我が家の3姉妹

2016.08.19| 上原彩子

ご存知の方も多いと思いますが、我が家には3人の娘がいます。

10歳、7歳、5歳。来年からは、末っ子も小学生です。

 

子育ての悩みって、子供の年齢とともに変化していきますよね。

上の子は10歳過ぎて、少しずつ大人の階段を上り始める年齢になってきました。

うちは、とにかく楽しくがモットーの家庭でしたが、これからは苦しいことを乗り越える力も必要になってくるなと思う今日この頃です。苦しいことを楽しむぐらいの余裕があれば。。。

でも、あれもこれもと、子供に期待しすぎるのは良くないですよね。持って生まれた性格もあるから、それぞれの子供を尊重しつつ、良い所を引き出していければ、と思っています。

 

偉そうなことを書いてますが、普段はご飯作って、洗濯して、宿題の丸付けして、に追われ、ガミガミ怒り続けるダメな母親です。

 

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写真は3人のランドセル。カラフルです。下の子は来年一年生ですが、もう買っちゃいました。

 

 

上原彩子(ピアノ)

 

 

仙台と言えば……

2016.08.18| 上原彩子

みなさん、こんにちは。

ピアニストの上原彩子です。

今日から3日間、どうぞよろしくお願いします。

 

さて、私にとっての仙台の思い出と言えば、やはり1995年の「第2回若い音楽家のためのチャイコフスキーコンクール」。まだ、15歳でした。

仙台駅横のホテルに滞在していたのですが、毎晩エスパルのフードコートで、「何食べよっか?」と悩んだっけ。イズミティ21の2階の喫茶店で、よくパフェを食べてたなぁ。(食べ物の話ばかりでスミマセン!)

まだ子供だったので、たくさんのボランティアの皆さんに優しくサポートしていただいて、とにかく楽しかった!という記憶ばかりです。

小さい頃の思い出って、輝いているというか、特別ですよね。

 

そして、その時の思い出の品で、私の大切な宝物が、この2つです。

 

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こけし+マトリョーシカは、コンクールの抽選の時の物。

確か、一番小さなこけしに何かマークのある人が、演奏順一番だったような。。(ちなみに、私は一番は免れました)粋な計らいですね。

 

サルのぬいぐるみは、コンクールの事務局に飾ってあったものがどうしても欲しくて、頑張って探し、同じ物を手に入れました。サルは私の一番好きな動物なんです。

なぜかって?

申年だし、ずっとピアノの先生にコザルちゃんと呼ばれていたからです。

今でも、小さなサルのぬいぐるみが、コンサート用の靴袋にお守りがわりに入っています。

 

そして、私の大好きな街、仙台で、毎年せんくらが行われ、たくさんの人々がクラシック音楽を身近に感じていらっしゃるということが、私は本当に嬉しいです。

是非、100回目指して、(その頃私は生きてないですけど)頑張って下さい!!

 

 

上原彩子(ピアノ)

3日目

2016.08.17| 助川ブラザーズ

助川ブラザーズのアレンジの秘密とは?

それを今回はお話しします。

 

そもそも「サウンドオブミュージック」というテーマに、我々兄弟は特別な思い入れはありませんでした。決定した段階でまだ映画も見ていなかったくらいです。

 

有名な曲が多いし、人気があるみたいだから、とりあえずこれに決めちゃおう、というような軽い気持ちでした。

 

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というよりもむしろ、僕個人としては「サウンドオブミュージック」という選択肢は全然ワクワクしませんでした。

あまりに安心、安全、王道のイメージが強すぎるし、よほどきちんと引き寄せないと、単にポピュラーな名曲を並べただけの安易なステージになってしまうと感じたのです。

 

とにかくまず重い腰を上げて映画本編を見ました。全く期待していなかったのですが、これが感動の嵐!今まで見なくてごめんなさい!と素直に自分の無知を反省しました。

 

そこで改めて気が付いたのは、この映画のテーマはけっこう重い、、という事です。

映画のラスト近くの部分に顕著ですが、これは戦争を扱った映画なのです。

そこからイメージが膨らんでいきました。

 

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例えば今回のプログラムのメインになる「ドレミの歌」。

まず原曲にオシャレなコードを付け足して、それをブラジルの「マルシャ」というリズムで軽快に奏でます。

 

それがやがて、我々兄弟の大好きなファンクのリズムに発展して、ノリの良いアドリブを取ったりします。

 

でも、短い空白の後で、ドレミの歌が短調(マイナー)に変換され、不穏な空気感が漂よい始めます。

 

その緊迫した空気から一気に弟のコントラバスソロによるレクイエムに突入します。

重くて悲しい響きのバックで、私のギターがヘリコプターのプロペラのような音と爆撃音を出します。カオスです。

 

そのカオスが去った後、ギターのハーモニクスでドレミの歌の断片が奏でられます。

「僕、死んじゃったの?」そんな天国的な時間です、、、。

 

(3日目)フランダース

 

とその後にパットメセニー風コードストロークに乗って元気に出てくるのは、みんなの知ってる明るく楽しい「ドレミの歌」です。やっと戻ってきました!

 

 

、、、、、というようなわけで、そのような組曲風の展開になるまでには、何度も2人で音を出し、即興し、それを楽譜に起こし、追加と削除を繰り返しながら全体のバランスを整えてきたのでした。

長く時間のかかある作業でしたが、それだけに非常に面白いものになったと思っています。

 

全ての曲にそこまで手を入れたわけではありませんが、皆さんが良く知っている名曲がよりカッコ良く、心に響く仕上がりになっている事を願って、本番の日まで準備したいと思っています。

 

9月30日(金)13時半から、日立システムズホール仙台のパフォーマンス広場にて、お待ちしております!

 

 

助川ブラザーズ 助川太郎

3日目

2016.08.17| 井野邉大輔

降りたった空港に見慣れぬ機体が! 中国航空公司でもないし . . . そうか!

その機体を見てふと思いたち、乗り継ぎ空港でこれを書いております。

 

かつて、教え子が仙台にある東北大学に通っていました。その後、彼は自身の夢を叶えるため大学を中退し航空大学校へ。JTA ( 日本トランスオーシャン航空 ) 操縦士を経て、現在はスターフライヤーの機長となりエアバス A320型機を駆って全国を飛びまわっています。

彼もまた、私同様ヴィオラの魅力に取り憑かれた一人で、ヴァイオリンから転向し今はフライト先にヴィオラを連れていき空き時間に練習するほどです。( 機長のヴィオラを収納できるスペースがあるということですね ☆ それともキャビンではなく、荷物室に?? )

最近では所属するオーケストラの副指揮者をやっているらしく、つい先日も『ブラームスの Symphony  No.2 を勉強中です』と楽しげに語っていました ♪

 

作曲家がこの世に遺してくれた音楽にアプローチする手段として、私達が選んだ《ヴィオラ》は人間の声に最も近い楽器とも云われ、室内楽やオーケストラの中では弦楽器5声部の常に中心にいます。

作曲家がハーモニーを制御しテンポをコントロールする役割をヴィオラにとりわけ多く与えているのは、上声部と下声部を客観的な聴き方で見渡せる位置にいる楽器だということを認識していたのでしょう。

 

また一方で、ヴィオラはヴァイオリンと比べて共鳴する箱が大きく、音を出す前に頭でしっかりと考えを整理したうえ身体を意識的にコントロールする術 ( すべ )を必要とします。音が表情を纏って楽器の箱を鳴らすまでに時間を要する為、特にオーケストラではほかのセクションより常に一歩先んじて、音楽を創っていくことが重要になります。

 

 

サッカーに例えるなら攻撃陣と守備陣の間に位置する司令塔、ミッドフィールダー的存在 ( ボランチ?? )  。

今後とも尚いっそうヴィオラの活躍にご注目ください !!

 

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《 JTA の前身、南西航空の塗装を施した復刻塗装機 》

 

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井野邉大輔(ヴィオラ)

2日目

2016.08.16| 助川ブラザーズ

せんくらファンの皆さま、こんにちは!

【助川ブラザーズ】の兄の助川太郎です。

 

今年のせんくらのステージでは、選曲のテーマを「サウンドオブミュージック」に絞り、

皆さんご存知の名曲の数々を助川ブラザーズ風の味付けで楽しんで頂こうと思っています。

 

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でも、助川ブラザーズ風の味付けって一体何でしょう?

それは2人に共通する音楽の原体験にあると思います。

 

前回の弟のブログにはあるように、我々兄弟はほぼ同時期に楽器を始め、同じような音楽を聞き、同じように感動して育ちました。

それはちょうど、私の高校3年間、弟の中学3年間に当たります。

 

その後、私はジャズ、弟はクラシックと進む道が分かれ、プロとして共演するまでに20年の歳月が流れる事になるのですが、

その間も顔を合わせれば好きな音楽の話をしたり、その音楽を流しながら一緒にノッたり(笑)。

そういう関係は変わりませんでした。

 

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今年は比較的早い段階からプログラムのテーマを「サウンドオブミュージック」に定め、そのためのアレンジ作業に取り組んで来ましたが、その時に必ず立ち返るのが2人の好きな音楽のエッセンスを如何に注入するか、でした。

 

アレンジをしなくても、名曲の数々はそのままで成立してしまいます。

でも、ギターとコントラバスだけでそれを演奏しても、何か寂しい、、、。

もう一味欲しい、、、。そんな心の違和感を丁寧に掬い上げ、しっくりと来るアレンジを見つけるまでのプロセスは本当に壮絶の一言でした。

 

次回はそんなアレンジの秘密に迫ります。

 

 

助川ブラザーズ 助川太郎

2日目

2016.08.16| 井野邉大輔

東北自動車道を村田ジャンクションから山形方面へ折れ、走ること約20分。

山形蔵王インターチェンジを出ると、車は右に山形県庁を見ながら山形市街へと何処までも緩やかな下り坂を下りていきます。

 

今日は、山形交響楽団メンバーとの室内楽リハーサル。仙台在任2年と少しですが、お隣山形とのご縁が最近増えてきました。

山形といえば、県南部から酒田へと注ぐ最上川、さくらんぼ、銀山温泉、初代仙台藩主  伊達政宗公生誕の地であり、直江兼続が上杉家執政として手腕を発揮した米沢 . . 中でも格別の美味しさを誇る蕎麦は最高です! 島根県松江市のお気に入りの出雲そば屋でも、先日訪れた際は山形県産の蕎麦粉が使われていました。

 

地域によって趣きが異なるようですが、県北部の最上川河畔のお店にふらっと立ち寄った時に常連さんらしき人たちがこぞって注文していた『カイモチ』という食べ物は、強烈なインパクトがあったので今でも忘れることができません。遠目に見ただけですがひと言で表現すると、蒸す前のくず餅みたいな蕎麦がき、のような。

新聞を読みながらこちらを納豆や漬け物をアテにかき込んだ常連さん達はさっと店を後にしていくのでした。

 

こんな粋な食べ方はまだ修行が足りない‼︎ ので出来ないですが、とりあえず今日はリハーサル終わり次第、蕎麦屋直行です ♪

 

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《 霞城 ( 山形城跡 ) 近くのお蕎麦屋 》

 

 

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井野邉大輔(ヴィオラ)

1日目

2016.08.15| 井野邉大輔

せんくらリレーブログをお読みの皆さま、初めまして。

ヴィオラ  井野邉 です。

本日より私が担当の3日間、どうぞよろしくお願いいたします ☆

 

せんくら開催まであとひと月半ですが、このタイミングで弓の毛替えにいってきました。

私は3~3カ月半に一度のペースで、毛替えをお願いしています。使っていると「そろそろ替える時期かな‥」と分かるものですが、最近はいつ毛替えをしたのかメモをとります。忘れないようにする為となるべく限界まで使う為に。

と云うのも、馬の尻尾がここ半年くらい手に入りづらい様なのです。馬もこのところの天候不順や温暖化で生態の変化が!? あるかどうかは分かりませんが f^_^;

 

私が弓の毛替えはもちろん、楽器のメンテナンスをお願いする楽器屋の親方とのおつき合いは、そうですね、もうかれこれ25年・・    NHK交響楽団に入団してまだ間もない頃、同じヴィオラセクションの先輩に連れていってもらったことがきっかけでした。

以来、季節の変わり目の楽器の調整 ( 夏仕様、冬仕様あります☆ ) 、毛替えのみならず、時間が余った際にはお茶だけ飲みに行ったり、果ては人生相談!に至るまでお世話になっています。

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今回新しく張ってもらったのは、モンゴル産種馬の黒毛。白馬の毛の中に混じる色のついたモノ。私達の髪の毛に生える白髪と同じ、とでも云いましょうか。白い毛より脂気が多いので、一度台所用洗剤で洗いをかけている様です。これから秋のシーズンにかけて、ソロ、室内楽、オーケストラとフル稼動するための最強仕様にセットアップしました。オールラウンダーな仕様の中にも繊細な表情を描けるこのお気に入りの毛替えで、今秋、疾走します!

 

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新宿御苑にほど近い親方の工房

 

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井野邉大輔(ヴィオラ)

1日目

2016.08.15| 助川ブラザーズ

せんくらファンの皆さんこんにちは!
【助川ブラザーズ】弟の助川龍です。

昨年に引き続きせんくらに出演させて頂ける事とても嬉しく思って います。

 

助川ブラザーズとは…

兄でギタリストの太郎と弟でコントラバス奏者の龍による兄弟ユニ ットです。

 

クラシック×ブラジル音楽=…

クラシックの名曲にブラジルのリズムや温度を加えたり、 また南米の歌をコントラバスの生音を活かして歌ったり、 といった感じでしょうか。

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主に兄はブラジル音楽、 私はオーケストラというフィールドにいますが、 もともと二人ともロック少年でした。

何せ生まれて初めてのコンサートが、ディープ・パープル@ 日本武道館!

 

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そしてロックからジャズが好きになり初めてコントラバスを手にし た記念日に行ったコンサートが、ブレッカーブラザーズ@ 原宿クエストホール!

 

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こんなに雷に打たれたようなコンサートってあんまりないです⚡

終演後しばらく椅子から立ち上がれなかったなぁ。

ユニット名の助川ブラザーズはこのブレッカーブラザーズにあやか って付けました。

 

ちなみに初めて行ったクラシックのコンサートは当時ショパンコン クールを獲って一躍有名になったスタニスラフ・ ブーニンのピアノリサイタル@サントリーホールでした。

何となく名前聞いた事あったし唯一知っていたピアノ曲、 ベートーヴェン”の悲愴”が入っていたので行ったのですが…

当日曲目変更で”悲愴”➡”熱情”に‼

なんだよ!?熱情って何???

チンプンカンプンの2時間でしたがアンコールに悲愴の2楽章を弾 いてくれてご満悦で帰ったのでした。

 

知ってる曲があると嬉しいですよね♪

また食べたくなる。

でも、知らない曲、どんな味かな? って食べてみるのも楽しいです!

 

今では沢山の曲をむしゃむしゃ食べて世界中の素晴らしい料理を知 る事が出来ましたが、少しだけ味付けを変えてみたいな、 と思う事もあります。(失敗して不味くなる事も(-_-;)。。 。)

 

助川ブラザーズの味付け、食べて頂けると嬉しいです!

 

何か1つでも心に残る、そんなコンサートを創れたら… と思い活動しています。

クラシックファンの方もロック少年も是非コンサートにお越し下さいね!

 

 

助川ブラザーズ 助川龍

この世は物語だし、音楽でもある

2016.08.14| 森下唯

こんにちは。今日は「物語る音楽たち」とあわせて、「物語」について。
物語ってなんだろう、と考え始めるとややこしい。物語性というのは本や映画やゲームやその他、何にでも現れる。どこから現れるんだろうか?

言葉の中から、という答えを思いつくけれど、実はそうでもなさそうです。なにしろ音楽にだって現れる。

 

小学生だった頃に道端で見たポスターのことがなぜだか妙に記憶に残っています。

確かピアノの先生のところに向かう道すがら、赤信号で自転車のブレーキをかけたときでした。停止位置のすぐ横に貼ってあったのポスターに、私は何気なく目を留めました。それは交通安全運動のポスターでした。横倒しになったママチャリと、その籠から飛び出た野菜や牛乳なんかがアスファルトに散乱する様が写った写真に、「悲しみを増やさないために」みたいな標語が書かれているというもの。

転がっていた野菜は、カレーの材料だったような気がします。それを見た瞬間、やたら泣けてきたんですね。いろいろと想像してしまって。「今日の晩ごはん何がいい?」「カレー!!」みたいな会話から、喜ぶ顔を思い描きつつ野菜を選ぶ姿、鼻歌まじりに自転車をこぐ帰り道、――そして事故のしらせを受けた家族の衝撃まで、ありありと浮かんできました。

な、なんて悲しいんだ! その当時の私が、そんな自分のちょろさを自覚できていたかどうか……ともあれ自分にとっての物語がいかに自動的なものかを思い知る機会になったのでした。

 

瞬間を切り取ったにすぎない写真一枚をもとにして頭の中に物語が立ち上がってしまうというのは、人間の脳を優秀というべきかポンコツというべきか、業のようなものを感じさせる出来事です。何かと何かのあいだについつい関係性を見出してしまう人間の性質から、勝手に生まれてくるものが物語なんでしょうね。何かと何かが似ているとか、何かのせいで何かが起こったとか、そんなふうに周りの環境を分析して理解し、生き延びるために発達した人間の能力の産物だか副産物。

だとすると、もう人として生きていること自体があらゆるものに物語を見出す行為なので、そこからは逃れられないのかもしれません。

 

音楽の場合、こっちに出ていたひとつの主題があっちにも顔を出した、とか、帰ってきたときはこう変化してた、とか、音楽をまとめている構造そのものが、簡単に物語として見出されてしまうんですね。

音楽を物語的に扱うのは音楽としては不純では、とか思ってみたりはするんですが、どちらにせよ逃れられないなら物語性も音楽の持つ姿のひとつと捉えて楽しんでしまおう、というのが自分のスタンスです。

すべての源泉は人間の想像力。想像力バンザイ!

 

そうそう、いま映画『シン・ゴジラ』が話題ですが(めちゃくちゃ面白いよ)、こちらの総監督である庵野秀明さんの監督としての初期のマスターピースが『トップをねらえ!(GUNBUSTER)』というアニメです。芸大の大先輩でもある田中公平さんの音楽も最高で、プログラムにある『ガンバスター幻想曲』はこの劇伴をもとに再構成し、クラシック的な強度を持った作品を目指したものです。

 

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ガンバスターは星々の世界のお話

 

 

『トップをねらえ!』、バリバリのSFなので万人向けではないのかもしれませんが、みなぎる想像力と熱は『シン・ゴジラ』に勝るとも劣らないものなので、気になった方はぜひご覧になって、涙と叫び声を迸らせながらせんくらの拙公演に足を運んでいただけたら嬉しいなあと思います。

ではではまた、公演でお目にかかりましょう!

 

 

 

 

森下唯(ピアノ)

クラシックはかなり特殊かも

2016.08.13| 森下唯

3公演のうちひとつは、岡田鉄平さんとのデュオ。

 

岡田さんと森下には共通点がありまして、ふたりともスタジオレコーディングの仕事を多くやってきているんですね。スタジオ仕事の多くは、できたての楽譜をほぼ初見で演奏することになります。そして音源が完成してしまえば、その楽譜はもう二度と誰にも演奏されないことがほとんど。

かたやクラシックは何ヶ月、何年といった期間で準備をするのが当たり前で、いろいろな演奏家によって繰り返し取り上げられるのですから、ずいぶん違う世界です。

 

でも考えてみたら、たとえばバッハは毎週の礼拝用にどんどんカンタータを書いて、人々は毎回これきりと思いつつそのできたてを歌ったのだし、モーツァルトだってシューベルトだって仲間たちとほやほやの譜面で合奏していたわけです。同じ曲を長いあいだ練習しないと演し物にならない現在の「クラシック」の方がよほど特別な存在、ということかも。そうやって、ひとつの曲、いちどの演奏に人生のすべてが表れてるような瞬間が生まれ得るのが、クラシックのいちばんの醍醐味ではあるまいか、と私は思っています。

対してスタジオ仕事の醍醐味は、というと、たくさんの人に自分の弾いた音を聴いてもらえるところでしょうか。それも知らず知らずのうちに。記憶に残るあのワンシーンのバックで流れている音楽は、実は自分の演奏だぞ、なんてのは密かな楽しみになります。

ふふふ、誰も気づいてないだろうけどその感動の何%かは私の演奏の影響かもしれんのだぞ、なんてね。

 

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ピアノブースから見るスタジオ風景

 

 

映像作品の付随音楽はたいてい、1曲いっきょくはとても短く作られます。でも再構成・編曲などをしたら十分「クラシック」的なアプローチを受け止める強度を持つような素敵な作品もたくさんあると感じます。

一度きりの録音で忘れられてしまうのはもったいない!

最近は劇伴音楽の演奏会などが増えていますけど、基本的には繰り返し聴くので耳に残りやすい「ゲーム音楽」に限定の感もあり。それも当然ながらゲーム自体の人気が高くないといけないし……。

 

でも、生の演奏会が受け入れられるようになったというのはとても素敵なことだと思うのです。クラシックの楽しみ方って、ひとつの音楽をいろいろな演奏・解釈で聴く中で、その違いに味わいを見つけることでもある。サントラの原曲そのものだけじゃなくて、その編曲・生演奏を楽しむのは、同じく音楽自体の味わいを新たに見つけることにつながりますからね。

本当に素敵な音楽は、いつか作品全体とはある程度切り離されて、クラシック的に繰り返し聴かれるものになるかもしれません!

そうなったとき、「サントラ原曲の演奏もなかなか良いね」と言われるくらいの演奏ができるように頑張ろうと思います。

 

 

森下唯(ピアノ)

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