「記憶」 ③  

2010.08.22| 横山幸雄

「そんなに甘いものではなかった」と気がついたのは、演奏会の10日ほど前。
考えてみてほしい。通常2時間の演奏会であれば、前日に演奏会同様2時間あれば、リハーサルができる。 しかし、この演奏会は演奏時間が(休憩をしながらだが)およそ16時間に及ぶためリハーサルは1日ではできないのだ。 たとえば、今日は30曲、明日は30曲というふうにリハーサルとすすめていったとしても、5日かかってしまう。そうすると、5日前にリハーサルした曲が 果たして演奏会で聴いて頂く状態で、僕の頭と身体に保たれているのか確認ができない。 では、もう一度弾こうとしたら、また5日かかり、これは堂々巡りだ。かといってまさか前日に15時間のリハーサルをやるわけにもいかない。

さて、最後はどうしたと思いますか?
まさに、人事を尽くして天命を待つ、といった心境でした。前日はとても穏やかな心境でいつものように夜はワインを飲んでいました。 なんだかワクワクとした気持ちで。

人生・・まさか自分の名前が「ギネス・ブック」に載ることになろうとは思ってもいなかった。でも、だからといって、すごいことをやってのけたというような思いはまったくない。全ては、ただショパンに近づきたくてやったことだから、きっと、僕の周りの応援してくれた多くの方々の気持ちが、あの演奏会を成功に導いてくれたのだと思う。

この場をかりて「ありがとう!」

横山幸雄(ピアノ)

 

「記憶」 ②  

2010.08.21| 横山幸雄

僕が「ショパン・ソロ全166曲演奏会」で暗譜した楽譜の総ページ数は、ざっと1500ページぐらいだっただろうと思う。だから、スタッフや関係者、友人知人もこの演奏会のことを心配し、気遣ってくれた。 でも当の本人、つまり僕は、この数日分にあたるボリュームの演奏会を実はそんなに大変なことだと思っていなかったのだ。
演奏会の直前まで!
なぜなら、集中して練習するときは、15時間ぐらいは休憩せずに練習するので体力面では全く心配がなかったし、暗譜についても、新曲でさえ暗譜は1日でできるので、そこから曲を仕上げるのも4~5日あればできると思っていた。しかも、ショパンの作品は20年以上演奏し続けてきたし、殆ど演奏会で演奏したことがあるので だいたい頭に入っているはずだ。 それならば、コツコツと日々練習を積み重ねていけばできる!
・・・と思っていたのだ。

しかし、そんなに甘いものではなかった。 (明日に続く・・・)

横山幸雄(ピアノ)

「記憶」 ①  

2010.08.20| 横山幸雄

昨日、僕は携帯に「個人アドレス登録」をせずに、毎回090~から押しているといったが、
それには不便さを感じていない。なぜなら、すべての番号を記憶しているからだ。
ゆうに100人以上の番号はすべて頭に入っているから、これには驚く方も多いかもしれない。 ピアニストは暗譜で演奏する仕事なので、暗記は多分、というか、かなり得意なのだと最近気がついた。

今年の春、ギネス・ブックに登録された「ショパン・ソロ全166曲演奏会」を行った。ショパンの作品の全166曲を1日で演奏するというもので、朝9時から演奏会が始まり、深夜1時すぎに終演という、マラソンコンサート。弾くほうも大変だが、聴くほうも大変だったと思う。僕と一緒に“頑張ってくれた”お客様には心から感謝している。

「ショパン・ソロ全166曲演奏会」は、勿論全曲暗譜で演奏した。しかし、 いくら暗記が得意の僕でもこれには流石に手をやいた。 (明日に続く・・・)

横山幸雄(ピアノ)

文明の利器  

2010.08.19| 横山幸雄

昨日、「アナログ人間だから」といったが、僕はあまり文明の利器を活用していないかもしれない。 もしくは信用していないのかもしれない。
携帯は使っているが、携帯に友人知人の電話番号を登録することはしない。 もちろん、メールをうつこともしないし、したがってパソコンもやらない。
「なぜメールをやらないのか?」とよく聞かれるし、いつでも090~から携帯の番号を押している僕を見て 、
「信じられない、登録すればもっと便利なのに」ともいわれる。
僕は練習するか本を読むか原稿を書いているかテニスに燃えているか(ワインを飲んでいるか)で起きている時間が終わってしまう。
幼いころから、「休憩する」という習慣がなかった僕は、いつもスケジュールは分刻み。 だからメールを始めてしまうとおそらく1日が24時間では足りなくなってしまう。
確かにメールは便利なものかもしれないけれど、どうも一方的とも思えてならない。本当が本当に伝わるだろうか・・、逆にメールによって自分の生活にゆとりがなくなってしまうのではないか・・、と思うのは、文明についていけないヒガミかもしれない!?

横山幸雄(ピアノ)

時刻表  

2010.08.18| 横山幸雄

僕は今フランスにいる。
海外に滞在中はこちらの交通事情に従うしかないのだが、良くも悪くもいい加減で大ざっぱなヨーロッパと違って、日本にはとてもしっかりとした交通網が組まれているのだから、時間のムダが何より嫌いな僕としては、清張の『点と線』ではないが時刻表と首っ引きで、 いかに効率良い移動プランを考えるかということも重要なことのひとつだ。
そうした場合、もちろんアナログ人間だからパソコンや携帯で調べることもできないわけだが、それができたとしてもあればかりに頼るのは全然ダメだ。 なぜならば、『時刻表』で比較しながら、それは飛行機か新幹線かに始まり、 それは自宅から空港までの時間や新幹線の乗車駅の検討も含め、 衣装や楽譜を持っての乗り換えの動線、そういう諸事情を考えて決めていかないと、結局は不都合が生じるからだ。
でも最近この時刻表がわからないという人に立て続けにあった。 ピアノを教えていてもそうだが『わからない』ときくと、何がわからないのか、 どうわからないのか、わからないことが何だかさえわからないのか、を追求したくなってしまう僕としては、たちまち時刻表の読み方講座を開講してしまったのだ。

横山幸雄(ピアノ)

旅人

2010.08.17| 横山幸雄

僕はいつも福岡の美容室でカットしている。福岡まで髪を切りに行くというと大袈裟にきこえるが、コンサートの合間に立ち寄るという具合で20年近くそうしてきた。美容師の佐野さんは20年来の気のおけない友だちでもある。
演奏家は旅人のようなものだ。旅人は不規則な生活を強いられる。時に移動時間が一番ゆっくり眠れる時間だったりもするから、どこでも熟睡できるのは僕の得意技だ。

横山幸雄(ピアノ)

夏が好き

2010.08.16| 横山幸雄

今年の夏は日本中どこへ行っても『猛暑』の話題で持ちきりだ。
熱中症対策、夏バテに効くメニュー等々。暑くてうんざりしている方々には申し訳ないが、実は僕はこのくらいの暑さであれば調子が良い。
もちろん暑さを感じない特異体質なわけではないし、むしろ人一倍汗はかく方だ。だが全くバテない。さらに乾燥していないから最近悩まされていた咳もなりを潜め、ますます良い感じだ。
というわけで、ステージでもこの時期は特に汗をかいての演奏になるが、どうかお気遣いなく、僕は気分良く演奏しています。

横山幸雄(ピアノ)

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