大作曲家と個性的なクラリネット奏者との出会い

2017.08.14| 吉田誠

せんくらブログを読んで下さっている皆様、こんにちは。

 

いよいよ僕のブログも最後日となりました。

 

クラリネットのために書かれた名曲の誕生の背景には、偉大な作曲家とその時代に活躍した優れた、そして大変個性的なクラリネット奏者との出会いがありました。

 

今日はその話を簡単に、それから今回演奏させて頂くプログラムについても簡単に説明したいと思います。

 

モーツァルトは、当時のウィーンを代表するクラリネット奏者、アントン・シュタットラーと出会い、有名なクラリネット協奏曲やクラリネット五重奏等の傑作が誕生しました。

 

シュタットラーはテオドール・ロッツというクラリネット職人とコラボレーションし、新しいクラリネットの開発に取り組みました。その中で普通のクラリネットより更に音域の広いバセット・クラリネットやバセット・ホルンという楽器を作ったのですが、この楽器とシュタットラーの特別な演奏に触発されたモーツァルトがこの名曲を生み出したのです。

 

ロッツ製のバセット・ホルン

(写真はエリック・ホープリッチ著 「The Clarinet」より)

 

有名なブラームスの晩年のクラリネット・ソナタやクラリネット五重奏、クラリネット三重奏は、リヒャルト・ミュールフェルトというクラリネット奏者のために書かれています。元ヴァイオリン奏者であり、指揮者でもあったミュールフェルトの表現力に感激したブラームスは、失いかけていた創作意欲を再び取り戻し、これらの傑作を短い期間に一気に書き上げました。

左:ミュールフェルト、右:ブラームス

 

ガラ・コンサートで演奏させて頂く、メシアンの〈世の終わりの四重奏曲〉の中のクラリネット・ソロ曲《鳥たちの深淵》も第二次世界大戦中に出会った、アンリ・アコカというクラリネット奏者との出会いにより、これまでで最もあたらしく、刺激的なクラリネット・ソロ曲が生まれました。アコカは本当に個性的な奏者だった様で、メシアンの手記には「メタリックな音を出す奏者」と書かれています。

 


アンリ・アコカ

 

ピアノとのデュオ公演のテーマは「ファンタジー」ですが、その中で演奏させて頂く、クラリネット・ソロのための〈幻想曲〉の作曲者である1973年生まれのヨルク・ヴィトマンは、世界中の音楽祭やオペラハウス、オーケストラから委嘱が舞い込む大活躍中の作曲家であり、世界的なクラリネットのソリスト、そして素晴らしい指揮者です。

 

作曲家兼指揮者だったり、作曲家兼ピアニストという方は歴史的にも多くいらっしゃいますが、作曲家兼クラリネット奏者というのは歴史的にも珍しいのではないかと思います。

 

また僕にとって、現在を生きる偉大な作曲家の、自作自演を聴ける事は、作品を最もわかり易く知る事が出来、とても貴重な機会だと思います。

ヨルク・ヴィトマン © Marco Borggreve

 

曲名にファンタジーと付けられている訳ではありませんが、とても幻想的で夢の様なクラリネット・ソナタをニーノ・ロータが残しています。ニーノ・ロータは皆様もご存知の通り、「ゴットファーザー」や「太陽がいっぱい」や僕も大好きな映画監督である、フェデリコ・フェリーニのほとんどの映画音楽を手掛けていますが、たくさんの素晴らしい純音楽を作曲しています。
特にクラリネットの作品は多く、このソナタやクラリネット、チェロとピアノのための三重奏曲、木管五重奏や九重奏、そしてアレグロ・ダンツァンテというクラリネットとピアノのための小品も残しています。映画音楽でもニーノ・ロータはクラリネットを活躍させている事からもきっとクラリネットに何か特別なファンタジーを抱いていたのではないでしょうか。隠れた名作をこの機会に是非とも聴いて頂きたく思っております。

 

それでは、会場で皆様にお会い出来ることを楽しみにしております!
3日間おつきあい頂き、有難うございました!

 

吉田 誠

クラリネットとは

2017.08.13| 吉田誠

皆様こんにちは!

 

昨日に引き続き、ブログを担当させて頂きます、クラリネット奏者の吉田誠です。

 

今日は楽器について少しご紹介したいと思います。
現在、僕が演奏している楽器は、Schwenk & Seggelkeというメーカーのクラリネットです。

現代のクラリネットは世界的に大きくドイツ管とフランス管の2種類のクラリネットに分類され、キーのシステム、内径のサイズ等の違いがありますが、僕の楽器は、運指はフランス式で、音孔や内径はドイツ式という両方のいい所を取り入れた楽器です。

 

またこのメーカーは古楽器も制作しており、当時の楽器のエッセンスもこの楽器には取り入れられています。

 


© RamAir.LLC

 

当時のクラリネットは柘植の木で作られていましたが、耐久性や利便性の問題で現在は黒檀で作られたものが主流となっています。

 

また音を出す上で、とても大事なパーツがあるのですが、それがマウスピースです。弦楽器で言う弓の様な役割になるのではないでしょうか。

 

現在、この3種類のマウスピースをメインに、曲によって使い分けています。

 

3種類共に素材はエボナイトというものですが、それぞれ0.01ミリ単位でカットが違うため、吹き心地、音色、発音の速さが異なります。

 

例えば、モーツァルトやウェーバーの時代の作品では速い発音と瞬発力が求められるので、右のマウスピースを使います。

 

ガラ・コンサートで演奏させて頂くメシアンの様に、幅広いダイナミクスと多彩な音色が必要な作品では、真ん中のマウスピースを使います。

 

因みにこのマウスピースは、サクソフォンのマウスピースから着想を得て、職人さんに手作りして貰いました。

 

その他にも、楽器の穴を塞ぐ部品の素材を何にするか等、楽器のこだわりは話せばキリがないのですが、ほんの少しのことで楽器の音色や倍音の響きなどが変化するので、日々、研究が必要となります。

 

ヴァイオリンやピアノは長い年月を経て、ある意味で既に進化を遂げ、完成された楽器ですが、クラリネットはキーが1つ増えたり、新しい素材が楽器に使われる等、世界中で新しい実験が行われ、日々進化しています。

 

モーツァルトのクラリネット協奏曲やブラームスの晩年の2つのソナタ等、名作曲家が残した名曲が実は沢山ありますが、その誕生の背景には、当時の優れたクラリネット奏者と楽器職人と、そして、偉大な作曲家との出会いがありました。

 

明日は、これらの素晴らしい出会いについて書きたいと思います。

 

吉田 誠

初せんくら

2017.08.12| 吉田誠

仙台の皆様、こんにちは!

今日から3日間、せんくらブログを担当させて頂きます、クラリネット奏者の吉田誠です。

 

せんくらには今年初めて出演させて頂きます。

 

宮城ではほぼ毎年の様に演奏させて頂いており、昨年の6月には石巻の法音寺の本堂で萩原麻未さん、成田達輝さん、横坂源さんとメシアンの《時の終わりのための四重奏曲》を演奏させて頂きました。
写真はリハーサルの様子ですが、本堂の響きが素晴らしく、演奏していてとても気持ち良かった事を覚えています。

 

せんくらでは、ピアノとのデュオ公演だけでなく、ガラ・コンサートにも出演させていただきます。

 

初めて共演させて頂く方ばかりなので、今から大変楽しみにしております。
そしていつも温かく迎えて下さる仙台のお客様に、せんくらの公演会場でお目に掛かる事が楽しみでなりません!

 

オーケストラではおなじみのクラリネットですが、現在僕はソリストとして活動しています。

クラリネットでソロ?と思われるかも知れませんが、実は音域は4オクターブ以上もあり、各音域ごとに名前が付いている程、多彩な音色を持つ楽器であり、大作曲家が素晴らしいクラリネットのための作品を残しています。

 

明日はそんなクラリネットという楽器の事をご紹介したいと思います。

 

吉田 誠

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