昨日は生まれ故郷の広島のことを書きました。
僕は2006年に仙台フィルの指揮者になりました。もう早いもので5年目のシーズンを迎えました。「第二の故郷」と言ったら言い過ぎでしょうか。
ホテル住まいではありますが、生来の喰いしん坊なので、ひょっとしたら仙台の地元の人より美味しい店には詳しいかも知れません。
仙台は本当に美味しい食材に恵まれていると思います。
海の幸!
僕の友人たちは仙台の話をすると必ず「牛タン、美味しいんでしょ。」と来る。
僕はいつも半ばうんざりしながらこう答えます。
「もちろん美味しいけれど、それは広島の人に向かって『お好み焼き』や『もみじ饅頭』のことだけを話題にするのと一緒だよ。」
友人たちは、一様に納得してくれます。
広島だって瀬戸内の海の幸に恵まれ、県の東北に位置する西条では美味しいお酒が醸されているのです。
昨夜も訪れましたが、「流川(ながれかわ)」という一大歓楽街があり、美味しい食べ物やお酒や、もしかしたら美しい女性と一緒にお酒を飲むなんてことを求めて多くの人たちが集まっています。
あれっ!
仙台と広島、似てませんか。
内海と外海の違いこそあれ、海の幸に恵まれ、おまけに「牡蠣」が名産。
美味しい県内産の日本酒も数知れず。
かたや中国・四国地方の中心地、仙台は東北6県の中心、
プロの野球チームやサッカーチームもあり、そして
プロのオーケストラがある!
実はこれが言いたかった!
日本にはプロのオーケストラがいくつあるかご存知ですか。
30を少し超えるくらいです。
これを多いと取るか少ないと取るかは議論の分かれるところではありますが、
首都圏に13のオーケストラがあることを考えると、地方都市でオーケストラ活動を支えている街はそう多くないということなのです。
ここまでは共通点ですが、仙台にあって広島にないもの。
もうお分かりですね。
せんくら
です。
100を超えるコンサートをリーズナブルな値段で楽しめ、1日にいくつも「はしご」することが可能。
仙台フィルも毎年出演しています。
今年はショパン・イヤー。仙台が世界に誇る『国際コンクール』の覇者たちによるショパンのコンチェルト、地元宮城県出身のソリストによるコンチェルト、そして僕と仙台フィルが集中して取り組んでいる『ドイツロマン派』の名曲選、もちろん恒例の「第九」も素敵なソリストと、仙台市民の有志からなる合唱団の演奏を存分にお楽しみください。
さあ、今日は広島交響楽団の2日目のリハーサル、明日の本番に向けてテンションを上げていきたいと思います。
行ってきます!
山下一史(指揮)
昨日から広島に来ています。
実は僕は広島生まれで、中学3年の時に東京に出るまでここ広島で過ごしました。
上京した後も、両親をはじめ親戚のほとんどが広島に居たこともあって、年に何回かは必ず広島に「帰って」いました。
しかし大学卒業後ドイツに留学して、その後日本に戻ってからも東京に居を構えたこともあって、広島に「戻って」住むということはありませんでした。
広島には広島交響楽団という素晴らしいオーケストラがあり、幼少のころから親に連れられて聴きにいっていました。
その当時から指揮者に憧れていた僕は、その当時の常任指揮者でいらした井上一清先生や事務局に手紙を書いたりする、ちょっと大胆な子供でした。
ドイツ留学から戻ってすぐに、新人演奏会の指揮をさせていただいたのがもう20年以上前のことになります。それからは「仕事」で帰ってくるようになりました。
「生まれ故郷」っていいなと、最近つくづく思います。
街も人も少しずつ変化しているのですが、それは当然のことで、でもその中で変わらないものがある。そして育まれていくものもある。
昨夜たまたま秋山和慶先生の指揮する広島交響楽団の演奏会があったので聴きに行きました。ここ何年かこのオーケストラを指揮させて頂いて感じるのは飛躍的にそのクオリティーが向上したことです。勿論比べるべくもありませんが、僕が幼少の頃、プロ化されて間もなくの広響とはまさに隔世の感があります。
演奏会の後、もう40年にもなろうという付き合いの餃子屋さんで食事しました。
僕が小学生の頃、見習いだった若い「兄ちゃん」が、もう白髪混じりの「おじちゃん」です。でも変わらずその元「兄ちゃん」が鍋をふるって料理をし、餃子の味は天下一品です。
19日に開催される広島交響楽団の演奏会のリハーサルが、今日から始まります。
プログラムは、ブラームスの1番のシンフォニー、ソリストに田村響君を迎えてモーツァルトの21番のコンチェルト、そしてシューマンの「ゲノフェーファ」序曲。
「ゲノフェーファ」はシューマンの書いた唯一のオペラで、上演される機会は少ないのですが、今年はシューマン・イヤーということもあって、ヨーロッパの歌劇場でも取り上げられています。
実は来年2月、新国立劇場での東京室内歌劇場の公演で、日本初演を指揮します。
でもこの広響のプログラムは、それが決まる前に決まっていたのです。
何たる偶然!!
それでは、行ってきます!
山下一史(指揮)