現在、私はフリーのチェリストとして活動しています。内容はというと、ソロ、室内楽がメインで、その他に年間それぞれ5回定期公演を持つ、ソリスト集団とも言える精鋭揃いの室内オーケストラ「紀尾井シンフォニエッタ東京」と「トウキョウモーツァルトプレイヤーズ」のメンバーとしての活動や、国内主要オーケストラの客演首席等が中心になります。
前回書いたように、チェロは非常に多才な楽器ですので、どの様な編成でもやりがいのある声部が与えられますし、フリーでいれば、ソロばっかりとかオーケストラばっかりというように1つの活動の場に縛られて煮詰まったり、飽きる事がなく(笑)、自分には向いていると思います。
他にも自分でプロデュースするコンサートが年数回あります。演奏家の仕事のほとんどはクライアントからの依頼によるもので、なかなか自分が弾きたい曲を一緒に弾きたいプレイヤーと演奏できるわけではありません。じゃあそういう演奏会は自分で創ってしまえと始めたのですが、自分でプロデュースしてはじめて感じる裏方の努力やお客様のニーズもあって、とても良い勉強になっています。
また、クラシックだけが好きという訳でもないので商業音楽の録音もしていますが(テレビや映画、CM、舞台等でチェロの音を聞いたら、その半分ぐらいは私の音だと思って下さいね。音にはサインを残せないのが残念ですが)、いわゆるスタジオと呼ばれるこちらの業界も奥が深く、キビシイ世界で、1回楽譜を見たら2回目はもう本番レコーディング、場合によっては初見で録音、しかもそれを3時間で40曲!なんてことが普通で、それができない人は二度と呼ばれません。
そこで活躍しているプレイヤーの顔つきは、クラシックの「夢見る音楽家のそれ」よりどこか凄みがあり、賞金稼ぎ、黒澤映画の椿三十郎みたいな人ばっかりです(半分ウソ)。また、マイクで音を拾ってミキシングすることを念頭に置いた弾き方をしないと音がうまく乗らず、ホールで800人や2000人の聴衆に音を伝えるクラシックのコンサートとは弓のスピード、圧力や左手のヴィブラートの種類も完全に変えなければなりません。
このように、同じチェロの演奏でも、100回も200回も練習して聴衆に披露するクラシック、たった1回の譜読みで本番のスタジオと、その両方をやっている事で、私の場合はバランスがとれていると思っています。
ではまた明日。
丸山泰雄(チェロ)
今の時代、どの合唱クラブでも「合唱団」などという名称にしている。が、我が愛する仙台少年少女合唱隊は「合唱隊」なのである。この「隊」であるところに、この合唱隊の歴史を垣間見ることが出来る。創設者は、郷土の有名な作曲家、福井文彦先生である。まだ軍事色濃い時代の名残なのだろうか。
今、合唱隊などという合唱団は全国でも珍しいそうだ。そのはずである。我が仙台少年少女合唱隊は来年、創立50年を迎える。「隊」であることの歴史には、何と50年もの長さと重さがかかっていたのである。継続は力ということであろう。
この合唱隊の名を消さぬよう、昨年からNHK仙台放送局よりご支援を頂いている。NHKという巨大なメディアが、そのようにしてこの合唱隊を育ててくれるのか、期待しているところである。
私は、この合唱隊の後援会長を23年もしている。23年もの間、公演会長をしてきての思いは、合唱団同士のネットワークの弱さ、無さを感じている。この少子時代である。一人勝ちなどありえない。
「楽都・仙台」と言うのであれば、子ども合唱団同士、もっと連携を持って、楽都・仙台らしい「子ども合唱文化」の意欲的な発信を望みたいものだ。
その意味でも、今回の仙台クラシックフェスティバルは、まさに「試される事務局の力」となるのではないだろうか。楽都・仙台にふさわしい独創性を持ったフェスティバルにして欲しいと、エールを送っている。
NHK仙台少年少女合唱隊後援会長 渡辺義昭
このブログを読んでいらっしゃる方の中でも、私たち仙台ジュニアオーケストラの演奏を楽しみにしていらっしゃる方も多いと思います。
そこで、10月8日の演奏をより楽しんでいただくために、この場をお借りし私なりに曲にまつわる話をしたいと思います。
ただ単に曲の解説をするようでしたら、CDに付いてくる曲目解説かオペラ解説本を読んだほうが面白いでしょうから、あまり解説書に書いてないようなことを…
まず、今回の演奏会の冒頭を飾るのは、ロシアの作曲家ボロディンが作りました、歌劇「イーゴリ公」から“だったん人の踊り”という曲です。
ちなみにこのボロディンという方、作曲家という顔以外にも、もう1つの顔がありまして、実は科学者で大学教授でもあったんです。科学者でありながら、歴史に名を刻む作曲家でもあったなんてすごいですね〜。
さて、曲名の「だったん」という言葉、一時期は使うことを避けられていました。でも、最近また目にするようになったところを見ると、また使ってもよくなったんでしょう。
そう思ってここで書かせていただいているのも訳がありまして…
仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者 松元宏康(まつもと・ひろやす)
http://www.city.sendai.jp/shimin/bu-shinkou/jr-orche/index.html
皆さんこんにちは、今日は昨日の続きとなりますが、チェロの面白さについてもう少し書きたいと思います。
チェロの魅力は音色の豊富な点にあると前回書きましたが、もう1つの特性はその音域の広さにあります。ピアノ、ハープを除けば、すべての楽器の中で最も音域が広く、しかもそのどこの音域でも良く響く音の出せるチェロは「楽器の王」とも呼ばれています。
今回の“せんくら”で私が弾くソロ曲もヴィニャフスキのスケルツォ・タランテラやクライスラーの中国の太鼓等、ヴァイオリン曲ばっかりですし、4人でのアンサンブルをチェロというたった1種類の楽器でできるのも、この楽器の持つ音域の広さが大きな強みになっているのですね。
従ってソロと室内楽、オーケストラでは、チェリストが弾くポジションや要求される音の性質は全く違う訳で、優れたチェリストはその時々に応じてソプラノ、アルト、テナー、バスの4役を使いこなしているという事になります。12人のチェロ・アンサンブルともなれば、1曲ごとに打楽器の役、金管、木管の係、1stVn(ヴァイオリン)の担当、リズムを刻む2ndVn、和音に表情をつけるVa(ヴィオラ)、全体を支えるティンパニーやCb(コントラバス)のパートもチェロだけを使って弾きわけなければいけません。
そういった多様性を持つ楽器であるチェロだからこそ、私も様々な形態で演奏活動を展開できているのですが、その話は次回にしましょう。
丸山泰雄(チェロ)
NHK仙台少年少女合唱隊は、毎週土曜日NHKのスタジオで練習をしています。
練習は、姉歯先生による体操や発声指導で、心と体の準備をすることから始まります。
美しい声、美しいハーモニーを目指し、熱心なご指導が続きます。そして、大泉先生のユーモアにあふれたお話を聞きながら、時には厳しくも優しさに満ちあふれた練習が行われます。現在、合唱曲だけでなく、原語でのオペラや定期演奏会に向けてのミュージカルなど、様々なジャンルに挑戦しています。
合唱隊では、夏休みに毎年3泊4日の合宿も行い、子供たちの楽しみな行事となっています。約7時間の練習でたくさんの歌を歌い、生活を共にすることで、お互い助け合ったり、思いやりの心が育まれ、合唱隊の気持ちが一つになります。
この合唱隊の魅力は、小学生から高校生まで年齢の異なるお友達ができ、一つの音楽を目指し、練習できることだと思います。音楽をする喜びを分かち合い、さらに友情も深まります。
「せんくら」に向けては、『動物の謝肉祭』のゆったりとしたメロディーをなめらかに美しく歌えるように、『くるみ割り人形』では、曲の雰囲気を感じながら早口言葉など様々な練習に励み、気持ちを込めて練習しています。
今回は、これらの曲を妹との連弾で伴奏させていただきます。
心を合わせて子供たちの合唱のサポートができればと思っております。
NHK仙台少年少女合唱隊 伴奏者 尾澤香織
今回は、私が初めて仙台ジュニアオーケストラに出会った時のことを書こうと思います。私がジュニアオケに初めて出会ったのは、仙台フィルハーモニー管弦楽団に入団した時のことですから2003年の7月ですね。
その時、「まだ聴いたことのない仙台ジュニアオケの音はどんな音だろう」ととても楽しみにしていたのを覚えています。さて、実際ジュニアオケに関わることになって…最初はいい意味で驚きの連続でしたね。
まずはじめに驚かされたのは、選曲でした。
仙台ジュニアオケの情報を全く知らなかったので、まずは選曲を伺おうと思い、ジュニアオケの担当の方に曲を訊いたところ、
松元「ところで、曲は何をやっているんですか?」
担当さん「幻想なんですよ(笑顔)」
松元「え!?幻想って…ベルリオーズのですか??(驚き!)」
担当さん「そうですよ(超素敵な笑顔)」
松元「は…そうですか…(しばし沈黙)」
いや〜びっくりしました。曲を知らない人の為にお教えすると、ベルリオーズの「幻想交響曲」は音大のオーケストラでもなかなか難しい選曲だと言われるような曲なんです。それをジュニアオケでやるとは…
その後、実際に練習に参加し、さらにビックリ!練習場のステージに100人近く人がいる…!そして、ほとんどの子が練習を休まずに参加している…!指揮者の緊張感のある指導に、小さい子までもが、きちんと集中してついていっている…!しかも、みんな何だか練習楽しそう…!ホント色々驚かされましたよ。
でも、こうやってブログに書いてみると、今では当たり前だと思っている多くのことに当時は驚いていたんですね。いや、違う!今でも子供たちが当然のように行なっている、驚くべき事の多さは相変わらずで、私がその環境に慣れただけなんですね。
彼らが努力して驚くべき事を当然のように維持しているのに、それを当たり前なんて思っちゃいけませんね!!
仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者 松元宏康(まつもと・ひろやす)
http://www.city.sendai.jp/shimin/bu-shinkou/jr-orche/index.html
私がチェロを初めて触ったのは15歳、高校1年の時です。プロのヴァイオリニストになるには3〜5歳から、チェロでも5歳ぐらいから始めるのが普通で、遅くても小学校高学年から練習しないと間に合わないといわれるこの世界では異色な存在なわけですが、子供の頃は、サッカーや釣りに夢中で、クラシックには全く興味がありませんでした。
ただ、音楽が嫌いという訳ではなく、中学の頃からロック、特に最初はビートルズが大好きで、他にもディープパープルやジミ・ヘンドリクス、ジェフ・ベックやボストン等を毎日聴いていたのです。また、聴くだけではなく、サッカーのコーチの飼っている2匹の「犬の散歩」というアルバイト(毎日30〜1時間、1回250円)で貯めたお金で中古のエレキベースを買って弾いたり、兄が弾いていたクラシックギターを借りていじったりしていたのですが、高1の春に、たまたまテレビでチェロの演奏を見て(今にしてみれば、私の人生を大きく変えたそのチェリストはオーストリアの名手、ハインリッヒ・シフ氏です。今年12月に共演するので、その時彼にそのことを伝えようと思っています)、趣味のつもりで習ってみたところ、その面白さの虜となり、現在に至ります。
チェロの面白さは、その構造が極めて原始的でシンプルなため、自分の体のちょっとした使い方の工夫やタイミングの違いで音色が無限に変化する点にあると思います。チェロを弾き続けて今年で26年ですが、幸せなことにちっとも飽きず、どうしたら今までより上手に弾けるだろうかと毎日取り組んでいます。
ではまた明日!
丸山泰雄(チェロ)
合唱隊に入って、今年で11年目になる。
入隊当初、私は習い事を増やすこと自体に気乗りがしなかった。それでも、入ってみたら楽しくなって、いつの間にか高校3年生になっても歌っていた。
今まで合唱隊にいて、たくさんの演奏会やオペラを経験してきた。歌うことはもちろん楽しい。だけど私は、舞台袖の、あの緊張感がたまらなく好きだ。それからステージの上で、指揮者が“サイン”をくれるのを待つのも。自分のニブい反射神経を集中させて歌い始めると、緊張が少しずつほどけ始める。いろんなことを一緒に学んできた仲間たちと、感覚がぴったり合っていると感じる瞬間に出会うのは、涙が出るほどに心地良く、幸福だ。
合唱隊で学んできたのは、音楽だけじゃない。音楽をきっかけにして集まった仲間たちからは、学校では学べないことを教えてもらった。先輩からも、後輩からも。
卒隊して、大学生、社会人となった先輩の何人かとは、今でもメールのやりとりをする。
“もう高校3年生?あんなにちっちゃかったのに”なんて、親戚のお姉さんのようなことを言われつつも、変わらず音楽の話ができることが、嬉しい。
NHK仙台少年少女合唱隊 佐藤仁美
それにしても唾が斜め後ろにまで飛んでくるだけあって、岸本さんの声はデカイ。そしてロシアを原語で歌えるだけあってその音色のなんと豊かなこと。
哀愁をおびたメロディー、語りかけるような甘い響き、そして100人は一度にめった打ちできそうな迫力のリズムとアクセント、私はアコーディオン伴奏をしながら、レコーディングよりコンサートのほうがもっともっと感動した。
そしてこのとき『ロシア民謡』を愛する遺伝子が実は私にもあったことを、岸本力さんの歌唱芸術で知ることができた。
いまは亡き父に、「パパ、美江もロシア民謡って、ほんとうは好きだったみたいよ。もっとはやくに気づいていればよかったね。これからはもっともっとロシア民謡を弾くから、その時は必ず音楽会場に来てね。」と心の中でつぶやいている。
今回は2年半ぶりに再び岸本さんの『ロシア民謡』を伴奏できる。
仙台は父も大好きだったから、きっと聴きにきてくれるだろう。 (このシリーズ完)
御喜美江(アコーディオン)
皆さん、はじめまして!
私は仙台フィルハーモニー管弦楽団で副指揮者をしております、松元宏康と申します。今回は10月8日に行われる仙台ジュニアオーケストラの演奏会の指揮者として私が皆さんの前に登場するという事で、このブログに参加することになりました。
本来、指揮者と呼ばれる人というのは人前で面白い話をするのが上手だったり、文章を書けばウィットに富んだジョークを交えながら素敵な事を書ける方が多いのですが、私はまだまだ副指揮者ということでその辺も大目に見ていただければと思います。
さて、最初に… まずは、今回の演奏会の主役である仙台ジュニアオーケストラについて少しお話しなくてはいけませんね。
仙台ジュニアオケは、全国でも珍しく公立のジュニアオーケストラで、現在、仙台市に居住または通学する小学校5年生から高校2年生までの男女(夏期合宿での練習風景)約120名が在籍しております。そして、その子供たちの楽器の指導にあたっているのは、全パート仙台フィルハーモニー管弦楽団の団員です。
実は、日本ではジュニアオケと呼ばれる団体が多くありますが、現役のオーケストラの団員が、直接全パートに指導者として参加しているのは仙台を含め数団体しかないそうです。
子供たちが将来音楽家になるかそうでないかに関わらず、人生の一番大切な時期に音楽という素敵なものに触れるチャンスがあり、またそれを教えているのが現役のプロであるという事を考えると、こんなに恵まれた環境はないのではないでしょうか?
みなさんこのようなジュニアオーケストラが仙台にあるなんてご存知でした?
それでは、これからしばらくのお付き合いですが、どうぞよろしくお願いいたします。
仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者 松元宏康(まつもと・ひろやす)
http://www.city.sendai.jp/shimin/bu-shinkou/jr-orche/index.html