《チャンス・モンスーン》

2017.09.28| 村治奏一

作曲家・藤倉大さんに2014年に書いていただいたギター曲《チャンス・モンスーン》。

イギリス在住の藤倉さんとは曲の構想を練る段階から、スカイプを使って打ち合わせを繰り返してきました。

 

藤倉さんがあるフレーズを書き上げるとそれをテレビ電話を通じて僕が実演し、その響きを受けてまた藤倉さんが作曲して…。

そんなやり取りを重ね出来上がったこの曲には、トレモロからアルペジオ、ラスギヤード、そしてハーモニクスに至るまで、クラシックギターの様々な奏法がふんだんに盛り込まれております。

 

一つ一つの奏法は、これまでのギター作品の中で既に使い尽くされ、ある意味では“枯れ”つつあるようにも見えるそれらの技術に、藤倉さんが新しい息吹を与えてくれました。そして、それによってクラシックギターという楽器そのものの未来にも、新しい可能性をまた一つ、感じることが出来たというのが僕にとってはとても大きな収穫でした。

 

 

9月30日土曜日のギターソロコンサートでは、《チャンス・モンスーン》の他、僕自身が作曲したトレモロ曲《虹》、そしてJ.S.バッハが残した「無伴奏バイオリンの為のパルティータ第2番」より最終楽章《シャコンヌ》を原典譜を元に演奏いたします。

 

会場で皆様とお目にかかれる日を今からとても楽しみにしております。

 

村治奏一

ヘルマン・ハウザーII世

2017.09.27| 村治奏一

クラシックギタリストの村治奏一です。

 

今日はこの場をお借りして、「せんくら」でも使用する僕の楽器についてご紹介いたします。

 

ヘルマン・ハウザーII世(1959年製)

Hermann Hauser II

 

ハウザー家は、今現在は4世にあたるカトリン・ハウザーもギターの製作をしており、1882年生まれのヘルマン・ハウザーI世から100年以上続くドイツ・ギター製作の名家です。I世はかつてアンドレス・セゴビアも愛用していた時期がありました。

 

再来年に還暦を迎える僕のハウザーII世、実はせんくら公演のあと、大手術を予定しています。

施術箇所1つ目は、チューニングを司る「ペグ」。

 

オリジナルのペグ、出来ればこのまま使い続けたいところなのですが、60年前のものとあって、現代のペグに比べるとどうしても調弦の微妙な調整に難があるのです。当時と今ではペグの規格サイズが異なるため、一旦ペグを通すヘッドの穴を埋め、再び開けなおすという工程になります。

 

施術箇所2つ目「フレット」。

 

金属製のフレットも、長年弦と触れ合うことにより少しずつですが磨耗してしまいます。どれだけ調弦を正確に行っても、フレットの高さにバラつきがあれば押さえる場所によって音程が狂ってしまいますので、この度全てのフレットを新しいものに交換です。

 

施術箇所3つ目は、弦を結ぶ「駒」の穴。

 

クラシックギターの低音を司る4、5、6弦は、ナイロン繊維に、銀メッキした銅線を巻いた構造になっています。この為、弦交換の度にほんの僅かにですが、木材でできた駒の穴が擦れて、磨耗してしまうのです。15年くらい前に一度作り直していただいたのですが、そろそろ穴が再び広がってきてしまいました。

 

ハード面では色々と経年劣化が出てきた僕のハウザーII世ですが、そこから発せられる響きの面では年々、熟成が進んでおります。ハウザーII世の多くは、僕が見てきた限りでは、作りが頑丈で、その響きも”締まった”ものが多い印象なのですが、初代ハウザーが亡くなって間もない頃に作られたせいか、この楽器はI世の特徴を多く引き継いでいる気がします。すなわち非常に繊細な、華奢な作りで、しかしながら重厚な低音、高密度な中音、そして高い遠達性のある高音までどの音域をとっても隙がない印象です。

 

楽器によっては、といいますか、僕が愛用している別のとある若いギターは、楽器そのものの性格・個性が非常に強く、サウンドホールから出てくる響きと、僕が「こう弾きたい」と思うそれとに若干ズレがでるケースもあります。

 

しかしこの還暦間近のハウザーII世には僕のほぼどんな想いも、その通りに再現してくれる技量の高さと、懐の深さがあります。まだ10代だった頃からもう20年以上、この楽器を手放せずにいる理由はそこにあるのかも知れません。

 

ヘルマン・ハウザーII世の響き、どうぞお聴き逃しなく!

 

村治奏一

初めての「せんくら」

2017.09.26| 村治奏一

皆様こんにちは、クラシックギタリストの村治奏一です。

今回初めて「せんくら」に出演させていただきます。どうぞ宜しくお願いいたします。

 

僕は9月30日(土)と翌10月1日(日)の2日間で合計4公演。しかも4つとも別プログラム。非常にやりごたえがあります。

いずれの公演もベストコンディションで迎えられるよう鋭意準備しておりますので、どうぞお楽しみに!

 

ところでその4つの公演のうち2つ目、9月30日17時15分からの男性アーティスト達によるガラコンサートでは、最近色々な公演で共演をさせていただいているバンドネオンの三浦一馬さんが編曲した、《「サウンドオブミュージック」メドレー》を演奏いたします。

 

バイオリニストの西江辰郎さん、ピアニストの近藤嘉宏さんはじめ、素晴らしいアーティストの方々との滅多にない共演のチャンス。僕自身、今からとても楽しみにしています。

 


三浦一馬さんとのコンサートにて。

 

村治奏一

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