せんくらブログをごらんのみなさん、グリュース・ゴット。
カウンターテナー藤木大地のラスト・デイです。さみしいですかー?
きょうは、兵庫県立芸術文化センターからお届けします。
文章を書くことが好きなわたくしは、なにをかくそう2009年くらいからブログをやっておりまして、まぁまぁ熱心に更新していたのだけれど、2015年くらいになんかサーバーのなんとかで更新ができなくなりまして、そのブログはインターネットの大海原にそのまま取り残されている状態であります。
なので、ブログを書くのは久しぶりです。あぁ、たのしい。
ありがとう、仙台クラシックフェスティバル、略してせんくら。
最終日は、わたくしの最近の演奏活動についてご紹介させていただこうと思います。
7月は、ずっと兵庫県におりました。冒頭の兵庫県立芸術文化センターで、佐渡裕さんのプロデュースオペラ、ベンジャミン・ブリテンの「夏の夜の夢」にオベロン役で主演しました。
オペラ公演は時間的にも長旅で、東京で3週間、兵庫で3週間のリハーサル、そして公演期間が10日間。事前音楽リハーサルの期間を入れたら、1年間のうち、3か月ほどをこの公演に捧げました。
兵庫のホテルにはなんと31泊!仲間やスタッフのみなさんに恵まれ、本当に充実した時間を過ごしました。
そんな兵庫県とのご縁はこれからも続き、9月からは神戸新聞「随想」欄に3か月ほどエッセイを連載します。(みてね)
8月には、東京のHakuju Hallで「Hakuju ギター・フェスタ」に出演しました。荘村清志さん、福田進一さん(せんくらでもおなじみですね!)という、ギターの巨匠おふたりが親しかった武満徹さんの歌曲での共演は、本当に本当に得難い経験となりました。
「この曲はなー、黒澤明さんの映画の音楽を武満さんが担当したときにできた曲なんやでー、武満さんは飲み会でこう言っててなー」という、雲の上の上の宇宙の上くらいのエピソードの数々、なんぼはろても買えませんから!
武満徹さんの魂の宿った歌曲は本当に大好きで、またいつでもどこでもうたいたい。(よんでね)
2008年に留学をして、それからも海外での演奏活動の拠点としているウィーンでは、2017年4月に念願のウィーン国立歌劇場にデビューをすることになっています。
演目は、現代に生きる作曲家アリベルト・ライマンの「メデア」。2010年にウィーン国立歌劇場がライマン氏に委嘱初演した作品で、生まれてたった6、7年の新しいオペラです。そのオペラが初演され、音楽史とともにあり続ける世界のオペラの殿堂で演じる。こんな光栄なことがあるのか!と武者震いします。
そのほか、2016年から2017年にかけては、東京での「第九」、福岡での「メサイア」、名古屋、福島、東京、大阪、京都でのリサイタルやコンサートやオペラ、または放送での演奏など、けっこうあちこちに登場します。
もしみなさんのお近くに伺うことがあれば、ぜひ聴きにきてくださいね。(きてね)
わたくしの音楽活動に関する発信はオフィシャルフェイスブック(www.facebook.com/daichifujikiofficial/)でやっていますので、よろしかったら「いいね!」してフォローしてみてください。(いいね)
「聴衆なしには、われわれは何者でもない」
ドイツの演出家、ユルゲン・フリムの言葉です。
それぞれが信じて追い求める芸術があったとして、それをみなさんに聴いていただいてこそ、われわれは演奏家であることができます。ですので、せっかくの機会にいろいろなご案内をさせていただきました。
さぁ、素晴らしい共演者と素晴らしいプログラムでお送りするせんくら!
10月1日13:15「歌ガラ」 with 加藤昌則さん and 歌手のみなさん!
10月2日16:00「詩人の恋」with 鈴木優人さん!
10月2日19:45「第九」with 高関健さん、仙台フィルandせんくら合唱団!
たのしみです!
では、仙台でお会いしましょう!(またね)
せんくらブログをごらんのみなさん、ボンジョルノ。
カウンターテナー藤木大地のセカンド・デイです。
きょうは、京都・清水の舞台からお届けします。
きのうからブログを担当しているこのフジキダイチはどうやらカウンターテナーらしいが、そもそも「カウンターテナー」ってなんなんだ?カウンターパンチかカウンターテーブルの仲間なのか?とお思いのみなさんが、38パーセントくらいはいらっしゃるのではないでしょうか?
お答えしましょう。
「裏声でうたをうたう男性歌手。」
これがカウンターテナーです。
きっと名だたる文献や専門家による研究レポートにはもっとアカデミックで厳密で詳しいことが書いてあるでしょう。歴史的・学術的・医学的な話は、そういう本や研究にお任せしたいと思います。ウィキペディア先生やグーグル先生たちも、論文に使える精度の情報でなくとも、なにかヒントをくれるかもしれません。
でもね、そのカウンターテナーを職業にしているわたくしは、難しく考えず、さっきのようにシンプルに定義したい。そして、カウンターテナーの声は決して「特別で特殊で貴重で稀有な声」ではないのです。
カウンターテナー、それは奇跡の声!
カウンターテナー、世界に10人くらいしかいない貴重な声!
カウンターテナー、日本には何人かしかいない珍しい存在!
カウンターテナー、男性の喉で出す特殊な女性の声!
カウンターテナー、あぁ、いとしのカウンターテナー!(←ありがとう)
これ、世間で割とみかける、スタンダードなカウンターテナーの説明文です。
声を大にして言いたい。
ごめんなさい、だいたい違います。
少なくともわたくしがやっていることは、特殊なことではありません。
自分の声帯という楽器を使って、自分の音楽を表現する。
これが声楽。ていうか、うた。
わたくしの場合、みんなが持っている「裏声」を自分の楽器として使っているだけなのです。声楽です。うたです。みんなと一緒です。
たしかに、カウンターテナーは古い音楽を歌うひとだ、という認識もあるでしょう。ソプラノやテノールに比べたら人口が少ないのも間違いないでしょう。音域的には、アルトや、場合によってはソプラノのパートをうたうから、女性の声、というイメージもあるかもしれません。せんくらでは「第九」のアルトソロパートを担当します。
過去にはたとえば、フォーレの「レクイエム」のソプラノソロパートを歌ったこともあります。
でもね、男の声帯を使った、正真正銘、男の声なんだな。
奇跡でもなんでもない、訓練された声です。声楽家はみんな訓練しています。その結果すこしずつ磨かれる声だし、技術だし、演奏なのです。
ひとにもよるけれど、わたくしはルネサンスやバロック以外の時代の音楽をむしろたくさんうたうし(せんくらではシューマンの「詩人の恋」!)、海外にも日本にも、カウンターテナーはどんどん増えてきていますよ。
時代は2016年、もう貴重とも稀少とも言えないと思います。
そんなわたくしの裏声と地声を確かめたい方は、コンサート会場でわたくしのうたと、貴重なトークをきいてくださいね。フツーの声です。
さて、きょうのブログで何回「カウンターテナー」と書いたでしょう??
裏声でうたをうたう男性歌手。
いとしのカウンターテナー、藤木大地がお届けいたしました。
藤木大地(カウンターテナー)
せんくらブログをごらんのみなさん、こんにちは。
カウンターテナーの藤木大地(初)です。
きょうは、ウィーンのオペラ座の窓からお届けします。
18歳のころ、鈍行列車に乗って仙台をはじめて訪れました。
大学進学で上京したてだった、ネイティブ宮崎ボーイのわたくし(18)は、時間だけはたっぷりあったので、「青春18きっぷ」を買って上野発の始発列車で仙台を目指しました。
何回も乗り換えをして昼過ぎに着いた、生まれてはじめて訪れる東北の都市・仙台。仙台出身の同級生に、当時120文字くらいがマックスだったケータイのメールで牛タンのオススメのお店をきいて、街にランチに繰り出しました。
それまで、ちょっと薄めの牛タンしか知らなかったわたくしは、なんともぶあつい肉の塊と、透き通るテールスープと、麦トロロごはんによって、大人の階段をひとつのぼったのでした。
牛タンを食べただけの日帰り仙台旅行。帰りは、鈍行の長旅に心が折れて、特急で笹かまを食べながら東京に帰りました。
ところで出身地をきかれて「ミヤザキです!」と答えると、「あ〜東北の!」と言われる確率が、かつてはときどきありました。そんな歴史も、わたくしにミヤギへの親近感を与え続けています。
刻は移り、その宮崎人の宮城との物語は、ことしの「せんくら」初登場によって第2幕に突入するのであります。年齢だけはまーまーな大人になったわたくし(36)は、往路から新幹線で目指せるようです。(わーい)
せんくら初登場の今回は、「詩人の恋」、「歌ガラ(で「フィガロの結婚」のケルビーノなどを担当)」、「第九(でアルトを担当)」、の3公演でお目にかかります。
カウンターテナーが「詩人の恋」を演るのは、もしかしたら日本でははじめてかもしれません。
大好きなテノール歌手のフリッツ・ヴンダーリッヒがこの世を去ったのが、36歳のとき。彼の遺した、音楽界の宝のような「詩人の恋」の録音に触れて、CDがすり減るほど聴いていたのは、奇しくも仙台をはじめて訪れた18歳のときでした。
わたくしにとっては、どれだけ追いかけても届かない憧れの歌手のひとりだけれど、彼が亡くなった年齢についに達した今年のうちに、「詩人の恋」に向き合ってみたかった。
各地での共演を重ねて、最近は「盟友」とも書いてもらえるようになった鈴木優人さんとのデュオで、18年ぶりの仙台で聴いていただけるのがうれしいです。
美しい10月に、杜の都でお会いしましょう。
ブログはあしたに続きます。