月1日は、私の誕生日です。この日に考えることは、人には出会いがあり別れがあることを強く感じられます。
8月12日に、いずみたく先生のミュージカル「センチコガネムシの愛」に出演しました。無事成功に終わり楽しい打ち上げの最中に、共演者の歌い手の林統子(もとこ)さんのお母様が突然倒れ、8月20日に亡くられました。人生、予想もつかないことが起きるものです。
8月26日、教会でお葬式がありました。涙流しながら、いずみたくの「見上げてごらん夜の星を」歌いました。我々このような仕事をしていると辛いものです、彼女も24日に、涙をこらえ「センチコガネムシの愛」を見事に演じました。このミュージカルは、本当は10人以上で演奏するのですが、一人五役で、二人でやりました。
内容はとってもかわいいミュージカルで、センチコガネムシの夫婦愛を通して、季節の移りゆくなかで、自然と必死に闘いながら生きる虫たちが、生きる喜び、助け合うことの素晴らしさを教えてくれ、とっても心が癒される、あったかいミュージカルです。
仙台の皆さん!演奏させてくれませんか?
今日はここまで。
岸本力(バス)
今回の「せんくら」セッション78は、男声二重唱のレパートリーを以て構成します。
もともと勝又さんとは、ザ・ゴールデン・スランバーズ以来、もう何年にもわたって混声重唱をご一緒してきた仲間なのですが、最近では、もっぱら男声二重唱で舞台にかけることが多くなっています。
重唱は、三重唱、四重唱、六重唱、八重唱と、だんだんと声部が多くなるほど、ポリフォニーとしての複雑な音楽性が込められるので、それはもちろん楽しいのですが、といって、二重唱にはまた格別の面白さもあります。いってみれば、それは親しみ深さでしょうか。
私たちのユニット、勝又・林組にはまだ名前がないと、このブログに書いたところ、さっそくその名前を募集してはどうかというコメントを頂きました。もし、みなさんがたのなかで、こんな名前はどうかというアイディアのある方はぜひお知らせください。
それはともかく、私たちは、前衛的で難解な作品を取り上げようというつもりは全くありません。音楽というものは、一つは不可避的に前衛的・現代的な「新しさ」を希求する方向に進んでいくわけですが、それはどんどん難解になっていって、一般聴衆の楽しさからはかけ離れていってしまう傾向があることは否めません。
そこでもう一方では、どこまでも親しみ深い、懐かしい歌どもを、できるだけ音楽的にきちんとした丈高い編曲で、純粋にハーモニーを響かせるという方向に努力するということがあってもいいと思っています。そして私たちの使命は、この親しみ易い音楽を真面目に演奏するということではないかと思っています。
そこで、私たちが取り上げる、重唱曲のレパートリーは、ほとんどは上田真樹君の新編曲による「懐かしい歌たち」というコンセプトで構成しています。イギリス人にとっての、賛美歌とかマドリガルというようなものが「心の故郷」であるとすれば、私たちにとってのそれは「唱歌」というようなものであるに違いありません。それを、新しく美しい編曲で、ごくごく真面目に歌っていく、それが私たちの目指しているところです。
林望(トーク&バリトン)
赤字を出してやるリサイタルには、なかなか苦労したものでした。
10年程前リサイタルの終わった後で、ビクターのディレエクターが、リサイタルのアンコールで歌ったロシア・ジプシー歌謡の「黒い瞳」に感動され、CDを出さないか?という話がはいったのです。
私は自主製作でロシア民謡のCDを一枚造りたいと考えていましたが、貯金は、生活費用でなくなり、ほとんど諦めていましたから、たいへん嬉しい話に、長年頑張ってきた私への「ご褒美」だと思いました。
CDの発売と平行して、日フィルとオーケストラで「ロシア民謡」を、私が中心で、東京芸術劇場で!という、この夢のような演奏会の話に、いつも心の支えだった、亡き両親に感謝しました。
私は必ず誰か、私が岐路に立ったとき導き助けてくださる人に巡り会うのです、何とも不思議です。
今回の仙台では、ロシア民謡リサイタルでアコーディオンの御喜美江さんと共演します。
私の人生の苦悩と悲しみと喜びの詰まったステージにしたいです。
この機会を与えてくださった方々に感謝します。
今日はここまで。
岸本力(バス)