出演アーティスト 上野通明&北村朋幹さんからのメッセージ

2023.07.23| 上野通明&北村朋幹

(ある日の午後、九州へ移動中の車内にて…)

 

北村:ブラームス好きだよね。

 

上野:うん。バッハ、ベートーヴェン、ブラームス…あとシューマンもかな、彼らの曲を演奏しちゃ駄目って言われたら生きていけないと思う。

 

北村:昨日も1番のソナタを一緒に演奏して、明日もまた弾くわけだけど、リハーサルをしていても、ブラームスはなにか、すごく近いところに感じている作曲家なのかな、と思ったけど。

 

上野:そうだね。弾いていて、何も考えずに曲に弾かされているような感覚になれる曲って、そう多くはないけど、彼らはそういう作曲家かな…特に1番のソナタは自分との関係もすごく長い曲だし。

 

北村:いつ頃から弾いてるの?

 

上野:スペインにいた頃、多分8歳くらいだったと思うんだけど、あのソナタを弾きたくて弾きたくて、チェロの先生にそれを言ったら、本棚の一番高い段に置いてあるその楽譜を指さして、もちろん子供には絶対届かない高さなんだけど、「あれ取れたら弾いて良いよ」って言われて。それで椅子とか持ってきて、よじ登って、ぎちぎちに詰まっている本棚から楽譜引っ張り出して、それで弾かせてもらったのが最初かな。

 

北村:ははは、そもそもなんでそんなに弾きたかったの?

 

上野:なんでだろうな…チェロをやっているからには、そもそも低音が好きで。そういった深いところから湧いてくるような音楽が好きなのかな。1番も2番も弾いているけど、演奏回数としてはやっぱり1番が多いかな。両方弾いてる?

 

北村:うん。だけど今まで自分の周りには、どちらかというと1番を弾きたいというチェリストの方が多くて、あとは自分もやっぱり1番の方に憧れが強かった時期があったからね…でも、5年前に初めて一緒に1番弾いて、今もう一度改めて取り組んで、それを経て秋に一緒に2番ができるのはすごく楽しみだけどね。

 

上野:すごく太くて、シンフォニックでエネルギッシュで…あんな始まり方のソナタって他にないよね。緩徐楽章もすごくきれいだし…意外とフィナーレが弾きにくかったりもするんだけど(笑)

 

北村:そうそう、なんだか急にふっといなくなっちゃうような感じがあって…でも、こどもの頃の事を思い出しているような、イノセントな懐かしい感覚とかもあって、好きだけどね。
ブラームスの曲って、それこそ、本当に近いところに感じられて愛おしいような感覚になる瞬間があってさ、そういったものを1人で弾いていても良いんだけど、誰かと一緒に弾いている時に「もしかして今何かが共有できたかな?」と思えると、何にも代え難いあたたかさがあって。そういうのこそ、室内楽の幸せだなあと思ったりするね。

 

上野:うん、そうだね。

 

北村:せんくらでは他になにをするの?

 

上野:ドヴォコン。

 

北村:ああいう所謂「超有名曲」を弾く時って、どんな気分なの?

 

上野:んー、ドヴォルザークは何度も弾いているから、毎回フレッシュな気持ちで取り組むことへの難しさはあるんだけど…もちろん好きな曲だし、今回は新たに試してみたいって思うアイデアがもうなんとなく頭の中にあるから、楽しみかな。
ソロも弾くんだよね?

 

北村:そう、45分でどんなことが出来るだろうと思って。この頃集中的に取り組んでいるリストの曲集から、最もロマンティックで耽美的な「3つのペトラルカのソネット」、そこに初期スクリャービンのちょっとびっくりするくらい美しい前奏曲と、いつか弾いてみたいと思っていたドビュッシーの前奏曲第1巻から数曲抜粋して、組み合わせてみた。
初めて行く会場だし、どんな感じになるだろうね…演奏で色々な街へと赴く生活だと思うけど、旅は好き?

 

上野:好きだよ。行った事のない場所に行くのは楽しいし、そこでしか食べられないものを食べたりとか。今も(乗換の新大阪で)たこ焼き食べたし(笑)

 

北村:普段あんなに食に興味ないのにね(笑)

 

上野:まぁね。じゃあ仙台では牛タンとか…

 

北村:ずんだとか。

 

上野:ずんだ…。

 

北村:(この人絶対分かってないな…)

 
 
 
 

(電車は西へと走り続ける…)

 
 
上野通明&北村朋幹

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