皆様、こんにちは。
松坂優希です。
先週末、仙台にてピアノフォーラムという音楽祭が開かれ、受講してきました。
オリヴィエ・ガルドン先生、菅野潤先生、ヨハン・シュミット先生、庄司美知子先生……と国内外で活躍する4人のピアニストの方々からそれぞれ素晴らしい講義を受けることが出来、また常に豊かな音楽溢れる環境に身を置く事で、非常に充実した4日間を過ごすことができました。
指先や腕の使い方を工夫し使い分けることで音色に幅を持たせる方法や、細かなペダリングの技術。また、表現方法によってより適切な指遣いを使用する重要性についてなど、一人で練習していると見落としがちな問題点に気づくことができ、目から鱗の発見の連続でした。
改めて、大人になってからも常に刺激を受け、自分の演奏を客観的に捉えることの必要性、そして、学びの姿勢を持ち続けることの大切さを実感しました。
せんくら本番まで、いよいよ残り1週間。
注目の公演が目白押しですが、私が出演させていただく「宮沢賢治の聴いたクラシック」も、音楽ファンの方にも文学ファンの方にもお楽しみいただける、大変興味深い内容になっているかと思います。
神田将さんの素晴らしいエレクトーンと萩谷さんのお話も見逃せません。
ちなみに余談ですが。
萩谷「ゆきこ」さんも神田「ゆき」さんも私(松坂「ゆき」)も、名前にみんな「ゆき」が!偶然の一致にびっくり!
台風のシーズンではありますが、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、ユキトリオで頑張りたいと思います。
松坂優希
皆様、こんにちは。
松坂優希です。
10月5日に行われる「宮沢賢治の聴いたクラシック」。
今回私は、ナビゲーターの萩谷由喜子さんからのリクエストで、ベートーヴェンの月光ソナタより第1楽章、シューマンの子供の情景よりトロイメライ、そしてリストのパガニーニによる大練習曲よりラ・カンパネラを演奏させていただきます。
私は、2002年から2006年まで、オランダのロッテルダム音楽院に留学していたのですが、リストのエチュードというと、師事していた恩師、アキレス・デッレヴィーネ先生から聞いた逸話をいつも思い出します。
アキレス先生は南米のご出身で、かの有名なピアニスト、クラウディオ・アラウの元でピアノを学ばれた方です。
アラウはベートーヴェンなどのドイツ音楽を得意とするイメージの強い演奏家ですが、自身がリストの高弟であるクラウゼに師事していたこともあり、リストの演奏においてもまた、一筋縄ではいかぬこだわりを持ったスペシャリストでした。
さてさて、時は遡り1960年代。
初めてアラウの家の門を叩いた若き10代のアキレス先生は、レッスン室に通され、まずリストの超絶技巧練習曲を弾くよう言われたそうです。
緊張しつつも1曲を無事に弾き終え、アラウの顔を伺うも、無言。
違うエチュードをもう1曲弾くも、まだアラウは黙ったまま。
仕方なくそのまま数曲弾いていると、おもむろにアラウが立ち上がりピアノの前に腰掛けると、エチュード全曲をさーっと一息に、あたかも息をしているかのように自然に、それでいて信じがたいほどに素晴らしい指さばきと音色でもって弾き切ったんだそうです。
「つまりね」にっこり笑うアキレス先生。
「彼にとっては、12曲全て通したものが、ひとつの作品としての”超絶技巧練習曲”だったんだよ」
はぁーっと感嘆の息を漏らした私に次の瞬間、予期せぬ一言が。
「じゃあ、ユキの次の宿題はエチュードにしようかな。まずはショパンね」
「ええと……どれをやったらいいでしょうか?」
嫌な予感が胸をよぎる私に、にやりと楽しそうな先生。
「どちらでもいいよ。op.10でもop.25でも、好きな方全曲で!」
(ショパンのエチュードは、op.10とop.25に、それぞれ12曲ずつおさめられていて、通常は1~2曲ずつ抜粋して順に勉強します)
留学一年目の秋。忘れられない思い出です。
松坂優希
皆様、はじめまして。
ピアノの松坂優希です。
この度、初めてせんくらに出演させていただくことになりました。
なんとも豪華な顔ぶれの中恐縮しつつも、こうして素晴らしい音楽の祭典に参加させていただけることを、大変嬉しく光栄に思っています。
今回私が出演させていただくのは10月5日に楽楽楽ホールにて行われる、「宮沢賢治が聴いたクラシック」という公演です。
私は幼少時代、ピアノを弾くのと同じくらい、本を読むことが好きでした。
宮沢賢治も大好きな作家のひとりで、注文の多い料理店やセロ弾きのゴーシュ、猫の事務所やよだかの星……などなどお気に入りの物語は特に、何度も何度も読み返しては、独特のユーモアが随所に光る幻想的な世界観にどっぷり酔いしれたものでした。
文字はなくとも、五線譜の中にもまた、様々な物語が限りなく広がっています。それはたとえば異国の情景であったり、軽やかに飛び回る鳥の描写であったり、はたまた悲嘆や歓喜といった感情であったり。
まだ経験したことのない未知なる世界に遭遇し、それをいざ音で表現してみようとなった時、幼い私の知識と想像力を補い、扉の中へいざなってくれたのは、いつでも「本」であり「文学」でした。
大人になってからも、曲の解釈の上で、また人間としての思想の上でも、文学から得る刺激やインスピレーションが私の音楽人生に与えた影響は計り知れません。
そんな私にとって、尊敬する作家のひとりである宮沢賢治が実はクラシック音楽を愛聴し、それを創作の糧としていたというのは、なんとも感慨深いことなのです。
さて、明日はコンサートにて実際に演奏させていただく作品について、留学中の小話などもまじえながらご紹介したいと思います。
是非、お読み頂けたら幸いです!
松坂優希