2002年に、10年計画でベートーヴェンピアノソナタ32曲の演奏会をスタートしました。順調に見えた3回の演奏会後に、事故。
最も規模が大きいソナタと言われる「ハンマークラヴィーア」にたどり着くまで16年という月日が経ち(2018年7月、ベートーヴェンチクルスvol.Ⅷにて演奏)、残り7曲の演奏となりました。
事故後はリハビリをする中で、いつしかベートーヴェンの人生に重ね合わせるように、作品に取り組む自分がいました。
「ベートーヴェンに影響を受けた作曲者の作品を、ベートーヴェンを意識したプログラムで演奏してみたい」
そんな思いがどこかにある中、今回演奏する機会をいただきました。
ドビュッシー、ラフマニノフ、シューマン、リスト
そして、ベートーヴェンの「テンペスト」より第3楽章を選曲しました。
最後まで決して屈することがなかったベートーヴェン
それどころか、さらに強い精神力で運命に挑んでいく姿。
ベートーヴェンが書かれたとされる手紙から、私の好きな一節です。
「ぼくは運命の喉元を掴んでやる、運命に完全に負けはしない。ああ、千の人生を生きることができたなら、なんと素晴らしいことか」 (「フランツ・ヴェーゲラー宛の手紙」より)
時を超え、ここまで私を奮い立たせ、生きる力を与えてくれた彼の存在
ベートーヴェン 楽聖
こんにちは
今回、初めて〝せんくら〟に出演させていただく 福原佳三 です。
演奏する機会をいただき、大変嬉しく思っています。
先月、10年ぶりにフィンランドのクフモ音楽祭に参加してきました。
今年がちょうど50周年になるクフモの音楽祭では、クフモ音楽祭を立ち上げ、数年前に〝せんくら〟にも出演されていたキマネン夫妻や、仙台国際音楽コンクールヴァイオリン部門第1回入賞者の梁美沙さん、そして今回も〝せんくら〟に出演される舘野泉さんにお会いしお話ができたことは、とても感動的な出来事でした。
キマネン夫人の新井淑子さんがおっしゃっていた「クフモ詣で」という言葉を、日本に帰ってきてから、私自身もしみじみと感じているところです。
私は、ピアノに向き合い続けることによって、「私は今、生きている」と自分の存在を実感することができました。
ピアノに向き合うことは、自分の「命」の確認であり、生きる希望でした。
今も、身体と音楽との葛藤は、私の生きている証です。そして、希望です。