0歳児コンサート  

2010.06.11| 神田将

ブログでもトップバッターを務めさせてもらった私ですが、「せんくら」の本番でもファーストコンサートで先陣を切らせていただきます。
昨年も最初でしたが、同じ時間に異なる会場でふたつのコンサートがスタートしたため、もう一方が注目されていました。
今年第1陣のコンサートは、昨年同様のコンセプトでお届けする「0歳児コンサート ベイビーもママもうっとり~清らかな旋律たち~」です。

昨年の選曲にあたり、「0歳児OKの内容を」とオーダーされた際には、正直悩みました。「0歳児って、音楽聴くのかな?」「聞こえるにしても、どう反応するんだろう・・・」と疑問は膨らむばかり。私自身にこどもがいないので、なおさらわかりません。なので、周囲のなりたてママたちにリサーチしながら、アイデアをまとめていきました。
0歳児コンサートといっても、お客様全員が0歳なのではなく、「年齢制限がない」という意味ですから、まだ言葉を覚えていないような赤ちゃんでも、ママと一緒に音楽を楽しめるようなコンサートにしようと考えました。そうしているうちに、こどもにとって、ママの幸せそうな表情にひとつでも多く触れることが、とても大切なのではないかと気付いたのです。
誰もが心洗われるような美しい旋律たちを集め、心穏やかに耳を傾けてもらう。そんなうっとりするような時間を親子で過ごせたらなんともハッピーだろうなと思いませんか?

加えて、早い時期にコンサートデビューをして、音楽に親しむことも、こどもたちの何かを刺激するかもしれません。それが才能のたぐいではないとしても、優しい心や美意識につながっていったらステキだと思います。

このようなコンセプトのコンサートですので、会場内の雰囲気も一般のコンサートとは大きく異なります。
昨年、私が驚いたのは、開場してから開演までの間の会場内で、赤ちゃんたちがあらゆるところでハイハイをしてる光景。ステージに乱入する赤ちゃんもたくさんいました。この様子を楽屋のモニターで見ながら、私は苦笑いするばかりです。

それは、コンサートとして成立するのだろうか、という不安からでした。舞台に登場してからは、いかに観客を音楽の世界へ引き込むかに集中するのが常ですが、今回はそうもいかない様子。気分を入れ替え、これまでにないコンサートの雰囲気を一緒に楽しむことにしたところ、不思議なリラックス感に包まれたコンサートとなりました。

今回は2度目ですので、もう私があせることもないでしょう。ベイビーやキッズたちと一緒に、ママやパパも幸せなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

神田将

コンセプチュアル・プログラム  

2010.06.10| 神田将

こんにちは!エレクトーンの神田将です。
今年の「せんくら」では、3日間で5回のコンサートに出演させていただきますが、今日はその選曲裏話についてご紹介します。

昨年は初めての参加ということもあり、選曲の時点では「せんくら」のお客様や会場の雰囲気をまだ知らずにいましたが、どんな曲なら喜んで頂けるのかを徹底的に考え、4回のステージで27曲を用意しました。
軽やかな曲から壮大な作品まで、幅広く取り揃えたまではよかったのですが、とにかく初登場の気負いが大きすぎて、正直なところ消化していくのがやっとという場面もあり、大いに反省した次第です。

「せんくら」ではコンサートホールから屋外広場まで、さまざまな環境で演奏が聴けるのも魅力のひとつです。
私が演奏するのは収容人数の少ない小さな会場が多く、すべてのお客様に至近距離で演奏を楽しんでいただけますが、演奏会ように設計された空間ばかりではありませんので、そこでいかによい音響コンディションでお届けするかという点に、スタッフと共にできる限りの工夫をしました。
私がこうした演奏環境を理解せずに選曲したものですから、曲によっては広さや響きに影響され、非常に弾きにくかったものもありました。

そんなわけで、今回はまず会場がどこかを確認して、その空間で無理のない選曲を心がけたつもりです。そして、前回同様、それぞれのステージにイメージしやすいコンセプトをかかげ、5ステージ1曲も重なることのない全35曲を選びました。

今年は少し気楽にいこう。そう思っていたはずなのに、結局のところ負荷の高い選択をした私。これもまた、ご来場下さるお客様に神田将らしいステージを満喫してもらいたいという熱い思いのあらわれに他なりません。

しかも、曲目をフィックスした後で会場と時間割が一部変更になり、「え、あの曲をあそこで弾くのか・・・」的な戸惑いがちらついていますが、それもまたチャレンジ。昨年がフルマラソンなら、今年はトライアスロン気分です。とにかく、ありえないほどに欲張りなプログラムですので、どうぞお見逃しなく!

神田将

選曲から演奏までの道のり  

2010.06.09| 神田将

こんにちは!エレクトーンの神田将です。
ある曲をエレクトーンで演奏する場合、決まって踏まなければならない幾つかの段階がありますが、今日はそのプロセスをご紹介します。

オーケストラならスコアやパート譜が、ピアノやバイオリンならそれ用の楽譜が市販されており、クラシック音楽の場合はその市販楽譜を頼りに稽古すれば、大抵の演奏会には備えることができます。

ところが、エレクトーンには、こうした市販楽譜はほとんどありません。一部あるにはあるのですが、レスナーさん向けに簡略化されていたりするので、私たちプロフェッショナルがコンサートピースとして使用するには向いていないのです。

では、どうのようにして準備を進めるかというと・・・
まず、選んだ曲のフルスコアを用意し、これをじっくり読んで丁寧に解釈します。作品について熟知しなければ、ひとりで演奏するための編曲で大失敗をしかねませんので、この段階は非常に重要です。たとえば、「なぜこの旋律になぜオーボエを選んだのか」「なぜここは嬰ヘ長調でなければならないか」など、作曲家の意図をできる限り読み取りながら、それらの「なぜ」のすべてに優先順位をつけます。

こうして解釈が済んだら、エレクトーンで演奏可能な形に編曲していきます。ここで心掛けるのは、「編曲によって原曲の意図するところが崩れるのなら、その曲の演奏は諦める」という潔さ。エレクトーンには上下、足と3段の鍵盤がありますが、同時に押さえられる音の数にも、それぞれに独立して追えるフレーズにも限界があって、無理をするとただのアクロバットになり音楽ではなくなります。たとえば、ラベルの「ダフニスとクロエ」はひとりで弾けても、「クープランの墓」は弾けません。前者の方がスコア的には複雑ですが、後者の方がフレーズの独立性が高いために、独奏には不向きなのです。

原曲の持ち味を余すことなく伝えつつ、独奏する上で十分に合理的な状態に取捨選択する。これが編曲作業です。

編曲を終えたら、今度は演奏に使用する音色の組み合わせデータを作成します。
エレクトーンでは、多くの楽器の音を重ねて色彩感あふれる音楽を奏でられますが、次々に音色を変化させるために、音色セッティングの状態をあらかじめ記憶させておきます。「ここからホルンに変更」とか「2拍目からティンパニが加わる」など、スコアに忠実に音色を組み合わせ、実際の演奏時にはそのセット状態を次々に呼び出しながら、音色を変えて演奏します。

ここまで出来上がって、やっと演奏の稽古に入ることができます。なかなか煩雑で面倒な作業が続きますが、それだけにひとつの作品により深く触れることができるのです。

今年の「せんくら」には35曲を演奏しますが、まだ半分はこれから着手するという段階ですので、のんびりしてはいられません。
慌てず、一曲一曲にじっくり向き合って、秋には「大吟醸のような響き」をお届けしたいと思います。

神田将

 

エレクトーンで挑む芸術の域  

2010.06.08| 神田将

こんにちは!エレクトーンの神田将です。
昨年のブログでも話題にしましたが、今年初めてのお客様もいらっしゃると思いますので、私の音楽について、少しご紹介させて下さい。

私が演奏する楽器はエレクトーンです。初代エレクトーンが誕生してから、今年は51年目。最新の楽器はとても美しい音色を使って繊細な表現をすることができるようになりましたが、今でも多くの方がエレクトーンに対して古いイメージを持ったままです。そのため、エレクトーンでクラシックを演奏するといっても、ピンと来ない方が少なくないようです。エレクトーンはピアノと同様、さまざまなジャンルの音楽を演奏できる魅力的な楽器ですが、圧倒的にジャズやポピュラー向きだと考えられてきました。

実際、私もかつてはそう思っていました。でも、楽器は進化し続け、それを使う演奏家たちも試行錯誤を重ねた結果、エレクトーンで奏でる音楽は劇的な変貌を遂げました。こればっかりは実際に聞いていただくしかありませんが、エレクトーンで奏でる音楽に芸術的な価値が芽生えたことは、私がこうして「せんくら」にエントリーしている事実がひとつの証拠といえるでしょう。

ピアノからはピアノの音、バイオリンからはバイオリンの音が出るのは当然ですが、エレクトーンにはアイデンティティとなる固有の音色がありません。楽器を見ただけでは何の音がでるかまったくわからない、いわばビックリ箱です。
そして、あらゆる楽器の音をいくらリアルに出せても、所詮は機械による模倣の音。私は、このコンプレックスを脱するために、さまざまな努力を重ねました。

この機械の音にいかにして魂を宿すか。電気的に増幅された圧倒的な音を常に凌駕する精神性をいかにして注ぎこむか。そんな営みを繰り返すうちに、音の命について深く考えながら、「音」と「音楽」の違いに敏感になりました。

私は本来オーケストラで演奏される曲を、ほぼ原曲のニュアンスを保ったままに、ひとりで演奏します。その時、私は指揮者であり、楽団員ひとりひとりであり、同時にひとりの私自身でもあります。この喜びは言葉では表せませんが、皆さまの前で演奏する以上は、ひとりよがりで終わるわけにはいきません。まだまだ歴史が浅く、芸術としての完成形には程遠いかもしれませんが、お遊びや単なるオーケストラ風ではない、ひとりだからこそできる管弦楽曲の新しいスタイルとしてご注目いただければ嬉しいです。

神田将

オールドルーキー卒業  

2010.06.07| 神田将

こんにちは!エレクトーンの神田将です。
今年もまた演奏者ブログのトップバッターを務めさせていただくことになりました。よろしくお願いします。
私の中では、まだ「せんくら2009」のことがつい先日のように感じられ、興奮冷めやらぬといった感じですが、早いものでもう2010が本格的に動き出しているのですね。きっと、10月の本番も、あっという間にやってくることでしょう。

思い起こせば、昨年は私にとって初めての音楽祭エントリーでしたので、嬉しく思いながらも、緊張と戸惑いばかりが膨らんでいました。いつもの自信はどこへやら。オープニングレセプションでは、周囲でくつろぐ憧れの音楽家たちの放つオーラに圧倒され、ひとりで勝手に委縮していたのをよく覚えています。

クラシックの音楽祭。この響きだけでも威圧感がありますし、多くの方々が築き上げた「せんくら」のイメージを私が壊してしまっては大変だと、ありったけの気負いを持って仙台入り。
でも、実際の「せんくら」は、少しも堅苦しいことがなく、スタッフの方々は気さくですし、出演者の皆さんも触れ合うごとに親しく接してくれ、気がつけばいつも以上にリラックスしている私がいました。

そうか、楽しめばいいんだ。大好きな音楽を、お客様やスタッフと一緒に楽しめばいいんだ。その気持ちは、コンサートをひとつ終えるごとに強くなっていきました。
こうして私の背中を押してくれたのは、出演者やスタッフばかりではありません。何より頼もしかったのは、ひとりひとりのお客様でした。演奏の合間にステージから見る客席の皆さんの表情は、本当に心地よさそうで、本当に楽しそう。私にとって、世界中のどんな景色よりも絶景でした。

また、私のコンサートにお越しいただけなかったお客様にも助けられました。
仙台の街を歩いている時、「神田さ~ん!」とお客様が気軽に声を掛けて下さるのも、励みになりました。「あなたのチケット、買えなかったのよ~」って、残念がってくれた方もいらっしゃいました。逆に「なぜ、無名の私のチケットなぞ、お求めになろうと思ったのですか?」と質問したところ、「だって、選曲がいいじゃない」(それは光栄です)「それに、おしゃべりが面白そう」(って、どこでそれを・・・)という具合に、リサーチもできました。

とにもかくにも、私が出演する4回の公演はあっという間に終わってしまいました。心底楽しい体験でしたが、オールドルーキーゆえの反省も少なくありません。もしまた「せんくら」に出演するチャンスがあれば、その時は今度こそ・・・と心に秘めているも束の間、また今年も出演させていただけることとなり、大喜びしています。

前回から1年後の10月まで、その間に大小織りまぜ200以上のコンサートを経験することになりますが、1年の成長をお見せできるよう、1回ごとを大切に演じるつもりです。そして、「せんくらオンリー」の新しいプログラムをご用意し、満を持して仙台にうかがいますので、どうぞご期待下さい!

神田将

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