9月19日(金)新大阪にある大阪市立青少年文化創造ステーション http://www.kokoplaza.net/(通称ココプラザ)にて、来年春にリリース予定のパリャーソの新作「セレッソ」のレコーディング。昼過ぎから、続々と仲間のミュージシャンが集結してくる。
まずはギターの川瀬慎二、ベースの荒玉哲郎さんとともにカルテットで「Great pumpkin waltz 」この曲は小さい頃見ていた「スヌーピー」のTVアニメの劇中の曲で、ちょっともの悲しくはじまる旋律が、サビでふわ~っと明るくなるところが好きだ。いいテークがとれたのだが、この日最初の曲ということもあり、欲がでてあと2テークとってみる。結局、その3テークをもちかえってじっくり選ぶことに。
2曲目は、「Take me to a record shop (私をレコード屋さんに連れてって)」(作詞/作曲 谷川賢作)そう、実は今回うちのレーベル社長、清水紹音氏の発案で、CDだけでなくLPレコードも同時に出すことになったのです。そこで満を持して私が書き下ろしました。ところが、録音前夜、急にverseが欲しくなり、がばっと起き上がり、詞を書き、曲をひねりだす事態に。みなさんもLPレコードのことでいろいろな思いでがあるはずですが、私の場合「におい」なのです。輸入盤のあのビニールコーティングをはがして盤を取り出す時に、思わずにおいを嗅いでしまうくせがありました。でも、その「香り」と新着LPに針を落とす瞬間のわくわく感がごっちゃになった、あの至福の時間!ああ、昔にもどりたい~~(叫)(いやいや、前進あるのみ つかれるが、、、)とにかく、そのことを歌にしたくて、うんうん唸りながらの徹夜でした。歌うは山本容子さんとのコラボレート作品「Jazzing」でも、存分にその魅力を発揮してくれた、いつも明るくておちゃめな前重英美さん。彼女はまだ若いのだが、過去の名ジャズボーカリスト達のDNA 確実に受け継いでいる、と感じさせるオーラがある。特にこういうちょっとノスタルジックな曲では、その実力をいかんなく発揮してくれる。♪Take me to a record shop と冒頭歌いはじめた瞬間に、見事に「あの頃」にフラッシュバックした私は、ピアノを弾きながらちょっと泣いていました。
この調子で書いているのでなが~くなってしまうので、本日のレコーディングのハイライトのご報告。「北風と太陽」(作詞/作曲 谷川賢作 補作詞 MITATAKE)なに、イソップ?ふふふ、お楽しみに! 旅するミュージシャンの心意気を歌った名曲です。(自分で言わないように!はい)力さんとタケの「師弟ハーモニカ対決」をはさみ、ラストは東京からかけつけてくれた、小室等さん、ゆいさん、調律の鈴木さん、スタジオ内の全員をまきこんでの大コーラス。ああ、当たり前ですが音楽はことばで伝えるものではない。来年春のアルバムリリースを皆様、乞うご期待!
さて、つれづれなるままに私の1週間を書き連ねてきましたが、毎日がこのような怒濤な日々であるわけではありません。ちゃんと「休息日」というか、静かにアイデアをふくらませたり、譜面を整理したり静かにすごす一日もあります(たまーにですが、、、)私が自分で「ここの1週間を書きたい」とお願いしました。いよいよ近づいてきましたが「せんくら」に出場して、皆様にお目にかかれるのが楽しみです。会場で私を見かけたら、ぜひミュージシャンの「生活と生態」について問いかけてください。返事に窮してしまうとは思いますが。
それでは「せんくら」会場でお会いしましょう。お元気で!
(写真 なぜにサンタ?もうクリスマスの時期のコンサートチラシを作っています。その撮影)
—
谷川賢作
東奔西走。昨日の興奮の余韻さめやらぬうちに本日は一路西へ。9月18日(木)兵庫県立芸術文化センター小ホールにて、友人のジャンルを越えた歌い手、深川和美のコンサート。私と彼女は、96年に神戸・三宮の「木馬」というジャズ喫茶で出会って、以来意気投合してつかずはなれずライブ、コンサートを一緒に行っている。本日のサポートメンバーは高本一郎(リュート)続木力(ハーモニカ/リコーダー)そして私のピアノ。
なにを隠そう、この深川さんこそが佐渡さんと私を結びつけてくれた恩人。彼女(佐渡さんも彼女も京都人&京都市立芸大出身、昔からの友達)が「佐渡さんと賢作さんて絶対合うと思うんだけど」とずっと言い続けてくれていたら、本当に出会って友人になってしまったのである。ただ感謝の気持ちあるのみです。
もともとクラシックを勉強してきた深川さんだが、持ち前の好奇心でいろいろなジャンル(シャンソンから童謡から日本の古い歌謡ジャズから、根っからの雑食系)の曲に取り組んでいる。本日は、私も知らない間にまた新たな世界を開拓。関西のリュートおよび古楽の第一人者、高本一郎さんとのデュオで16世紀の音楽に挑戦「昔、昔、シンデレラが」で幕をあける。朗読から歌へ自然に流れていく構成が気持ちよい。
PAを使わずに、ここまでの自然な表現ができる二人の技量もさることながら、この兵庫芸文の小ホールの音のよさときたら!ホール設計者に完全脱帽です。礼!サウンドチェックの時、客席のいろんなところで、歌とリュートのデュオを聞いてみたのだが、どの場所でも実にバランスよくクリアに、豊かな音楽が降りそそいでくる。
そうして、歌とリュートの甘美な世界が続いて、観客を陶然とさせているところへ、私のピアノが乱入。最初のバラード「湖上」(作詞/中原中也 作曲/谷川賢作)こそは、おとなしく「借りてきた猫」アンサンブルを心がけているふりをしているが、リュートの高本さんがいったんお休みして、デュオになった瞬間豹変。エリック・サティの「言葉のない3つの歌曲」でさっそく暴走をはじめ、観客の温かい失笑を買う。
でもね、これは言い訳だけどね、言わしてよ!昨日の佐渡さんといい、今日の深川さんといい「賢作さんがはじけるの」を期待している、と面とむかっていわれた日には、ご期待にこたえるように、そちらの方向でがんばるしかない。深川さんにいたっては、曲順表のメモ欄に「爆発してください(笑)」と書きこんである。う~む、私っていったい何者ですか、、、
いよいよ盟友、続木力も加わった後半は、武満さんの「小さな空」いまやラテン系のスタンダード「アルフォンシーナと海」「Oblivion」と続いていく。そして私が深川さんに歌ってみたら?とけしかけた「はすクリア」(作詞/作曲 福沢もろ)という沖縄テイストの知る人ぞ知る名曲をはさみ、4人ではじけた「トリパトス」(ラベル作曲となっているが、ラベルがギリシャのお祭りの歌を蒐集してアレンジ)そして、ラストは「むこうむこう」(作詞/三井ふたばこ 作曲/中田喜直)を再び歌とリュートのみで、しっとりと奏でる。
わいわいとサイン会&打ち上がって、名残おしみつつ皆の衆と解散して、今ホテルでこれを書いています(午前2時)ああ、ドサマワリ人生。明日は11時からレコーディング也。
最後に佐渡さんの深川和美さん紹介文をお届けして、本日はおやすみなさい。
深川さん、来年は「せんくら」一緒に出ましょうね!
「なんて魅力的で不思議な人なのだろう。和美ちゃんのやわらかな歌声と笑顔によって始まるさまざまな音楽は、ジャンルだけでなく、国も、時代も、ひょいひょいと飛び越え、僕らのあいだを心地よく浮遊する。<中略>ああ~、女っていいね!自分にどこまでも正直で、凛としていて、どこか危なげで、自由で、愛されていて。そんな深川和美だけが歌える歌を、僕は確かに聴いた!」 佐渡裕(指揮者)
9月17日(水)tv asahi「題名のない音楽会」の公開収録 at 東京オペラシティ。題して「谷川賢作&俊太郎~音楽のことば」出演メンバーは私、俊太郎、続木力(ハーモニカ)from パリャーソ、高瀬“makoring”麻里子 from DiVa そして、今年も「せんくら」で「谷川親子」とタッグを組むアンサンブル「であるとあるで」の皆様(写真はリハ中の俊太郎と「であるとあるで」)この顔ぶれを見ていただくとおわかりのように。私の演奏活動におけるキーパーソンをよくばって全員お呼びしました。
ON AIR を楽しみにしていただきたいので、ところどころマル秘にしながらレポートしていきます。たとえば冒頭、司会の佐渡裕さんがメインゲストを「ある物」に例えます。さあいったい私はなにに例えられたのでしょう?ヒント。寒い冬の夜に必要です。直接さわるとやけどするので気をつけましょう。ふふふ。放送お楽しみに!
まずはこの回にかぎり、本業の指揮のない、佐渡さんと私と力さんによる、リコーダー&アンデス25Fの3重奏による「鉄腕アトム」でスタート。昨年もこのブログで書きましたが、マエストロ佐渡はすばらしいリコーダー奏者なのです。ライブのアフターアワーズで盛り上がるこの3人組、息もぴったり。いつでもCD出せます(笑)
ところでこの「鉄腕アトム」の作詞は谷川俊太郎だということ、皆様ご存知でしたか?意外と知られていません。そこでおもむろに俊太郎登場。本日も「親子関係」の質問をいろいろ浴びてしまうのだが、最近、二人とも前ほど構えずに楽に受け答えができるようになっている気がする。「そもそもお父さんは、息子を芸術家にしようと思って育てたんですか?」「、、、そんな気まったくありませんでした」場内爆笑。そう、なにか二人とも「芸術家」と呼ばれるのはこそばゆいし、もっと人に「受けたい」人を「喜ばせたい」という欲求が常にベースにあるということは、芸術家というより「芸人」に近いと思っている。48歳も76歳もまだまだ精進あるのみ。
「話してばかりいないで、はやく賢作さんのピアノを聞こう」の佐渡さんの温かい一言で、組曲「家族の肖像」を抜粋して演奏する。テーマ曲「Family Portrait」を「であるとあるで」の4人が艶っぽく奏でる、詩「いま」ピアノソロ「こいぬのきもち」詩「あかんぼがいる」と続いていき、最後に我らが「歌姫」makoring 登場。お待たせしました&待ってました!「さようなら」をさりげなく、それでいながら聴衆全員の心に深く静かに染みわたるように歌ってくれる。
聴衆も出演者全員も、なんとなくふーっとため息をつきながらも、ここで佐渡さんからのリクエスト曲。かねがね「ぼくは賢作さんの静かな曲もいいけど、どか~んと爆発するところが好き」と公言してはばからない佐渡さん。そうとあれば、ここはひとつ、きっちりと期待にこたえないといけない。そう「パリャーソ」の「あの曲」が満を持して登場します。さあ放送でのけぞってください。「賢作主体でいく!」と佐渡さんが言ってくれたとおりall about 賢作観られます。お楽しみに!
オンエアは12月7日(日)の予定です。BSでのオンエアも翌週あります。
9月16日(火)高円寺studio K にて24絃箏の小野榮子さんとのデュオ。昨日の天田君のコントラバスフルートにひきつづき「不思議楽器」シリーズである。日本古来の和琴は6絃。そして現在、いわゆる普通に演奏されている箏は13絃。そしてこの特注で制作された24絃。人間は欲張りだ。ここまでは「扱える」と勘違いすると、どんどんその音域を広げようとする。しかも低音方向に。ピアノにもベーゼンドルファーに「インペリアル」というモデルがあり、これも低音方面に長6度伸びて、C~C完全8オクターブの97鍵。実際に弾いてみたこともあるが、最低音部はいわゆる「楽音」には聞こえない。
特殊効果としてならありえるだろうが、この最低音付近をフレーズとして書こうとする作曲家はいないと思う(でも、いるかな?みんな好奇心旺盛で、人がまだやっていない方向にいつも向かおうとするのが作曲家という生き物)だが実は、この低音部があることによって楽器のボディ自体が大きくなり、より全体が深く共鳴するのがミソである。べーゼンの場合、そのための低音域なのだ。箏という楽器もこれから、どこまで音域が広がっていくのだろう?楽器制作の職人さんも「受注」したら腕のみせどころだろうなあ。
小野さんとは、つかずはなれず20年来のおつきあい。この方、変わった演奏会場での仕事をみつけてくる嗅覚が鋭い。いろいろありえないような場所で一緒に演奏してきた。廃駅になった旧JRの両国駅舎跡、仙台の美術館の前庭(屋外でまったく屋根なし。リハの時は快晴だったが、本番中、一天俄にかき曇り雨。ヤマハの人が青い顔をしてすっとんできて、ピアノはあっという間に防水梱包。雨の中でも弾き続けようとする私は羽交い締めで退場処分、、、反省)イスラエルの彫刻家ダニ・カラヴァンさんとコラボレートした時は石炭を会場いっぱいに作品として飾られた中での演奏。時折咳き込みそうになりながらもクールに我慢。お客様もどこでどうやって聞いたらいいのか?? しかしいろいろあったが、いずれも得がたい楽しい体験だった。
本日は、我々にしては「めずらしく」ごく普通の小さなコンサートホール。実は2004年に録音した音源が、いろいろ紆余曲折あって、ようやくCDになったのが昨年。CD発売記念コンサートも諸事情で遅れたが本日めでたく開催。小野さんの人徳であろう。予想をはるかに上回るお客様に集まっていただき。開演前からテンションはあがるいっぽう。
曲目は私の提案で「All Blues 」や「Left Alone」といったいわゆるジャズのスタンダードナンバーもとりあげる。もちろん箏で演奏するのは難儀なのは重々承知の上。悪戦苦闘の中からなにか少しずつ生まれてくるような気もしないでもない。自分たちの「自覚」ももちろん大切だが、耳のいい厳しいお客様方に客観的な批評をいただけたらうれしい。
コンサートタイトルにもなっている「水はまたまっすぐ流れる」は、私がダニさんの作品から触発されて書いた曲。久しぶりに演奏したが、リハの時とは違う展開を私がしかけて、小野さんは目を白黒。すみません、、、他に小野さんは「Libertango」でメロディオン。「The Rose」から「花」のメドレーは歌。多彩な表現で聴衆を「煙にまく」(あっ嘘です。すみません。「魅了」するのまちがいでした)小野さんとは今後もドン・キホーテとサンチョ・パンサのような関係で演奏を続けていくのかなあ。
皆様、応援のほどよろしくお願いいたします。礼!
9月15日(月)本日は、ライブは休み。そこで、今年はすでに仙台には2回行っているので、その2ステージについて報告します。
まず一度目は4月2日(水)錦町の洋風居酒屋さん「銀杏坂」に「Sudden T’s」というユニットでおじゃましました。メンバーは天田透(コントラバスフルート、バスフルート)鳥越啓介(ベース)そして私。ドイツ在住のバスフルート奏者天田君に出会うまで、私はこういう楽器の存在を恥ずかしながら知りませんでした。(写真左がコントラバスフルート。写真右が、おちゃめな奴でしょう、天田氏です)フルートなのに、なぜにこんなにもひく~~い音をださなければいけないのか?という素朴な疑問はあるのだが、そこは音楽家たるもの。発音するすべてのものを、好奇心をもって受け入れるべし!てなわけで、このユニットは天田君がドイツから帰る頃を見計らって、不規則に活動しています。
さて、仙台初お目見えとなった我々ですが、お店は早々超満員。しかもお客様方、開演前からそうとうアルコール類をきこしめしていらっしゃるご様子。まあ、これがライブハウスのいいところ。緊張があっという間にほぐれてしまう。見知らぬ者どうしも、袖ふりあうもなんとやら、でわいわいもりあがっている。そこへおもむろに登場する私たち。そしていきなりの低音の渦渦渦、、、若手ナンバーワンの呼び声が高い、鳥越君のグルーブする重量感のあるベースにのって、コントラバスフルートが縦横無尽に低いほうを暴れ回る。ピアノの居場所がない、、、負けじと、ぐがががが、と連打で応酬するのだが、この日は高い音はルール違反、紳士協定に反するみたいになってしまった。なぜだ!?は、ジャズは山下洋輔さんもおっしゃるとおり、試合でもあるのです。この日の「流れ」がこうなら、私も黙ってはいられまい、いくぜい~~うりゃりゃりゃりゃああ!!と低音怒濤の仙台の夜は更けていったのでありました。
二度目はうってかわってエレガントで知的な(そのはずです。でも同じ人間がやっているということは、、、推して知るべし)「現代詩をうたうバンド」DiVa で仙台市市民活動サポートセンター内の「市民活動シアター」に6月6日(金)に参上いたしました。このDiVaというグループ。96年に結成し、一度休んでいたのですが、また昨年から復活しました。仙台、中新田、本吉などでもライブ、コンサートの機会があり、今回も「ひさしぶりに聴きたいね」という有志の方々が「実行委員会」形式で制作してくださいました。心から感謝もうしあげます。礼!
コンサートに限らず、演劇、ダンス等、幅広く使えるこんなコンパクトな劇場が欲しいなあ、と東京在住の私は思います。もっともこのような手頃な劇場が東京にあったら、応募殺到でおさえるのが難しいのかなあ。
右記アドレスです http://www.sapo-sen.jp/about/archives/000136.php
コンサートは、昔からの仙台圏DiVaファンはもちろん、札幌から東京から、全国各地からコアなDiVaファンを「おっかけ」させてしまい涙涙。ロックでもジャズでもクラシック的な歌曲でもない、ジャンルで規定できないその独特のサウンドに熱心なファンは多いです。詩も谷川俊太郎、まどみちお、片岡直子等詩人達の「うたになることは想定外の詩」を自由な発想でうたにしています。未体験の方、ぜひ一度聴いてみてください。そしてこの日もラストに歌われましたが、矢野顕子さんもカバーしている名曲「さようなら」(作詞/谷川俊太郎 作曲/谷川賢作)は今年のせんくらでも「であるとあるで」さんの木管にのせてお送りする予定です。ボーカリスト!?そう、それが問題。俊太郎が歌うか、賢作が歌うのか。どちらも歌いたがり。
9月14日(日)今日は私のホームグラウンド渋谷「公園通りクラシックス」でソロライブの日。今年は隔月(奇数月)で必ずここでソロのライブをやることにしている。クラシックのピアニストにとっては当たり前の「ソロ」だが、我々ジャズ系のプレイヤーはなかなかソロのライブ、コンサートを作らない。なぜかと言われても、他のプレイヤーとのインプロビゼーション(アドリブ)のかけあいのほうがおもしろいから、と言うしかないのだが、でもソロは自分との対話、挑戦として必ずコンスタントに続けていくつもりだ。
プログラムはオリジナル曲ばかり。先日、舘野泉さん、平原あゆみさん、私の「3手」のために書いた「小春日和」からスタート。もちろん今日はソロなので中間部はアドリブしまくりだが、まったくアドリブのない5曲からなる組曲にして、来年3人で初演の予定「スケッチズ・オブ・オールド・ジャパニーズ・ランドスケープス」(仮)お楽しみに。2曲目はやはり舘野さんに捧げた「A Chorale for Carla」もちろんアレンジを変えて両手ヴァージョンで弾くのだが、この曲は左手1本のほうがストイックでいいと思った。やはりその時に吟味して書かれた少ない音のほうが研ぎ澄まされているのか。いつでも、アドリブにはしろうとする態度を反省。3曲目は「風来坊の春」というワルツ。お客様でいらしてくださった、出版関係のOさんから「私が今抱いている企画にぴったりの曲」と言われてなんだか嬉しくなる。その企画を、終演後熱意をこめて語られる。ふむふむ。これも形になる日をお楽しみに!
さて、こうやって1曲ずつレポートしていると長くなるので、ここで突然話題を変えて、敬愛する「My 調律師」宮崎剛史君のことを書く。彼と私は同じ歳。48歳。20代前半の時、さいたまの某ジャズ倶楽部で出会って以来、つかずはなれず、の関係と言いたいところだが、一度はなれてしまっている。これは一方的に私が悪くて「調律なんざあ まあ、あるにこしたこたあねえが、おいらピアノ弾き一匹、そこにピアノがあればどんな状態でも見事に弾いてみせるぜ」というまったくもって驕りたかぶった、これぞ若気の至り、という愚かな心構えだったので、自然と彼は私から遠ざかってしまったのである。彼の整音のすばらしさ、私との相性の良さに気づくのはごく最近まで待たなければならなかったのである。ああ遅い。再び反省。もうはなさないぜい!だんな~
しかし、ピアニストと調律師の関係というのも不思議なもんだ。初めての場所で、初めての調律師の方に「先生、先生」と言われながら、その日の楽器に四苦八苦している自分はいったい誰なのだろう??気が遠くなりそうだ。そしてすべての演奏の場に、宮崎君を従えて「肩で風をきって颯爽と現れる」のはいったいいつの日だろう?(そんな日はこないよ あほ)まあとにもかくにも、少しずつ前進あるのみ。
来年2月ピアノソロの新しいアルバムを録音する。もちろん調律は彼。妥協のない、魂のこもった音でせめぎあいたい。どうだ、この音、まいったか、とぎゃふんと言わせてやりたい。おそらく彼もすばらしいチューニングで、私にまいった、を言わせたいに違いない。同世代っていいなあ。ライバルで友達。
(写真 右後方が宮崎剛史君。いい仕事するのに、目立ちたがらない、、、)
今年も全国津々浦々、股旅を続けております。
10月に皆様と仙台でお目にかかれること楽しみにしております。
さて、9月13日(土)碧南市の「哲学たいけん村」(詳しくはこちらをご覧ください http://www.city.hekinan.aichi.jp/MUGAEN/index.htm)にて、谷川俊太郎の「観月の会」にお供しました。自他ともに認める「雨男」の俊太郎。まったく屋根のないオープンステージということで心配しましたが、ご覧のとおりのいい天気に恵まれご機嫌であります。(写真は開演前リハーサル時ですが、開演中は美しいお月さまと涼しげな虫たちの声がステージをいろどりました)
俊太郎の父(私の祖父)徹三は哲学者。哲学者―詩人―音楽家、と見事に「観念から感覚に移行」していく谷川家なのであるが、そういう私も「哲学」とは少々肩肘はったことばであるかもしれないが、自分の活動、行動の理念のもとになる大きな魂(まだるっこしい言い方だ、、、)は年々必要だと感じている。スヌーピーに出てくるライナスではないが、常にぎゅっとしがみつける「安心毛布」が欲しい?喝!
甘ったれるな。はい。でも毎日が「股旅」で矢のごとくすぎさってしまってよいのだろうか。どこぞの歌ではないが、たちどまって、ふりかえって考えたりしなくてよいのか?いいよ、そのままつっぱしれ(どっちなんだよ いったい でもどなたも股旅生活の音楽家の皆様、わかってくださいますよね)
さて、名月と虫のアンサンブルと涼風をバックに、俊太郎の朗読もいつも以上に心に響いてくる、楽しいので書籍、雑誌等に未発表の詩なども朗読。そして、そう。のると出てしまう歌。あああ、ここでもまた歌ってしまった、、、まあ、先に私が歌ってしまうのが悪いのだが(歌がでてくると聴衆がなごんでくださるのが嬉しいのです。特に我々のようなしろうと歌)彼も「よーし、おれだって」とつい受けてたってしまう。私は「たかをくくろうか」(作詞/谷川俊太郎 作曲/坂本龍一 そしてあの、たけしさんが歌った!隠れた名曲です)そして詩人は「昨日のしみ」(作詞/谷川俊太郎 作曲/武満徹 詞が先にできて、演歌を書いてもらおうと武満さんに渡したらしゃれたジャズの曲になったという)
歌合戦になる前に自重して朗読とピアノ演奏に戻った二人であるが、こんどの「せんくら」でもまたもや歌ってしまうのであろうか?お客様の皆様のノリも大きく影響するような気がします。
どうぞよろしくお願いいたします!?