今回の「せんくら」二日目の10月4日は、三善晃先生が逝去されてからちょうど一年になります。
思えば昨年9月に仙台フィルと、三善先生作曲のヴァイオリン協奏曲を演奏(ソロは神谷未穂さん)したのですが、その直後にお亡くなりになってしまったのです。
僕が初めて三善先生の音楽に接したのは、高校の入学式で。校歌演奏で流れてきた前奏に、頭を殴られたような衝撃を受けたのを今も鮮やかに覚えています。それは完全に「校歌」という概念を越えた芸術性溢れるもので、それこそ三善先生が作曲されたものでした。
三善先生とお会いできたのは数回だけでしたが、毎回お釈迦様のような笑顔を浮かべられ、後光が射しているかのようなオーラを前に、僕は全く言葉を発せなくなってしまったものです。
三善先生の一周忌の日に、改めて追悼の想いを胸に、先生の合唱作品を演奏するスペシャルプログラムを組ませていただくことができました。
http://sencla.com/schedule/detail.php?id=58
この公演では大人だけでなく中学生にも演奏してもらうのですが、最後の「夕焼小焼」ではその全員で合唱をします。
戦争という明日生きられるかどうか分からない極限の時節を送られた先生にとって、真っ赤に沈む夕焼けは、生と死とに直結するものだったと思います。実際に三善先生は、夕焼けを目にすると一歩も動けなくなってしまう、ということがあったそうです。その先生の編曲された「夕焼小焼」は、時代を越え空間を越え、生と死をも越えて、宇宙的な広がりさえ感じさせる作品になっています。
大震災を乗り越えていこうとしている今、未来を担う若者達とこの曲で共演できることを特別に思っています。
山田和樹
皆様、こんにちは。
松坂優希です。
10月5日に行われる「宮沢賢治の聴いたクラシック」。
今回私は、ナビゲーターの萩谷由喜子さんからのリクエストで、ベートーヴェンの月光ソナタより第1楽章、シューマンの子供の情景よりトロイメライ、そしてリストのパガニーニによる大練習曲よりラ・カンパネラを演奏させていただきます。
私は、2002年から2006年まで、オランダのロッテルダム音楽院に留学していたのですが、リストのエチュードというと、師事していた恩師、アキレス・デッレヴィーネ先生から聞いた逸話をいつも思い出します。
アキレス先生は南米のご出身で、かの有名なピアニスト、クラウディオ・アラウの元でピアノを学ばれた方です。
アラウはベートーヴェンなどのドイツ音楽を得意とするイメージの強い演奏家ですが、自身がリストの高弟であるクラウゼに師事していたこともあり、リストの演奏においてもまた、一筋縄ではいかぬこだわりを持ったスペシャリストでした。
さてさて、時は遡り1960年代。
初めてアラウの家の門を叩いた若き10代のアキレス先生は、レッスン室に通され、まずリストの超絶技巧練習曲を弾くよう言われたそうです。
緊張しつつも1曲を無事に弾き終え、アラウの顔を伺うも、無言。
違うエチュードをもう1曲弾くも、まだアラウは黙ったまま。
仕方なくそのまま数曲弾いていると、おもむろにアラウが立ち上がりピアノの前に腰掛けると、エチュード全曲をさーっと一息に、あたかも息をしているかのように自然に、それでいて信じがたいほどに素晴らしい指さばきと音色でもって弾き切ったんだそうです。
「つまりね」にっこり笑うアキレス先生。
「彼にとっては、12曲全て通したものが、ひとつの作品としての”超絶技巧練習曲”だったんだよ」
はぁーっと感嘆の息を漏らした私に次の瞬間、予期せぬ一言が。
「じゃあ、ユキの次の宿題はエチュードにしようかな。まずはショパンね」
「ええと……どれをやったらいいでしょうか?」
嫌な予感が胸をよぎる私に、にやりと楽しそうな先生。
「どちらでもいいよ。op.10でもop.25でも、好きな方全曲で!」
(ショパンのエチュードは、op.10とop.25に、それぞれ12曲ずつおさめられていて、通常は1~2曲ずつ抜粋して順に勉強します)
留学一年目の秋。忘れられない思い出です。
松坂優希
みなさんこんにちは!仙台フィルの小川有紀子です。またせんくらが迫ってきました。すでにいくつかの公演が完売だとか。嬉しいですね!やはり演奏家は、お客さまが自分達を聴きたいと集まってくださると思えた時、アドレナリン、イマジネーション共にアップします。
ちなみに、これまでの演奏経験で体験した最小観客数は二名。暖炉のある素敵なお部屋で、バッハのシャコンヌなどを弾きました。もっといらっしゃるはずでしたので最初は驚き戸惑いましたが、でもこれはこれでまた特別な空気がありました。
今回のせんくらで楽しみなことといえば、まず仙台フィルの公演では指揮が山田和樹さん(≧▼≦)この話は次回に。
そしてもうひとつの目玉はキム・ボムソリちゃん(^^)とのカルテットです。
【公演番号46】
10/4(土)11時00分~11時45分
イズミティ21 小ホール
ボムソリちゃん!なんて書いてしまいましたが、そりゃもう可愛いのです。仙台国際コンクールで私達はお馴染み。可愛い、そして誰にでもその愛らしさで微笑んでくれる。でも演奏は、一本筋の通ったしっかりしたものを感じます。
その彼女とカップリングされたのが、セレーノで一緒、元同僚のヴィオラの佐々木真史と、ずっと知り合いだったのにひょんなことから同僚になってくれた?チェロの首席ソロ奏者、三宅進。
みなさんセレーノはご存知ですね?!西江辰郎、ワタシ、佐々木真史、原田哲男で組んでいるカルテットです。けっこういいものやってたんですよ!
通常カルテットはある程度組んでいるグループのことを指しますが、今回はボムソリちゃんを迎えて、新しいカルテットの結成になりますね。
曲目も、有名どころつかみ取り…といった贅沢なプログラム。普段はお目にかかることはないでしょう。
初めてのカルテットデビューにもぴったりです。
みなさんでケーキバイキングに行くような気分で、どうぞ!!
仙台フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン奏者 小川有紀子
「せんくら」ブログリレーのバトンを引き継ぎました山田和樹です。
いよいよ「せんくら」が近づいてきました。僕は29日から仙台入りして準備に励む予定になっています。
ミュージック・パートナーを務めています仙台フィルは今週、下野竜也さんの指揮のもとで定期演奏会をします。こちらにも是非足をお運びいただけたら幸いです。
https://www.sendaiphil.jp/concerts
仙台フィルとの共演にはいつも独特の感動が走っています。現在の仙台フィルのコンディションの良さ、音楽的充実度を一人でも多くの方にお伝えしたいと思っています。
「せんくら」の3日間で、仙台フィルと5公演を共にします。
今回のコンサートマスターのおひとりは我らが神谷未穂さん。
つい先日、東京にて神谷さんのリサイタルにお伺いしてきたのですが、奏でる音楽の素晴らしさはもちろんのこと、トークも交えた楽しい演奏会で「神谷ワールド」を堪能させていただきました。彼女のバイタリティーには僕も敵いません。
「せんくら」最終日には、私と神谷さん、ピアニスト・仲道郁代さんとのトークコーナーもありますので、そちらも併せてお楽しみいただければと思います。
それではまた明日に。
山田和樹
皆様、はじめまして。
ピアノの松坂優希です。
この度、初めてせんくらに出演させていただくことになりました。
なんとも豪華な顔ぶれの中恐縮しつつも、こうして素晴らしい音楽の祭典に参加させていただけることを、大変嬉しく光栄に思っています。
今回私が出演させていただくのは10月5日に楽楽楽ホールにて行われる、「宮沢賢治が聴いたクラシック」という公演です。
私は幼少時代、ピアノを弾くのと同じくらい、本を読むことが好きでした。
宮沢賢治も大好きな作家のひとりで、注文の多い料理店やセロ弾きのゴーシュ、猫の事務所やよだかの星……などなどお気に入りの物語は特に、何度も何度も読み返しては、独特のユーモアが随所に光る幻想的な世界観にどっぷり酔いしれたものでした。
文字はなくとも、五線譜の中にもまた、様々な物語が限りなく広がっています。それはたとえば異国の情景であったり、軽やかに飛び回る鳥の描写であったり、はたまた悲嘆や歓喜といった感情であったり。
まだ経験したことのない未知なる世界に遭遇し、それをいざ音で表現してみようとなった時、幼い私の知識と想像力を補い、扉の中へいざなってくれたのは、いつでも「本」であり「文学」でした。
大人になってからも、曲の解釈の上で、また人間としての思想の上でも、文学から得る刺激やインスピレーションが私の音楽人生に与えた影響は計り知れません。
そんな私にとって、尊敬する作家のひとりである宮沢賢治が実はクラシック音楽を愛聴し、それを創作の糧としていたというのは、なんとも感慨深いことなのです。
さて、明日はコンサートにて実際に演奏させていただく作品について、留学中の小話などもまじえながらご紹介したいと思います。
是非、お読み頂けたら幸いです!
松坂優希
せんくらブログをご覧の皆様、こんにちは。
私のせんくらブログ最終日の今日は、第2の故郷イタリアでの様子を少しご覧頂きたいと思います。
高校卒業後、イタリアのイモラ音楽院で勉強してイタリアには10数年住みましたが、数年前ドイツのベルリンに引越しました。
引越した後もイタリアには年に数回行きますが、毎年夏の楽しみはトスカーナの室内楽音楽祭です。
数カ所のワイナリーで行われるこの音楽祭は、ベルリン・フィルの奏者とその仲間が出演します。
2週間ほどシエナに滞在しながらリハーサルを重ねて演奏会に臨み、終演後はワイナリー自慢のワインとそれに合わせたイタリア料理で、星空の下で皆とゆっくりした時間を過ごします。
その期間中シエナで行われるパーリオ(競馬)もすごい迫力です。
音楽祭では、思いがけない嬉しい出会いや新たな出会いがあります。
せんくらでも仙台の皆様との出会いをとても楽しみにしています。
演奏会でお会い致しましょう!
菊池洋子
せんくらブログをご覧の皆様、こんにちは。
先日、愛知県の豊田市コンサートホールで出演しました演奏会の様子をご覧頂きたと思います。
フィギュアスケートで使われたいろいろな音楽を演奏し、ゲストの伊藤みどりさんと山田満知子コーチの楽しいお話を交えた、とても華やかな時間でした。
伊藤みどりさんがアルベールビル・オリンピックのフリーで使用したラフマニノフのピアノ協奏曲(第1番と第2番のからのオリジナル・バージョン)を、作曲の鷹羽弘晃さんが2台ピアノに編曲。みどりさんと満知子さんの前で演奏させていただき、とても盛り上がりました!
左よりアナウンサーの相澤伸郎さん、伊藤みどりさん、山田満知子さん、私、鷹羽弘晃さん
フィギュアスケートの音楽は、数分の中にジャンプや盛り上げる場所など様々な要素を盛り込むため、それに合った音楽をつないで作られていて、実際に演奏するとなると、音楽の流れが突然切れる場所が出てくるので難しい部分もありました。
でも、何度もテレビで観て応援していたみどりさんの目の前で、思い出の曲を演奏できたのは感激でした!
演奏会の翌日は、とっても素敵な豊田市美術館に行ってきました。
私が行った数日後には改修工事で1年間閉館するとのこと、ラッキーでした!
ジャン・フォートリエ展や美術館所蔵作品のクリムトやシーレを観た後、美しいお庭の一角にあるお茶室にも立ち寄りました。
充実した楽しい時間でした。
菊池洋子
せんくらブログをご覧の皆様、はじめまして、ピアノの菊池洋子です。
今年初めて、せんくらに出演させていただきます。
私にとって仙台での演奏は2010年8月に仙台フィルさんと共演して以来、4年ぶりになります。
今回演奏するプログラムは、トリオ、デュオ、そしてリサイタルと盛りだくさんです。
初共演のチェロの長谷川陽子さんとはベートーベンの大公トリオ1楽章、デュオで変奏曲を(18)、ヴァイオリンの川久保賜紀さんとは、大好きなモーツァルトのヴァイオリンソナタイ長調とピアノソナタイ長調 トルコ行進曲付きをあわせたプログラム(77)、クライスラーの小品など(41)を演奏します。
川久保さんとは、昨年淡路島でデュオ・リサイタルをご一緒して以来です。
そして、10/5のリサイタル(64)ではモーツァルトのきらきら星からショパン、アルベニスまで、さまざまな作曲家の名曲を、仙台の皆様にお楽しみいただきたいという想いで選曲しました。
まだ残席のある公演もありますので、ぜひお聴きいただけましたら嬉しく思います。
せんくらブログ、明日と明後日もどうぞご覧ください!
おまけに・・・私の好きな絵の一つ、ピカソ作「ピアノ」です。
菊池洋子
最終日は・・・じゃ~ん!!
仙台クラシックフェスティバル【61】
~中川「教授」が音楽家の仲間たちと贈る目からウロコ!教科書に載せたいクラシック
いやぁ~、これ、めちゃくちゃ楽しみです!!現代の奇才・中川賢一さんと、フルート界の貴公子・荒川洋さんと、ワタクシ長谷川。【三本川トリオ】と呼んで頂ければ大変光栄でございます。
中川さんも荒川さんも、最高な演奏家仲間です。中川さんとは昨年2公演ご一緒しました。彼が作り出す音はどの1音も躍動感と色彩感に満ちていて、大変感銘を受けながらの共演となりました。荒川さんとは【せんくら仲間】の一人。毎年わいわいと集まって牛タンをつまみながら夢を語らう仲なのですが、実は共演するのは初めて。楽しみです。
お二人とも、話術も天才並ですから、もちろんトークも炸裂すること間違いなし!!ワタクシ、笑いすぎて弾けないかもしれません・・・私も客席で聴きたいぐらいのお墨付きコンサートです♬
是非、【せんくら】最終日、クラシックを聴きながら笑い転げに来てください?!いやいや、笑うだけではありません。これぞクラシックの名曲中の名曲。聞かせます!!
さて、そんな四方山話をしていたら、このせんくらブログもあっという間に最終日となりました。3日間お付き合いくださった皆さまに感謝申し上げます。そして、もうすぐ。【せんくら】でお会いしましょう!!
長谷川陽子
さて、2日目のコンサートはベートーヴェンのガラと、なんとブラームスのチェロ・ソナタ全2曲のコンサートです。こちらは嬉しいことに両方ともソールドアウトだそう。ありがとうございます!!
ベートーヴェンのガラでは、菊池洋子さんとの初共演が今からとても楽しみです。そしてヴァイオリンの川久保賜紀さんとのトリオ、今まで何度か川久保さんとは共演させていただいていますが、すっきりと現代的な美しいヴァイオリンを弾かれる素敵な方です。そしてお人柄もチャーミング!!
ベートーヴェンは、一部の貴族の音楽だったクラシックを、私たち一般庶民みんなが共有してともに感動出来るよう世の中にクラシック音楽を広げるきっかけを作ってくれました。貴族のサロンからコンサートホールへ。そして古典からロマン派の幕開けの必殺仕掛け人。ベートーヴェンの音楽はどの瞬間も本当に素晴らしいのですが、特に敬虔な祈りからまるで万華鏡のように音色の世界が変わっていき、その先に生まれる生命力に満ちた躍動感。この神秘のヴェールから生まれる奇跡の瞬間に、いつも私は生きていることの素晴らしさを感じます。今回もその奇跡の瞬間を楽しみに弾きたいと思います。
そしてそんなベートーヴェンを敬愛してやまなかったブラームス。ブラームスは炭のようにじっくりと深く燃えていく作曲家です。第一番は第2楽章にベートーヴェンへの敬愛、第3楽章にはフーガを通じてバッハへの尊敬の念を込めて作曲されたといわれています。そしてまた彼自身この曲を作曲した当時、母親の死という悲しい出来事がありました。
そして二番では、当時ブラームス自身が惹かれていたハンガリーの民族音楽からのインスパイア、そして既に大きな成功をおさめていたブラームス、自信溢れるシンフォニックな雄大な響きをいつも感じながら演奏しています。
偉大なる2B、どちらの公演も楽しんでいただけますように!!
長谷川陽子