
皆様こんにちは。ピアノの松坂優希です。
この度は、クラシックエール仙台に参加させていただけることになり、とても嬉しく思っております。
私は10月4日(日)午前の公演、「はじめまして!ベートーヴェン」に出演いたします。一度は耳にしたことがあるであろう「エリーゼのために」や「メヌエット」、「スプリングソナタ」や「悲愴」の2楽章をはじめ、ベートーヴェンが12歳の時に初めて作曲した変奏曲や、ルービンシュタイン編曲の華やかな「トルコ行進曲」、可愛らしい「ソナチネ」や「エコセーズ」などなど、美しくフレッシュな作品が盛りだくさんのプログラムです。
実を言うと、私は学生時代、ベートーヴェンがあまり得意ではありませんでした。バッハやモーツァルトの清廉潔白な美しさと比べると、ベートーヴェンの感情むき出しの作風はどうにも重苦しく感じてしまい、(今思うと食わず嫌いに他ならないのですが)どこか苦手意識がありました。当時は試験やコンクールの課題で出る度に毎回涙目で練習したものでしたが、留学先で師事したアキレス・デッレヴィーネ教授がクラウディオ・アラウの直弟子でベートーヴェンのスペシャリストであったことをきっかけに、また年齢を重ねいくつかの挫折を経験したことで、怒りや苦悩といった負の感情があるからこそ、その中に差し込む一筋の希望の美しさが際立つのだと徐々に開眼し、今では大好きな作曲家のひとりとなりました。
今回は、そんな人間味溢れるベートーヴェンの青年期の作品も取り上げ、“荒々しく重厚な”だけではない、彼の根っこに息づく本質的な朗らかさも垣間見られる構成となっていますので、是非そのあたりにもご注目いただけたらと思います。
“はじめて”がテーマの今回の公演。
私事ですが、私は今、5歳と0歳の子供を育てています。子供たちの目線で日々を過ごしていると、毎日の何気ない瞬間が、たくさんの“はじめて”の連続であることに気づかされます。
「今日、自分でブランコ漕げたよ」
「知ってた?かぶとむしって角を持つと怖くないんだよ」
幼稚園にお迎えに行くと、恥ずかしそうにそっと教えてくれる長男。
娘は娘で、はじめてのすりおろし人参を神妙な顔つきで口にし、はじめて頬をかすめた秋風に目を細め、ちいさな世界のちいさなはじめてを積み重ねています。
子供たちにとってのはじめてのベートーヴェンが、願わくばぴかぴかの種となって、将来心を明るく照らす小さな記憶のひとつとなりますように。
会場でお会いできるのを楽しみにしています!
松坂優希
公演番号:10
「はじめまして!ベートーヴェン」
公演日:10月4日(日)10:45~11:30
会場:日立システムズホール仙台|パフォーマンス広場
