出演アーティスト 青柳晋さんからのメッセージ

2020.09.23| 青柳晋

皆さま、ご無沙汰しております。ピアノの青柳晋です。

 

この世に生を受けてから起こった、歴史的な事件で忘れようにも忘れられないものは
4つほどあります。1つ目はベルリンの壁崩壊。あれはベルリン芸大に入学して1ヶ月目の事でした。

 

2つ目は帰国してから起こった9.11。あの時はニュースでかの映像を見ながら、手に持っていた本を思わず落としてしまったのを覚えています(サリン事件発生時は留学中で、家族や友達から詳細を聞いて驚愕しましたが、リアルタイムで体験した、という実感は残っていません)。

 

3つ目は3.11。節電、物流ストップの為に世の中全体が暗かったのを覚えています。
余震に揺れながら、それでも本番はこなしていました。

 

そしてコロナショック。私がこれほど長く東京を離れず、自宅からも極力離れず、コンサートが次々にキャンセルとなり、山積みになっていた「練習するべき楽譜」を毎日のように楽譜棚に戻す日々が続いたのは初めてです。
多くの音楽家がそうであるように、私も「レッスン、試験、コンクール、コンサート」に追いかけられている状態が当たり前でした。学生から社会人になっても同じペースで駆り立てられるかのように音楽人生を休憩なく走り続けて来たので、時折、自分は本番を控えてるから練習するのか、純粋に音楽を深めるために練習を続けているのか、分からなくなっていた部分もあったかもしれません。
その「止まらない列車」に生まれて初めて、強制的に急ブレーキがかけられたのが私にとってのコロナ騒動です。

 

以前よりテレビや新聞を見る事が増えて、各国の対応を注視しつつ様々な感慨を覚えました。
最も既成概念をかき混ぜられたような気がしたのは、「今、一体どの国が先進国なのかよく分からない」という事と、「どうやら我が国はそのトップグループに属しているとはとても思えない」という事でした(これは3.11の時もうっすらとは感じてはいましたが)。
新型コロナウィルスは、人と、国の脆弱な部分を容赦無く襲って来ます。

 

執政のスピード感の無さ、行動力、適正な判断力の欠如、強いリーダーシップの不在、気の緩み、国によっては楽観性、個人主義。
弱点が見つかるとウィルスはあっという間にそこにつけ込んで、広がって行きます。

 

私自身がコロナ騒動によって突きつけられた個人的な問題点は
「止まらない電車に乗ってどこに行きたいの?」
「目の前の目標を取り上げられても同じ密度で音楽に打ち込む事ができる?」
という事に尽きます。
なんとか炎を絶やしくない、なぜなら邁進したい気持ちが無くなる事は音楽生命の終わりを意味するから。
そんな気持ちが本番から遠ざかるにつれて強くなっていきました。

 

6月の初めに、予約が全てキャンセルになっている良いホールをオーナー様の御厚意で貸していただき、久しぶりに録音をしました。
ディレクターさん、エンジニアさんと入念にプレイバックを聴き返しながら
最良の音を残そうと心底燃える事ができて、3ヶ月ぶりに幸せな時間を過ごせました。
そして、やっぱり好きだから続けて来られたんだ、という事を実感出来たのは大きな収穫でした。
次の停車駅が霞み、先行きが見えづらくても、何とか私の「音楽列車」を走らせ続けたい。
現在、私が痛感している、ささやかながらも強い祈りです。

 

今回の仙台でのコンサート!7ヶ月のブランク後の、2回目のコンサートになります。
半年以上かけて考え続けた事が少しでも皆さまのお心に届きますよう、心を込めて弾かせていただきます。

 

 

写真は12/16発売予定のリスト「巡礼の年第1年スイス」。コロナで何にも出来なかった時にひたすらピアノに向かって生まれた一枚です。

 

 

青柳晋

 

公演番号:7
スプリング・ソナタ、チェロ・ソナタと、不滅の名曲「大公」
公演日:10月3日(土)11:00~12:00
会場:日立システムズホール仙台|コンサートホール

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