
さて、今回は前橋汀子さんについて。
せんくらではソロも弾かせて頂くんですが、前橋汀子さんとの共演も2回あります。
前橋さんとの出会いは去年の10月。
演奏会が10月1日だったので、せんくらのほぼちょうど1年前ですね。
その日は熊本での演奏会だったんですが、事情があってその伴奏の話が入ってきたのが本番10日前くらいだったんです。
ちょうどその時期は大事な本番をいくつも抱えていて、どうしようか結構悩んだんですが、でも、なかなかないチャンスだから、と思って清水どころか東京タワーから飛び降りるくらいの勢いで決断したわけなんですが、もう、1回目のリハからノックアウトでした。
こんなに大きな音楽をするヴァイオリニストには今まで会ったことがありませんでした。
すごく大きなエネルギーと共に唸り声すら上げながら出すその音は、いつも音以上のものがあって、だけど、絶対に一人で行ってしまうんではなくてピアニストのほうも気にしてくれて、ちゃんと待っていてくれたり、引っ張っていってくれたり、たまに僕のほうからしかけたりしても、余裕を持って受けとめてくれたり、すごいキャパを持った方です。
そして、本番でステージに出て行った時のオーラがすごい。
きっとそれも、オーラを出してやろうと思って頑張って出たものではなくて、何も考えずに歩きだしても、そこにお客さんがいたらその瞬間に出てくるような自然なオーラ。
決して威圧的ではない。
熊本の後も2回共演させて頂いたんですが、最後に行くにつれどんどんお客さんも一緒になって興奮して、会場が一つになっていくのが分かるんですよね。
何も見え透いた盛り上げ方はしない、トークで盛り上げるわけでもない、ただ真正面から音楽をやっているだけで、ちょっと表現は悪いかもしれないけど、まるでロックのコンサートで観客が総立ちで一緒になって歌っている時と同じような空気を作り出してしまう。
そしてそれに自分も反応して、いつもは出ないような音が出る瞬間があるんですね。
知らず知らずどこかで守りに入って作り上げていた壁が、その瞬間崩れていろんなものが出てくるんですね、きっと。
前橋さんという音楽家出会えたことは、自分にとってすごく大きな財産になっていくんだと思います。
せんくらではどんな音を出して下さるのか、そして自分がどんな風にそこに反応していけるのか、
すごく楽しみです!
松本和将(ピアノ)