こんにちは。エレクトーンの神田将です。
週末のひととき、いかがお過ごしでしょうか。
演奏家の多くは、一年を通じて世界のあちこちを旅しながら暮らしています。
私のようなはしくれでも、一年のうち200日以上は旅の空。
度重なる移動は体にも気持ちにも負担が掛かりますが、初めての土地には新しい出会いが、再訪するところには懐かしい再会が待っており、どんなに疲れていても期待の方が勝ります。
昔から旅好きだった私は、演奏をしながら各地を訪ね歩く生活にずっと憧れていました。今は念願かなって旅を続けているわけですが、かつて想像していたものと現実とでは、ずいぶんと違います。
まず、エレクトーンという楽器が選択ミスだった?
いえいえ、そうは思いたくないのですが、ヴァイオリンやフルートなら片手に抱えてスマートに移動できそうですし、ピアノなら各地に条件のよい楽器が揃っていますよね。
エレクトーンはその都度、手配が必要なので、気軽な旅には向いていません。
ハープやマリンバなど、自前の大きな楽器を使う演奏家も、きっと同様のご苦労があると思います。
そして設営とリハーサル。簡単なのですが、単純ではありません。
特に気を使うのが音響面です。アコースティック楽器と違って、スピーカーに頼らなければならないので、満足のいくナチュラルな音を出すまでには、とても細やかな調整が必要です。
さっと準備して、本番までの時間にリラックス、とカッコよくいきたいのですが、いつもギリギリまでリハーサルです。
さらに、編曲や演奏のためのデータ作成に膨大な時間を要するので、余暇の時間というのがまったく持てません。
ちょっとでも時間が空けばデータ作成、移動中にも編曲作業と、気が休まる時がないのです。
そんなわけで、演奏旅行中は旅の醍醐味を満喫する余裕がなく、時折、自分がどこにいるのかさえわからなくなりますが、それでも、さまざま風土に触れながら、無意識のうちにもたくさんの刺激をもらっています。
また、音楽が持つ精神世界の旅も魅力的です。
過ぎ去った時代に生きた先人たちとの対話を楽しんだり、未知の場所へ迷い込んだり、時には王子になったり、人形になったり・・・
音楽世界の旅は、永遠に終わることがなく、解決することもありませんが、だからこそ無限の好奇心を持って向かえるのかもしれません。
ひとつひとつの曲が持っている世界へ、それぞれの演奏家がご案内役となり、みなさまをお連れします。
せんくらは、未知への旅を体験できる魔法の扉でもあるのです。