竹内将也です。
私は3年前から、毎朝身体のストレッチを行うことにしていますが、ここ数ヶ月は特に足、下半身のストレッチと動きを重点的に行っています。
足首を回しながら脚全体を回転させる動き
足首を内回りに回しながら甲側をつま先まで伸ばして行き、外側になったら足の裏側がのびてきてかかとが折れます。それを繰り返す。→上半身もともなって「胸を反る動き」と「背中が伸びる動き」を交互に繰り返すことにつながります。
床の上にすわり開脚して、膝の裏も伸ばし、かかとから股関節まで脚の最下部全てが床に接地するようにします。最初は膝が浮いてしまってできませんでしたが、続けていたらまもなく伸びるようになりました。そのうえで上半身を前に倒す。足首を回してみたり、股関節を前後・左右にのばす。
上記の他には、立った状態から前屈。とにかく身体の裏側を伸ばします。足裏の指先、ふくらはぎ、もも、尻、腰、背中、首、そして頭まで、各部全ての裏部分を伸ばす。
立った時に足指の先まで意識が通いやすくなりました。ヒップアップになり仙骨が起き、背骨がS字になりあごが自然に引き、身体の重さが真下にストンと落ちる感じが味わえます。筋を伸ばすことで骨格の動きがはっきりしてくるのです。
私が今体の裏部分の伸びにこだわるのは、今まで表部分の伸びばかりを氣にしてきたきらいがあったからです。上記最初の足首・脚の回転運動をやってみるとわかるのですが、足のつま先から甲側を伸ばしたときは身体の前側が伸び、その反対に足の裏側を伸ばす(かかとを折る)ときは、身体の後ろ側がのびます。馴れてくると腰を中心とした身体のゆらぎになると思います。
身体のどちら側ものびのびしていることが大切なようです。
私は子供の頃から長い間電子オルガンを猫背でやってしまい、腰痛、肩こり、外反母趾、反対咬合といったように、骨格をゆがめてしまっていました。
今こうして身体の動きを感覚として捉えようとすること自体に喜びを感じます。
パーカッションを始めたことで素晴らしい師匠に巡り会い氣づきを得、健康体を目指すことが始まりました。
長年の癖や骨格のゆがみを治すのは簡単ではありませんが、在るべき様を目指すこと自体に意義を感じ、よりよい演奏、そして生活に良い影響が出てくることを期待しています。身体にすっきり感が出てくると、不思議なことにイメージの世界が広がっていくのが面白いのです!
竹内将也
竹内将也です。
この写真は、昨年の秋に出演したコンサートで演奏するために用意した打楽器類のセッティングです。
坂本知亜紀さん(ソプラノ歌手、宮城学院准教授・東京藝術大学講師)がプロデュースした現代作品のコンサートです。
-震える言の葉- G.Crumb&L.Berio作品展
ジョージ・クラム作曲:
ルクス・エテルナ(永遠の光)
(ソプラノとハープ、2人の打楽器の為の)
マドリガルⅡ&Ⅲ
(ソプラノとハープ、フルートと打楽器1人)
ルチアーノ・ベリオ
セクエンツァⅢ
(ソプラノ独唱)
サークルズ
(ソプラノとハープ、2人の打楽器の為の)
出演者
坂本知亜紀 Soprano
有賀誠門 Percussion
竹内将也 Percussion
木ノ脇道元 Flute
片岡詩乃 Harp
小日向英俊 Sitar
2009年10月6日(火) 東京オペラシティ
2009年9月28日(月) 宮城学院大学講堂
仙台でこのようなコンサートはまさに前代未聞であり、東京でも非常に稀有なプログラムです。たったお一人で企画から運営、演奏までこなした坂本知亜紀さんに敬意を表したいと思います。このようなプログラムがせんくらでも上演されたら良いなと思います。
写真のセットは、ベリオのサークルズのものです。この作品では2人で約80個の打楽器を使用するように記載してあります。小太鼓のような太鼓類から木琴・鉄琴などの鍵盤楽器、シンバルやドラ、木魚やトライアングル、チャイム、ティンパニ、いくらあげてもきりがない程の種類と量です。
オーケストラでも作品によって様々な打楽器を扱いますが、一人が一度に扱う数は大したことがありません。しかも通常のレパートリーでは一人一種類ということが多いです。
これだけ1人で扱う数が多いと、そのセッティングや体の動きといった、いわば「流れ」に対して非常に氣を使います。あるべき響きをイメージした楽器の並べ方をすることになります。セッティングを見ただけで響きが見えるのです。
また、打楽器奏者は沢山の打楽器の扱いに通じている必要がありますが、それよりも根本的に響きがどうあるべきか、そのイメージと息づかいを把握しておくことが何より大切です。
そういったイメージは、そもそもリラックスした身体の感覚から来るものと私は感じます。特に足、下半身からくる感覚が音楽の原点であると思います。
なぜなら西洋音楽は移動を主とした行動感覚、生活感覚に根ざしているからです。
リズムは動きから生まれます。
体の動きの仕組みを知り、骨格は円運動をしていることに氣がつくと、各部それぞれのリズムを見いだすことができます。
小さな回転のリズムと大きな回転のリズムが同時に存在する。そこに驚きの響き感覚があるのです!
竹内将也
竹内将也です。
先日、東北電力「コンサート&トークCafe」という催し物が仙台と塩釜で開催され、出演いたしました。
東嶋和子氏(ジャーナリスト)が世界各国のエネルギー供給事情を写真解説付きでわかりやすく紹介、お話の合間に、岡村映武(ヴァイオリン)、芦澤暁男(フルート)、竹内(マリンバ)の仙台フィル3名が音楽を演奏するというもので、来場者の皆様はコーヒーと菓子を口に入れながらお話と音楽を楽しむことができます。
東北電力はこのような催し物の他にも、多くのイヴェントを主催・支援されています。仙台フィルが演奏に参画するものも多く、東北と新潟県を巡回するコンサートや小中学生対象の音楽鑑賞教室、本社1階で行われるグリーンプラザふれあいコンサートにも仙台フィルやそのメンバーによるアンサンブルが出演しています。
そもそも、エネルギーというものは目に見ることが出来ません。何をもってエネルギーというのでしょうか。
電力の場合は、水力・風力・火力・原子力といった発電施設で電気エネルギーを発生させますが、それらは全てもともとは自然の力を利用したものです。
私たち人間も、自然から与えられたものを食物として食べ、活動するエネルギーを得ます。
そう、全ては自然から借りてきたもの。それらをエネルギーとして利用させてもらっている訳です。
私は音楽も同じ発想ではないかと思っています。大自然から得たエネルギーで奏でるのです。ですから歌は自然の息吹であるといえます。
自然から借りたものを自然に還す。それも、自然より美しい姿で。そもそも大自然自体が美しいところに、人間はそれ以上の美しさを求めていく、という課題を与えられているのではないでしょうか。
竹内将也
竹内将也です。
昨年のせんくら2009では、「Rhythm & Beat」と題して映像を使用した音のつながりを試みました。
コンピュータから幾何学的な模様の映像がプロジェクタで投影され、それはいろいろなパターンに変化していきます。
マイクを通してその場の音がコンピュータに入力され、音が映像を変化させていく、という単純ながら効果の高いシステムです。
私が演奏をしているところにこの映像を投影するだけでは普通なことですが、演奏者も映像を見ることができる状態で演奏することで、音楽と映像の間に相補的な関係が生まれます。
自らが出した音によって変化した絵を見て、その絵が演奏者のイメージに影響を与え、出す音にさらに変化を与えていく。
そしてこのシステムを来場者皆さんにも体験していただきました。木琴や太鼓、ティンパニ、トライアングルやタンバリンといった小物打楽器を実際に用いて、絵を見ながらやっていただくのです。
そうしますとどのようなことが起こるかと言いますと、来場者の皆さんは映像を見ながら打楽器の音を出します。ご自身が映像に、ある働きかけをしながら音を出すので、サウンドに方向性が生まれます。ガチャガチャと何となく音を出すことがなくなり、うるさくないのです。
演奏は、常にあるイメージを持ちながら行う、音楽と共にある、共にありたい作業であると私は思っています。ですからその響きにはある方向性があります。特に地球の重力と反対側の方向、そう、反重力の方向こそが響きわたると。
この映像のシステムは、昨年のせんくら以降も数々の場所で行いました。特に娘達がお世話になっているご縁で、多くの仙台市保育所のコンサートで実際に子供達に体験してもらいました。
その中で、忘れ得難い体験があります。
私が静かな木琴の音楽を、この映像と共に演奏していた時です。子供達はこのシステムがどうやら自分たちの声でも反応することに氣がついたらしく、誰となく息を合わせて、映像に向かってとても元氣な声で「ワーッ!!」と出し始めたのです。
普通ならば、大きな声で静かな音楽が聞こえなくなってしまうものですが、その時は私のマリンバの音楽と彼らの元気な声が、何とも言えない感覚で調和したのでした。母性的で穏やかなマリンバの音楽と子供の無垢で素直な声が、映像を通して繋がった瞬間でした。まさにこのとき、その映像が共通の楽譜となって、その場すべてを響かせたのです。
竹内将也
竹内将也です。
今日はこのティンパニについてご紹介しようと思います。私が仙台フィルの演奏会で度々使用する楽器です。
この楽器は半世紀前まで、現在のNHK交響楽団の前身である日本交響楽団で使用されていました。(当時のティンパニ奏者小森宗太郎氏)。後に倉庫に眠っていたこの楽器は、廃棄処分を免れるかたちで私の師、有賀誠門先生が払い受けました。私はこの貴重な楽器をお預かりし、管理をさせて頂いています。
いつ頃製造されたかはわかっていませんが、ある文献によるとアムステルダムのミュージシャンで発明家のJohann Stumpff(1770-1841)が、1815年頃にこのタイプで全く同じデザインのティンパニを作っていますから、古ければ200年近く前の楽器と推定されます。ヨーロッパにはまだ同種のものが点在しているものとみられ、アメリカの全米打楽器教会博物館にも展示されています。
ティンパニは銅で出来たお椀状の胴体の口に仔牛の皮をのせ、その皮をネジで締めて張っています。
ティンパニはどういうわけか音程(ドレミ~)をハッキリと聞き分けることができます。皮の張り具合を調節することで音程を変えることができます。作曲家が作品の中で指定した音程に調節し、奏者は曲の途中で音程を変えなければなりません。
その調節をするのに、ネジを直接締めたり緩めたりする方法がもともとのティンパニ「手締め式ティンパニ」なのですが、そのネジを棒でつないで足下のペダルで一括操作できるようにしたのが現代のペダル式ティンパニです。このペダル式ティンパニの発明によって、作曲家はティンパニの音程をしょっちゅう変えさせるようになりました。オーケストラ作品のサウンドに大きな歴史的変化を与えています。
一方、この写真のティンパニは、ペダル式が発明されるまでの過渡期に作られた「回転式」というものです。
何が回転するかといいますと、なんと胴体自体が回転します。本体を支える支柱はネジ山になっており、本体をネジのように回転させることで、皮を張ったり緩めたりするという、画期的な方式なのです。
そしてこの楽器のもう一つの特徴は、独特のサウンドです。この楽器が持つ非常にハッキリした発音と豊かな音色は、現代のティンパニには決して真似が出来ません。
仙台フィルでは、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマンの作品などで使用することがありますので、聴いてみてください。
竹内将也
竹内将也です。
去る6月に仙台・楽楽楽ホールと東京オペラシティリサイタルホールにおいて【竹内将也パーカッションメッセージ】が開催されました。
このコンサートは、私の5年ぶり通算6回目のリサイタルになるものです。
サブタイトルは「UTA」(うた)を綾にして。山川あをい氏作曲のマリンバ(木琴)を中心とする作品シリーズの中から数曲を取り上げ、それらとティンパニの作品などとを交互に演奏していくプログラムでした。
このUTAシリーズの最新作となる第9番を今回委嘱し、オーボエとマリンバのデュオとなるこの新作を西沢澄博氏(仙台フィルオーボエ奏者)と共に初演しました。
UTA・うたと呼ぶが如く、シリーズ全曲には、祈りのエネルギーが宿っており、シンプルながら存在感の大きい作品です。
このような女性的な4曲の「UTA」と対をなすようにして、男性的な作品を4曲発表しましたが、その一つにデジタル機器を用いたものを上演しました。
それが今回のせんくらでもご披露する、「FABIAN THEORY」です。
これは、ディレイマシンという、シンセサイザーやエレキギターを使う方が良く用いる機械を使用します。
マイクを通して自分の演奏がコダマになって繰り返されたり、演奏したある一定のパターンをその場で記憶して繰り返し再生することが出来る機能を持っています。
このFABIAN THEORYを作曲したのはオーストラリアの作曲家、ナイジェル・ウエストレイクという人で、機械の設定項目を細かく指定し、生演奏とディレイ音と
の響き合いが非常に綿密に仕組まれ形で作曲されている、単純にして高度な作品です。ロックのノリで演奏効果が非常に高い。
せんくらのステージでは、このディレイマシンを用いて皆さんと響き合える時間を持ちたいと思っておりますのでお楽しみに!
竹内将也
仙台フィルでティンパニを演奏している竹内将也です。
ティンパニはオーケストラにおける主要な打楽器ですが、しばしばティンパニの役割を「オーケストラの骨格」と呼んだりします。 例えば、建物の基礎や骨格はそれ自体は見えません。旋律を受け持つヴァイオリンやオーボエ、トランペットなどをはじめとした管弦の楽器が高らかにその歌を歌い上げる一方で、ティンパニはそのサウンドを下から支えます。
音楽でいう「骨格」とは、Beat~ビートです。
Beatとは、息吹、ノリ、エネルギーの節といえると思います。
節があるということは、波があり、波があるということは、回転があるということです。
そう、音楽は回転しているのです!
竹内将也