演奏会や試験、コンクールなど本番を控えると、誰でも緊張します。そういう時、何かにすがって安心したいと、身近な人や先生に≪何かひとこと本番に向けて言葉をください!≫と求めることがあります。そして集中してね、とかおもいっきり弾いてね・・などと言われることを想像するわけですが、ドゥヴァイヨンの口からでる一言はいつもなんだか一味違うのです。
ずいぶん前になりますが、ある時ベルリンの生徒さんがコンクールを控え、先生なにか一言・・・というと、ドゥヴァイヨンの口から出た言葉は、満面の笑みとともに
エンジョイ ライフ! (Enjoy Life!) ヽ(`▽´)/
その言葉は、エネルギッシュに人生を楽しんでいるまさに彼らしい一言。でも人生を楽しんで!なんてすごく新鮮。一味違ったエールをもらった生徒さんはとても喜んでいて、周りの私たちも仲間内でみんな未だに何かあるとEnjoy Life!と言ったりしています。
そして、先日。私たちが10月4日にも演奏させていただくデュカスの“魔法使いの弟子”を演奏した時のこと。私は直前にとても緊張していたので、“舞台で何を考えたら集中できるかな?”と彼に聞いてみると、
“たっくさんの水”
というのです。そう、魔法使いの弟子は、ディズニーアニメ“ファンタジア”に使われている曲。ミッキーマウスが演じる魔法使いの弟子が、師匠に水くみの仕事を頼まれ、面倒くさいので見よう見まねでほうきに魔法をかけると、ほうきが動き出して水くみを始めてくれるのです。ところが、必要以上にどんどん水を汲み続け、家が大洪水に・・・・!!!
というゲーテが作ったお話。たっくさんの水、という思いがけない言葉を言われたおかげで、舞台の上では水があふれた時のあのミッキーマウスの映像が目に浮かび、何だかとても楽しく弾けました。みなさんも、ファンタジアのアニメを見てからこの曲を聴くと何倍も楽しめますよ!
考えてみると、4日のプログラムは水がいっぱい。デュカスだけでなく、ドビュッシーの“海”では、朝焼けの静かな海から、波や風をうけた様子まで、様々な海の表情を音にし、会場を水で満たします。
がらりと違う“太陽そして踊りの国”スペインにかかわる曲を集めた3日の演奏会と合わせて両方とも“Enjoy Life!”できること、間違いなし!!でも、4日は会場には雨がっぱを忘れずに?!
村田理夏子(ピアノ)
今日は、連弾をやってみたいという方々にいくつかアドヴァイスをしましょう!
– まず、良いパートナー選びをしましょう。チャンスの平等さを確立するために、そうですね・・・最大で20kgの差までなら大丈夫でしょう。それを超えてしまうと、どちらかがつぶされてしまうかもしれません・・・。
– 椅子は二つ用意しましょう。一つのイスにすると、陣地の取り合いになり、“歴史”が教えてくれている様に、争いはいつもろくな結果を生みません。
– パートナーには、くれぐれも指の爪を切っておくよう、お願いしておきましょう。鋭い爪で踏まれた日には、被害が予想されます。
– 柔軟体操を十分行いましょう.特に右側に座る方は左腕、左側の方は右腕です。場合によっては、ピアノに正しく座るどころか、ほぼアクロバティック(曲芸的!)に近いポジションを要求されるときがあります。(4日に見ることができますよ!!)
連弾を弾くということは、鍵盤の上で社交ダンスを踊るようなもの。ですから、相手の指を踏んでしまうことがあっては絶対にいけません。本来お互いに心から和合していなければいけないはずなのに、5指からの攻撃は耐えられない痛みを生むことがあり、その痛みは仕返しをしたいという欲望を生んでしまいます。そうではなく、お互いの腕で美しいアラベスクをなすよう試みてください。ある時は相手の腕の上から舞い降り、ある時は下から滑り込ませます。全く調和のとれたバレエの振り付けのようなジェスチャーで。どちらが上か下かきちんと決めておかないと、空中で衝突を起こしてしまいますよ。腕がこんがらがって結ばってしまわないよう、定期的に腕で円を描くように入れ替わる練習することも忘れずに。
Pascal DEVOYON(ピアノ)
今日はみなさんに、学門的なことをお話ししましょう !(ほんとですって !)
-言葉の秘訣
フランス語では―おそらく他のどの言語にもあると思うのですが―文字通り訳すと意味をなさない表現というものがあります。たとえば、“prendre ses jambes à son cou”という表現があります。これを日本語にすると間違いなく変に響くことでしょう。(直訳:首から足を取る)これは実は、”一目散に逃げる“という意味なのです。 他にも僕のお気に入りな表現がもう一つあります。それは、”obéir au doigt et à l’oeil”.(直訳:指と目に従う)この表現は、だれか(あるいは動物)が、完全にあなたの希望どおり従い実行する=”言うなりになる“という意味です。
-DUOの秘訣
さて、今度はピアニストのDUO(二人で演奏する)場合に出くわす問題についてお話したいと思います。もちろん、まず何よりもお互いにこれから演奏しようとする音楽への意見が一致している必要があります。その後は互いに決めたことをしっかりと実現しなければいけません。二台のピアノで一緒に弾くということは簡単なことではありません。ですので絶対に二人のどちらかがDUOを導く、つまり合図を出す責任を負わなければいけないのです。私たちの場合、その役割は私に与えられています。私には二つの方法しかなく、二台ピアノの場合には 二人が向かい合っているため、目が大きな役割を果たします。そして理夏子は私の目で起きていることを読み取らなければいけません。連弾では、隣に座るので規則的に目を合わせることはできないため、問題が違ってきます。その場合には、指で様々なサインを出す事ができます。
-夫婦の秘訣
そして、今度はどうして私がこれほど妻と一緒に弾くことを好んでいるのかお話しましょう。それは唯一、彼女が僕に”obéir au doigt et à l’oeil”.してくれる瞬間だからです・・・・。あ、僕の書いたことを彼女が読んでしまうので、”prendre mes jambes à mon cou”するなら今しかない!
Pascal DEVOYON(ピアノ)
ある有名なフランスの著名なユーモア作家、Alphonse,Allaisはこう言いました:“田舎に都会を作らなければいけません、空気がもっときれいだから・・・”
彼は初めて必要最小限をめざした音楽を作曲したことから、不条理な芸術の大家でもありました : 彼が作曲した葬送行進曲“ある偉大な耳の不自由な方への葬儀によせて”の楽譜は、なんとまっさらな白紙の1ページでした。彼の言い分は?“強烈な苦痛というものは、声が出ないから・・・”だとか。
このブログと何の関係があるかですって ? せんくらの演奏会では、理夏子と共にフランス音楽の中で最も美しい作品のひとつ、クロード ドビュッシーの“海”をプログラムに盛り込みました。皆さん、この曲を私たちは先日、初めてどこで演奏したと思いますか ?クールシュヴェール、そこは私の夏期音楽祭が行われているフランスの町です。クールシュヴェールはフランスアルプス山脈の高度1850メートルに位置している素晴らしい場所です。
そう、私は皆さんにこうお伝えできて嬉しいです!:私たちは山に海をもたらした第一号です !Alphonse Allaisも座布団一枚くれるかな?
パスカル・ドゥヴァイヨン(ピアノ)
突然ですが、パートナーのパスカル ドヴァイヨンは、動物の中でもこよなく“あるもの”を愛していることがわかりました。
それは、二人で京都を訪れた時のこと。風情ある日本庭園をのんびりと散策していた時、相方が“あっ!”と声をあげ、何かを見つけ、水辺に走り寄ったのでした。そして目を細めて、わぁ、かわいい・・・と、何かとてもほほえましそうに水辺を見ているのです。カモとか白鳥かな、と私も近づいてみると、なんとそこにいたのは
カメ。
えっ、カメ? (・_・;) と驚いてしまった私は、その喜びを分かち合うことができなかったのですが、どうも彼にとってはカメが愛おしいらしい。よくよく話を聞いてみると、小さい頃に犬を飼うことができない家に住んでいた彼に、家族がカメを買ってきたそうで、(そのアイディアにも驚くが)家の中で、もそもそとマイペースで動くカメに愛着がわいたとか。その後も今でもカメをみると、あー!と小走りになる彼の背中を、うーん・・・わかってあげられない、と思いながら見ている私がいます。
せんくら会場近くの水辺でカメを追っている人がいたら、要注意! きっと彼に違いありません。笑
明日は、そんなカメ好きの彼にブログを書いてもらいますね!
PS.これが京都で彼が撮ったカメですが・・。か・・・、かわいいですか???
村田理夏子(ピアノ)
はじめまして!せんくらへお邪魔する時を心待ちにしている私たちですが、会場でみなさんにお目にかかる前に、まずはブログ第1弾で、名前を覚えていただこう!と思っています。え、なぜかって?
それはもう、私たちの(特に相方の)名前は曰くつき!これまで、どれだけ様々な方法で呼ばれてきたことでしょう。そう、ご存知の通り、彼の名前は Pascal DEVOYON。問題は、名字!フランスでも珍しいこの名前、カタカナ表記しようものなら、千差万別。
これまでも、ドワイヨン、ドバイヨン、ドヴァイヨン、ドゥヴァイヨン、そして挙句の果てには、でぼよん、でぼじょん・・・本人いわく、“もう誰のことかわからない・・・”という表記をされている事が山のようにあるのです。更には、名前が途中で切られてしまい、
パスカル・ド・ワイヨン♪
という表記まで現れ、どこかのケーキ屋さんのようになってしまっているのでした。
そういうわけで、名前表記統一政策を試みたいと思います。
パスカル ドゥヴァイヨン♪
これでどうでしょう。本人に言わせれば、こう発音されても自分とはわからず、発音上一番近いカタカナ表記は なんと<ドゥヴォワイヨン>らしいのです。でもこれでは、ややこしいうえ、なんだか怪獣みたいな名前・・・。誰にも覚えてもらえない恐れがあるため、今日を機にパスカル ドゥヴァイヨン♪に統一したいと思います。笑
さて、私の方はそれに比べてシンプルなもの・・・なはずですが、理夏子という漢字の組み合わせが珍しいのか、色々な漢字で表記されてしまうことは頻繁。それどころか、私もとんでもないところで名前が切られてしまうこともあるのです。ある時は、
“むらたり なつこ”と表記されたことがあり、自分のこととは本人である私すら気がつかなかった位です。(笑) そうかと思えば、私たちが住んでいるドイツでは、郵便配達の人にマ・ル・タさん・・といわれ、いえ、丸太ではありません。と答える羽目に・・苦笑。
というわけで、でぼよん・・・おっと失礼、 ドヴァイヨン&理夏子 DUOよろしくお願いします!
村田理夏子(ピアノ)