「最後に」

2009.09.05| 河村尚子

一週間というのは、あっという間に過ぎてしまいますね。
最初は何について書いたら良いのか分からずに戸惑っていましたが、あっという間に最終日。皆さん、7日間、お付き合い頂いてありがとうございました!

この6日間音楽とは関係ないことを書いたので、最後はやはり「音」で締めくくりたいと思います。

オーケストラから室内楽、ソロ・リサイタル、リート、オペラ、ミュージカル、民俗音楽等、音楽会の種類は沢山ありますが、皆さんは何を目的にホールへ足を運ばれますか?
好きな作曲家やその作品とメロディー、気に入っている楽器や優れた音響のホール、応援しているオーケストラや演奏家、音楽会の雰囲気、社交や休日の楽しみ等、色々な理由があると思います。これらはどれをとっても「音楽」です。聴衆の皆様に「音」を「楽」しんで頂ければ、私たち演奏家にとってこんなに幸せなことはありません!

私も音楽会を聴きに行く機会が多いですが、客席に座っていて時々気がつくのは、 少なくとも4つの耳(演奏家一人の耳2つと聴衆一人の耳2つ)が同じ空間でひとつの音楽を同じ瞬間に聴いて、脳の中で反応を起こして、心と体で感じて、もしかしたら感動して・・・という出来事がどれだけ素晴らしい事か!

この非日常的な世界に自分がいる事に気付く時、それはたとえ一瞬でも本当に幸せなひとときです。

「せんくら」で出演する3日間でも、「いつもとは違った」時間を皆様にご提供できればこの上ない幸せです。

それでは、一ヶ月後に仙台でお会いしましょう!
河村尚子(ピアノ)

 

「蝶々」

2009.09.04| 河村尚子

ドイツ、スイス、オーストリアの3ヶ国にまたがるボーデン湖は、バラトン湖〔ハンガリー〕、レマン湖〔スイス、フランス〕に続く、ヨーロッパでは3つ目に大きい湖です。
ボーデン湖はオペラ・ファンの方々にとって、オーストリア・ブレーゲンツで行われる音楽祭でお馴染みでしょう。オペラ舞台が湖水上に設備され、街中のオペラハウスとは少し違った雰囲気を楽しめるため、常に話題になっています。

ボーデン湖北西部に浮かぶマイナウという小さな島があります。現在はスウェーデン系貴族のベルナドッテ家に所有されています。島全体が1つの公園になっていて、敷地全体に広がる花園はもちろん、ワイン畑、18世紀に建設されたバロック宮殿、孔雀がいる小動物園、イタリア風バラ園、そして蝶々館などがあり、見どころはつきません。

蝶々といえば、プッチーニのオペラ「蝶々夫人」やシューマンのピアノ小品「蝶々」、グリーグの叙情小曲集「蝶々」など、音楽作品のタイトルにも多く使われるように、私たち音楽家にとっても馴染み深い存在です。

さて、たまには息抜きを、とある日ふらっとマイナウに遊びにいった時のこと。
夕方に公園に入場した私は、 先ず19時に閉館するという蝶々館に 急ぎました。
動物園のようにガラス越しに蝶々を観望する、と思い込み入館してみると・・・
なんと、80種類以上にも及ぶ様々な模様と色の蝶々が館内を自由自在に飛び回っているではないですか!
この蝶々館はドイツ一の面積を誇るそうです。大きくて立派な蘭やバナナの木、蝶々の繭まで展示されていて、繭から這い出そうとぶら下がる生まれたての蝶々も観察することが出来ます。
しかしこの蝶々館、常に湿度80−90%、気温30度近く保たれ熱帯地にでもいるような気分になり、「折角、日本の夏を避けてきたのに・・・」と汗びっしょりになりながら日本の猛暑を思わずにはいられませんでした。
河村尚子(ピアノ)

「苺」

2009.08.31| 河村尚子

日本でピアニストとして演奏活動を始めてから早くも5年が経とうとしています。日本の聴衆の皆様が温かく見守って下さるからこそ、今日までの成果と成長があるのだと思います。
本当にいつもありがとうございます!

頻繁に帰国するようになった今日でも、毎回日本で驚くことがあります。
今日は、その沢山ある「ビックリ事件」の中からひとつお知らせします。

それは、2006年の1月でした。
成田に到着した私は、仲の良すぎる上まぶたと下まぶたを離れさせようと一生懸命努力しながらリムジンバス停留所まで歩きました。外に出ると、辺り一面真っ白。普段温かい関東地区でもこんなに大雪が降るのか、と帰国初めての「ビックリ」。
後日、オーケストラとのリハーサルを終え、少々放心状態で散歩している途中、ふと目に入ったあるコンビニの「ストロベリー・シーズン・フェア」。「ストロベリー」という甘い響きに誘き寄せられて入ってみると、チョコレートやクッキー等の菓子類包装が全てピンク色に染まっていて、その側には苺のショートケーキや苺大福が並べてあるではありませんか!!
甘い物が大好きな私は目移りする中、「はて、冬にイチゴ?」とふと疑問に思いました。もちろん国際的な輸出入が盛んな現代ですので、年中暖かいイスラエルやエジプト産の苺がドイツでも真冬に販売されています。いわゆる苺は春から夏(5ー7月)にかけて畑で収穫されるのが常識として育った私には、雪が降る季節に甘くて美味しい「シーズンのイチゴ」を口にするという事は、かなりショックな出来事でした。
即、この事を日本の友人に話すと、今度は彼女がビックリ!最終的に私をノックアウトした彼女の言葉は「えー、苺なんか6月に採れないよ!」…
河村尚子(ピアノ)

初めまして!

2009.08.30| 河村尚子

今日から一週間「仙台クラシック」のブログを担当します河村尚子です。
「せんくら」に出演するのは今回が初めてです。大勢の音楽家が仙台の街に集まり演奏する、素晴らしい企画に参加させていただけて大変嬉しく思います。仙台の街を訪れるのが初めての私にとって、発見がいっぱいの秋になることでしょう!

普段ブログを書くことが無いので、何について書いたら良いのか戸惑ってはいますが、舞台から離れた旅行のこと、日常のちょっとした思い出や出来事を書こうと思います。
短い間ですが、みなさまどうぞお付き合いください。

さて、初日の今日は、学校時代の事に少し触れてみます。
日本人駐在者が大変多いドイツ・デュッセルドルフで子供時代を過ごした私は、当時在校生が1000人にもおよぶデュッセルドルフ日本人小学校に通っていました。そのため、与えられた教育環境、そして家庭環境は日本的なものでした。
今でも日本の文化の中に身を置くとホッとするのは、23年間ドイツで生活したとはいえ、私自身がやはり心の中では純粋に日本人だからなのでしょう。

デュッセルドルフ日本人学校の教員は日本から派遣されます。先生方の駐在期間は3年間。ドイツの生活環境に慣れ始めたら日本へ帰国しなければならないという状態でしょうか。私は小学校1年生から6年生までこの日本人学校で過ごしましたが、最後の3年間を担任して下さった先生は、仙台市の出身でした。

担任の先生が頻繁に変わる中、毎春の始業式には名簿確認が行なわれます。漢字で書く名前とは不思議なもので、様々な奇想天外(?)な読み方があります。その中の一つが私の名前です。普通に読むと「なおこ」や「しょうこ」、祖父が頭を捻って考え出した名前だけに、小学校の先生にもなかなか「ひさこ」とは読んでいただけませんでした…
そんな事も忘れかけて転校した現地校。外国人がたくさん住むドイツの学校にはドイツ人のほかに、フランス、ポーランド、ハンガリー、ロシア、トルコ、イラン、インド、韓国…そして日本からの私。
ドイツ人は、母音が多い日本の名前を覚えるのが苦手らしく、科目ごとに先生が入れ替われば私の名前の呼ばれ方も変わる…。「Hasikoハジコ」「Kasihiカジヒ」「Hosakoホザコ」「Kahasiカハジ」…うーん、どれも惜しい!!覚えてしまえば「ヒサコ」と簡単なのに…

※写真は、デュッセルドルフ日本人学校
河村尚子(ピアノ)

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