今回も全国から多くのメディアの方が来場されました。皆さんが、出演者のがんばり、ボランティアの温かさ、聴衆の雰囲気の良さなどを挙げ、他に例を見ない独自のフェスティバルに成長してきているとの高い評価をいただきました。
なかでも印象深かったのは、コンクール、仙台フィル、「せんくら」との間に有機的な連携が生まれ、音楽都市を創り上げる運動体が成立しているのではないか、というご指摘です。確かに、コンクール入賞者や仙台フィルをはじめとする地元ゆかりの演奏家が、せんくらの大きな柱となっていることは注目すべき事実です。コンクール入賞者3人合わせて7つのコンサート、仙台フィルはソロや室内楽も含めて12のコンサート、いずれのチケットも売り出し早々完売するというたいへんな人気です。そして津田さんはハードスケジュールにもかかわらず、体調を崩した及川さんに代わって、仙台フィルとの演奏を成功させ、せんくらのピンチを救ってくださいました。一方市民は、せんくらの度にコンクール入賞者の成長に驚き、喜び、そしてさらに入賞者が出演する仙台フィルの演奏会に駆けつけます。入賞者にとって仙台はまさに“ふるさと”なのです。
入場料から演奏時間まで、あらゆる形でバリアーを低くするせんくらのシステムは、市民と音楽との出会いにとどまらず、演奏家と市民の出会い、演奏家とまちとの出会いをも生み出しているのです。
つまりコンクール、仙台フィル、せんくらがひとつの大きな流れとなって、楽都への歩みを進めているというわけです。
さらには、地下鉄をはじめさまざまな街角が音楽の場となり、初の試みであった食のコラボレーションも好評でした。音楽と都市と市民との関係の一段の深まりを改めて実感した次第です。
大澤隆夫(運営委員長・仙台市市民文化事業団副理事長)