せんくら・うた劇場「雪渡り」

2024.09.25| 吉川和夫

こんにちは、作曲の吉川(きっかわ)和夫です。今年も「せんくら・うた劇場」を担当します。「せんくら・うた劇場」は、歌と語りとスライドでお話を紡いでいく、子どももおとなも楽しい ”歌い聞かせ・読みきかせ” 。今年のお話は、宮沢賢治「雪渡り」です。

四郎とかん子は、すっかり凍った雪に、まっ白に燃えるようなお日さまが降り注いで、いつもは歩けないところでもどこでも歩いて行ける、そんなまたとない面白い日、歌いながら森の近くまでやってきます。すると、二人は白い狐の子に出くわしました。紺三郎という名のその狐の子から、この次の雪の凍った月夜の晩にあるという「幻燈会」に招かれました…

「キックキックトントン」

雪が凍って大理石よりも硬くなったところを踏みしめながら、歩いたりスキップしたりする子どもの足音。賢治はオノマトペの天才ですが、この何げない足音も本当にすてきですよね。

ところで、「幻(げん)燈(とう)」って何?

うーーん、説明するの難しいなぁ…。今で言えば、絵や動画をプロジェクターで投影する、つまりスライドなのですが…。少し前の時代には、写真を1枚ずつガシャって音立てて変えていくスライドがありました。授業で、先生が教材を映しながら説明してくれるOHP(オーバーヘッドプロジェクタ)というものもありましたね。でもね、ここでいう幻燈って、それらの先祖には違いないのですが、少し違っているようにも思います。8ミリ映像フィルムをもっとずっと小さくしたような家庭用の機器。「ガラス製のスライドに描かれた絵や写真をレンズによって拡大、投影する。光源にはろうそくやランプ、後にはガス灯や電燈が用いられた」マジック・ランタンとも呼ばれるこの投影装置、今から300年以上前に発明されたのだそうです。現代のプロジェクターの鮮明な画面とは違い、ゆらゆらぼんやりしていて、何とも言えない幻想的な景色が現れるのです。

賢治は、「やまなし」という作品の冒頭で「小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。」と言っています。そして、「雪渡り」の後半では、楽しい「狐小学校の幻燈会」が開かれます。幻燈の異世界から立ち上るような映像は、賢治さんの想像力を大いに刺激したのでしょうね。

今回の「せんくら・うた劇場」には、NHK仙台少年少女合唱隊の皆さんが出演して、人間と狐の子どもたちの歌を元気に歌ってくれます。そして、ソプラノの佐藤瑛利子さん、バリトンの原田博之さん、武田直之さんが出演します。ピアノは倉戸テルさんです。
いつもユニークで楽しい絵を提供してくださっているアトリエ・コパンの6歳から11歳の子どもたちが、今年も物語を読んですてきな絵をたくさん描き下ろしてくださいました。

せんくら・うた劇場、宮沢賢治作、吉川和夫作曲、合唱童話「雪渡り」は、10月6日(日)12時15分~13時、日立システムズホール仙台・交流ホールで開催します。ぜひお出かけください。

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