今年の「せんくら」では3年連続になりますが、チェロの長谷川陽子さんとのデュオも実現します。
10/3(土) 16:40~17:40/仙台市青年文化センター/A.コンサートホールデュオも、ユーゴスラビアの作曲家ボグダノビッチなど、新しいレパートリーがいっぱいで、楽しみにしているのですが、なんと言っても、今回の目玉は、長谷川さんがキューバの国民的大作曲家レオ・ブローウェルの「無伴奏チェロ・ソナタ」を日本初演してくれること。
ブローウェルは、今年70歳になる指揮者・作曲家で、現代中南米最大の作曲家です。
すでに僕のために2曲のソロ作品「悲歌」「ハープと影」そして協奏曲「コンチェルト・ダ・レクイエム」を作曲しています。
昨夏の今頃は、彼の指揮するスペインのコルドバ交響楽団とこの協奏曲の初演で忙しかったのでした。
その代表作「ギターのためのソナタ」は1989年にイギリスの巨匠ジュリアン・ブリームのために書かれ、僕が日本初演し、今や世界的に良く弾かれるギターの名曲となっていますが、チェロ・ソナタはそれより20年近く前に書かれた作品で、近年イギリスで出版されました。
長谷川さんがこの未知の作品をどのように料理してくれるのか…今からドキドキしますね~
さらに!ギター・ソロでは、20世紀のギター名曲集と題して滅多に演奏されない難曲を披露します。
10/4(日)11:30~12:15/仙台市青年文化センター/B.パフォーマンス広場イギリスのバークリー(今年没後20年です)、そしてダッジソンといった名前は知っているけれど、あるいはCDのみで実演を聴いたことがない。そういう曲を集めてみました。どの曲もひょっとしたら仙台初演(?)かも知れませんよ。
「せんくら」が、僕自身だけでなく、仙台の皆さんにとっても新しい貴重な体験となりますように。今年も頑張ります!
福田進一(ギタリスト)
4年連続で「せんくら」に出演させて頂けることになり、今からウキウキしているギターの福田です。
仙台の熱狂的なギター音楽ファンの皆さんに再びお会いできること、心からの喜びです。
何? 美味い牡蠣だの、牛タンだの、酒だの、本当にウキウキ喜んでるのはお前の心じゃなくって胃袋だろって?
「ごめん、それって、ちょっとだけ正解。(特に食の都、仙台の場合はね)」
でも、ですね。今年のプログラムですが、料理じゃないけれど「新メニュー」が多いのには自分でもウキウキしますよ、本当に!
まず、フルート(荒川洋)、ヴィオラ(佐々木真史)&ギターという珍しい組み合わせのコンサート。
(10/2(金)12:45~13:30/仙台市青年文化センター/B.パフォーマンス広場)
古典期イタリアの作品ですが、カルッリの夜想曲とか、グラニャーニのトリオとか、これらは30年の長いギタリスト人生で全くやったことないんです。
どんな音がするんだろう?ドビュッシーに、フルート、ヴィオラ+ハープの有名なソナタがありますが、あまり想像つきませんね。
あ、僕が知らないんだから皆さんご存知な訳ないですよね~未知のイタリア料理。
それから、荒川くんが素敵な曲を書くフルーティストだってことは前から知っているんですが、どんな曲を書き下ろしてくるのか…
いや~、実に楽しみです。
あと、ソロですが7月25日にCD「オダリスクの踊り~タレガ作品集」をマイスター・ミュージックからリリースしました。
http://www.meister-music.com/new.html
「せんくら2009」では、この内容を中心に、さらに名曲「アルハンブラの思い出」「アラビア風奇想曲」などを加え、
タレガの没後百年を記念して演奏します。
こっちは、濃厚なスペイン料理、タレガの故郷バレンシアのパエリャ料理の感じで弾きましょうか!
10/2(金) 16:35~17:20/仙台市青年文化センター/D.交流ホール
福田進一(ギタリスト)
皆様、ギターの福田進一です。
さて、昨日に引き続き本日は自己紹介をいたします。
私は大阪の中心部、船場という商売の町に生まれ育ちました。
もとより音楽は大好きでした。9歳の頃、小学校への通学路の途中にある小さなピアノ教室に通い始めたのですが、始めるのには少し遅過ぎたようでした。
レッスンの最中、後ろの椅子で順番を待っている自分より年下の女の子たちが笑うのです。私がミスをするたびに…。これは自我が芽生えはじめた男の子には大変屈辱的でした。
趣味では、ピアノ以外に父が買ってくれたウクレレも弾いて遊んでいたのですが4本弦というのは実に和音が頼りなく、友人の弾くフォーク・ギターの豊かな音量に比べて情けなく思っていました。
しかしある日、なんとピアノ教室の2階にギター教室が出来たのです。私は11才の夏にそこに引っ越したのでした。それがその後9年間師事した斎藤達也先生との最初の出会いでした。
最初はクラシック・ギターというジャンルがあることも知らず、言われるがままピアノのバイエルにあたるカルカッシの教則本を持って通ったのですが、齋藤先生の教育は実にユニークでした。ハーモニーがわからなければ当時流行のフォークやビートルズ、シンコペーションなどのリズムがわからない時はボサノバやサンバを題材に面白く楽しくレッスンして下さるのです。
アンサンブルにも積極的に参加しました。最初の発表会では、ギターではなくリコーダーを吹きました。かなり難しいフレーズでしたが、元来吹く楽器は大好きなので得意になって演奏したのを覚えています。ギターの腕前も順調に伸びていきました。
14才の時、パリ国際ギターコンクールで優勝した渡辺範彦さん(当時22才/故人)の演奏会を聴き、自分の進む道はこれだと確信しました。残念ながら当時は音楽大学にギター科がありません。仕方なく腰掛けのつもりで関西大学商学部に進みましたが、在学中に大阪のコンクールで二度入選し周囲も可能性を認めてくれるようになり大学を中退し、1977年6月にパリに留学しました。ギターの留学に何故パリを選んだのかというのはよく訊かれる質問ですが、14才の時の衝撃と感動、そして確信がずっと続いていたからに他なりません。
福田進一(ギター)
ギターの福田進一です。
せんくらファンの皆様の中には、クラシック音楽は聴いても、ギター音楽、ギターという楽器をよく知らない、馴染みがないという方もおられると思いますので、まずは自己紹介の前に楽器紹介をしておきましょう。
私が弾いているのはクラシック・ギターです。今日ではエレクトリック・ギターのように電気を使って大音量でロックやジャズを演奏する楽器と区別して、アコースティック・ギターと呼ばれることも多いのですが、その生音を中心としたギターのなかでも、最も昔から伝わっている源流の楽器です。
歴史的に見てどれほど古い楽器かと言えば、それはピアノやその前身のハープシコードなどの鍵盤楽器が生まれる遥か以前から存在していました。エジプトの壁画にも刻まれ、その頃からキタラと呼ばれていたという話もあります。
それほど古い楽器です。
1500年代初頭にはギターの原型となったビウェラという楽器の最初の教則本が出版されました。イギリスでは同族のリュートが流行し、ダウランドを代表する当時の作曲家によって伴奏歌曲やリコーダーとの二重奏曲、初期の対位法を用いた数々の作品が発表されました。
この頃が最初のギター黄金期で、その後バロック音楽の進化複雑化によってその地位は鍵盤楽器に奪われていきます。再び脚光を浴びたのは王族貴族文化が花開いた1800年代初頭。当時のパリやウィーンでのサロン音楽にとって、持ち運びの便利な簡単に伴奏出来るギターは簡単な室内楽の楽しみや貴婦人たちの習い事にピッタリの楽器でした。
ギターを含むフルートや弦楽器との室内楽の多くがこの時代に作曲されています。この時期が第2のギター黄金期と呼ばれています。しかし、所詮音量に乏しいギターは、ロマン派の巨大な音響への指向や肥大化した音楽表現の潮流には着いて行けず、再び衰退していきます。
そして19世紀末になってスペインの天才製作家アントニオ・デ・トーレスによって改良され小さな音の代わりに豊かな音色の表現力を獲得したギターは、ひとりの天才ギタリスト、フランシスコ・タレガの演奏によって再び注目を集めます。タレガは奏法を改良し、作曲だけでなくピアノやヴァイオリンの作品を編曲してギターにアカデミックな方向性を与えました。
さらに20世紀に入って、その影響を受けた巨匠アンドレス・セゴビアが世界中で名演を繰り広げたことによってギターは独奏楽器としての地位を固めました。
今では世界中にギター音楽の文化が芽生え、ルネッサンスから現代までの多くの作品が演奏され、絶えず新作が発表されています。ギターはあらゆるジャンルの音楽に使われるようになり、フラメンコ、ジャズ、フォーク、ロックと多様な形態に進化してきました。これが私たちの時代、第3のギター黄金期です。
と、本来は本一冊かかるところを猛スピードで楽器の紹介をしました。
本日はここまで。明日は私の自己紹介をしたいと思います。
(*季刊誌「ムラマツ」2009年春号より一部引用させて頂きました。)
福田進一(ギター)