こんにちは!!
日本で唯一のプロフェッショナルジプシーヴァイオリニスト古館由佳子です。
毎日発信していたこのブログも最終日となりました。
3日間のブログでは、お伝えしたいジプシー楽団の魅力のほんの一部しかご紹介できなくてごめんなさい。
昨日のブログでは、私の初めて触れたジプシー楽団の「ラースロー・ベルキ楽団」の凄さの説明を試みましたが、ハンガリーの首都、ブダペストにはきら星のように輝くジプシープリーマーシュがまだまだ沢山います。
2004年に「ボノー・パール・バイ」という国際ジプシープリーマーシュ・コンクールを受けたことで、私の名前がハンガリーの殆どのジプシー音楽家に知られるようになったのですが、そのコンクールに出るように勧めてくれたのが、当時ベルギーに住んでいたロビー・ラカトシュです。彼の演奏は表向きはロビー印のコンサートピースですが、ハンガリーで一番有名なラカトシュ一族の血を引く彼も、ブダペストのレストランに出没するときはマジャール・ノータを演奏して居合わせたハンガリー人のお客さんを沸かせたりしています。
日本でレストランで演奏していると、よく「クラシック奏者になる事を諦めたのでここで弾いているんだろう」と、いらぬお世話の発言をよくされたものです。実際にはそんな事はなく、ジプシー音楽を演奏しながらクラシックの仕事現場にいつもいましたし、スタジオやカルテットのお仕事も普通にしていました。
どうして、レストランで演奏している事が仕事のステージが低いと思われるのか、それこそハラスメントを受けたような嫌な気分になったものです。音楽教育を受けていない趣味のヴァイオリニストがやっとありつく仕事だと思われていたのでしょう。
本場のハンガリーでは、日本のそんな誤解とは全く違っていて、ジプシー音楽家はその演奏功績に応じて国から勲章をもらうようなエリートに属しています。そして、ハンガリーのジプシー音楽家はクラシック界の人々にも尊敬されています。その中の一人、プカ・カーロイが演奏していたレストランにはズーカーマンが遊びに来ていました。
また、友人のプリーマーシュ、ホルバート・ジュラがスイスのホテルで演奏していた時、ローラ・ボベスコがホテルに泊まっていて、ある時楽器を取り出して古いマジャール・ノータを弾きだしたのでとても驚いた、という話など、たくさんのクラシック関係者との繋がりがあります。
私の先生になってくれたボロシュ・ラヨシュも、メニューインの映画にも出演しています。ボロシュ・ラヨシュはプリーマーシュの王様と言われ、実際にジプシーヴァイオリンの王様という称号を国から授与されています。ある日、私がボロシュ先生の演奏しているレストランに遊びに行くと、アメリカから里帰りしている母娘のテーブルの隣に案内されました。聞いてみると、娘さんはメトロポリタンで歌っているソプラノ歌手。
そのお母さんがいうには、「娘について行っていろんな国に行ったけど、本当の音楽はここにしかないわ。」その言葉を、音色を聞くだけですぐに鳥肌がたってしまうボロシュ・ラヨシュの演奏が脇で鳴ってる時に言われたので、ものすごく納得したのでした。
歴史的に見ても、ハンガリーのジプシー楽団がいなかったら、今ではクラシックヴァイオリニストの定番曲のあの名曲もこの名曲も、ピアニスト泣かせのあの曲も存在してなかったわけですから、ハンガリージプシー音楽家の影響力はすごいものがあります。
そんな本物の音楽の流れるブダペスト出身のチェリストとピアニストの二人と私とで結成したブダペストジプシートリオ。いよいよ仙台で初ステージを踏みます。
日本では、謙遜が美徳とされていますが、ハンガリーのジプシーミュージシャンの辞書には謙遜という言葉が薄れています(笑)なので、思い切り宣伝になりますが、二人のプロフィールをちょっとだけご紹介いたしますね!!
チェロのカーロイ君は、ブダペストの殆どの有名プリーマーシュの元で演奏して来ました。今も、アンタル・サライ・バンドや、プカ・カーロイの楽団で演奏してます。ライコー・オーケストラの出身で、8歳位の頃から世界中をコンサートで巡業していました。
ピアノのデジュー君は、ベルキ楽団のクラリネット奏者の息子さんです。15歳の時にブダペストのジャズコンクールで優勝して以来、モナコで10年間自分のバンドで有名ホテルの専属ピアニストとして活躍し、そのあと再びブダペストでローランド主催のバーピアニストコンクールで優勝した後、スイスのルツェルンの高級ホテルで演奏しています。
あれ、話が違うんじゃない??
ジプシー楽団って、ツィムバロムとかコントラバスとか、そういう編成だって言ってましたよね?第一、チェロって以下省略ってぐらい最優先楽器じゃなかったような??
うん、
これはね、
ピアノは、ツィムバロムとコントラバスとビオラの代わり、チェロはビオラとセカンドヴァイオリンの代わりになるんです。言うなれば、二人で五人分。
あは、随分とエコな楽団ですね。
いやいや、日本向けレパートリーも充実してるから。やっぱり日本でコンサートするんだから、日本人のわかる選曲しないとね〜〜。観客満足度が高くないとジプシー音楽家じゃないからね。あと、楽器問題もあるしね(ゴニョゴニョゴニョ)
というわけで、斜め上からのジプシー楽団編成でお届けするブダペストジプシートリオの出番は、9月29日です!!
是非是非お越しくださいね!!
最後に3日間このブログをお読みいただきありがとうございました。こんなにたくさんジプシー楽団についてブログで語ったことは殆ど初めてかもしれません。
この続きは、いつになるかわかりませんが、古館由佳子のfacebookで続けたいと思います。
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3日目の最後のYouTubeは、私のハンガリーで出場したジプシープリーマーシュ・コンクールの映像を紹介いたしますね!!
https://www.youtube.com/watch?v=pjOiD5yOaXI
3日間ありがとうございました。
あとはせんくらの会場でお会いいたしましょう!!
古館由佳子
https://www.facebook.com/gypsyviolinyukakofurudate/
こんにちは!!
日本人で唯一、ハンガリアンジプシー音楽を本格的に演奏している古館由佳子です。
昨日のブログ、いかがでしたか??
コンサートのチラシを見つけたところで終わってましたね。
コンサートの主役の「ラースロー・ベルキ・ジプシー楽団」
リーダーのラースロー・ベルキさんは、当時、ハンガリーの国立舞踊楽団のリーダーで、100人のブダペストジプシー楽団の創立メンバーでした。
彼のステージで驚いたこと、それは、彼の楽団の音楽合奏の一体感。それは、日本で聞いた事のあるどの音楽アンサンブルをも遥かに越える緻密さでした。
各パートがアドリブ演奏で伴奏をしているのにひとつにまとまって、プリーマーシュというソロ奏者を引き立てつつ、ソロ奏者も楽団の伴奏パートを完全に「飼い慣らして」いる。
ここで、豆知識ですが、ジプシー楽団の編成は、
プリーマーシュ(ソロヴァイオリン)
ツィムバロム
ダブルベース
ビオラ
セカンドヴァイオリン
クラリネット
チェロ
概ねこんな編成です。あとは各々の楽器の人数が増えることで全体の楽団の大きさが決まります。
クラシックの楽器の表記の順番に慣れてる人は、あれっ? と思いましたよね??実はこれ、重要な楽器順に書き出しました。
ツィムバロムは、東欧地方独特の楽器で和音が演奏出来る打楽器です。
昨日のYouTubeを聴いてくれた方なら、打楽器と言っても、とても繊細な表現が可能な楽器と感じてもらえたと思います。ソロヴァイオリンと同じくらいツィムバロムはやはりジプシーバンドにはなくてはならない楽器です。
重要な楽器順、というのは、上から順に足していくと段階的にアンサンブルが充実してくるという意味です。
最小単位は、
ソロヴァイオリンとツィムバロム、
次に足すとしたら、コントラバス、
次に足すならビオラ、
次に足すならクラリネットかセカンドヴァイオリン・・・以下省略。
面白いことにジプシー楽団は、編成が大きくても小さくても、それなりに形になるように伴奏形態が出来ています。もちろん、奏者の力量によりますが、大抵の奏者はソロも伴奏もどちらもイケるのです。これは、楽譜に頼らず、コード進行を基準としてアドリブ演奏(伴奏)するから出来ることなんです。
なんと言っても、ソロのメロディーからしてアドリブ肉付けしています。
と、大体の様子がわかったところで、 ベルキ楽団の凄さ、に戻ります。
速いチャールダーシュと呼ばれる楽曲で日本人には考えられないくらい目も眩む速さでアドリブを繰り出すのは彼らにとっては序ノ口です。本当の凄さは違うところにありました。
その1、
「あ、うん、の呼吸で演奏をしているので、非常に遅い曲でのバンドの一体感が際立つ。」
特に、コントラバスの強拍、ビオラの弱拍のペアの間合いを取る呼吸が絶妙。実はこの「間合い」に、グサリと心臓を射抜かれたのでした!このときのビオラは、ヴァーラディ・ガビ。コントラバスはマカ・ジュラ。後にハンガリーで再会してとても楽しく彼等と過ごしました。
その2、
「伴奏のアドリブメロディが限りなく美しいアンサンブルを醸し出す。」
ビオラとセカンドヴァイオリンとチェロ、これらのソロヴァイオリン以外の弦楽器がすることは、如何にソロヴァイオリンよメロディを引き立たせるか。(かつ自分もどうやって目立つか(笑))これが、素晴らしいのですよ。時には非和声音を駆使して、その時々で一番、メロディーとその興奮度にぴったり合った居心地のいい対旋律を紡ぎ出すこと。それこそが、彼らの楽団での存在意義であるし、彼らの音楽家としての価値を高めているのです。もちろん、プリーマーシュと同じくらい演奏技術が無いと出来ない事です。
悲しい旋律はより悲しく、
美しい旋律はより美しく、
速いパッセージはより速く??あ、それは、いけませんね。
次の3つ目にも関係あります。
因みに、このときのチェリスト、ヴァイダ・バルナバーシュが後にハンガリーで私の先生になってくれました。
彼の自由なアドリブ・オブリガートに憧れました。
その3、
「プリーマーシュが、すべてのテンポを決める。」
ジプシー楽団には指揮者が居ません。俗に言う弾き振り、という状態なのですが、曲始めに弓等で指揮するプリーマーシュは不粋というもの。マジャール・ノータ、という、ハンガリーの国民的歌謡曲があり、その伴奏はほとんどジプシー楽団が受け持ちます。日本では歌謡曲の伴奏にオーケストラが必用になったときはクラシックのオーケストラ的な編成で演奏しますが、ハンガリーでは、クラシックのオーケストラが呼ばれることはほとんどありません。
そうです、ここに、
コンサートなのにレストラン演奏と関係あるの??
の答えがあります。
ジプシー楽団のもともとの成り立ちというと、観客に演奏を提供する立場から発生しています。観客とは、何かを楽しみたい人達。ジプシー楽団が提供したのは、生演奏でのその場を盛り上げるということでした。
それなので、ジプシー楽団はハンガリーでは冠婚葬祭や式典、歌謡曲コンサート等、事あるごとに引っ張りだこです。その上、レストランでの毎晩の演奏。時には、国外の大富豪に呼ばれての結婚式演奏ツアー。
私が日本でしてきたレストランでの生演奏のプロフェッショナルが、正に彼らだったのです。
コンサートで演奏するのは彼らの演奏形態のほんの一角。
彼らの良さが引き立つのは、側でお客様が彼らの演奏を聞いて盛り上がってくれるとき。時にはバンドの音楽で観客が一緒に歌ったり、踊ったり。
観客の満足がバンドの評価基準なのです。
あのー。忘れてませんか?
最初のバンドのテンポはプリーマーシュが、決めるって、結局なんなの??
あはは、激しく脱線してしまいました。
要するに、観客に盛り上がって貰うには、次に演奏する曲をプリーマーシュの裁量で決めるので、どんな曲をどんなテンポで演奏するのか、話してる暇はありません。はじめのフレーズを聴かないとなんの曲かわからないので、大抵は曲初めは伴奏無しのアカペラ状態!!!もちろん弾きたいテンポで始める責任がプリーマーシュにはありますね。
弾きはじめに伴奏なくなるのは面白いですよね。彼らの知恵ですね。 クラシックの音楽会で、もしもソロヴァイオリニストが突然予定と違うコンチェルトを弾き始めたら暗譜で付いて来てくれるオーケストラはありませんよね(笑)
プリーマーシュがどんな曲を弾き初めても楽団メンバーは付いていけるように、知ってる曲の多さも半端ない彼らでした。
いかがでしたか?
ジプシー楽団の凄さが少しでも伝わったら嬉しいですね。
ベルキのコンサートに初めて接したときは、コンサート会場でCDを購入してそれから2年間、毎晩毎晩、聞いていました。そして、2年後に、ベルキ楽団との奇跡的な再会があり、その出会いのお陰でブダペストに音楽修行に行くことが出来たのでした。なぜ奇跡なのかは、また他の機会にお話ししますね!!
ハンガリーで色々なバンドの演奏を聞いて色々な事を沢山学び直したことで、こうやって皆さんに凄さをお知らせすることが出来ましたが、実際に演奏を聞いてみないと、やはりピンと来ないですよね!!
今日は、ラースロー・ベルキさんのYouTubeをご紹介します。
ハンガリーのテレビ番組ですが、バリエーションの編曲が得意だった彼独特の世界に触れることが出来ます。
明日のブログは、仙台に来るメンバーをご紹介しますね。彼らは若いメンバーですが、凄いですよ。
こんにちは!!
ジプシーヴァイオリン奏者の古館由佳子です。
今回は仙台の皆様に私の大好きなハンガリアンスタイルのジプシー音楽をお伝えできるという事でとても楽しみにしています!!
今日のブログは私がどんな風にハンガリージプシー音楽に出会ったかをお話ししますね。
音楽大学を卒業してから、オーケストラなどのクラシックの仕事をする傍ら、生演奏を提供しているレストランで演奏を始めました。レストランでの演奏は、ピアノ伴奏ではなく、ギターやアコーディオンとのデュオ演奏でした。レパートリーと言えば、映画音楽、ブラジルのボサノバ、ドイツビヤソング等。 レストランでの演奏は、オーケストラの演奏会とは全く違う環境で、お客様が絶えず音楽以外の雑音がある場所です。
そのなかでどうやって私の演奏を聞いてもらえるのか、生演奏がBGMにならないようにするにはどうしたらよいのか。きっと日本ではわからない特別な演奏パターンがヨーロッパにはあるはずだ、なぜなら、レストランで西洋から来た楽器で演奏すること自体が、ヨーロッパ文化を日本に持ってきた訳だから。 こんなことを思いながらレストランで演奏する毎日でした。
そんなとき、たまたまコンサートホールでオーケストラのリハーサルに参加していたとき、あるチラシが目に入ったのです。
そのチラシは、黒髪の男性がヴァイオリンを構えてアップで写っていました。右手の指には大きな金の指輪が目立っています。チラシの題名は、
「ラースロー・ベルキ・ジプシー楽団コンサート」
わたしは、そのチラシを見たとたんに、
「これだ!!このコンサートに行かなければ!!」
一瞬で閃きが走りました。
それが後に私の演奏家運命を変えてしまうほどの出会いとは知らず・・・。
夏のハンガリー民謡野外コンサートに出演
どうですか??
コンサートホールでのジプシー楽団のコンサートが、どうしてレストラン演奏の生演奏と関係があるのでしょうか??
それは、明日のブログでお話しします。
ボロシュ・ラヨシュとのレッスン風景
今日のブログの最後に、ハンガリーで私の先生になってくれたボロシュ・ラヨシュの演奏のYouTubeをご紹介します。
とてもロマンチックなメロディーです。
是非お聞きくださいね。