しつこく楽器の話を続けて3回目、これが最終回。
僕が弾いているバンドネオンは、連れ添って今年で11年。色々な楽器を試してきたけど、やっぱり、これが一番しっくり来る気がしています。僕にとっては、「良き相棒」といったところでしょうか(まあ、時に手こずる「じゃじゃ馬」でもあるけれど…)。
バンドネオン界の世界的権威、そして、僕の敬愛する師匠でもあるネストル・マルコーニ氏から譲って頂いた楽器で、バンドネオンの最高峰ブランド、Alfred Arnold(アルフレッド・アーノルド)というメーカーのものです。バンドネオン奏者の多くが、このブランドの楽器を愛用しており、その頭文字を取って「AA(ダブル・エー、スペイン語読みだと、”ドブレ・アー”)」などと呼ばれることもあります。

楽器の至るところに「AA」の印が刻されている
「楽器は、音楽家から多くのものを引き出す力がある」と、よく言われるけれど、僕の場合に於いても「このバンドネオンと出逢わなかったら、いまの自分はない」と、きっぱり言い切ることが出来ます。それだけ、この楽器が秘めたポテンシャルは計り知れず、いつでも僕にインスピレーションを与えてくれるのです。
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(C)藤本史昭 愛すべき師匠、マルコーニ氏と。2016年6月、有楽町朝日ホールにて。

楽器の内部には、恩師直筆のサインも!
今年の春、この愛器の大修理を行うことになりました。というのも、バンドネオンの重要パーツである「蛇腹」の劣化が進み、空気漏れが顕著になってきていたからです。空気を送り込んで音を発するバンドネオンにとって、この「空気漏れ」は深刻な問題で、症状が進めば演奏にも支障を来たしかねません。楽器が製造された当時のままの、オリジナルの蛇腹ではありましたが、背に腹は変えられません、アルゼンチンへ行ったタイミングで修理をすることになりました。
修理が完了したとの知らせを受け、期待と不安の入り混じった気持ちで楽器を弾いてみると…。それはもう、楽器が新品のように生まれ変わったではありませんか!しかも、ただの新品ではなく、ボディや内装はそのままに、最新鋭のエンジンを搭載したクラシック・カーのように、歴史や栄光は失わずに保たれていたのです!!
…飛び上がらんばかりに喜んだと同時に、「この楽器は僕の愛器であるけれど、いつの日か、僕の師匠がしたのと同じように、大切に後世へと受け継いで行かなくては」と、使命感にも似た想いを抱くことになったのです。
”ドブレ・アー”、我が愛器。今後も共に!いざ、行かん!!

素晴らしい修理をしてくださった”THE・職人”のファリスさんと。
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3回に渡りお送りして参りました「せんくらブログ」、お楽しみ頂けましたでしょうか?お読みくださった皆様、どうもありがとうございました!今年の「せんくら」、僕は下記の4公演に出演いたします。今回も盛り沢山な内容ですね。乞うご期待!
【13】バンドネオンの新たな境地 三浦一馬編曲によるオール・ガーシュウィン・プログラム
【55】全てを兼ね備えた貴公子たちが集結! 仙台だけの特別なコラボが実現
【64】ギター×バンドネオン 何かが起こる熱いデュオ!
【83】Crossover 三楽士 ~戯れる音・あふれる音
さて、次回からは西本幸弘さんと村治奏一さんがブログを担当されます。こちらも、どうぞお楽しみに!
三浦一馬