秋の気配が少しずつ感じられる頃となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
食い道楽の私が真っ先に思い浮かべるのは食欲の秋!なのですが、それと肩を並べて秋を象徴するのがせんくらです。新しいクラシック音楽祭が誕生した!と興奮したのがついこないだのようなのに、もう15回目なのですね。継続を支えるすべての皆さまに敬服します。
この15回のうち、私は約半分の年に参加させていただき、毎回心を満たして帰って来るのですが、それだけに参加できない年の失望感は甚だしく、深い悲しみとともに美しい思い出に浸る秋を過ごしていました。
せんくらの旅は仙台駅に降り立った瞬間からが開演です。いつも多くの人が行き交い、大都会の風格を湛えている仙台駅ですが、そんな賑わいの中にも東北のおおらかな気質が漂うとともに、まるでパリやロンドンの大ターミナル駅に到着した時のような高揚感に包まれ、この気分はふたたび仙台駅から出発するまで続きます。若き日の好奇心が蘇って、ワクワクが止まらない。私にとってそれが仙台、すなわちせんくらなのです。今年はどんな出会いと喜びが待っているのでしょう。
さて、今回は2つの公演にて演奏します。どちらも独奏のみのひとり舞台で、最大120名様のコンパクトな会場にて間近で鑑賞できますので、ご来場の皆さまにはぜひご自宅のリビングルームのようにリラックスしていただこうと思います。それぞれにテーマを設けまして、ひとつはスクリーンのシーンが甦るような映画音楽を、もうひとつはファミリーで共感できるクラシック作品を集めました。
ここでひとつエレクトーン演奏を楽しむポイントをお知らせします。さまざまな音色が重なり合ってオーケストラのようにも聞こえるエレクトーンですが、基本はオルガンです。ピアノと同じ鍵盤楽器の仲間ですが、減衰しない音色が多数あるので、ピアノ演奏と比較すると鍵盤に触れている時間がとても長いという特徴があります。
そして、鍵盤に触れている間は、鍵盤にかかる圧力を常にコントロールしていて、それにより強弱や表情を生み出しています。このアフタータッチと呼ばれる機能こそが、エレクトーンにとっては呼吸そのもの。弦楽器のボウイングや管楽器の息遣いに比べると動きが微細なのでわかりにくいかもしれませんが、タッチ感に注目すると音楽の向かう先が見えやすく、聞こえる音に惑わされずに音楽を感じることができると思います。
「午後のクラシック」と題しながら、何故に朝の歌?という疑問には、当日の本番でお答えしましょう。仙台で皆さまにお会いできることを、心より楽しみにしています。
せんくらオーディエンスの皆さま、せんくらチームの皆さま、こんにちは。エレクトーンの神田将です。
今年は私にとって9回目のせんくら出演ですが、エレクトーンの演奏家になって25年の節目でもあります。結婚に例えるなら銀婚式ですね。常日頃からエレクトーンのことを「出来の悪い女房」と表現していますが、思えばよくここまで共に歩んで来れたものだと、感慨深いものがあります。
25年前、エレクトーンでクラシックを弾きますと言っても、ほとんど誰にも相手にされませんでした。何だかんだ紆余曲折ありましたが、今ではこんな立派なフェスティバルにも呼んでいただけるようになって、続けて来てよかったなと思います。
電子楽器でオーケストラ作品をリアルタイム演奏することに、特別な意義とか目的なんてありません。ただ素晴らしい作品がそこにあり、ひとりで奏でてみたい衝動が沸き起こり、それが可能な楽器があったというだけです。それを聞きたいと思ってくださる方々が少しずつ増え、ますます私は意欲をかられ、気がつけば25年経っていたという感じです。
これまで演奏した作品は約四千曲。それが多いのか少ないのかはわかりませんが、人との出会いと同じで、どの曲も知れば知るほど魅力が深まっていきます。エレクトーンが他の楽器と違うのは、演奏するまでに編曲と楽器の設定が欠かせず、そこに長い時間を要するところです。曲との関わりを「10」だとすれば、編曲と設定に「8」の時間を要し、弾くという行為は残り「2」に過ぎません。25年を振り返ると、寝ても覚めても編曲していて、いつも追われっぱなしでした。この先も、エレクトーンを弾いている限り、ゆとりを感じることはないでしょう。
でも、追い込まれてばかりでは、人生息苦しくなってしまいます。長く続けるには、適度な柔らかさも必要ですね。幸い、音楽会であるあちこちを旅して回れることが、とてもいい刺激になっています。短い滞在でも、その街で暮らすような過ごし方をして、ひとりでふらりと街に出て現地の人たちと触れ合うのが好きです。仙台のことも、まだ知らないことだらけ。今年も新しい発見や出会いを楽しみにしています。
せんくらオーディエンスの皆さま、せんくらチームの皆さま、お久しぶりです。
こうしてまたせんくらブログを書いているのが、まるで夢の中の出来事のようで、すっかり舞い上がっている神田将です。
2009年から8年連続で呼んでいただきましたが、2017年に記録が途絶えた時には、この世の終わりのような悲しみと、世紀の恋に破れたような寂しさを味わいました。
そりゃそうだよな、若くて優秀な人たちに道を譲ることも大切だよなと納得しつつ、またいつかきっとと希望を持ち続けてよかった。2年置いて、またフレッシュな気持ちでせんくらの仲間に入れてもらえたことを、とても嬉しく思います。
ちょっと見ぬ間に、せんくらはますますパワーアップしていますね。馴染みの顔ぶれもたくさんいますが、意欲的で個性豊かな内容から察するに、皆さん気合いたっぷりのようです。
それに世界的スターの仲間入りをしたあのアーティストも出演するとあって、今年は特に注目度急上昇、満足度最高潮のせんくらになりそうです。
そんな中、私はオーソドックスなふたつの公演に出演。どちらもエレクトーンソロで、オーケストラ作品の名曲選をお届けします。
エレクトーンでクラシックってどんな感じだろう?と不思議に思う方も多いでしょう。実は言葉で説明するのがとても難しく、どう表現してもイメージが伝わらないのです。こればかりは聞いてもらうのが一番。その意味でも、せんくらは気軽に楽しんでいただく絶好のチャンスです。
4日の午後は、せんくらの名物とも言うべき、0歳からのコンサート。躍動感溢れるリズムや美しい旋律など、お子さんにもママにも聞いて欲しい名曲ばかり集めました。華やかで変化に富んだ選曲は、エレクトーンの得意技。何も考えずに、音楽のシャワーを浴びに来てください。
6日の夕方は、ドラマチックなオーケストラ作品を演奏します。喜怒哀楽を振れ幅いっぱいに感じさせてくれる音楽を、オーケストラさながらの臨場感とダイナミックさでお楽しみください。終演時には、スカッと気分が晴れているようなステージにしたいと思います。
どちらもささやかな演奏会ですが、あなたのブラボーになれたらいいな。
写真:2016年のせんくらです