「せんくら」ブログ読者の皆様、こんにちは!
宮城学院女子大学音楽科学科長の太田 峰夫です。本日は10月3日に開催されるコンサート「及川浩治と宮城学院女子大学の仲間達」のことを中心に、本学音楽科について書かせていただきます。
宮城学院女子大学音楽科は東北地方では珍しい、音楽を専門的に学べる学科です。宮城女学校時代も含めると、その歴史は100年以上もあります。現在の学科は器楽コース・声楽コース・作曲コースの3コースからなっており、器楽コースでは2019年度より、16の専攻(ピアノ、オルガン、ヴァイオリン・ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート、オーボエ、クラリネット、サクソフォーン、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、ユーフォニアム、チューバ、打楽器)が学べるようになりました。1学年25名(定員)という小さい規模ながら、とてもにぎやかな学科です。
残念ながら昨年からのコロナ禍で、大学では現在、実技指導を行うことがなかなか難しくなっていますが、現在も一部はオンラインで、一部は感染防止対策(ソーシャルディスタンスの確保、消毒作業など)を十分にとった上での対面指導によって、教育活動が続いています。
昨年度は仙台市からの助成を受けて、多重録音・録画技術を使った《合唱幻想曲》(作品80)(ベートーヴェン)の演奏動画を制作いたしました。
また、毎年行われる卒業演奏会も昨年度は無観客の動画収録会となりました。
なにしろ集まって練習するときも、お互いの距離を意識しなくてはならない状況です。「せんくら」でなにを演奏すればよいのか、頭をかかえましたが、じつは専攻が増えた分、今の音楽科ならばいろいろな編成が可能なことに後から気づきました。そこで今回は、以下のようなプログラムを考え、本学特任教授でもあるピアニストの及川 浩治先生を中心に、ピアノと管楽器によるアンサンブルをお聞かせすることにいたしました。
一曲目はベートーヴェン(1770-1827)《七重奏曲》(作品20)より 第3楽章「メヌエット」です。冒頭主題は「ソナチネ・アルバム」でおなじみの「ピアノ・ソナタ第20番ト長調」(作品49-2)第2楽章からとられているので、聞き覚えのある方も多いことでしょう。《七重奏曲》についてベートーヴェンはピアノ三重奏曲版(作品38)も残しましたが、今回はメインの編成にあわせ、ピアノ五重奏用の「メヌエット」を用意いたしました。編曲を担当したのは作曲家で本学教授の小山 和彦先生です。演奏するのは及川 浩治先生(ピアノ)、三澤 真由(器楽コース4年、オーボエ)、副島 謙二先生(本学特任教授、クラリネット)、大滝 杏里(器楽コース3年、ファゴット)、須田 一之先生(本学非常勤講師、ホルン)。世界初演の響きをお聴きください!
二曲目はモーツァルト(1756-1791)作曲《2本のファゴットのためのソナタ》(原曲は《ファゴットとチェロのためのソナタ》) 第1楽章です。シンプルな編成ながら、丁々発止のアンサンブルもあり、まぎれもないモーツァルトの世界を楽しめるでしょう。持田 富士美先生(本学非常勤講師、ファゴット)、大滝 杏里(ファゴット)の演奏でお楽しみください。
三曲目はベルギーの作曲家ジャン=バプティスト・サンジュレー(1812-1875)の《協奏的二重奏曲》第1楽章です。サンジュレーはベルギー王立モネ劇場のコンサートマスターとして活躍したヴァイオリニストですが、サクソフォーンの発明者アドルフ・サックスの友人でもありました。親しかった友人のために、サンジュレーは数々のサクソフォーン曲を書きました。今回演奏する《協奏的二重奏曲》はその中でも、華やかな名曲として親しまれています。演奏するのは小田島 航太先生(本学非常勤講師、ソプラノサクソフォーン)、及川 ひなた(器楽コース3年、アルトサクソフォーン)、庄子三未(研究生1年次、ピアノ)の三人です(研究生は学部を卒業した学生達のためのコースです)。
そして四曲目はラフマニノフ(1873-1943)の《ヴォカリーズ》。もとは声楽とピアノのために書かれた名曲ですが、今回は2018年の「せんくら」と同様、クラリネットとピアノのヴァージョンでお届けいたします。演奏は副島 謙二先生(クラリネット)、及川 浩治先生(ピアノ)のお二人。いぶし銀の響きに耳をおすませください!
最後の曲目、ベートーヴェンの《ピアノと管楽のための五重奏曲》より 第1楽章は今回のメインともいえる曲目です。モーツァルトの同ジャンルの作品に触発されて書かれた1796年の作品で、初演ではベートーヴェン自身がピアノ・パートを演奏しました。とてもスケールの大きい音楽ですが、今回は及川 浩治先生のピアノ、三澤 真由のオーボエ、副島 謙二先生のクラリネット、持田 富士美先生のファゴット、須田 一之先生のホルンでお聞かせいたします。
以上、今回の「及川浩治と宮城学院女子大学の仲間達」のプログラムは、これまで以上に彩り豊かなものとなりました。及川先生をはじめ、教員、学生一同は現在、コンサートに向けて鋭意準備中ですので、ぜひ本番を楽しみにしてお待ちください。それでは皆様、10月3日当日に会場にてお会いしましょう!
「せんくら」ブログの読者の皆様、こんにちは!
宮城学院女子大学音楽科の松山 裕美子です。
10月6日(日)に開催されるコンサート「及川浩治と宮城学院女子大学の仲間達」について紹介させていただく本シリーズ、2日目の本日はプログラムと出演者について、ピアニストで本学特任教授の及川 浩治先生にお話を伺うことにいたします。
―今回のコンサートでは「三巨匠の名旋律」と題して、ブラームス、チャイコフスキー、そしてフォーレの音楽を取り上げます。3人の作曲家についての先生の思い出などをお聞かせください。
「今回とりあげる3人の中でも、ブラームスは子供の頃からよく聴いていた作曲家です。だれか気に入った作曲家がいると、その人のいろいろな曲を聴くことにしているのですが、僕は子供の頃から彼のシンフォニーが大好きでした。交響曲第4番の終楽章はシャコンヌの形式になっていて、「ミ・ファ♯・ソ・ラ・ラ♯・シ・シ・ミ」という旋律が、楽章を通して繰り返されます。この8つの音だけで偉大な音楽を作ってしまったわけで、そのことが本当にすごいと思うのです。今回はブラームス本人が編曲した連弾用楽譜を演奏しますが、ほかに《ハンガリー舞曲》も弾きます。どちらもとても楽しみです。
チャイコフスキーは偉大な巨匠だと思います。僕の留学時代の先生は昔、ロシアのネイガウス先生に習っていました。つまりロシアのメソッドで学んだわけで、僕自身も同じメソッドで勉強しました。そのおかげでチャイコフスキーの音楽には、十分に親しめたように思います。彼の音楽はどれも本当に好きですが、今回は連弾で《くるみ割り人形》からの「花のワルツ」と《弦楽セレナーデ》第2楽章「ワルツ」の2曲を演奏します。ワルツ2曲を選びましたが、チャイコフスキーという人は三拍子の曲がすごく上手いと思います。メロディ自体は誰にでも考えつきそうなものばかりで、いかにも自然なのですが、じつは細部まで緻密に書かれている。それでいて苦心の跡を感じさせないところが素晴らしいと思います。
フォーレは弟子としてサン=サーンスのもとで学び、教師としてラヴェルを教えました。偉大な教育者であり、時代の変わり目を経験した人だと思います。長い間作曲活動をしていたので、彼の音楽というとどうしても複雑な和声を連想してしまいますが、今回演奏する「シシリエンヌ」と「夢のあとに」はどちらも旋律がとても美しい音楽だと思います。
全体としては、今回はドイツもの・フランスもの・ロシアものをそれぞれに楽しんでいただけるプログラムになったと思います。僕自身もとても気に入っていますし、聴きに来てくださる皆様にもよろこんでいただけるのではないかと期待しています。
―共演する教員や学生についても、何かお話いただけますでしょうか。
「フルートの白戸 美帆先生と共演するのは初めてですが、フルートは大好きな楽器ですので、とても楽しみにしています。クラリネットの副島 謙二先生とは、前回の「せんくら」(2018年)の「ヴォカリーズ」(ラフマニノフ)で共演させていただきましたが、旋律の歌い回しが素敵で、すごくロマンティックな方だと思います。
学部3年生の庄子 三未さんと一緒に演奏するのは今回が初めてですが、素晴らしい才能を持っているので、どんな演奏になるか、今からとても楽しみです。チャイコフスキーの「花のワルツ」では学部4年生の佐藤 晴香さんと共演します。感性豊かな学生さんなので、いいものを存分に発揮してくれればと期待しています。
研究生2年次の猪狩 綾さんは今回が2回目の「せんくら」出演になります。「弦楽セレナーデ」のワルツとブラームスのシンフォニーを一緒に演奏しますが、いつも素晴らしいので、楽しみにしています。ブラームスはとても内容が深い音楽ですが、その深いところを一緒に描けたら嬉しいです。
―いろいろなお話を伺えて、公演がますます楽しみになりました。本日はどうもありがとうございました。
以上、2日間にわたり、「及川浩治と宮城学院女子大学の仲間達」の聴きどころについて、及川先生とともにお伝えしてまいりました。本番は10月6日(日)。当日は私がコンサートの進行をつとめさせていただきます。それでは皆様、日立システムズホール仙台 交流ホールにて、お会いできることを楽しみにしております!
及川浩治と宮城学院女子大学の仲間達 松山裕美子
「せんくら」ブログの読者の皆様、こんにちは!
宮城学院女子大学音楽科の松山 裕美子です。
本日から2日間、10月6日(日)に開催されるコンサート「及川浩治と宮城学院女子大学の仲間達」について書かせていただきます。よろしくお願いいたします。
私達が「せんくら」に出演するのは今回で4回目ですが、そもそも宮城学院女子大学とは…という方もいらっしゃるかもしれません。ですので、最初に大学についてご紹介いたします。
アメリカ合衆国改革派教会宣教師と日本人キリスト者達の尽力により、「宮城女学校(後の宮城学院)」が仙台の地に産声をあげたのは、今からおよそ130年前の1886年のことです。宮城学院女子大学はこの「宮城女学校」を母体として第二次世界大戦後につくられました。2019年に開学70周年を迎える本学は4学部9学科からなる女子大学であり、スクールモットー「神を畏れ、隣人を愛する」のもと、数多くの卒業生を世に送り続けています。
大学音楽科は女学校時代も含めると、100年以上の歴史を持つ学科です。1学年あたりおよそ25名と小規模ながら、音楽全般のことを幅広く、深く学べる点が特色です。カリキュラムは器楽コース・声楽コース・作曲コースの3コース制からなっており、今年度から器楽コースが11専攻から16専攻(ピアノ、オルガン、ヴァイオリン・ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート、オーボエ、クラリネット、サクソフォーン、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、ユーフォニアム、チューバ、打楽器)に増えました。その効果もあり、小さいながらもとてもにぎやかな学科になってきています。
今回「せんくら」に出演する及川 浩治先生(ピアノ)、白戸 美帆先生(フルート)、副島 謙二先生(クラリネット)はいずれも音楽科で「専攻実技」「演奏家養成特別実技」などの授業をご担当いただいている先生方です。この「せんくら」ブログでは、本学の特任教授であり、本公演でも全曲にご出演いただく及川先生に、「せんくら」と音楽科について、いろいろとお話いただくことにします。
それでは本日は音楽科について、そしてアンサンブルへの思いについて先生にお話を伺ってみましょう。
―宮城学院女子大学音楽科の第一印象はどんなものだったか教えてください。
「学生達が夜遅くまで練習していることにまず驚きました。専攻実技だけではなく、副科実技(ピアノ専攻であれば声楽など)や理論系の授業もしっかり出ているようで、純粋な子が多いなと感じました。
校風も歴史があって、素晴らしいと思います。さらにここ数年の間に、「演奏家養成特別実技」という、オーディションに合格した学生のための授業(レッスン形式、週90分)が開講したり、さまざまな管楽器の専攻が開設されたりするなど、いろいろな勉強ができるようになってきています。いい方向に変化してきているので、毎年度4月に学生を迎えることが本当に楽しみに感じられるようになりました。」
―「せんくら」での「及川浩治と宮城学院女子大学の仲間達」は今年で4回目を迎えます。今回も連弾のほか、フルートやクラリネットとの共演があるわけですが、先生はアンサンブルで弾くことをどのようにお感じなのでしょうか。
「日本での先生(児玉 邦夫氏)も、留学先のブルガリアの先生(コンスタンティン・ガネフ氏)も普段の演奏活動の中で連弾をなさっていたので、僕自身にとって連弾はいつも身近なところにありました。誰かと一緒に演奏をすることは楽しいです。相手の感性や考え方を感じつつ、自分の中からわいてきたインスピレーションをそこに加えていくという作業は魅力的で、何よりも音楽をするよろこびが感じられます。このようなコラボレーションができる機会は普段、そんなに多くないので、「及川浩治と宮城学院女子大学の仲間達」のコンサートを、いつも楽しみにしています。」
―どうもありがとうございました。
及川先生ご自身の本公演への思いが伝わってくるようなお話でした。次回はプログラムと出演者について、先生のお話をたっぷりうかがうことにしましょう!
及川浩治と宮城学院女子大学の仲間達 松山裕美子