こんにちは!作曲の吉川和夫です。
「せんくら・うた劇場」は、毎年大変ご好評をいただき、おかげさまで4年目を迎えることになりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
そもそも「せんくら・うた劇場」って何なの?というところから、私の担当ブログを始めましょう。
音楽は、旋律や和音、響きの重なりの美しさを楽しむものですが、詩や文学と結びつくことによって、音楽と同時にことばの美しさや情感を味わうものもありますね。たとえば歌曲や合唱曲。それから、もっと大がかりになって、文学だけでなく美術や演劇と結びついたのが、オペラです。
私は、自分の作曲活動のひとつに合唱童話、合唱劇、合唱オペラを据えています。一般的なオペラは主役がいて脇役がいて、物語を、オーケストラや器楽とともに、個人の力で進めていきますね。オペラに登場する合唱は、村の人々や群衆、時には居酒屋の客や囚人だったりしながら、物語の幅を広げます。でも、あくまでも主役はフィガロであり、椿姫であり、ミミやヴォツェックです。
それに対して、合唱童話、合唱劇や合唱オペラでは、主役は「合唱=複数の人の声」です。役を演じるソリストが置かれたとしても、合唱は劇の背景や心情を歌い語り、物語を牽引する主役なのです。これは、古代ギリシャ劇の「コロス」の役割に近い考え方なのかなと思います。
日本では、指揮者の鈴木義孝さん率いる山形の合唱団じゃがいもや、栗山文昭さん率いる栗友会の合唱団が、合唱劇に積極的に取り組んでいます。林光さん、寺嶋陸也さん、萩京子さんといった作曲家が、合唱オペラを作曲してきました。長年にわたって、多くの宮沢賢治の作品を合唱劇として上演してきた合唱団じゃがいもは、今年第27回イーハトーブ賞を受賞しました。舞台装置や照明、衣装といった要素を簡略化することが多いのも合唱劇、合唱オペラ(そして少し規模の小さな合唱童話も含めて)の特徴です。演技も最小限に止め、あくまでも音楽とことばの力を中心に、物語をお客さまに伝えていきます。
「せんくら・うた劇場」は、このように合唱劇、音楽童話として作られた作品を、さらにコンパクトにせんくら仕様に編集して、重唱でお聴きいただくものです。小さなお子さんに、物語の「読み聞かせ」ということをしますよね。「せんくら・うた劇場」は、お子さんだけでなく大人にも向けられた「歌い聞かせ」と考えていただけると良いかなと思います。
次回は、今年とりあげる「むくどりのゆめ」という作品について、お話しましょう。

うつのみやレディースシンガース<晶>による合唱劇「手袋を買いに」
吉川和夫(せんくら・うた劇場)