ラフマニノフと聞いて、皆さんは何を真っ先に思い浮かべられますか?名前を知らなくても、甘美で親しみやすいメロディーはどこかで耳にされた方も多いのでは、と思います。崩壊しかけているロシア帝国からソヴィエト連邦へ移行する激動の時期にラフマニノフは生きました。音楽的な特徴を一言でいえば、チャイコフスキーの流れを引き継ぎ、調性と色彩感覚を重要視した人でもあります。今回仙台で演奏するチェロ・ソナタは、4つの楽章がそれぞれ際立った特徴を持ちながら、ロマンチシズムにあふれています。肩の力を抜いてお聞きいただくのが一番でしょう。
私事ですが、将来のいつか、彼の第二の故郷といわれる南ロシアにあるイワーノフカを訪れてみたいと考えています。
[写真:アメリカのヨセミテ国立公園、巨大セコイアの木]
実は、私は仙台とは長いお付き合いになります。
1990年3月に開催された「アジア音楽祭・東京/仙台」では、事務局長を務め、頻繁に仙台に伺いました。3日間東京で、4日間仙台で開催された大規模なアジアの音楽祭でした。仙台側は、仙台市民文化事業団と、中心的存在の作曲家の片岡良和さん、先日亡くなった作曲家・本間雅夫さんをリーダーに、若い作曲家・石川裕さん、宮城純一さんたちが一生懸命になって運営した、思い出深い音楽祭でした。大会会長は我が師匠でもある黛敏郎先生、実行委員長は石井眞木さんという両巨匠で、毎日のように叱られていたのは今となっては良い思い出です。
私は1979年から1986年までベルリンに住んでいて、日本とドイツを行き来した生活を送っていました。しかし、1988年に香港で開催された「アジア作曲家連盟(ACL)」の大会に参加して、アジアの文化に魅せられ、またアジアの音楽家たちと親しくなり、すっかりアジア方面に目を向けた活動に切り替わりました。
目下、副会長を努める社団法人・日本作曲家協議会(JFC)が、アジア作曲家連盟の日本支部で、1998年以来、毎年連盟の会合には出席してきました。そして、1999年から2003年まで、連盟の会長を努めることになりました。その時は、本当にいろいろな国に足を運び、アジアの音楽界を見て回りました。韓国は年に3回、香港、台湾、フィリピンの作曲家たちとは日本の友人より会う機会が多いほどでした。その他にも、インドネシア、タイ、ミャンマー、イスラエル・・・など、多くの人たちと知り合うことが出来ました。
昨年、シンガポールのチャイニーズ・オーケストラから委嘱で2本の尺八のための協奏曲「天空の舞」をいう曲を書きました。これはすべて中国楽器によるオーケストラですが、「他の国の人たちが作曲しなければ本当のインターナショナルのオーケストラにならない。是非、曲を書いてほしい。」という、指揮者・葉聡(Yeh Tsung)の強い要請で、チャレンジをしてみました。楽器の勉強から始め、本当に苦労しましたが、アジアの文化の奥深さを知り、新しい可能性を見出しました。まさに〈可能性の宝庫・アジア〉です。
*写真は、「天空の舞」の初演の様子です。
尺八:山本邦山、山本真山、指揮:葉聡、シンガポール・チャイニーズ・オーケストラ
何もしないことが旅の目的であったリノの9日間は、友人の下宿「やまだ荘」到着の初日夜に、すでに怪しくなった。数年前にアメリカ西海岸のスキー旅をした折に同行してくれた在リノの知人が、やまだ荘にフラーと遊びに来て、「あのホテルの食堂のお魚料理は抜群だったねー!」といったのがきっかけだった。失礼ながら、アメリカの食事は、いつどこでも最高というわけにはいかない。お腹が空いていれば、ソコソコのものでも「おいしい、うん、おいしい!」と食べて満足しているが、「これは何?」というほどの吹っ飛んだおいしさは滅多にない。私達のスキー・グループのうち一人だけはお肉を選んだが、あとはランチの分厚いハンバーガーの反動もあってお魚料理を選んだ。2,3種類ある魚のどれもが、唸るばかりの美味、滋味あふれた作品だった。
私は元来、いつ、どこそこで、何を演奏したという事柄はほとんど覚えていないが、味については別だ。絶妙なおいしさを思い出して、友人ともどもしばし無言になった。何といっても夏休みで時間はある。車で5,6時間だし、ブラーッと晩御飯を食べに行ってみようかという友人の言葉につられた。3日後の週末の朝にのんびりと必要道具を車に積み込んだ・私はデッキチェアで寝転んでいたが・。友人は、使うかどうかも分からないバーベキュー道具一式から、もしかしたらまだ残雪で滑ることが出来るかもしれないと、スキー道具一式なども積み込み、私は残雪スキーときいて目が輝いた。運転手伝いとして、何事にも興味津々の留学生の一人も参加、合計3人で出発した。ちなみに、6月下旬でもリノは乾き、暑さは格別、30度は簡単に突破する。クーラーがない車での移動だが、義務が何もないので、何がどうなっても楽しい。道中は、せっかくだからと観光スポットで休憩しつつ、めでたく夜20時にはホテルの食堂に座っていた。場所はマンモス・マウンテンという、スキー場にある宿で、マンモス・マウンテン・インといいます。えっ、味はどうだったって?これ見よがしではない絶妙なおいしさは変わっていなくて、最高のひとときでした。シェフはシェフ・ココスといいます。近くまでお出かけの際は、是非お勧めです。
さて、今日は東風のメンバーを簡単に紹介しましょう。
今回はどうしても日程が合わず、エキストラも参加していますが、目下メンバーは17名です。
Fluteは、姫本さやかさん。東風の会計担当でもあり、美しい音を出す奏者です。結成当初からのメンバーですが、今回は二人目のお子さんの出産時期にぶつかり、残念ながら仙台には来られません。代わりにいつもエキストラをお願いしている多久潤一郎さんが参加します。
Oboeは、中江暁子さん。姫本さんが産休の間、会計を担当しています。彼女は、2005年のバンコク公演からの参加。最初の練習から皆とぴったりと息が合い、アンサンブルの要を担ってくれています。
Clarinetは、目下不在です。今回は横田揺子さんが出演します。
Bassoonは、功刀貴子さん。バロック・バスーンも演奏し、実にレパートリーも広い、チャーミングな女性。今回は、バロックの仕事と重なって、残念ながらエキストラ常連の依田晃宣さんが出演します。
Hornは、堂山敦史さん。東京藝大フィルハーモニアのメンバーでもあり、その演奏テクニックは定評があります。彼の爽やかな音をお楽しみ下さい。今回は、愛車BMWで仙台に来るそうです。
Trumpetは、平井志郎さん。彼もバロック・トランペットの名手で、幅広いジャンルで活躍しています。昨年、お寺で演奏したメサイヤの演奏は見事でした。
Trombone は、加藤直明さん。最近、男の子が産まれ、幸せ一杯なカトちゃん。奥さんもトロンボーン奏者で、お子さんも将来は吹くのかな?東風の宴会隊長で、幹事が愛称です。カトちゃんは、低音の魅力・・・です。
Percussionは、稲野珠緒さん。お料理上手なタマちゃんは、マルチパーカッション奏者。この数年は、作曲家タン・ドゥンのTeaの演奏で世界中を飛び回っています。しなやかな動きをご覧下さい。
Pianoは、及川夕美さん。ヨーロッパに留学予定が、突然アジアに魅せられ、各地を訪問しています。タイ語、中国語も勉強したそうです。ご主人は、中国出身で中国笛の名手。王明君さんです。
1st Violinは、花田和加子さん。東風の副代表で大姉御です。ヴァイオリンはうまいし、バイリンガルだし、心やさしいし、まったく火の打ち所の無い容姿端麗な彼女。爪の垢を煎じて飲んでも、私のメタボは治らないか・・・・
2nd Violinは、古川仁菜さん。この細い体からは考えられないパワーの持ちぬし。機敏に動いて、しっかりチェックを入れる事務能力抜群な彼女。仙台では、牛タンを食べるのを楽しみしているそうです。
Violaは、中島久美さん。日々の生活でもしっかりと自分のペースを保っている、おっとりとした性格のクミちゃん。東風の中声部は、彼女が支えています。
Celloは、松本卓以さん。彼も東京藝大フィルハーモニアのメンバーで、古典から現代まで幅広いレパートリーの持ち主。最近、美しいフルート奏者と結婚して、ルンルン気分だそうです。
Contrabassは、名手・渡邊玲雄さん。新日本フィルハーモニーの首席奏者ですが、今回はオケの仕事と重なって、残念ながら参加出来ず、石上悠さんが演奏します。
作曲メンバーは、4人います。一人は、今回のアレンジを担当する森田佳代子さん。今年2月の定期演奏会でモノ・オペラ「人間失格」を発表し、大成功でした。 他に、この所参加する機会が多くありませんが、博士号を取った小坂咲子さん。日本音楽コンクールで外国人として初の1位になった、ソウル在住の朴銀荷さん、そして、私・松下功です。
また、プログラムの解説など大活躍してくれる東風の知恵袋・音楽学者の長野麻子さん。
この他に、今回はエキストラとして、Violinの村越麻希子さん、矢野小百合さん、Violaの関明子さん、Celloの寺井創さんが参加します。
*写真は、またまた2003年のヤンゴン公演のものです。子供たちと楽しい一時を過ごしました。
このブログが掲載される頃は、みなさんは夏休みの休暇中か、あるいは時差的に休暇を組まれて8月後半か9月を楽しみになさっておられるか、どちらでしょうか。
私自身は今年の夏休みは早めに計画していて、6月の19日から9泊で、ネバダ州のリノに出かけました。スキー友達が経営している下宿荘で「何もしない日々」が目標でした。時計を見るのも最低限だけで、たいてい腹時計にしたがう日々。現地の気候は乾きの夏、ほぼ30度近くあり、日中には30度を超えるのが常で、朝晩は落ち着きます。筋肉の蓄積疲労を取るには、乾いた暑さの場所が最適です。筋肉が自然に緩んできて、疲れが出て、そのままのんびりと好きにしていると、回復してくるのです。庭の一角にあるデッキチェアを猫と取り合いながら、本を読んだり、眠くなればウトウトしたりの過ごし方です。たまにチラッと後半の仕事予定に関することも頭に浮かびますが、判断のつきにくい事柄は追求しないでそのままにして、直感と決断力が自然に戻るのを待ちます。
皆さん、こんにちは!
アンサンブル東風の代表を務める松下功です。
今回、初めてせんくらに出演させていただきます。今から、仙台に行って演奏し、そして美味しいものを食べるのを楽しみにしています。
さて、主催者からせんくらのブログに1週間何かを書くようにと依頼を受けて、さあ大変。一体ブログとやらは、何だ・・・・?ネット上の日記だと聞くけど、生まれてこの方、日記を書くという日常的な習慣など持ったこともないし、人のブログとやらもまったく見る気もなかったし・・・・困ったものだ。
とは言いつつ、承諾してしまったのが、後の祭り。何とかやってみようと思い筆を取る、あ、いや、パソコンの前に座った次第。
そう、まず私たちのグループの紹介から、第1日目は始めましょう。
アンサンブル東風、コチと読みます。よく「トウフウですか?」とか、「魚の鯒(コチ)ですか?」とか言われるが、菅原道真公の読んだ「東風吹かば・・・」の意味で、東の国からアジア、欧米へとメッセージを送りたいと考え、命名しました。結成は1999年で、演奏家・作曲家が一緒に企画・運営をしているグループで、室内オーケストラの演奏形態を取っています。また、いわゆる現代音楽のグループではなく、古今東西の面白そうな物は何でもチャレンジしようという団体です。メンバーの平均年齢は30代初めぐらいですが、なぜか私だけかなり年上です。みんなとても仲が良く、練習中も意見を言い合って楽しい演奏を目指しています。
不思議なことに、私だけでなくアジアに関係する人が多く、アジア関係の作品を多く取り上げています。演奏会は、毎年2月の定期演奏会、11月のお寺での演奏会、パーティーでの演奏、音楽祭の参加など様々な活動を行っています。そして、今までにソウル(2度)、ヤンゴン(ミャンマー)、バンコク(2回)、アムステルダム「ガウデアムス国際音楽祭」など、数回の海外公演も行っています。
この写真は、2003年のミャンマー公演の時のものですが、皆でバガンの遺跡を訪ねた思いでは生涯忘れられないほどです。
アンサンブル東風は、来年2月6日に東京の第一生命ホールで、第10回記念演奏会を行います。その時も、ミャンマーとイスラエルの若い作曲家に委嘱をして「愛、そして祈りの時へ」を開催します。
詳しくは、東風のホームページをご覧下さい。http://www14.ocn.ne.jp/~isaomtst/Kochi.htm
ホームページなどを拝見しても、今年も多くの皆様にせんくら本番においでいただけるようです。
有難いと申し上げるしかありません。
この素晴らしいフェスティヴァルに傷をつけないように、全力で準備を重ねたいと思います。
つたないブログを連日お読みくださり、ありがとうございました。
ついに最終日となってしまいました。
せんくらは初めてのシェンクさんですが、最後の質問として、今回演奏する曲目についてインタビューしてみました。 ではOp.6、どうぞ。(質問、訳:御喜美江)
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5.)Diesmal spielen Sie bei „Sencla“ Werke von Brahms und Beethoven. Sie sie Ihre lieblingskomponisten? Wenn ja, bitte kurze Begründung, warum.
今回シェンクさんは「せんくら」においてベートーヴェンとブラームスを演奏なさいますが、この2人はあなたにとって特に好きな作曲家ですか? よろしかったらその理由を教えてください。
答え:Weil ich alle ihre Klavierwerke gespielt habe, kenne ich sie am besten.
彼らのピアノ作品はすべて弾いているので、自分にとって一番よく知っている作曲家だと思うからです。
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ドイツの名ピアニストによるブラームスとベートーヴェン・・・
きっと皆様の心の琴線に触れることと思います。 (参考:http://www.sencla.com/performer/p29.html )
一週間お付き合いいただきありがとうございました。
会場で皆様にお会いできるのを心よりお待ちしております!
マネージャー 竹島愛弓
シューベルトのピアノ・ソナタ 第16番イ短調 D845 は「のだめカンタービレ」で取り上げられるまでは、ほとんど全く知られていなかった作品と言ってよいと思います。
全体にそれほど知られていないシューベルトのピアノ・ソナタのなかで、更に地味なこの曲を、なぜ「のだめ」さんがお弾きになる事になったかは知る由もありませんが、「のだめカンタービレ」で扱われる諸曲のなかでもこの曲は人気のようです。
確か、昔ポリーニが突然この曲を録音した事がありましたから、この曲は突然掘り起こされる運命にあったのかもしれません。
ずっとさらっていても、飽きることが無い種類の音楽で、何かはあるのだと思います。より後期の天上の音楽に行く直前の地上と天上の中くらいのところ の音楽で、それを面白いとおっしゃる「のだめ」ファンの皆様の感覚はさすがと思わざるをえません。
初日にシェンク氏をご紹介した際にも少し触れましたが、彼は教授として多くの優秀な音楽家を育て上げています。
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4.)Sie haben eine sehr erfolgreiche Klavierklasse an Ihrer Hochschule. Unterrichten Sie gern?
シェンクさんのピアノクラスには非常に優秀な人が多いと伺っていますが、教えることは好きですか?
答え:Ja.
はい。
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シェンクさんしかり、御喜さんしかり、生徒を我が子のように可愛がって愛情を注ぐ姿勢にはいつも感嘆させられます。 ぎっくり腰の痛みの中、愛弟子のコンチェルトを聴きに行く先生はそういらっしゃるものではありません!(参考:http://mie-miki.asablo.jp/blog/2008/04/20/3240092)
マネージャー 竹島愛弓